第601話 神と呼ばれしもの
(ねぇ、ダン。マリアちゃん宙に浮いてるんだけどどういうことかな?)
(神様に抱っこされてんだろ。ミーシャも神様が見えたみたいだからな)
(どうしてあの二人は見えるの?)
(俺に聞くなよ。ミーシャとマリアにぼっちゃんが
おいっ、聞こえてるぞ。俺が
「めぐみ、マリアを気に入ったのはいいけど、連れて帰んなよ」
「えーちょっとぐらいいいじゃなーい」
ちょっとぐらいってなんだよ。
その後はマリアにさんざんアバアバしためぐみは名残惜しそうに帰って行った。
「あれ? めぐみさんどこに行ったんですか?」
「帰ったよ。そこそこ忙しいみたいだからなあいつ」
「良い人でしたねぇ」
人じゃないけどな。
「ねぇ、ゲイル。ミーシャちゃんは神様が見えてたの?」
「みたいだな。俺もめぐみも驚いてたよ」
「私にも見えるようになるかな?」
ダンの推測でぼっちゃんがミーシャとマリアを可愛がってるから見えたんだろみたいな事を言ったようだ。なら自分は? と思ってんだろうな。
「多分、めぐみが見えるようになる条件ってのが何かあるはずなんだ。まだそれが何かはわからんけどな。ダンの言った事は当てずっぽうだから気にすんな」
それでも面白くなさそうな顔をしたシルフィードは少しむくれてサビキをしに行った。
俺は疲れたからマリアと一緒に寝よう。その前にエビ網入れとくか。
あれだけ釣りに飢えてたけど、いつでも来れるようになったのだからがっつく事はない。赤ちゃんが大きくなるのは一瞬だからな。今はマリアを優先だ。
と、父親みたいな事を思いながら、マリアと添い寝したのであった。
夜中にマリアが泣いたらミルクを飲ませて抱っこして背中をトントン。次に泣いたらオムツを替えて、抱っこしながら子守唄を歌うゲイル。ミーシャも隣で寝ているが目を覚ますことはなかった。
朝っぱらからドワンは上機嫌だ。夜中に大物を釣ったらしい。
おー、立派なスズキだ。
「ぼっちゃん、タコのあれ作ってくれよ」
ダンが言うのはタコワサのことだろう。いま仕込んどけば夜には食べられるかな? ドワンも食べるだろうから、タコ丸々1ハイをタコワサに仕込んで行く。
「なぁ、ゲイル。ちょっと燻製の奴食べたいねんけど」
「カルパッチョか?」
「そうそう」
「おやっさん、このスズキ半身はカルパッチョにするよ」
食い方は任せるとのことだったので、半身はカルパッチョ、半身は天婦羅にでもするか。一口サイズにして大葉を巻いておこう。
「ゲイル、アジフライが食べたいな」
はいはい。
次々とリクエストが入るので調理していく。
「ダン、誰か連れて貝捕って来てくれないか?」
ダンはミケとツインズでバイクに乗って行ってもらった。ついでに座標を設置してきてもらう。魔道バッグも渡したのでそこに入れて来てくれるだろう。
さ、仕込みも終わったので風呂にでも入るか。
昨日は眠くてクリーン魔法で済ませたので、今から風呂に入ろう。
「ミーシャ、今から風呂に入るからマリアも洗ってやろうか?」
「じゃあ、私も入ります」
「別々に入るぞ」
「さすがにもう一緒に入りませんよ」
と、笑うが本当だろうな?
「じゃ、私も入ろうかな」
シルフィードも入るということで、屋根に登って女風呂と男風呂に湯を貯める。
ミーシャがマリアを風呂に入れるのかと思ったらハイと渡された。いや、いいんだけどね・・・
マリアの耳にお湯が入らないようにして湯船で頭とか洗ってやる。風呂をぜんぜん嫌がらない良い子だ。洗ってる間にうとうとしだしたので、抱っこして顔を肩に乗せて俺も浸かる。
ほー、生き返るわ。って生き返った時にアーノルド達から滅っせられそうになった事を思い出す。
ぴーぴー
めぐみから電話が鳴った。
腰にタオルを巻いてマリアをバスタオルにくるみながら弱めの温風で乾かす。
「もしもし」
「あ、ぶちょー。今日も昨日の場所に居るの?」
「いるよ」
「ゼウちゃん連れてっていいかな?」
「は? 他の星の神様もこっちに来れんの?」
「なんか行けるみたい。じゃ、昨日と同じぐらいの時間に行くからね。バイバーイ」
カチャ。
マジかよ・・・
取りあえずマリアにオムツと服を着せてと。俺も着替え・・・プリリリン。
また綺麗に洗い直しておいた。
風呂から出たミーシャとシルフィードの髪の毛を乾かしてやる。シルフィードってなぜか風魔法使えないんだよな。目に見えないから上手く発動しないのか、こうやって俺に乾かして欲しいからなのかわからないけど。まぁ、屋敷にはもうドライヤーがあるからこうやって外で風呂入った時しかやらないけど。
ちなみに屋敷のドライヤーとミーシャにあげた奴は弱い治癒魔法も出ている。髪の毛が艶々になる優れものだ。売り出すかどうかは迷っている。肌荒れとかにも効いてしまうから化粧水とか売れなくなるかもしれんからな・・・
下に降りるとドワンが地べたでゴーゴー寝ていた。その横でエビ網をあげていく。おー、大漁大漁。
そのまま海に浸けておいて、晩御飯ギリギリにさばこう。
エビフライ、塩焼き、天婦羅、アヒージョを予定している。
ダン達が帰ってきた。アサリもハマグリも大量だ。砂抜きしておこう。
ハマグリは網焼きとお汁に、アサリはバター炒めと酒蒸しかな。
皆にもめぐみともう一人神様が来ることを伝えておく。
「え? 他にも神様っているのか?」
「たくさんいるみたいだよ。俺も初めて会うからどんな
夕飯前に目を覚ましたドワンにも説明しておく。もはやなんでも有りじゃのと呆れられる。俺もそう思う。
夕飯の準備が整った頃、ポンっとめぐみとゼウちゃんが顕れた。
「会うのは初めてね、ゲイルくん。お言葉に甘えて来ちゃった」
おう、ゼウちゃんめっちゃ美人だ。いや、シルフィードが大人になったらこんな感じになるかもしれん。
「初めまして。前世ではお世話になりました。あと、俺が地球からこっちに来た事は皆には内緒にしてあるので」
「あら、賢明ね。その方が良いわよ。でもこうやって話してて大丈夫なのかしら?」
「日本語で話してる分に皆はわかりませんから」
ふと、ミーシャにゼウちゃんが見えるか聞いてみると見えないみたいだ。
「ゼウちゃん、限界突破してなくても神様って見えるようになるんですかね?」
「私達が生きてる者の魂を触れば見えるわよ。めぐみは知らなかったみたいだけど」
「えっ? そうなの? もしかしてやったことあります?」
「昔ね。発展させるのにやってみたんだけど失敗だったわぁ」
「失敗?」
「触った人は段々と自分が神になった気になるの。ほら、周りがちやほやするでしょ? そこまではいいんだけど、それを真似する人とか出てくるし、勝手に私が言ったようにしちゃったりとか。だからもうやらないって決めたの」
お・・う。なんという事実。いや、これはまずい。注釈を入れておこう。
※これはフィクションです。
「でも、ここはゲイルくんが居るから安心ね」
「何でですか?」
「ほら、神の真似事もしないし、私達にもひれ伏したり盲信したりしないでしょ?」
「いや、まぁ、初めに会ったのがゼウちゃんならそうなってたのかもしれません」
「ちょっとぉぉっ! どういう意味よそれ?」
「いや、めぐみは神様らしくないんだよ。いい意味で」
「それっていい意味なの?」
「そう、いい意味」
「そっか、いい意味なんだ♪」
うん、そういうところだ。
そのあとキャッキャ喜んでミーシャからマリアを抱かせて貰うめぐみ。
「シルフィ、神様に会いたいか?」
「えっ?」
「会える条件がわかった。ミーシャがめぐみの事を見えるようになったのはたまたまだ」
「そうなの?」
「そ。だから会いたいならめぐみに頼んでやるけど」
「会いたいっ!」
「めぐみ」
「なぁに?」
「シルフィードの魂を軽く触ってやってくれ。ぎゅっと掴んだりするなよ?」
「分かってるわよ。いちいちうるさいわね。この小姑っ」
こいつ・・・
めぐみがシルフィードの胸元をぺろんと触る。
「キャッ・・・あっ。スッゴい可愛い・・・ だからゲイルはめぐみさんの事を呼んだんだ・・・」
違う。
「てへっ。 私ってそんなに可愛いんだ。どう、ねぇ、どう? ぶちょー」
「ぶちょー?」
やめろっ。ミーシャと違ってシルフィードはそういうのに気付くんだよっ
「ぶちょー商会のぶちょーだよ。めぐみは俺の事をそう呼ぶんだ」
「なーに言ってんのよぶちょー、あんた前世で・・・」
ベシッ
「痛ったーっ! 何すんのよっ」
「ゼウちゃんに何で叩かれたか聞けっ」
ゼウちゃんが聞いたことない言葉でめぐみに説明している。神語ってやつかな?
皆も会いたいというので全員魂を触ってもらった。
うぉ・・・
息を飲む男性陣。ドワンまでもほーっとなっている。
「何見とれてんねんっ」
ダンの横っ腹をドンするミケ。
「なぁ、ぼっちゃん。この女神様に死ぬほど怒鳴ったり、叩いてたりしてたのか?」
「そうだよ」
「鬼かよぼっちゃん・・・」
おそらく、ダンと俺の見た目の好みは似ている。ドワンは美女系が好みなのかな?
その後はめぐみもゼウちゃんも美味しい美味しいの連発だった。特にドワンは嬉しそうにゼウちゃんに酒の説明をしながら注いでいた。キャバクラがあったら貢ぎそうだな。
めぐみはミーシャとキャッキャしながら頬張りあって飯を食っている。
俺はマリアの子守だ。
「ねぇ、ゲイルくん。その赤ちゃんマリアって名前なの?」
「俺が名付けた訳じゃないよ」
「そうなの?」
「あ、タコワサ食べますか? 日本酒か焼酎がいけるなら・・・」
「そんなのあるのっ?」
よくご存知のようで。
ダンもドワンも一緒に食べたけど、めぐみは気持ち悪いらしい。その代わりハマグリの網焼きはばくばく食っていた。
「でもここまで良く私の世界の物を再現したわねぇ」
「同じような動物とか植物がここにあるのが不思議ですよね」
「元々同じものだからねぇ」
やっぱりそうなんだ。
「ゼウちゃん達の世界はどんなのですか?」
「何にもないのよ。だからこういう世界を作って楽しんでるのよ。何か食べたり飲んだりする必要もないから、こういうの羨ましくもあるのよ」
「食べる必要がない?」
「そうよ。だからなくても平気。これはあなた達の言う嗜好品ってものね」
「他に何か楽しみはあるんですか?」
「何にもないわよ。ただ存在するそれだけ。私達はそういうものなの」
それが延々と続くのか・・・
「あー、めぐみ、ゼウちゃん。俺がいるときならご飯食べに来てくれていいよ」
「きゃー! ほんとなのそれ?」
「まぁ、俺がいる時ね」
「だって! ゼウちゃん」
「あら、私達を呼んでも何もないわよ」
「いや、別に見返りを求めてるわけじゃないんで。お供えでも食べられるけど、こうやってワイワイ食べた方が美味しいでしょ?」
「ふふっ、そうね」
神と呼ばれるものは神ではなく、ただ存在するものだった。
延々と変化のない世界に存在するもの。のーたりんじゃないと耐えられんなと思ったゲイルであった。
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