第596話 瘴気の森の正体その2
※注意:嫌な表現が含まれておりますので、お食事中に読まれない方がよいかもしれません。
ーーーーーーー以下本文ーーーーーーーー
げっ!なんだこいつは?
巨人がデカいハンマーのような物を振りかぶっていた。
土魔法で一気に目玉を串刺しにする。サイクロプスって奴だろう。こいつの弱点は目玉だ。そうゲームの世界でのお約束だ。
目玉を貫かれたサイクロプスはゆっくりと俺達の方へと倒れてくる。
わっ!
皆がそこから離れるとゆっくりと倒れてズウウッンと地響きをさせた。
ほっとする間もなく、そいつらの群れが襲ってくる。アーノルドとダンが攻撃するにはジャンプしなければならない。
「弱点は目玉だからシルフィとミグルが魔法攻撃。父さん達は他のやつらをっ!」
パワーはあるけどノロいサイクロプス達。攻撃そのものよりも倒れてくるのを避けるのに必死だ。
俺は指輪を外して瘴気の浄化を優先する。攻撃は皆でなんとかなるからだ。
暗い影が俺に落ちた。やばっと思って見上げるとグリムナが蔦で倒れてくるサイクロプスを止めてくれていた。
「相手がノロいからと油断するな」
ありがとうとお礼を言って浄化を続ける。指輪を外してやっとなんとかなる状態。ダン達と3人で来なくて良かったと心底付いて来てくれたアーノルド達に感謝する。
瘴気が薄まると地面からボコンボコンと魔物が次々と生まれて来る場所が見えた。
そこはとんでもない魔力スポットらしい。エイプの池とは比較にならないぐらい様々な魔物がバンバン生まれてくる。
アーノルド達が魔物を倒す以外にあちこちで魔物同士も戦っている。
ここは地獄かよ?
どうやら強い魔力が出るこの場所は魔物にとって特等地らしい。強い魔物ほどここに止まり、力のない魔物は駆逐されるか外へ逃げ出すのだろう。
倒しても倒してもすぐに生まれてくる魔物達。これはキリがない。
俺は魔力スポットまで走り、地面に手を置いて魔力を吸いながら一気に周りを浄化していく。限界突破した力を持ってしてもギリギリの攻防だ。魔力を吸う事によって魔物が生まれなくなり、既に生まれた魔物はアーノルド達が倒して行く。
皆は渡しておいた魔法水と回復水を飲んで不眠不休で魔物を倒していった。
その状態が恐らく3日くらい続いたのだろうか?
襲ってくる魔物がいなくなり、辺りは静かになっていった。
「ふぅ、さすがに疲れたわい」
皆地面に座り込みへとへとだ。
俺だけ休めないのは解せぬ。
「ぼっちゃん、もう大丈夫そうだぞ?」
「アホかっ! 俺が魔力を吸って浄化してるからやろがっ」
ノーテンキにそう言ったダンに素で怒鳴る。
「そんな事をしてたのかよ。ただしゃがんでんのかと思ってたぜ」
こいつ・・・
さて困った。俺以外にこれを出来る者はいない。途中で止める訳にもいかない。どうすんだよこれ?
取りあえずご飯作ってと皆にお願いする。回復水で持ちこたえているけど、お腹は空くのだ。
シルフィードにおにぎりを握ってもらって食べさせてもらう。シルフィードは嬉しそうにあーんとか言ってるけど、俺はそれどころではないのだよ・・・
よし、エネルギーチャージ完了!
覚悟を決めて息を止める。心の中で温玉っ!
ウゲロゲロケロゲロっ
「オフっ オフっ!」
腐魂の臭いは息を止めてても直接嗅覚を刺激してきやがる。せっかくシルフィードに食べさせてもらったおにぎりを全部吐いてしまった。
いかん、このままでは自分の吐瀉物で貰いケロケロケロッピーをしてしまう。
「ミグル、ごめん。これクリーン魔法で処理して」
「わかったのだ。エイッ あれ? エイっ あれ?」
「早くしてくれよっ うっぷ」
「で、出ぬのじゃっ」
「その杖にクリーン魔法の魔法陣は組んでない。詠唱しろバカッ」
貰いケロッピをしそうな俺は怒鳴る。
ミグルは慌てて詠唱して処理してくれた。
さて困った。腐魂を浄化するには温玉しないといけない。いまやってるクリーン魔法で浄化されたらいいのにそれはされていないようだ。恐らく温玉して腐魂を浄化するイメージを持たないといけないか、温玉状態じゃないと効かないのかもしれない。温玉状態=神の代行者って状態だろうからな。
「ミグル、俺が吐いたらまた頼む」
俺は覚悟を決めた。もう激臭に耐えてやるしかないのだ。
無駄だと解ってるのに息を止めて心の中で温玉を唱える。
グッ・・・。耐えろ俺っ
見えたっ!
どろどろに溶け掛けたおどろおどろしい腐った魂。何個あるんだよこれ・・・ 不法投棄にも程があるぞっ!
キラキラキラキラッ
激臭と見た目の気持ち悪さに吐いてしまうがこのまま浄化していくしかない。
うっぷうっぷとなりながら魂が綺麗になるイメージを込めてクリーン魔法を一気に放つ。
ぐしゃっ ドロドロドロ
オロロロロロローー
なんだよ更に臭が強くなって溶けて気持ち悪いじゃないかっ!
恐らく魂が壊れただろうが知ったこっちゃない。胃が出て来るんじゃないかと思うくらい吐きながら浄化を続ける。
ぐしゃっドロドロ ぐしゃっドロドロ~
めぐみのやつ、綺麗にしてくれたら後は処理するからとか言ってやがったが本当だろうな? 溶けてドロドロになってんだぞ?
汚ったないわね、なんとかしなさいよとか平気で言いそうだ。
そうこうしているうちにシュワシュワっとドロドロが消え去っていく。中には溶けない魂もあり、少しずつ処理が進んで行った。
もう何日経っただろうか? いい加減限界が来てるぞ俺・・・・
腐魂の浄化が進むに連れて臭いもマシになってきたのか嗅覚が馬鹿になったのか吐かなくはなっていたので回復水は飲める。しかし、意識が段々と朦朧としてくる。
あと少し、あと少し。
そう言い聞かせながら浄化を続ける。
アーノルド達は俺が浄化をしている間に倒した魔物を焼いていた。
ようやく終わりが見えてきた。ドロドロはなくなり、壊れなかったけど薄汚れた魂もなんとなく綺麗になったような気がする。汚れた魂は長年洗ってなかった中華屋の換気扇みたいなものか。全部綺麗にするのが面倒臭いというめぐみの気持ちも良く分かった気がする。ラムザの言うこってりしたというのはこれのことなのか。
しかし、これは既に腐ってるからラムザ達も食わないだろう。
携帯を取り出しめぐみに電話する。
「なーに? 私忙しいんだけど?」
こいつっ・・・
「お前の尻拭いしてやってるんだろうがっ! だいたい終わったからさっさとこいっ! 俺のケロッピお供えすんぞっ!」
神に下劣な脅しをかけるゲイル。
「やめてよねっ!」
ポンとめぐみが現れた。プチっと携帯を切り、直接めぐみと話す。
「腐ったやつ結構溶けたけど問題ないよな? これ全部廃棄なんだろ?」
「そーよ。ふんふん」
ツーっと人差し指で魂を撫でるめぐみ。
「まだ汚れ残ってんじゃない。ほら」
ブチッ
「お~ま~え~な~っ」
ぶちギレた俺はめぐみに汚れた魂をぶつけてやった。
「きゃっ! やめてよっ! 何すんのよっ!」
「ここまで綺麗にすんのにどれだけ頑張ったと思ってんだっ! しばくぞゴラァァァ」
「あんた、神様をしばくとかなんて事言うのよっ!」
ベチベチベチベチベチッ
ありったけの汚れた魂をめぐみに投げつける。
「やっ、やめっ、やめ」
ベチベチベチベチベチッ
「いい加減にしなさいよっ」
そう言って反撃してくるめぐみ。
俺とめぐみは汚れた魂をぶつけ合う。
「ぼっちゃん、何やってんだ? 怒りまくってなんか投げてんぞ?」
「あやつは古代語で怒っているようじゃが・・・」
ミグルがゲイルの話している言葉は古代語ではないかと言う。
「古代語? もしかしたら神様が来てんじゃねーか?」
「ん? 神様が来てるって本当か?」
アーノルドはダンに問い掛ける。
「多分。さっき電話ってのでなんか話してたから神様と話して、ここに来てもらってるんじゃねーかな?」
「坊主は神様になんか投げておるのか?」
「ゲイル、すっごい怒ってるよね」
「あいつ、何をやらかしてんだ?」
「座れっ! そこに正座しろっ!」
魂を投げ勝ったゲイル。 半べそになっためぐみにそう命令する。
「何で私が正座させられなきゃなんないのよっっ!」
「この腐った魂を口の中に突っ込まれたくなかったらさっさと正座しろっ」
グリグリと腐った魂をめぐみのほっぺたに押し付ける。
「やめてよぉっ、もうやめてよぉぉっ」
泣きながら正座するめぐみ。
ゲイルはこんこんとめぐみに説教を続けた。
「ねぇ、今度は説教してるみたいよ?」
「はぁ、神様に説教する人間なんて見たことねぇぜ・・・」
「いいか、そもそも魂の浄化はお前の仕事だろ? それをサボって怒られたのを俺が尻拭いしてやったんだろがっ」
「はい」
「次にあんなふざけたこと言いやがったら魔物の死体全部お前にお供えするからなっ」
「ごめんなさい。それは勘弁してください」
「あと、なんでこんな難儀な場所に魂を捨てたんだよ」
「魔力の多いところに捨てたら綺麗になるかなって。てへっ」
ペロッと舌を出してペコちゃんするめぐみ。
全く反省している色が見えない。もう怒る気力も失せた・・・。
「帰ったらゼウちゃんに青いタヌキが出てくる国民的アニメを見せてもらえ」
「何それ?」
「いいから。そう言えば分かる。で、ピンクのドアを良くみてそれをこっちの世界で使えるようにしろ。それが出来たら今回の詫びとして受け付けてやる。しばらくして出来なかったらあらゆる死体をお供えするからな」
「わかったわよ」
「ゼウちゃんがもしどれの事か分からなかったら電話してこい」
「はい・・・」
めぐみはここにあった魂を回収して帰っていった。もうめぐみの対応で僅かに残ってた精も根も尽きたわ。
「ダン、ちょっとこっち来て」
「なんだよぼっちゃん? 神様は帰ったのか」
「うん。帰った。で、今からここの魔力を吸うの止めるからおんぶして」
「は?」
「魔力吸うの止めたら一気に魔物が出てくるから全速力でここから離脱。俺もう限界なんだよ・・・」
そう言い残して意識が飛んだ俺をダンがおんぶして全員で離脱したのであった。
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