第603話 色々と改善が必要

「ゲイル、ごめん。ちょっと気持ち悪いかも・・・」


シルフィードは飛行酔いをしたようだ。どうしても風の抵抗を受けてフワフワするからな。


しかし、急には止まれないので徐々にスピードを落としながら着陸出来るポイントを探すも周りは木だらけだ。


「ダン、この高さなら飛び降りられる?」


「無茶言うなよ。あの木の近くに行ってくれ。あれに飛び移る。で、こいつを停められる場所を作ればいいんだな?」


とダンの指定した木の近くに行くと、ダンがボディによじ登ってジャンプっ!


「よっ!」


ばいい~ん


「うわっ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


べきべきべきべきっ・・・


どっすーーーんっ


ダンが飛び移ろうと踏ん張ったらこっちが動いてしまい、木に飛び移ることなくダンはそのまま落ちていった。ビデオで撮っとくんだったな。アイナに見せたら腹がよじれただろう。


下の方でポワッとピンクの光が出たから死んでないな。ホント、空は危険。


下からウガーッとうなり声が出て炎が暴れ、木が何本も倒れて着陸地点が出来たので無事着陸。


まぁ、今の騒動でシルフィードの気持ち悪さも飛んでしまったのだが。



「ぼっちゃん、殺す気か?」


「空は予想外の事が起きるよね。ここに座標を置いて一度帰ろうか。思ったより時間掛かってるし」


めっちゃ怒ってるダンをさらっと流して、一度、王都に戻って仕切り直しをすることに。



「おやっさん、まずは安全に飛べるやつ作るわ」


浮遊石はどんな置き方をしても垂直にしか浮かばない。上昇下降は得意とするがそれだけだ。バランス良く浮かびながら風魔法を併用して進んだり止まったりするのは相当神経を使う。人を乗せているときにふいに大量に魔力を流してしまったらヤバいよな。


しかし、素材を取りに行くのは飛行機が必須。山越えの遠方だからな。人工飛行物を作るのはどうかと思ってたけど作らざるを得ないな。


認識阻害の魔法陣を組んでステルス機能を持たせるしかない。レーダーから消えるのではなく、人の目から見えなくするステルス機能。魔法学校の校長に相談するか・・・。



ドワンに飛行機の機体を作成しておいてもらってる間に魔法学校へ。


戦争回避をする為の協力依頼として認識阻害の魔法陣を教えてもらった。なかなか複雑な魔法陣だけど、仕組みは意外と簡単だった。光の屈折を利用しているみたいだ。ただ、1方向にしか使えないから工夫が必要だ。


急いでドワンの元へ戻り、機体に工夫を加えていく。


試しに機体を多角系にしてみるけどダメだ。他の方向からは丸見えになる。ふと球体にしたらどうだろうと思い付く。



おお、なんか景色がモヤッとして完璧に消えるわけではないけど、これがベストかもしれない。


上部はガラス張り、ボディにも覗き窓を作る。出来たボディは薬のカプセルに羽が付いた形である。着陸用に足もつけたのでなんか虫みたいだ。


安全装置と運転が楽になるように魔力は魔石から供給する事に。上昇下降はレバーで操作。操縦桿で4つの魔石に流れる魔力を調整して姿勢変化。右ペダルは風魔法陣で前進、左ペダルは逆噴射の風魔法陣。航空機やヘリとかの操作はしたことがないので、自分が使いやすいように作っていく。


魔石残量がわかるように新魔法陣を組もう。これはこれからも必須だな。


魔石への魔力補充は操縦桿から出来るようしておき、過剰に流れたらアースを使って水のタンクへと。



ずいぶんとハイテクになってきた。座席には4点シートベルトも取り付けておこう。


魔道飛行機ができてくると共にだんだんともうドラゴンでなくてもよくね? とか思ってしまう。


いや、こいつでは威嚇にならないからドラゴンは必要なのだ。それにこのシステムはドラゴンにも生きてくるはず。


いや、いっそのことガン◯ムでもよかったのか? ドラゴンが出来たら作ってみるか・・・ 一人乗り用のこいつを作ってパイルダー◯ンするとかでも出来るな。

武器は飛んでくパンチと胸からファイアボールか。


だんだんとゲイルの思考が別の方向へと向かい始める。


「おい、坊主さっさと仕上げろ。あれからずいぶんと日が経っておるのじゃぞ」


「あ、ごめんごめん。次に何を作るか考えてた」


まだドラゴンもできておらんのに次の事を考えるなと怒られてしまった。


こいつを作るのにかなり時間を食ってしまった。もう季節は夏になっている。


前にダンが切り開いた地点までピンクのドアで移動してフライトテスト。


指差し確認してから上昇レバーをじりっと手前に引くと上昇する。真ん中に戻すとその位置で停止。素晴らしい。めちゃくちゃ楽だ。風でフワフワするのは同じだけどね。


レバーを前に倒すと下降をはじめて着陸。また浮いて今度は空中で停止して操縦桿を操作すると機体の姿勢が自在に変わる。元の姿勢に戻してアクセルペダルを踏むとシュオオオオっと前進。そのまま操縦桿を引くと前方が上を向いて上昇し、下降、旋回としていく。時速はわからないけど200キロぐらい出てるのかな? 空だとスピード感ないから分からんな。


旋回して元の位置へと戻り、逆噴射でブレーキ。おお、ちゃんブレーキが効くけどやっぱりビタ止めするの難しいな。でも感覚だけで複数魔法を使ってやるよりずいぶんとマシだ。


フライトテストが終わったので皆を乗せて鉱山探し。


「おやっさん、どんな所にミスリルってあるの?」


「あまり木がないところじゃ」


という事で北に向かって飛び続けるとゴツゴツとしたハゲ山を発見。そこに着陸した。前人未踏の地だろう。見たことがない魔物達が俺達を囲む。爬虫類系っぽいが随分と固そうだ。試しに炎で攻撃してみるもびくともしない。


じゃ、氷でと凍らせるとあっさり固まった。爬虫類系は低温に弱いのはこちらの世界も共通かな。


固まったやつらをダンとドワンが砕いていく。


しばらくそれを続けるといなくなったようなので、ミスリル鉱石探しを始める。


土魔法でがらがらと崩してドワンに見てもらうとやはりここはミスリル鉱脈らしくごろごろあるらしい。


土魔法で受ける所を作り、錬金魔法でミスリルをボタボタと抽出していく。本当に希少金属か? と思うくらい取れる。


ここにも座標を設置して足りなくなったら取りに来ることに。やっとこれでドラゴンの身体の生産が始められるな。



ドラコン工場でようやく生産を開始する。ミスリルの鱗はドワンからお前やれとのことでせっせと鱗作り。一つ作って型を取り、ミスリルをそこへ流し込んで大量生産。それを黒く塗っていく。


「坊主、仕組みはわかったが、これは一人で動かせるのか?」


「動かすだけなら出来るけど、違和感無く動かすには3人くらい必要だよね」


頭、羽、足で一人。しっぽと前足で一人。飛ぶ操作が一人だ。


待機中はミグルに教えてもらった結界魔法を応用したセンサーに反応して目を開ける、頭を上げる、立ち上がる、吠えるまでを自動操作。立ち上がるまでをした時には俺の所に警報音がなるようにしておいた。もちろん操縦席には座標を設定済だ。


動作確認を幾度となく繰り返していく間にジョン達の結婚式が近くなってしまったのでイナミン夫妻を迎えに行ったのであった。


「お前、連絡もしてきやがらんと。バイクはどうなってんだ?」


あ・・・


結婚式の招待状はジョンから出してもらっていたけど、俺からの連絡はすっかり忘れていたのであった。



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