第599話 海には直通で

まっとうな飛行機や人工物とわかる物を作れば他の国も作れると開発を進めるだろう。なので、絶対に無理だと思わせる物の方がいい。


空想だとしてもドラゴンの事を皆は知っているから好都合だ。恐怖の対象でもあるからな。


飛行機は航空力学を必要とするが、ドラゴンが飛行するのはそういうものを超越した力。すなわち魔力で飛ぶと思われる。


今の俺なら工夫したら飛行するのは可能だろうけど、俺が恐怖の対象になるには個人で街とかを破壊しなければならない。そんなのまっぴらごめんだ。



しかし、人工ドラゴンを作っても実験する場所かぁ・・・


これは海だな。海上なら人目につかないし、もし見られてもあそこの漁村の人達だけだから、黙っててねと言えば大丈夫だ。


この前作った新領と王都横の間に開発基地を作って、海上で実験するか。


ピンクのドアがあればすぐに行けるしな。



まずはピンクのドアの魔法陣を改造していく。めぐみの意識の影響を受けないように詳細設定を組むのだ。


座標を決めてそこに繋がるようにすればいけると思う。問題は一度そこに行って座標となるものを設置しないといけないことだ。面倒だが毎回イベントが発生するよりましだ。


お忍びで遊びに連れ出そうとしてドン爺やグローナのえってぃぃぃは聞きたくないのだ。



よし、ドアの魔法陣はこれで大丈夫。座標にナンバリングして実験だ。


新しく開発した土地に移動して、少し離れた所に座標を設置。ちなみに俺の部屋にも設置しておいた。


少し離したところの座標を設定してドアをガチャと開けると成功だ。


「ぼぼぼぼぼ、ぼっちゃんなんだよこれ?」


「転送魔法みたいなもんかな。行き先は今みたいに目印を置く必要があるけどね。今から俺の部屋に帰るよ」


ここの座標を回収して部屋の座標を設定してガチャ。


よし、成功だ。


「ぼっちゃん、これヤバくねーか?」


「ヤバいよ。だから公表しない。まぁ、公表しても魔力の問題で誰も使えないと思うけどね」


どうやら距離に関わらず指輪を外さないと空間が繋がらないほど魔力を食う。それにドアを開けている間はずっと魔力が流れ続けている。試しに途中で魔力が切れたらどうなるのだろう?


木材をドアの所において指輪をはめて魔力を足りなくしたら木材が向こうとこっちに別れた。自分がドアをくぐった時に魔力が切れたり何かの拍子で魔法陣が壊れたらと考えると恐ろしい・・・



これは改善が必要だ。大きな魔石をたくさん作りドアに取り付けていく。まるでデコドアだ。なんというギャル仕様・・・


魔石は魔力が途切れた時のバックアップとしたので仕方がない。ほんの数秒しか持たないけど、魔石から魔力が流れたら警報音を鳴らすようにしておく。鳴ったらすぐに退避だ。


魔法陣が壊れる可能性も考慮して、魔法陣は総ミスリルで書き直し。錬金魔法を解除したら固形にもどるから、これを壊せるやつはいないだろう。



自分のことばかりもしてられないので、ポーション研究所には鎮痛剤、酔い止め、二日酔いの薬、あとは目玉の化粧品の研究をさせておく。魔法陣はエアコンの魔法陣をせっせと作ってもらっておこう。


「ダン、南の領地に行くよ。どうする?」


「行くに決まってんだろ。おやっさんはどうすんだ?」


「釣り公園に座標を設置するから、その後に迎えに行けばいいだろ?」


ということでシルフィードもミケもお留守番。バイクでかっ飛ぶ予定だからだ。二人は拗ねたけど、到着したらすぐに戻って来るからね。


目立たないように夜に出発。人が居る可能性があるところはライトも消してかっ飛んでいく。山道はもちろんライトを点けたけど。


山道は思ったより楽しい。豆腐積んで来れば良かったとか思ったけど、バイクだと無意味なネタだ。


途中で一泊するだけで到着する。門の近くで門が開くのを待って入領。突然で申し訳なかったが、イナミンの屋敷へ。



「は?どういうことだそれ?」


事の経緯を時系列で説明する。


「って事はいつでもここに来れるのか?」


「イナミンさんの許可が出たらね」


「よし、ゲイル専用の屋敷をここの敷地に建てるからそこを出入り口にしろ。あとはあそこでいいんだな?」


「屋敷じゃなくて小屋でいいよ。出入りするだけだから」


許可を渋るどころかノリノリのイナミン。


「で、こっちから行くときはどうするんだ?」


「無理だよ。俺がいないと使えないから」


「なんだよそれっ。つまらん。こっちはじっとお前が来るのを待ってるだけか?」


電話を渡すと頻繁に鳴りそうだからなぁ・・・


ファックスでも作るか。


「連絡方法はなんか考えるよ。でも魔石を結構使うからね」


「あと、お前達馬車はどうした? 馬で来た様子もないし・・・」


「・・・魔道具の馬で来たんだよ」


は?


もうこれも説明せざるをえなくなってしまった。


「よし、今から釣り公園に向かうのだろ?俺も行く」


リンダも来ることになってしまったので2台とも2人乗りだ。


俺がイナミンと乗ろうとするとダンはリンダと相乗りするのが照れ臭いと自分の方にイナミンを乗せた。


「ゲイル、こうやってぎゅっと掴まっていればいいのね?」


めっちゃ背中にロマンを感じるが気付かないフリをする。イナミンに殴られたくはないからな。


リンダは40歳前だろうか? ゲイルからしたらオカンくらいの年齢だけど、啓太からしたらピチピチの現役世代。ちょっとドキドキしてしまう。アイナの入浴シーンを見てもドキドキはしないのは血が繋がっているからだろう。あの腹だし・・・いでででっ


バイクが領民にバレたらまずいんじゃないかと思うけど、俺が異常なのは皆知ってるから今更だと言われた。異常ってなんだよ・・・



あっという間に釣り公園に到着する。


「ゲイル、これはいくらだ?」


「いや、販売してないよ。危ないから」


「ケチケチすんなよ。1台でいいから売れよ」


イナミンも言い出したら聞かないからなぁ。


これに乗って王都に来ない事を約束に1台売ることになってしまった。売値はドワンと相談。車体にどれくらいの費用が掛かってるか知らないからな。多分めっちゃ高くなるよとは言っておいた。金貨100枚とかになるかもしれん。未発表の魔道具だし、この世界ではオーバーテクノロジーだし。


・・・金貨100枚でも構わないだって。



釣り公園に座標を設定して目的完了。


イナミン屋敷においてきた座標をセットしてガチャ。


「うぉっ! 本当に屋敷だ」


「早く入って。ドア開けてる間はずっと魔力が吸われるから」


とせかして帰宅。


「じゃあ、小屋が出来るまでこの部屋に座標を置いといて。あと、ジョンとマルグリッドの結婚式に招待したら来てくれるかな?」


「お、招待してくれんのか?」


「遠いから招待したら迷惑かなとは思ったんだけど、これがあったらすぐに来れるしね」


「おう、喜んで行かせて貰うぜ」


という事で帰宅した。



「あれ、ぼっちゃま。お出かけになってたんじゃなかったんですか?」


屋敷に戻るとミーシャがマリアを抱いてうちに来ていた。


「いや、ちょっとね」


皆がいるので詳しくは説明出来ない。


マリアがダーダー言ってるので自分にクリーン魔法を掛けてから抱っこする。


俺に抱かれるとキャッキャ喜ぶマリア。


「ぼっちゃん、顔がデレてんぞ」


そんな事を言われても無視して、俺はマリアのお腹に顔を埋めてアババババっとくすぐったりしていた。赤ちゃんっていい匂いするよね。


「マリアもぼっちゃまといると嬉しそうですねぇ」


ミーシャはちょっと疲れた顔をしている。ザックも多分ぐったりしているのだろう。しばらくここに来てないみたいだからな。二人で赤ちゃんを育てるのは大変だからな。


「ミーシャ、腹いっぱい食って寝ろ。今日は俺がマリアの面倒を見ててやるから」


「はいっ」


マリアは離乳食を始めたらしい。母乳と離乳食。離乳食が始まるとオムツ替えもくちゃい。が、あの腐魂と比べるとなんて事はない。


もりもり晩飯を食ったミーシャは風呂に入った後に搾乳してそれは冷蔵庫へ保管。それが終わるとすぐに寝てしまったので俺がマリアをお風呂に入れる。


「さ、お風呂も気持ち良かったでちゅねー。お着替えしておねむでちゅよー」


つい赤ちゃん言葉になるのはなぜだろう?


身体を綺麗に拭いて全部服を着せると、プリリリン。


なんで赤ちゃんって、風呂から出て着替えさせると出すんだろ?


綺麗に拭き取ってクリーン魔法を掛けてまたオムツを替える。使い捨てじゃないから結構たいへんなのである。


ついでにお尻が少し荒れてたので治癒魔法も掛けておいた。



確かたくさん話し掛けてやるとしゃべり出すの早いんだよな。ベッドにマリアを寝かせて昔話をしてやる。


むかーし、昔あるところに・・・


そうこうしているうちに寝るマリア。


「ぼっちゃん、いいか?」


「何? ダン子爵?」


「それやめろっつってんだろが。それよりマリアに古代語教えるつもりなのか?」


あ、昔話を日本語で言ってたのか俺は・・・


「いや、そんなつもりなかったんだけどね・・・」


失敗したな。ぜんぜん日本語しゃべってるつもりなかったよ。気を付けよう。


あ、そうだ。ピンクのドアがちゃんと使えた褒美にめぐみにケーキお供えしてやろうと思ってたんだ。その前に汚れたオムツを綺麗にしないとな。クリーン魔法・・・


ん?ピカッ?


げっ!




「うわーんっ!ぶちょーが、ぶちょーが酷いのーーっ!」


「どうしたのめぐみ? またなんか怒られたの?」


「これ見てよーーーっ!」


ゲイルはうっかりお供え魔法陣の上に汚れたオムツを載せてしまっていた。オムツにクリーン魔法をかけようとして魔法陣にも魔力が流れてオムツをめぐみにお供えしたのである。



めぐみの元にごめんと書かれたメモと大量のケーキがその後に届くのであった。



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