第610話 セントラル王国に警告

ン ギャァアッ


フランの丘にドラゴンで飛来し咆哮を出すと兵士達は素直に逃げてくれた。


まずはフランの丘の建造物を取り除いていく。


「ったく、こんな物を作りやがって」


とダンはぶつぶつ言いながら片付けていく。


「ダン、ここはお願いね。俺は国境に壁を作ってくるから」


元エレオノローネ王国があった付近より東に国境を設定。ギリギリまでセントラル王国に近付けてもいいんだけど、刺激しすぎない程度にしておいた。


指輪を外して一気に壁を作っていく。まるで万里の壁だ。


ズドドドドドと轟音と地響きを出して壁が出来ていく。高さは約2mほど。頑張れば乗り越えられるほどの高さだけど、これより高くするとさすがに時間が掛かりすぎる。国境線は長いのだ。南の森の方は動物達が行き来出来るぐらいの柵にしておく。ミノタウロスは通り抜けられないけどね。


一応、街道に門を設置しておく。商人や冒険者も通るからな。


壁には看板を10mごとに立てておく。


【これより先、ウエストランド王国。用件がある者は街道を通るべし、壁を乗り越えた者はドラゴンの餌とみなす】


これを乗り越えて来るものは敵だ。容赦なく排除させて貰おう。


そのまま壁を北へ北へと作っていくいくと魔力スポットを発見。ぽこんと何も無いところからミノタウロスが出て来たのだ。その周りを柵で囲んでおく。ミノタウロスからは小さいが魔石も取れるし、肉も食える。うまく行けば魔石兼食肉工場になるな。また数日後に見に来よう。1日で何匹溜まるかな?


その後もコボルトやゴブリンが出てくるスポットがあった。こいつらは使い道があまりないから魔石スポットを結界維持の魔力源として使わせてもらう。魔力スポットに魔法陣を描き魔石をセット。そこから魔線を壁に這わせて各結界の魔法陣に魔力を分配していく。イメージは壁にコンセントがあるようなもんだな。


結界の魔法陣は発動しない限り魔力を余り使わないから、バッテリー代わりにデカイ空の魔石を置いておこう。余った魔力はここに充填され、足りないときは貯まった魔力から供給する。うん素晴らしい。


これを何日も続けていく。座標を置いてはフランの丘に戻ってダン達と夜営でバーベキュー。兵士が戻ってくるまではミケも呼んだ。


ミノタウロススポットは1日で2匹貯まっていた。魔石は100未満のものだが、水や魔導コンロには十分使えるからミノタウロスを2匹倒すのは住民達の日課にさせれば良いな。



「ゲイル、草だらけだった元の屋敷も綺麗になったよ」


「うん、ありがとう。あそこはどうするかダンに任せるよ」


ダンとミケが元のエレオローネの屋敷をどうしたいかは俺にはわからない。何か頼まれたら手伝ってやろう。


翌朝、ぞろぞろと人の気配がした。ようやくやって来たか。



「進めぇ!」


領軍の指揮官が大勢の軍を引き連れている。先頭を進まされているのは碌な武器も防具もない一般市民。


連れて来いとは言ったけど、それを肉の盾に使うとは酷い指揮官だ。こいつはいらんな。


ダンとシルフィードはドラゴンに乗り込み、ミケは屋敷に返した。


ドラゴンはまだ動かさずに俺が歩いてその集団に近付いた。


ガタガタ震える足で粗末な槍を構える一般人。


「ここから先はウエストランド王国領地である。何用か?」


「ここはセントラル王国の土地であるっ。何を勝手な事を申すかっ」


「セントラル王にはこの土地を防衛すると伝えてある。このまま大人しく引き下がるなら何もしないが、戦いを挑むならやむを得ず防戦する」


「やかましいっ! かかれっ」


と指令官が命令したので、シルフィードに合図を出して咆哮をお見舞いする。


ン ギャァアッ


「ひぃぃぃぃぃっ」


一気に戦意喪失する一般人。


「おい、話を聞いたやつはこちら側に逃げ込め。俺達がお前らを守ってやる」


それを合図に兵士達が一斉に反旗を翻し、皆を誘導してこちら側へ逃げ込んで来る。


「貴様らっ! 何をしているかっ! 早く戦えっ」


「これで全部か?」


「いえ、一度に全員は無理でした」


「分かった。ろくでもない指揮官はあの3人か?」


「はい」


「じゃ、あいつらを領都に捨ててくる。お前らは飯食ったら、もう一度領地に戻って皆を誘導してくれ。食材はこの魔道バッグに入ってる。全部食ってもいいぞ」


「は?」


「ドラゴンであの指揮官を領主の所に捨ててくると言ったんだ。領民達はパニックになるだろうから、こっちへ誘導しろ。頼んだぞ」


そう言い残してドラゴンまでダッシュして背中に乗る。


「ダン、シルフィード。あの指揮官達を手で掴んで捨てに行く」


ブァッサ ブァッサと翼をはためかせて飛び上がるドラゴン。


逃げる指揮官を追う。


UFOキャッチャーみたいでなかなか楽しい。


「ひぃぃぃぃぃっ」


グワッシと握るシルフィード。握り潰すなよ?


二人目も掴んで次だ。


「ゲイル、どうやって掴もうか?」


「両手で挟めば? でも加減しろよ。全力でやるとブチャッってなるからな」


ひゃぁぁぁぁぁっと叫ぶ3人目をガスっと挟み捕獲成功。少し嫌な音がしたけどまぁいいか。一般人を肉の盾代わりにするような奴なんてどうなってもいいや。


そのまま水平飛行に入るとあっという間に領都へ。


人間を掴んだドラゴンが襲撃してきた事で人々はパニックを起こす。冒険者かなんかわからないけど弓とファイアボールで攻撃したきたので、咆哮をお見舞いする。そして領都の城に降り立った。


「シルフィード、こいつらをここに捨てて」


「はーい」


ドサドサっ


次は領主を探そう。気配を探ると城の中にいた。方角をダンに指示してドスンドスンと歩いていく。護衛騎士達が斬り掛かってくるけど気にしない。


中でバフォンガが走りまくっているのが解る。このまま追い詰めたら行き止まりだ。


俺はシルフィードにオイタしようとしたバフォンガを許すつもりはない。


わざと恐怖心を煽るように顔から近付けてやる。


「ひぃぃぃぃぃっっ! たっ、助けてくれっ 助けてくれっ」


温玉するとこいつの魂も真っ黒だ。容赦する必要ないな。


ガゴンと壁ごと壊してバフォンガに話し掛ける。


「忠告を聞いてないのか? ドラゴンはお前の顔と臭いを覚えたとな。セントラル王にもそちらから何もして来なかったらこちらも何もしないと言っておいたんだがな。性懲りもなく進軍して来やがって」


「め、命令されただけなのですっ。私は王に命令されただけなのですっ」


「なら、王に直接聞きに行こうか」


シルフィードにバフォンガをむんずと掴ませる


「うぎゃぁぁぁぁ」


「シルフィ、強い強いっ」


「あ、ごめん。なんかつい・・・」


シルフィードも心のどこかでムカついてたのかもしれない。


バフォンガを掴んだままセントラル王都に向かう。


ドスンと王城の中庭に着陸し、バフォンガをぽいする。


「セントラル王に伝えろ。こいつはうちに攻めてきたから捕まえた。これ以上手出ししてくるなら次は王城を攻撃する」


阿鼻叫喚で逃げたす貴族達。バフォンガはお漏らしして気絶しているが死んではいない。


兵士達が命令されてドラゴンに攻撃してくるのでしっぽで払う。なぎ飛ばされるが死んではいないだろう。


魔法使い達がファイアボールやアイスランスで攻撃してきてもびくともしないドラゴンボディ。そいつらには咆哮を上げて魔法使いを威嚇する。


「まだ攻撃するならこちらも反撃をする。覚悟せよ」


騎士達が王城を守るので警告をする。


「最後に警告をしておく。こちらは戦う事を望まない。だが、やられることも望まない。次に何かを仕掛けてくるなら遠慮なく反撃をする。騎士達よ。守るべきものはなんなのかを今一度考えよ。ろくでもない命令を下す国王を守るのか、罪のない国民を守るのか」


それだけを言い残して俺達はそこを飛び立った。



「騎士隊長・・・」


「言うなっ。我々はセントラル王国の騎士団。守るべきものは理解している・・・」



「陛下、恐れながら申し上げます」


「くそほどの役にもたたん奴が何を申すのじゃっ!」


「ウエストランド王国と不可侵条約締結の進言を致したく」


「敵の言葉に惑わされおってぇぇぇっ!貴様は首だっ! 誰かこいつを牢に入れろっ。軍部大臣、飛行挺を出せっ! 一気にカタを付けてやる。その後に再構築する作戦に切り替えるっ」


「はっ、陛下。その前にあの作戦を進行させた方が宜しいかと。それと平行して事を進めた方が確実でございます」


「あれをやるのか・・・?」


「元はと言えば任せておけと言いながら失敗したあの国のせいございますから、相応の責任を取るべきかと。それに研究所の成果も試さねばなりませんからな」


「そうか、そうじゃな。失敗の責任は取ってもわらねばならんな。こちらの魔法使いも貸してやったにも関わらず失敗したのじゃからな。フハハッ フハハハハハハっ」



ー大N王国ー


「いつになったら東の辺境伯になるのよ?」


「あぁ? もうそろそろだろ?」


「それ何回言えば気が済むのよ?」


「ねぇ、もうずっと冒険者してれば良いじゃない」


「うるせぇっ。ここまで来たんだ。あと少し我慢しろよ。贅沢な暮らしさせてやるんだからよっ」


「あの魔法使いは必ず殺るからね」


「辺境伯になったら対決させてやるって言ってんだろ」


銀の匙メンバー、ジャックことジャンバック。マルグリッドの腹違いの兄はメンバー達と大N国の屋敷で朗報を待っていた。


ウエストランド王国のクーデターが成功したら東の辺境伯領主にすると約束され、東の予算で大N国の武器を調達したり、内部情報を提供していたのだ。


クーデター計画がとっくに破綻していることを知らされずに、ただもうすぐだと聞かされていた。




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