第591話 ディチューンの実験

「瘴気の森の浄化か・・・」


今、アーノルドに報告中だ。


「そうなんだよ。あそこを綺麗にしてこいだってさ」


「どんなメンバーで行くんだ?」


「ダン、シルフィ、ミグル」


「それだけか?」


「そのつもりだけど」


「よし、俺も付いていってやろう。あそこは剣士がもう1人いた方がいいからな」


「え? 父さんも来てくれるの?」


「あぁ、俺も気になるからな」


「じゃあ、私も行こうかしら」


アイナも来るらしい。


「なら、ドワンも誘え。お前がシルフィードのカバーをするなら、アイナとミグルの盾役がいた方がいいからな」


思ってたより大所帯になるな。また俺はコックにならないとダメなのか・・・


しかし、俺が自由に魔法を使えないのはまずいかもしれない。なんとかしておかないとな。


年が明けたらポーション研究所の立ち上げと魔道具ショップを開店する予定だけど、魔道具ショップは取りあえず研究だけさせておこう。ドワンがいないと商品化も出来ないしな。


それが終わったら出発ということにした。みんなのバイクも作るか。途中の移動はそれですれば楽だしな。


来年の蒸留酒もジョージに頼んでおいて王都に戻る。


まずは俺の魔法威力ディチューンの魔法陣の作成だ。


単に威力を1/10000にするのは勿体ないので、残りの9999/10000の魔力を魔道バッグに仕込んだ水に貯めるように工夫していく。


しかし、俺の魔法ってどこから出ているのかわからない。指から出るとかならそこにアースみたいな物を付ければいいんだけど・・・


いや、魔法陣に条件設定をすれば何とかなるかもしれない。


そのアースみたいな魔法陣を組み込んだものを腕輪にするか指輪にするか迷う。腕輪をきっちり肌に密着させるのはあまり好きではない。生前、腕時計もゆるゆるにしていたからな。万が一、肌に密着していなくて威力が落ちないままファイアボールを撃ったら大惨事になりかねない。一山吹き飛ぶとかそんな威力になってそうだからな。


ということで指輪に決定。


しかし、このサイズに色々と条件設定して魔法陣を組むのは難儀する。結局ごつい指輪になってしまい、中2病溢れる指輪になってしまった。もう表側はドクロとかにしておこうか?


まったくのデザイン無しだとナットを指にはめているみたいなので、紋章をデザインしておいた。指輪に刻んだ魔法陣が俺の魔力を9999/10000吸収して、この水が入った壺に貯めるように設定。こいつを魔道バッグにしまっておこう。


よし、王都の外にある俺の土地で試そう。


新領に続く森に向かって木を引き抜く念動魔法を使う。


ドキドキしながらやると木はぶるぶると震えただけで抜けない。土魔法を併用して土を柔らかく、そしてそのまま魔力を上げて木を持ち上げるとぶちぶちっと細かな根が切れる音がして木が抜けた。


「ぼっちゃん、成功か?」


「うん、これで前みたいに魔法を使えると思う」


その後も同じようにして木を引っこ抜いていった。



試しに指輪を外して同じようにやると森がなくなってしまった・・・


「ぼっちゃん、ヤバ過ぎだろ・・・」


「あ、うん。本当にヤバいよね・・・」


開き直って、王都横の土地と新領まで繋げることにした。人も増えて土地が足らなくなってくるかもしれないしな。


もうヤケなってバンバン自然破壊をしていくゲイル。木を浮かして引っ掛かった岩とかふるい落として岩は岩で集め、掘り起こした木は種類ごとに分けて積んでいく。世の理を越えた神の所業の如く開発されていく土地。


その日のうちに王都横の土地と新領までの森を半分くらい開発してしまった。


翌日はバイクでスンドウの元へ向かい、このまま全部繋げる事を報告する。王都近くの土地と新領をひとつにしてしまおう。


「ダン、今はここの代理をスンドウがしてるけど、ここ全部ダンにやるよ。落ち着いたらダンが領主やってくれよ」


「勘弁してくれよぼっちゃん。領主なんて出来るわけねーだろ?」


と俺は冗談っぽく言ったが、実は本気だ。


王邸まで秘密通路を作る褒美にダンの貴族籍を要求するつもりなのだ。この大量の木と岩でダンとミケの愛の巣を作ってくれ。


エイブリックがダンに貴族籍を与える理由は瘴気の森の浄化でなんとかなるだろう。あれがなくなればもうディノの脅威もなくなるからな。


実務はスンドウがやればいい。ここには魔道具工場とかポーション工場とか余裕で作れるから将来の利益も安泰だ。


ダンとミケはまだ屋敷に住んでるからかもしれないが、子供が出来る気配がない。俺が魔法を使えなくなったこともあっただろうが、なんとなく、俺が成人するまで子供を作らないような気がする。ダンの心の中では俺が成人するまで護衛なのだろう。


でもな、ミケは若いからいいけど、ダンはおっさんだ。子供が生まれて連れてたら、若いお爺ちゃんですねぇとか言われんぞ?


俺は長男の幼稚園の送り迎えの時にそれをやってしまって死ぬほど怒られたからな。お母さんがめっちゃ若かったから、おじいちゃんとお母さんが仲良くお迎えに来たと思うじゃないか?


いらんことを考えながら作業は終了した。


魔道バッグに入れておいた壺を見るともう魔石になっている。念動魔法の魔石ってなんだろう?


ちょっと鑑定てみる。


【浮遊石】魔力を流すことで浮く


ぶっ!


なんだよこのファンタジーな物は?


念動魔法を魔石にしたら浮遊石になるなんて初めて知った・・・


ふと空を見上げた。


もしかしたら女の子が落ちてくるんじゃないかと思ったからだ。滅びの呪文とかあるんじゃなかろうな?



「ゲイル!」


「何、シータ?」


「シータって誰?」


「あ、ごめん。どうしーた? のどうが抜けちゃった」


と、強引にごまかす。女の子の名前を間違えて呼ぶなんて最悪だからな。


「へんな間違いね? それなんの魔石になったの?」


「浮く魔石みたい。今度これをもっと作って実験してみるよ」


実はバイク、車を作った後は飛行機を考えていたのだ。ただ、飛行機は滑走路とかも必要だし、時間掛かるだろうなと思ってたけど、これがあったら垂直離着陸も可能。しかも無音でだ。


もし、戦争になっても空からシャキールの流星みたいな魔法や雷を落としたら・・・


ぶるるっと身震いする。


今の俺はこの世界で覇を唱えられるだろう。飛行機作っても黙ってよ・・・



ダン達は浮く魔石と聞いてもふーんという感想しかなかった。空を飛ぶとかの発想はないらしい。



屋敷に戻ってからキキとララに俺が作った魔法陣と魔道インクとかの秘密を話していく。これを聞いたら後戻りはできないからね?


元隠密の二人は秘密を漏らす事はない。これから二人に作ってもらうのは他の魔道具店が取り扱ってないもの。エアコン、洗濯機やアイロンとかだ。魔道コンロ、ライト、冷凍冷蔵庫とかは直営店のみ導入することに。


拡張魔法を使うものは作らない。あれはチート過ぎるからな。悪用しようと思えばバンバン悪用できてしまう。


俺は個人向けではなく、業務用の物を考案していく。魔導ミシン、魔導織機、業務用アイロン、魔導ノコギリとかだ。ミゲル達が丸太から木材に切り出すためのものとかを作っていこう。


あ、チェーンソーとかも必要だな。それと安全着とか。


作る物をリスト化していかないと忘れるなこりゃ・・・



ドワンにこれからこういうものを作るよという報告の中にしれっと瘴気の森の調査にも来いという話も混ぜておいた。


リストを見ながら聞き流したドワンはふんふんわかったワイと軽く聞き流していたけどね。



さ、まずはバイクの魔法陣を描いていきますかね。


アーノルド達のバイクの魔法陣をせっせと描き、駆動用の魔石をゴロゴロと作っていくゲイルであった。




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