第588話 女神降臨

「誰お前? なぜ俺をぶちょーと呼ぶ・・・? 」


「何言ってんのよー、私よ私。忘れたのっ?」


俺々詐欺か? いや、こののーたりんなしゃべり方には聞き覚えがある。


「ま、まさか・・・お前めぐみか?」


「何がまさかよっ! ずっと話し掛けてたのに無視してたクセにっ」


「いつ話し掛けてたんだ?」


「ぶちょー、生き返ったでしょ。そのあとずっと話し掛けてたのに無視し続けるなんていい度胸じゃない。話し掛けたらすっごい嫌そうな顔するし。私、泣きそうだったんだからねっ! わかる? 話し掛けて嫌な顔された女神ひとの気持ち。ねぇ、どゆあんだすたん?」


あぁ、間違いない。こいつめぐみだ。


しかし、こいつこんなに可愛かったのか・・・ 正直言って見た目はどストライクだ。良かった。先に姿を見てないで・・・


「何よぼーっと私を見て・・・? あっ!何よぶちょーまさか私を見て惚れちゃったとかー?」


イラッ。


べしっ!


ドヤ顔の女神にデコピンを食らわすゲイル。


「痛ったぁー! 何すんのよ女神に向かって何すんのよっ」


「いらんこというからだ。それよりなんだよいきなり姿を見せやがって。お前は声だけの存在じゃなかったのかよ?」


「今までも姿見せて・・・ あっ、おめでとうー!」


やっぱり頭の足らん奴が話すことが理解出来ん。


「何がおめでとうだ。お前の姿が見えた事がおめでとうなのか?」


「そーよ。決まってるじゃなーい」


ダメだ。見た目がストライクなだけに残念だ。もう一度言う。残念だ。


「あー、はいはい。ありがとありがと。で、何しに出て来たんだ? というかここどこだ?」


ダムリンが逃げ込んだ先は見たこともない風景が広がっている。


紫の地面に金色の樹、それに大きめのリンゴみたいな金の実がなっている。人は誰もいない。大きめの動物がいるけど、あれはなんだろう? 角が山羊みたいな感じだけど、黒山羊かな? と思った時にこっちを向く山羊。うわっきっしょ! 目が4つに口が人の口だ。


「お主らどうやってここ来た?」


「わっ!びっくりしたっ。誰あんた?」


声を掛けて来たのは色っぽい半裸のねーちゃん。半裸というかビキニ姿だ。


「ラ、ラムザ・・・さま・・・」


「ん? ダムリンが黒焦げになっておるがあれは貴様がやったのか?」


半裸のねーちゃんはラムザと言うのか・・・。で、アイツがダムリン・・・

なるほど俺がだっちゃと言ったのも雷魔法が出たのも理解した。


「あぁ、使えなくなった魔法が発動したんだ。治癒も使えるかもしれないから試してみるよ」


無事に治癒魔法発動。しかし、今の治癒魔法・・・


自分を鑑定してみる。


名前はゲイルに戻ってる。


【魔力】0000/0000


ミグルは魔力が0になってると言ったが、0000じゃねーか。メモリがショボくて9999までしか表示出来なかっただけじゃないだろうな?


「めぐみ、どういう事か説明してくれ」


「お主ら私を忘れてはおらぬか? なぜここにいるのか説明を先にせよ」


「ダムリンが悪さしたから追って来たんだよ。ここどこだ? それにお前らなんだ?」


良く見ると半裸のねーちゃん、ラムザには角がある。あの鬼っ娘の可愛い角ではなくて、とぐろを巻いた山羊のような黒い角。残念だ。


「我らは我らだ。ここは我らの世界だ。お前は人間だな? それにしては我らに匹敵するほどの魔力をもっておるな? お前は何者だ?」


「ねー、ねー、あんた、私が見えるのよね?」


「見えるぞ。貴様は人間ではないな? お前も何者だ?」


もうなんのこっちやわからん。俺はどこの異次元に迷い込んだんだ?


「あっ、ぶちょー、限界突破おめでとう!やっぱりこっちの世界の才能あったわけね。あたしの目に狂いはなかったってわけね」


うん、こういう時はのーたりんが羨ましい。なんの疑問も持たないんだからな。ん? 限界突破? なんのことだ?


「限界突破ってなんのことだ?」


「限界突破は限界突破よ。昔何人かチャレンジしたけどみんな死んだのよね」


「チャレンジ? なんの事だ?」


めぐみの話によるとやはり、【魔力】9999が限界で、それを超えるのが限界突破らしい。それを超えた者は皆死んでしまって、俺が初めての突破者らしかった。何人かチャレンジって、魔力9000が最高記録じゃなかったのかよ? まぁ、こいつの脳ミソだと記憶力が足らんのも仕方がないのかもしれん。


「で、突破したら何があるんだ?」


「じゃーんっ! なんとっ!」


「なんと?」


「私に会えるのよっ!」


いらん・・・、本当にいらん。


「あと、魔力の下限が10000になるの」


しれっと重要な事を言うめぐみ。


は? なんですと?


「それはどういう意味だ?」


「言った通りよ。理解出来ないの? 馬鹿なんじゃない?」


あー、ムカつくわ。要するに俺の魔力は人間の1万倍あるということか・・・


「なぁ、そしたら俺が魔力1のファイアボールを撃ったら、普通の人の魔力1万のファイアボールと同じになるのか?」


「さぁ?」


コイツ・・・


「あっ、そんな事よりさあ、お祝いに腐った魂を綺麗にしてきてくんない?」


「腐った魂? なんだそれ?」


「ほら、前に熊みたいな男が死にかけた時あったじゃん。あの近くに昔、汚れまくった魂を捨てた事があってね、どうやらふほーとーき? ってのになるからダメなんだって」


「じゃあ、お前が回収すればいいじゃないか」


「嫌よ、あんなばっちいの。腐ってんのよあれ。取りあえず綺麗にしてくれたら回収は私がするから、腐ったのなんとかしてきて」


コイツ、お祝いにゴミ処理させようってのか?


「腐ったのを綺麗にするとか意味わからんぞ? それに魂なんてどこにあるかわからんだろが」


「魂は《たましいオンっ!》って念じれば見えるから。面倒ならオンたまでもいいわ」


オンたま・・・いかん。もう温玉を想像してしまった。


「で、どうやって綺麗にするんだよ。腐ってんだろ?」


「あんたがよく使うクリーン魔法でなんとかなるわよ。じゃ宜しくねーっ!バイバーイ」


「バイバーイじゃ、ねえっ!まだ聞きたい事があるんだよっ」


何よっ! とプンスカするめぐみに俺が魔法を使えなくなった理由と使えるようになった理由を聞いた。


どうやら魔法が使えなかったのは生き返ってから1ヶ月程度だったらしい。それは俺が魔力1万倍になる為のアップデート期間のようなものだった。ショボいメモリだから1ヶ月もかかるのだろう。で、俺は魔法が使えなくなったというイメージがその間に固まり使えなかったということだな。


で、限界突破記念報酬がめぐみが見える、魔力の下限が1万・・・ ぜんぜん報酬じゃねー。それに腐った魂の浄化依頼。割りに合わなさ過ぎる。これは何か要求しなくては。


「おいめぐみ。俺の居た世界で4K映像を見てこい。あとはビデオ、カメラ、スマホ、パソコン、スキャナ、プリンターとか色々だ。ゼウちゃんだっけ? そいつに聞いて見てこい。この世界のそういう類いのがショボすぎて使えん」


「そんなにいっぺんに言われてもわかんないわよっ」


「じゃ、3日後に良いもの作っておいてやるからまた来い」


「ねー、ねー。それってデートのお誘いってやつ?」


「違うわ馬鹿っ。魔道具を作っておくから取りに来いといってるんだよ」


「え? なんかくれるの?」


コイツ・・・


「そっちの話は終わったか?」


ラムザは律儀に待ってくれていた。


「あぁ、ごめん」


「ダムリンに話は聞いた。どうやら迷惑を掛けたのはこいつのようだ。お詫びに元の世界へのゲートを開いてやろう」


「で、ここはどこ?」


「人間が魔界と呼ぶ所だ。我らは魔族と呼ばれておるな」


「ラムザは魔王ってわけ?」


「そう呼ばれたりもする」


「あーっ! 魔族って魂を食べるやつらねっ! 最近魂の数が合わないと思ってたらあんた達が食べてんでしょっ」


こいつ、のーたりんの癖に膨大な数の魂を数値管理してんのか?


「ゼウちゃんがなんか減ってない? っていうからおかしいと思ってたのよっ」


なんだ、地球の神様が気づいたのか。あ、それで魂の不法投棄を怒られたんじゃないのか? で、俺にしつこく話し掛けてたと。あの頭痛と耳鳴りはこいつのせいだったんじゃ・・・


「我らは黒く濁った魂しか食べておらんぞ。あのこってりとした旨味がなんとも・・・」


じゅるっとヨダレを垂らすラムザ。


「え? 汚れた魂食べてくれてんの?」


「そうじゃ。清らかな魂は酸っぱくて不味い。ダムリンはその酸っぱさを求めて舐めてたらしいが」


悪寒がするって魂を舐められてた時の感覚なのか・・・


「じゃ、いいわ。どんどん食べて頂戴」


「おいっ! お前が汚れた魂を洗浄するんじゃないのかよっ!」


「だって、どんどん汚れ物がたまっていくから面倒なのよっ」


めぐみの部屋、汚部屋なんじゃなかろうな?


「ほう、魂を食らう許可をくれるとは珍しい。では仲良くやろうぞ」


という事で、俺は元の世界に戻してもらった。ラムザにダムリンはこっちの世界には出禁としてもらった。


魔界と呼ばれるところは各神が作った所に行けるらしく、汚れた魂をおやつとしていたようだ。魔族は本来魔力さえあれば生きていけるらしく、金色の実は魔力の実だった。好きなだけ持っていけと言われたので1つ食べてみると激甘な実だった。実をもいだらすぐにまた実がなる不思議な樹。あの気持ち悪い山羊もそれを食べ、汚れた魂も大好物らしい。


めぐみとラムザは利害が一致して仲良くなり、またねーとか言ってやがった。女神と魔王の利害一致てなんだよ・・・



ゲートから出ると入った場所に出て、ちょうどシルフィード達が追い付いた所だった。時間の流れが違うのかな?



「ゲイル、ダムリンは?」


「ぼっちゃん、大丈夫か? ちょっと小便行ってる隙にすまねぇ」


「ダムリンにはお仕置きしておいた。二度とここには来ないだろうから安心しろ」


俺はさっきの事をダン達に話すか迷っていた。あと、魔法がまた使えるけど、使い勝手が悪くなったことも。





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