第594話 いざゴミ処理へ
「ぼっちゃん、良かったのかよ? アイツに治癒の腕輪を渡しちまって?」
「あいつは俺が治癒の魔石を持ってること知ってたんだと思うよ。あのままアランティーヌ側に付かれたら面倒だからな」
「ん? どういうこった?」
「エイブリックさんところの隠密とダッセルの所の隠密がやりあってな、エイブリックさんの所の隠密が勝ったんだよ。それでクーデターを防げたんだ。向こうに情報が入らなくなったからな」
「それとなんの関係があるんだ?」
「エイブリックの姉さん、アランティーヌが治癒の魔石のことを調べたんじゃないか? ドン爺とエイブリックさんに渡してたんだ。知っててもおかしくない」
「それで?」
「ダッセルの隠密はかなりの腕利きだったみたいでな、王家の隠密は治癒の魔石のお陰で勝利することが出来たらしい。それで治癒の魔石が本物だと確信したんだろ。で、ゴーリキーにその情報を流してたんじゃないかと思う」
「はーん、そんなことまで考えて渡したのか。アイツが裏切ったらどうすんだ?」
「ん? アイツは俺に忠誠を誓ったろ? 裏切ったら殺りやすいじゃないか」
「ぼっちゃん・・・」
「なんだ?」
「恐ろしいぞ・・・」
まぁ、アイツが裏切るとは考えにくい。子供の頃からの夢を叶えられるのは俺しかいないと理解しただろうからな。
しかし、気になるのは浮遊石のことだ。アイツが知っているということは浮遊石が本当に存在するかした事があるからだと思う。俺が浮遊石を作ったのはダンとシルフィードしか知らない。さすがのゴーリキーでもそれを知ってるとは思えないからな。
これ、セントラルが飛行機の類いを作ってもおかしくないよな・・・
またエイブリックに報告することが出来てしまった。
さて、王都でやるべき事も終わったので、
軽く聞き流してたドワンはちゃんと聞いていたらしく、俺の防具一式を新しく作ってくれていた。服とかもどんどんサイズが合わなくなってるからな。
「で、どういうルートで行くんじゃ?」
「ディノスレイヤ領で父さん達と合流してエルフの国でグリムナさんに瘴気の森の事を報告してそれから瘴気の森へ向かう」
「グリムナに報告?なぜじゃ?」
「瘴気の森の中心部ってまだ誰も行った事がないだろ? どんな騒ぎになったり異変が起きたりするかわからないから、先に報告しておいた方がいいと思うんだ。エルフの国と瘴気の森はそこそこ近いんだよ」
「なるほどの。で、バイクは全部で5台でいいんじゃな?」
「うん、シルフィは俺と、ミグルはダンと乗ればいいし。母さんはきっと自分で乗りたがると思うからね」
「そうじゃろな」
「後はミグルの杖と母さんのトンファーを作ろうと思うんだ」
「魔道具にするのか?」
「というか魔石を仕込む。ミグルのは本当の賢者の杖みたいにするし、母さんのトンファーは強化魔石と治癒、水の魔石を仕込む。それプラス魔法陣を組むよ」
作るのはミスリル製の杖にミグルが使える魔法の魔石と詠唱の魔法陣を組む。これで魔力を流すだけで無詠唱で発動するはず。アイナのトンファーも同じだ。魔石で強化されたトンファーで殴られる魔物に少し同情する。
「魔石はあるのか?」
「すぐに作れるよ」
と壺に水を貯めて指輪を外してぐっと魔力を込めるとはい出来上がり。
「坊主は魔石を作る機械みたいじゃの・・・」
瘴気の森対策には万全の対策をとっておかねばならない。治癒の魔石もたくさん作り、それぞれの腕輪も作り直していった。
さて、出発だ。ミグルはレプリカじゃない本物の賢者の杖を渡すと死ぬほど喜んだ。ダンが炎の魔剣を貰った時と同じような喜び方だ。
馬車でディノスレイヤ領に移動して出発。
特製トンファーを手にしたアイナはアーノルドにしつこく試しに立ち合いをしろと言っていたがアーノルドは頑なに断っていた。やはり危険察知能力が高いな。
ボロン村に向かう途中の道でアーノルド達にバイクの説明をする。案の定アイナは自分で乗ると言った。
何度か立ちごけをした後にようやく乗りこなせた。
「ひゃっほーう。いいわねぇこれ!」
無闇にスピンターンとかするのやめれ。タイヤがすぐにダメになるぞ。
一応皆のも50馬力出るようにしてはいるが、こそっと20馬力でリミッターを掛けてある。といってもアクセルに力を入れて捻ればリミッターが壊れる簡単な仕掛けだ。
ボロン村の近くまで行ったら徒歩で移動。のんびりしている暇はないのでダートス達には挨拶だけしておく。ボロン村はずいぶんと人が増えたので少し手狭な感じがしたので、帰って来たらディノスレイヤ領と繋げてしまうか。
雪が積もってたりするので、バイクも慎重に進む。それが意外と楽しいらしく皆はしゃいでいた。
まるで中年暴走族みたいである。
7連ホーンとか積んでやったらゴッドファーザーのテーマとか鳴らしそうだな・・・
守神の近くまで来たので徒歩に切り替えるとやはりアイツが来た。
いきなり俺の所に来て喉を鳴らす。
「本当に見事なフォレストパンサーだな」
アーノルドは守神を見て感心していた。
持って来た肉を与えてヨシヨシしてやる。いつ触っても手触りが良い。肉を食べる守神を恍惚の表情を浮かべて撫でる俺。
「いい加減にしとけ。そろそろ行くぞ」
皆にそう言われて名残惜しいがバイバイする。
エイプが出だしたけど、皆の敵ではない。落ちてくる枯れ葉を払うが如く倒して行く。
「毛皮と魔石と肉を取るから丁寧に倒してね」
アイナに任せると全て弾け散ってしまうのだ。強化魔石なんて必要なかった・・・ いででででっ
エルフの国にアーノルド達の入国許可が必要かもしれないので、ここで待っててもらう。暇だろうからエイプ狩りをしておいてもらうことに。一応休憩出来るように鳥籠と小屋を作っておいたから宜しくね。
ミグルも賢者の杖を試したいと残ったので、3人でグリムナの所へ。
グローナ達にこれまでの経緯とエルフ達が楽しくやってることを報告しておいた。
「僅かな間に色々とあったのだな」
うん、グリムナ達からしたら僅かな期間なんだね・・・
グリムナが皆を呼んで来てくれるらしいので、俺はその間にグローナと話をすることに。
「グローナさん、俺の事を
自分で見るのと何か違った物が見えるかもしれない。
「むっ・・・ なんじゃこれは? ゲイルの魔力が0になっておるではないか。それに神に供えし者? めぐみの代行、ゼウちゃんの使徒とは・・・」
神に供えし者ってなんだよっ。それにゼウちゃんの使徒にもなってるのか俺は・・・ 代行とは魂が見えるようにされた事だろう。神の代行者とか聞こえが良いがごみ処理だからなそれ。
「称号は気にしないで。それは適当だから。魔力は0にしか表示されてないけどちゃんとあるから大丈夫だよ」
「その黒髪になった事と関係があるのか?」
「そうかもしれないけど、色が変わった事はよくわからないんだよね」
リッチーになり掛けたとかは言わない。
その後はエルフ達が何をやっているのか、どんな雰囲気なのかを話していった。グローナ長老夫妻は自分の目でも見たそうな感じだった。なんとか連れ出してやる方法ないかな?
ラムザ達の転移ゲートを作れたら可能なんだけどな。あの文字読めなかったから理解できなかったし。
魂の浄化が終わったらめぐみと相談してみるか。あの青いタヌキのアニメをゼウちゃんに見せてもらったらピンクの扉が使えるようになるかもしれん。
そういや、魔道バッグってあのポケットみたいだな。今度、腹に張り付けてみるか・・・
そんな妄想に浸ってるとグリムナ達が帰って来た。今日はこのままここに泊まらせてもらって明日出発することに。勿論宴会になったのは言うまでもない。
エイプの毛皮とかはミグルに持たせておいた魔道バッグに入れてきてくれたようだ。
アイナはずいぶんとスッキリした顔をしているから相当トンファーを振り回したのだろう。ミグルに毛皮を見せてもらったら血まみれだったからな。帰ったらクリーン魔法を掛けておかないと。
夜の宴会は穏やかにものとなり戦いの前の一時の憩いとなったのであった。
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