第614話 これなら合法
「これはこれは。わざわざセントラル王国からお越し頂けるとは恐悦至極でございます」
大N王国の王はセントラル王国からの使者を貴族総出で頭を下げて迎えていた。
「日頃より貴様らの働きは見事である。これからも貴様らには期待していると陛下よりお言葉があった」
「ははっ。勿体ないお言葉にございます」
「褒美として皆を元気にするセントラル王国の秘草を授けるとのことだ。これを使ってより一層力を付け協力をするように」
「ありがたき幸せにございます」
「とは言っても栽培には時間が掛かろう。そこで植物魔法を使って栽培促進をこの者達に手伝って貰う」
「こ、この方々はエルフ・・・?」
「そうだ。しかも高位のハイエルフ達だ。我々と協力関係を結んでおるから安心して任せておけ」
「ハイエルフ様。どうぞ宜しくお願い申し上げます~」
「では早速取り掛かる。案内せよ」
「ははっ」
ゲイルは王都、新領、ドラゴンシティを行ったり来たりしていた。皆はいつもいきなり部屋に居たり消えたりと不思議に思っていたが、ぼっちゃんのすることだからと深く考えないようにしていた。不思議に思っても仕方がないのだ。
今は屋敷から王邸までの地下通路を掘っているゲイル。羅針盤の魔法陣を作ってそれを見ながら掘っているのだ。
地下水脈より下まで掘り進み、水脈に影響が出ないようにしたため、結構縦に深い。酸欠にならないだろうな?と思いつつ掘り進む。カナリアを連れて来たらいいんだっけ? とか本で読んだ曖昧な知識を思い出す。
それは一酸化炭素中毒の探知に使われたんだよと誰かが突っ込む。
屋敷には別室を建ててそこが出入り口になっている。一度戻ったゲイルは送風の魔法陣を設置して、トンネル内に新鮮な空気が入るように工夫する。多分これで安全だろう。
またトンネルに戻り掘り進めていく。ゲイルの屋敷は西側のハズレにあり、王邸は真ん中から東よりだ。王城の下を通ることになるので、隠し通路にも気を付けねばならない。そんなに深く潜ってなかったよな?とか思い出しつつ掘り進めていった。送風の魔法陣は途中にいくつも設置。魔線で繋ぎライトの魔法陣も設置していく。ここは関係者しか通らないだろうからわざわざ魔法陣を隠す必要もない。
そうしてようやく王邸迄のトンネルを完成させた。移動はバイクでしてもらおう。排気ガスも出ないから問題は無い。
「やっとか?」
王城の別室で完成の報告をするとそう言われた。
「忙しいんだよっ」
「冗談だ。そう怒るな」
あっはっはっはと笑うエイブリック。
「新辺境伯領はどうだ?」
「どんどんと移住者が増えてるよ。このまま行けば物凄く大きな領になると思う」
「東よりか?」
「寄り子の領を全部合わせたぐらいになるかもね。あと魔道具も最新のをバンバン入れてるし、水路とかも作ってるから完成したら王都より発展した領になると思うよ」
「ほう、それは見物だな。一度見に行くか」
「公式? それともお忍び?」
「公式な訳ないだろっ。そこまで発展するなら戦争の火種になる領だろ? 軍を配置するまで非公認領にしておかねばならんからな」
それもそうか。住民はセントラルから来てるし、文官もいないから住民登録とか出来てないからな。公式にはセントラル王国民と言われてもおかしくない。これ、登録急いだほうがいいかもしれん。
「あそこはドラゴンシティって名前にするんだけどね、ウエストランドの正式な領になるまで国としておいた方がいいかな?」
「どういうことだ?」
「住民登録してないから一応皆はセントラル王国の国民だろ? だからセントラルの土地だとか難癖付けられるかも知れないからさ」
「なるほどな。で、準備が整ったらウエストランドに編入という事か」
「そうだね。南の領地みたいな感じかな」
「じゃそうしておいてくれ」
「後さ、俺がどこかで金や銀を掘って来たらお金に作り変えてくれたりする?」
「は? 金鉱や銀鉱脈はどこも国が押さえてるだろ?」
「いや、未発見の所を探してみようかと。それなら問題ないよね」
「あるのか?」
「探してみないとわからないけどね」
うーむ、と考えるエイブリック。
「いや、それは難しいな」
「どうして?」
「どれぐらいの金を通貨にするかは俺の一存で決められんからだ」
そういうところは意外とちゃんとしてるんだな。
「他国との取引で支払いが生じた時は通貨はどうしてんの?」
「基本は金の価値=通貨だからそのまま支払ったり受け取ったりだ。ちゃんと調べた上だがな。一度金に戻して自国の通貨に作り変えるか、取引が多い国のものならそのままそこの支払いに使ったりするんだ。ドワーフ王国とかな」
「偽造とかないの?」
「偽造はすぐにバレるからまずない。金銀はどこの国もちゃんと調べてあるし、偽造が見付かった時は徹底的に出所を調べて死罪だ」
ほう、なるほど。
「例えばさ、ドラゴンシティを国とし立ち上げて、そこがちゃんとした通貨を発行すればウエストランドでも通用するってことだね?」
「そうなるな・・・ お前まさか?」
「どっか探しに行って来るよ。ドラゴンシティの投資資金はもう個人じゃ賄えなくなってきてるし、莫大な税金を投入するのも他の領の手前まずいでしょ?」
「お前ってやつは・・・」
さて、この計画が絵に描いた餅にならないように金銀鉱脈を探しに行きますか。
金銀探知機の魔法陣を考えていく。錬金釜の仕組みを改良すれば出来るような気がしているのだ。
えっと・・・
自分の錬金魔法のイメージを文章化していく。イメージの文章化はけっこう難しいのだ。書いた物を自分で読むとイメージと異なっていたり、誤字脱字があったりと。なんか自分で書いてて心が痛いな・・・。
えっと、こうでこうなったらこうでと何度も下書きしていく。
あとはレーダーだ。ここに置いた金属が対象。魔法レーダーを照射してこれがある場所がこう光ると絵に描いて注釈を入れる。
さて実験開始。
ガラススクリーンにぴこんと金貨の所が光る。次に銀も光った。銅はすでに鉱脈を発見しているから不要だな。
次に金貨を地面に埋めると地面が光る。一応成功だな。どこまで深く見つけられるか不安なのでさらに註釈をつける。
このレーダーからの距離をダイアルで指定するのだ。10mから500mまで設定してみた。
空からこいつを照射してやれば見つけられるかもしれない。ドワンにはこの作戦を話すか。造幣するための機械も作らないとダメだからな。
「おやっさん、金探しに行かない?」
「は? あれは国が管理してると言うたじゃろ?」
「だから未発見の所を探しに行くんだよ」
「見つけたとしてどうするつもりじゃ?」
「通貨にする」
といったらバカモーンと怒られてしまった。
「何でも出来るからといって、やっていいことと悪い事があるじゃろがーっ」
どうどうとドワンを落ち着かせて作戦を伝える。
「国にするじゃと?」
「そう。ここは国ですと言えば国になるだろ? だからドラゴンシティを国にしてそこの通貨を作るから問題無し」
「なんちゅう事を考え付くんじゃ坊主はっ。ダンは了承しておるのか?」
「まだ話してない。金を見つけてから話す」
で、住民登録の件を早くしないとまずいと説明を付け加えた。
「坊主の心配はもっともじゃの」
「もう俺の個人資産で投資出来る規模じゃないから金を作った方が良いとも思うんだ。一気に東の領以上の物を作ることになるからね」
100年単位で発展するものをわずか数年で作り上げていくには真っ当な手段では無理だ。魔法の力だけでは限界があるからな。
ー大N王国ー
「さすがはハイエルフ様。このようにたくさんの秘草が一度に育つとは」
「国民全体に行き渡るには足らん。次の土地に案内せよ」
「ははっ」
セントラル王国に協力関係にあるハイエルフの能力は素晴らしく。どんどん秘草が各地に生えて行くのであった。
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