第580話 遺書

いや~、先生達はよく食ってよく飲んだなぁ。始めはうちに色んな人が居て驚いたようだけど、どんどん慣れてめっちゃ飲んでたけどちゃんと帰れたかな?


しかし、疲れたわ・・・ でもこうやって風呂に入ってると身も心も解放されるな・・・ はぁぁぁぁぁ


ズキンッ


「っつ・・・」


「どうしたぼっちゃん?」


「ちょっと頭が痛むんだよね」


「いつからだ?」


「生き返ってたというのか、目が覚めてからしばらくしてからだね。特に学校に行きだしてからかな。少しずつ痛くなる間隔が短くなってる気がするんだよ」


「倒れた後遺症とかじゃねーか? 俺も腕を治して貰ったあともちぎれた部分が時々ズキンと痛かったからよ」


そうなんだ・・・ ダンのは幻痛ってやつかな?


キィィン


うっ、耳鳴りまでする。


「ダン、先に上がるわ」


この感覚に覚えがある・・・ 多分立ちくらみするだろうからそろっと上がろう。


ぐらんっ


やっぱり・・・


さて、これはどっちだ?


心当たりは2つ。貧血か高血圧だ。


俺の身体は急激に成長しだしている。起立性調節障害ってやつかもしれん。身体の成長に内臓の大きさがついて来れなくて、立ち続けてたり、立ち上がったりした時に貧血を起こす。頭痛や耳鳴り、吐き気等を伴うこともある。俺は中学の時にこれになった。


あの時の血圧40ー70とかだったからな。


高血圧は50過ぎた頃、疲れた時になってた気がする。なんか頭痛いし、耳鳴りするし、くらくらするなと思ったら血圧が200近くあった。


俺の年齢なら貧血の方だ。しかし、今の俺は黒岩啓太の名前になってる。さてどっちだ・・・?


高血圧だったらヤバいな。黒岩啓太は頭の血管が切れて死んだからな。


頭の中か・・・ アイナも頭の中の仕組みを知らないだろうから、ちょっと死んでる間にアイナとシルフィードが治癒魔法をかけてくれていたらしいけど、頭の中の仕組みを知らなければ脳のどこかがいかれてる可能性も考えられる。


またダンに心配させてはいけないのでくらくらしたのを耐えてゆっくりと風呂を出た。取りあえず水分は十分に取っておこう。


俺は翌日から今月いっぱい学校を休む事にした。やらないといけない事は手配が済んでるので問題はない。


俺がまた死ぬような事があれば次は身体に戻れないだろう。恐らく頭の血管が切れて死ぬのだろうからな。


仕事関係は何とかなる。だいぶ引き継いであるからな。心配なのはアーノルド達より先に逝ってしまうことだ。


これは遺書を書いておいた方がいいかもしれん。後追いで死なれても一緒に逝けるわけではない。ハッキリ言って無駄死にだ。


しかし、それをしてくれようとしてくれたのはとても嬉しかった。そんなに愛されてのかと思ったからだ。だからこそ無駄に死んで欲しくない。


いつ死んでもいいように遺書を書いておくか・・・



【皆へ】

これを読んでいるということは俺はまた死んでしまったのでしょう。ごめんなさい。

一緒に死んでも魂は別々に天に昇るから死のうとしないで下さい。天寿を全うしてくれた方がまだ会える可能性が高いです。これは神様のお告げにありました。


俺の身体を滅する前に母さんに俺の頭を綺麗に割って、どこから血が出たとか頭の中の仕組みを良く見ておいて欲しい。おそらくどこかに血が溜まっているはずです。次に同じように倒れた人がいれば頭の中まで治るイメージをして治療してあげてね。


俺が死んだということは俺の役目が果たされたということなので悲しまないで下さい。


今までありがとう。



あとは最上級ポーション、魔道インク、魔法陣の可能性とか今俺にしか分かってないことを書いておく。内容を公開するかどうかはエイブリックに相談して決めて下さいとしておこう。


貴族街の結婚式場の投資やその他仕事上やり残していることの引き継ぎのお願い。西の街の権限はフンボルト、新領はスンドウ、楽団改め芸能事務所はマンドリン。板芝居関係はロンに。財産の配分はお任せします。


他には各個人宛にお礼の言葉を書いておいた。



取りあえず突然死んでしまったらこれを読んでもらわねばならん。どこかにしまっておいて何かの拍子に見られても不味いし、隠すと見つけてもらえないかもしれない。


カンリムに渡しておくか・・・


いや途中で書くことが増えたら書き足したり訂正したりする必要が出てくるから、この遺書の存在を書いた手紙を渡しておくか。


という事で、この遺書は部屋の引き出しに。カンリムには俺にもしもの事があったらこの手紙をアーノルド達に渡すようにしておいた。


もしもの事なんてと言われたが、この前みたいなことがあるかもしれないからと渡しておいた。これは秘密ねと。



遺書も書き終えて暇だ。休んでおいてなんだけど暇で仕方がない。もう眠たくもないし、お昼も食べたのですることもない。勝手に出掛けるなよとダンの愛に縛られているので部屋で何かをしていよう。


魔法陣の実験でもするか。


ライトの魔法陣の一部を削っていって、どう影響するのかを調べる。


《我神に望む》これをどれか一文字でも削ると光らなくなったので、やはり起動合図になっているのだろう。


で、次からはどんどん削っても消えない。結局必要なのは《我神に望む》《魔力を》《ライト》これだけだ。


でダイヤは魔石を置く位置を示すだけで意味なし。消しても問題がない。ハートとスペードは電池のプラスマイナスを意味してるのか魔石を逆に置いても問題ないが、ハートとスペードの位置を変えると光らない。どうやらどっちから魔力が流れるのかの役割のようだ。文章を読む方向を示す役割なのかもしれない。


でクローバーが魔法が発動する量を表しているみたいだ。数を減らすと光量が減った。逆にたくさん描くと明るくなる。


ものすごく簡単・・・・


レタリング文字は魔力が流れる導線を繋げても文字として認識出来るようにするためのようだ。円は真円でもなんでもよい。取りあえず全部の文字とハート、スペード、クローバーに魔力が行き渡れば良い。


なんだよこれ・・・


試しに筆記体で文字を書いてマークを繋げても発動する。円なんていらない。


これ、報告したら誰でも魔法陣作れるじゃん。ヤバいよな・・・ というか魔法陣ですらないからな。ただ、魔力を何に変換するか書くだけだ。


ライトの所を水、お湯、火に変えるだけで全部発動した。


空間拡張とかは恐らく範囲設定をすればよいのだろう。


どうしよう・・・ 俺、なんでも作れてしまうかもしれない・・・


俺はこの世界を発展させろと言われて連れて来られた。


ディノスレイヤ領、西の街はかなり元の世界に近付いて来た。飯や酒、娯楽、音楽、ファッションとか。あとはこれをヒントに他の所も独自に発展していくのは目に見えている。


これで魔法陣がより簡単に作れて家電みたいなものや、交通機関が発達したらほぼ元の世界と同じ。そうなったらどうなるだろう?


『あら、ずいぶん発展したわね、もういいわ』


とかめぐみのやつしれっと言いそうだしな。


今以上発展させるのは自殺行為なのかもしれないし、魔力がなくなった俺にはもう用がないのかもしれない。


だから黒岩啓太になってるのか・・・


そんな事を考えているとシルフィード達が帰ってきた。



「ゲイルがいないとすることなくて暇だった。次の授業は来月からだし」


シルフィードはダン達と魔法コースの手解きや訓練の実演をしてきたらしい。アーノルド達は今朝帰ったしな。


「ぼっちゃん、どこにも行かなかったよな?」


「うん、ゴロゴロしてたよ。でも暇だったから明日からはマンドリンの所に行ってようかな?」


「休みにしたんだろ? ちゃんと家で休んでろ」


という事で休まざるを得なくなってしまった。


翌日からはウクレレで元の世界で好きだった曲を弾いて楽譜に起こしていった。懐メロやらアニメソングなど、歌詞は書かなかったけどね。


中学の時によく聞いていたへヴィメタとかウクレレでやっても雰囲気が出ないので、エレキギターの魔法陣を考えていこうか。あれどう書けばいいかな?



そうして、休みを取ったにも関わらず、こそこそと色々な魔法陣を作成していったのであった。









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