第582話 ミーシャの結婚式
「坊主、取り付けに行くぞ」
ようやくエアコンが完成した。
結婚式場、控え室、宴会場と取り付けにいく。もちろん大工達にも手伝ってもらった。
俺の作ったのは温度設定と風の強弱とスウィング機能付だ。温度設定とかは集中コントロールではなく、1台1台設定する必要があるが、電源というか魔力供給は集中でも1台ずつも可能。
「よし、坊主。次は洗濯機とか掃除機というものじゃの」
ミーシャ達の衣装はミサ達に。式の進行はマンドリン達に、宴会関係はザックの所に任せておいた。
ちなみにミーシャのウェディングドレスは俺からのプレゼントだ。フワフワタイプが良いというので、プリンセスラインの可愛いデザインにしておいた。お姫様みたいなやつだ。
最新
魔法陣は比較的簡単に組めるものばかり、後はドワンと試作しては使い心地がどうとか改良を加えていく。
ダンとシルフィードは呆れ顔だ。
「ぼっちゃん、まだ作んのかよ?」
「だって、ミーシャは働きながら家のことするだろ? ちょっとでも楽に出来るようにしてやらないと」
「ザックの所は儲かってんだからメイドぐらい雇うだろ?」
「ミーシャはそれでもやると思うんだよね。だから、色々と準備してやらないと」
過保護過ぎるぜぼっちゃん、と言われても心配だから仕方がない。本当は治癒の魔石をたくさん作ってやりたいのだがそれも無理になってしまったので、最上級の治癒ポーションを大量に作った。回復ポーションも。魔力ポーションは魔法水があるのでそれをポーション瓶に詰め替えて用意した。こっちの方が効果が高い。子供が出来たらこれを毎日薄めて飲めば魔力総量もアップするしな。
ゲイルはミーシャの結婚式前日まで毎晩遅くまで何かを延々と作り続けたのであった。
ー結婚式当日ー
ダメだ。始まってもいないのにもう涙が止まらない。
「ぼっちゃん、今からそんなに泣いてどうすんだよ」
「いや、分かってるんだけどね。まだ抱っこしてもらってた時の事を思い出すと」
ぐすっぐすっ。
式が始まる前から涙が止まらない俺を皆は呆れていた。
ちなみに俺はモーニングを着ている。ミーシャの父親役を俺がやるのだ。皆からはアーノルド様がやるもんだろ? と言われたがこれは譲れない。俺が送り出さなければいけないのだ。
「ぼっちゃま、どうですか?」
控え室から出て来たミーシャはとても綺麗だった。
「うん、ミーシャ。とても綺麗だよ。おめでとう」
溢れる涙をぐっと堪えてそう答えるとミーシャも泣きそうだった。
俺が泣いたらミーシャも涙が止まらなくなるだろう。ここは堪えなくては。
音楽が奏でられ、扉が開く。
「さ、ミーシャ行くよ」
俺は父親役を見事に果たせたと思う。ダンに言わせると誓いのキスの時に式場中が引くくらい殺気が出てたらしい。
披露パーティーでお祝いの品を披露した。
1つずつ使い方を説明していくと会場がざわつく。ロドリゲス商会の招待客もいるので、全員
「ぼっちゃん、なんなんですかこの魔道具は・・・」
ザックも驚きを隠せない。
「ミーシャの為に作った魔道具だ。取りあえず今はこれだけしか間に合わなかったけど、また思い付いたら作っていくよ。子供が出来たら赤ちゃん関係とかな」
言っててザックとミーシャに子供が出来ると想像したらまた殺気が出てたらしい。ザックが青ざめている。
「あと、これは治癒ポーション、回復ポーション、魔力ポーション」
と、全て最上級の物を大量に運んで来てもらうとさらにざわつく会場。
「ぼっちゃま、こんなにたくさん飲めませんよ」
そう言って笑うミーシャ。今飲むものじゃないからな。
その後はロドリゲス商会の招待客からもみくちゃにされた。あの魔道具はどうやったら手に入るのかとかポーションはどこで売るのかとか。各種最上級ポーションはほとんど出回っていない。こんなに大量にあるのがおかしいのだ。
俺はミーシャの祝いの席で仕事の話をしまくる客にぶちきれてしまったのであった。
宴会後に皆に怒られる。祝いの席で招待客に怒鳴るとかお前はドワンかと言われた。酷い話だ。
そして翌日、ミーシャ達はディノスレイヤ領でのパーティーの為に王都を離れた。
「どうしたぼっちゃん?」
「何が?」
「生気を感じねぇぞ」
「そお?」
ミーシャが嫁に行ってしまった後、何もする気が無くなってしまって屋敷でボーッとしている俺からは生気が感じられないらしい。
「ゲイル、これなかなか上級ポーションにならないんだけど、何が原因かなぁ?」
「うん、何が原因だろうねぇ・・・」
シルフィードがヒントを聞きに来たみたいだが、俺は全く頭が回らない。
「ほれ、ぼっちゃん、ぼろぼろこぼしてんぞ」
飯を食ってる時もダンに怒られていたらしい。
「あっ、もうご飯食べないとダメだね。シルフィード、ここまでにして食堂にいこうか」
「えっ? 今ごちそう様してポーションの研究始めたところだよ」
「あれ? 俺ご飯食べてないよ?」
「食べたよっ」
あれ? 俺は飯を食ったのか? 何を食べたのか全く記憶が無いんだけど・・・
夏休みに入って皆学校に行くこともなくなり屋敷にいる。
「坊主、お前がエアコンの魔法陣を作らんと屋敷も暑いままじゃろ。そろそろ作らんか。後は魔法陣をセットしたら完成なんじゃぞ」
「あぁ、ごめん。そうだったね。今から描くよ」
あれ?魔法陣ってどんなんだっけ?
いざ描こうと思うと何をどう工夫したか思い出せない。基本の奴は覚えてるけど、細かな工夫をしたはずだ。
「おやっさん、ごめん。ちょっと調子悪いからもう少し待ってて」
「ダン、坊主は大丈夫か?」
「あぁ、初めは疲れが出ただけかと思ってたが、ずっとあんな感じなんだ」
「ゲイルはご飯食べた後でもまだ食べてないとか言い出すのが何回かあったの・・・」
ダンはゲイルがおかしい事を心配してアーノルドに相談に行った。
「そんなにおかしいのか?」
「あぁ、まるで魂が抜けたみたいにボーッとしている事が多くてな。今まではすぐにどっかに行ってなんかしようとしたり、部屋でこちゃこちゃとやってたんだがそれもしてねぇ。ただボーッとしてるんだ」
「ミーシャが嫁に行ってからか?」
「そうだな。ミーシャがいなくなってからだ」
「ゲイルは生まれた時からミーシャとずっと一緒だったからな。式の時もずっと泣いてたし、寂しくて仕方がないんじゃないか?」
「そうだとは思うんだがよ、あのままじゃぼっちゃんが壊れちまうんじゃないかと思ってな」
「そうか・・・ 前の事もあるしな。釣りでもさせたら元気になるんじゃないか?」
「そうだな。南に行った方がいいかもしれんな」
「なら、このまま俺達も王都へ向かおう。南にも一緒に行く」
という事でアーノルドとアイナは王都へ向かうことになった。
王都に到着するとゲイルはシルバーの所にいた。シルフィードに聞くと今日は一日中シルバーを撫でていたらしい。
シルバーの顔が撫でられ過ぎて少し腫れているようだ。シルバーもゲイルを心配しているのかそれを嫌がらずにゲイルをふんふんしていた。
「ゲイル、そんなに撫で続けたらシルバーも痛いんじゃないの?」
「あ、母さん。あれ? 父さんもどうしたの?」
「いや、明日から南の領地に行こうと思ってな。お前も行くだろ?」
「そうだね。しばらく行ってなかったから養殖とかどうなってるか見に行かないとダメだから行こうか」
翌日、用意を済ませて出発することに。
「忘れものないよね?」
「あぁ、全部積んだぞ」
「じゃ、出発するぞ」
「あれ? ミーシャは行かないの?」
「えっ?」×みんな
「ぼっちゃん、ミーシャは嫁・・・」
ダンはそう言いかけた時にアイナが止める。
「ミーシャは仕事よ」
「あぁ、ザックの所忙しいんだっけ。次はちゃんと連れてってやらないとな」
・・・
・・・・
・・・・・
(なぁ、ゲイル大丈夫なんか?)
(ぼっちゃんの記憶からミーシャが嫁に行った記憶飛んでんのかもしんねぇ)
御者をするダンとミケはゲイルが釣りをして元気を取り戻すことを願ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます