第604話 ドラゴン現る

ジョンとマルグリッドの結婚式は派手だった。式場とパーティー会場の総工費金貨2000枚とかだったからな。回収出来んのかこれ?


結婚式場のパイプオルガンはデカイし、ステンドグラスも入りまくり。


パーティーは楽団と歌劇団も導入して主役はジョンとマルグリッドだった。全てマルグリッドの考えた演出にジョンは付き合わされている。すでにジョンは思いっきり尻に敷かれまくりだな。唯一抵抗したのは紋章だったらしい。盾に剣をあしらったシンプルな物だ。


招待客は貴族だらけ。まぁ当たり前だけど。


投資回収出来るのかなと思ってたけど、花以外は全部俺に利益が落ちるから、式の申し込みがあれば儲かるっちゃ、儲かるらしいけど。


マルグリッド曰く、式がなくてもパーティーだけとかディナーショーとか考えているらしい。マルグリッド、頑張って稼いでくれたまえ。ジョンの収入だけだとこのデカイ屋敷を維持するの大変だからな。


同時期にドン爺の大公爵邸も完成し、アルもエイブリック邸に移ることに。少し寂しくなるけどまぁ、事務所は屋敷のままだから毎日来るだろう。


これから俺はドラゴンを完成させないとダメだし、王邸から屋敷まで秘密トンネルも作らないとダメだ。しかし、目印無しにまっすぐ掘れんのかな?


なんかやることいっぱいあるな・・・



ジョンの結婚式も終わって、アーノルド達とイナミン夫妻はうちに泊まるので、ピンクのドアとドラゴンの事を説明する。


これからのウエストランド防衛の方向性の打ち合わせだ。


筋書きはディノスレイヤ領の闘技会にドラゴンが飛来して冒険者が立ち向かうもなすすべがなく、アーノルドとドワンが攻撃。弱った所を俺がテイムするという流れにした。


で、エイブリックに報告し、ドラゴンは東の砦で防衛任務にあたらせよと俺に命令して一件落着。


アーノルド達にやられてドラゴンが弱る演出はダンとシルフィードに掛かっているから、ドラゴン工場で予行演習をすることに。


「父さん、本当にやっつけようと攻撃したらダメだからね。これ作るのにめちゃくちゃ苦労したんだから」


「アーノルド。斬るのはこことここだけじゃ。他はミスリルの鱗で覆われとるから刀が折れるぞ」


「折れるか試してみるか?」


だからやめろ。アーノルドなら本当に斬りかねんからな。


「私の出番はないのかしら?」


「闘技場で参加者達に死なない程度に炎のブレスを吐くから治療に専念して」


つまんないのとか言われたけど、アイナの攻撃だと内部まで衝撃波が来そうだからな。


俺達が中に入ってドラゴン操作を見せることに。まずシルフィードを身体を操縦席に固定し、腰にしっぽのコントロール装置、両手には手のコントロール装置を繋ぐ。ダンの操縦席は独特だ。飛行時に水平姿勢を取らないといけないので腰を鉄棒の用な物のところにセット。


ダンとシルフィードの操縦は自分の身体とドラコンボディがリンクして動くのだ。俺の操作は魔導飛行機と同じだが、ダンやシルフィードの動きで姿勢が変わるので操縦は簡単ではない。お互いに声を掛けながらの連携プレーだ。


今はやられた演技をしていく。


アーノルドが斬り、ドワンがファイアボールで攻撃。


「ダン、うずくまる様にしゃがんで」


ドラコンがしゃがんだ所で俺はピンクのドアで外に。


で、ドラゴンに駆け寄り、頭に仕込んだテイム印のライトの魔道具に魔力を流すとテイム印が浮かび上がる。



「お前達すげぇな。こんなもん作って練習してたのか。そりゃバイクを作ってる暇がねぇな」


イナミンは俺達が大変だったのを理解してくれたのであった。



「ゲイル、他に空飛ぶ魔道具も作ったんだろ? ちょっと乗せてくれよ」


と言うので、アーノルド、アイナ、イナミン、リンダを乗せて飛行することに。遊覧飛行ってやつだな。


ミスリル鉱山に行って飛行する。


4人とも大喜びだ・・・



と、その時にワイバーンが現れた。


うわわわわっ


ギリギリでワイバーンの攻撃をかわして空中戦になってしまった。


「おいっどうすんだよっ」


イナミンは慌てるがアーノルドはじっとワイバーンを見つめている。


「ゲイル、出発したところに戻れ。あそこで仕留める」


旋回して出発点へ。


「思いっきりブレーキ掛けるから頭を下げて」


バンと逆噴射をかけて急減速すると後ろから追って来たワイバーンは俺達を追い越していく。その隙に下降すると途中でアーノルドが飛び降りた。


そのまま低空飛行してアーノルドの後ろに回り着陸。こちらに一直線で飛んでくるワイバーン。


スパンっ


アーノルドはワイバーンの首を落とした。


首がなくなったワイバーンはそのまま少し滑空して地面に激突してボロボロになった。


やっぱりアーノルドってすげえな。この歳でこれだけやれるなら全盛期はどんなんだったんだろうな?



遊覧飛行はもう終わり。この飛行機にも攻撃装置を付けることにしよう。


俺は飛行しながらでも魔法攻撃出来るのだが、万が一、大量の魔力が浮遊石に流れ過剰魔力が暴発したらと思うと攻撃出来なかったのだ。


操縦桿に攻撃スイッチ仕込んで攻撃の魔法陣を羽に仕込んでバルカン砲みたいなものが出たら良いだろう。後ろにも攻撃出来た方がいいな。


単なる飛行機が戦闘機みたいになってしまうが、空にも脅威がいるなら仕方がない。風の魔法陣を改良してスピードももっと出るようにすればワイバーンに囲まれても逃げ切れるな。


ドラゴン工場に戻ってから機体を眺めてそう思っていた。



その後は闘技会のドラゴン演習に向けてミスリル鉱山の所でドラゴン飛行や着陸、自然な動作をひたすら練習をしていったゲイル達であった。



闘技会最終日。ドラゴンが出る事はベントや他の主催者達には知らせていない。


優勝者が決定して表彰までの時間でミスリル鉱脈に移動してメカドラゴンを飛ばせて作戦開始だ。



「ダン、シルフィ。いよいよ本番だよ。失敗は許されないから慎重にね」


「おう、任せとけ」


「大丈夫だよ! もう気持ち悪くなんないし」


では参ろう。メカドラゴン発進!


ダンがぶぁっさぶぁっさと羽を羽ばたかせるのに合わせて浮上。徐々に水平姿勢になり始めたころにアクセルを踏んでいく。水平飛行になったらアクセル全開だ。ダンはスピードが上がるに連れて羽をすぼめて空気抵抗を小さくしていく。


あっという間にディノスレイヤ領が見えて来た。


「そろそろ減速を始めるよ」


アクセルオフすると惰性で進むが、ダンが羽を広げることによって急激にスピードが落ちて行く。


闘技場の近くまで来たらゆっくりとその上を旋回しながら着陸した。


会場は阿鼻叫喚だ。伝説と思われていたドラゴンが突如として人の前に現れたのだから。


「皆、待避しろっ!」


ベントが観客や参加者達の避難を優先して指示を出す。よしよし。いいぞ、ベント。


あちこちから攻撃魔法が飛んでくるがミスリルの鱗はものともしない。全ての魔法を吸収していく。


「シルフィ、口を開けて頭をゆっくりと振って」


その動作に合わせて巨大な鳴き声スイッチオン!


ン ギャァアアッ


素晴らしい鳴き声だ。めぐみにゴ◯ラを見ておいてもらって大正解だ。見事に再現出来ている。


ひぃぃぃぃぃぃ


鳴き声一発で戦意喪失する冒険者達。


そこへアーノルドとドワンが飛び出して来た。


なんかニヤニヤ笑ってやがる・・・ 嫌な予感がする。まさか本気で攻撃してくるつもりじゃないだろうな?


「ダン、右回転して。その勢いを利用してシルフィはしっぽで父さんを攻撃」


ブォンとしっぽがアーノルドを襲うが飛んでかわすアーノルド。


「アーノルド、やめんか貴様ッ」


ドワンもアーノルドの企みに気が付いたようで怒鳴る。


「心配すんな。実戦練習だと思えばいいだろっ?」



「シルフィ、パンチだ。ダン、避けた所にブレスをお見舞いしてやるぞっ」


ブンとシルフィのパンチが空振りしたところにアーノルドがいる。


ゴォォォオォ


火炎噴射器のように口から炎を出すメカドラゴン。手加減して威力を落としているとはいえ、地面と壁が丸焦げだ。俺が作った土の基礎部分より上に当てると修復が困難だから気を付けないと。


アーノルドは斬って良い部分以外にも攻撃をしてきやがる。何考えてんだこのクソ親父っ!


斬って良い所のギミックから血しぶきが飛ぶ。中からじゃわからないけど、外は血まみれなんだろうな。


アーノルドは嬉々として攻撃をしてきやがるのでだんだんとムカついてくる。


「ダン、父さんを蹴飛ばして」


足元で刀を振りかぶったアーノルドにキックをお見舞いしてやる。


「甘いっ」


飛びながら斬りかかってくるアーノルド。


「ロケットパーンチ!」


ドゴンっ!


「グフッ 汚っねぇ、そんな攻撃あるなんて聞いてねぇぞっ」


後で追加したからね。


戦いを見ていた一部の者にはアーノルドが腕を切り落としたように見えただろう。


「ダン、シルフィ。倒れたフリして。大詰めだよっ」



練習通りにドラコンが倒れてうずくまる。


俺はドアで観覧席に戻ってメカドラゴンの所に走っていき、大袈裟な身振りでドラゴンの頭にテイム印を浮かび上がらせた。


逃げずに観客席で見ていた一部の者から歓声があがる。


アイナと治癒魔法を掛けるフリをしながらドラゴンのダメージを錬金魔法で修復。腕もくっ付けておいた。



ドラゴンはしばらくうずくまった状態で闘技場内で保管。翌日から観客席からの見物OKにしておいた。


その夜は俺達はバルで反省会。ベントは迎賓館で優勝者達の祝賀会をするらしい。



「父さん、なんで打ち合わせ通りにしなかったんだよっ!」


「あれ、実戦配備するんだろ? 本番に使えなかったらまずいだろ」


「あれは脅威として配置するからそれだけでいいんだよっ」


「いや、本当に脅威か試してくる可能性があるからな。どこまで使えるのか試したんだ。お前こそなんだあの攻撃は? 腕が飛んで来るとかどんな魔物なんだよっ!」


「あれはロマン」


と皆にはわからない説明をしたのであった。

















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