第578話 魔法学校でなにやってんだ俺?
新しいインクの魔法陣はまだ光っている。いつまで持つんだろ?
シルフィードは草の見分け方に合格したようで、俺から魔法草を奪い取って部屋でポーション作りを始めた。
ミグルは俺が魔法陣の実験をしないことに拗ねてしまったが、まずは最上級ポーションを作り出すのが先決だ。
チャームの言ってた草の品質の違いならいまはどうしようもない。ミグルに鑑定してもらおうにも全部砕いて混ぜたからな。
あとは気温の件だ。発酵とかさせるのには気温が左右されるけど、煮出すのにあまり関係がない気がする。それにその条件なら夏場にもっとたくさん出来ていなければならないはず。
で、ひとつの仮説を立てた。
塩を加えるのではないかと。
夏場に作業をしてポタポタとか汗が入ったのではないかと思うのだ。あんこに塩混ぜると甘味を増すように感じるの同じなのでは?
科学的な考えからいくとおかしい。甘味が増えるわけではなく、強く感じるようになるだけで、糖分が増えたのではない。
しかし、ここはめぐみの作った世界。テキトーに違いない。魔法絡みは全てそうだ。ここはあいつのいい加減さと、のーたりんさを信じよう。
準備を始めるとズキンと頭が傷む。この歳で偏頭痛持ちとかやめてほしい。転生してもの凄く感謝してるのはアレルギーと偏頭痛が無くなったことだ。
生前の俺は花粉症というのが幅広く知られる前から花粉症になっていた。歳を食うと共に悪化し、寝ている時に鼻水で溺れたりしてたのだ。何度咳き込んで目が覚めたことか。
そしてアレルギー反応を示す食品が増えていって、果物類がまずダメになり、大豆や瓜系にも反応が出るように。検査したらあらゆるものにアレルギー反応が出てたのだ。
幸い、加熱すると反応しなかったのだが・・・
偏頭痛も50過ぎた当たりから出始めて、鎮痛剤を持ち歩いていた。あ、これは痛くなるなって時に飲むと大丈夫だけど、痛くなってから飲むとなかなか効かなったな。
さ、嫌な思い出はどうでもいい。蒸留水が出来たので試そう。
1リットルに300gの草は多過ぎなのかもと250gに減らす。クエン酸は7.5杯。これに塩少々っと
カウントダウンで温度を下げて草を混ぜる。お、どんどん赤くなるぞ。やった!真っ赤だ。
魔力が完全に補充された魔石と同じような色になった。なんてブラッディ。これ輸血に使えんじゃないかと思うくらいの赤だ。
ミグルの部屋に行き鑑定してもらう。
「うむ、最高級魔力ポーションじゃ。これで人間なら魔力が全快近くいくじゃろ」
って、ことは魔力水1000ぐらいの効能か。
シルフィードに言うと拗ねるから黙っておこう。
翌日登校すると、受付で校長室に行きなさいと言われた。
皆と別れて校長室へ
「もう魔力ポーションも卒業までの物を作れるようになったと聞いたが本当かね?」
「あ、はい。最上級のポーション作成条件も見付けました」
「なんじゃと? あれは偶発的に・・・」
「こういうものに偶発的ってのはないと思うんです。必ず何かの条件があるはずなので」
「なるほどの・・・」
「作り方を公開しましょうか?」
「いや、それはポーション販売の資格を取った後に自分の財産とすれば良い。いわゆる特権というやつじゃ。魔法陣の卒業試験もオリジナルの魔法陣を組んで実演するのじゃが、それも秘匿事項じゃからの」
丁寧に教えない代わりに功績も生徒の物にして、学校は利権を取らないのか。本当に実力を付けさせる為だけの学校なんだな。
「あと、食堂の改善をしてくれるとは本当かね?」
「新しい料理のレシピの利権は全部俺とぶちょー商会で持ってるんですよ。それをここに教えるのは可能なんですけど、レシピ代が莫大になると思うんですよね。特にここ貴族街だから割高設定だし」
「そうか、なら無理じゃな。そこまで補助金が出るわけではないからな」
「ただ、外部に漏らさないという条件を守ってくれるなら無料でいいですよ。仕入先は指定しますけど、庶民街と同じ価格で卸させますから。それで既存の仕入先と揉めないというのであればやります」
「そんな事が出来るのかね?」
「一応領主なんで。俺が作った店は全部そうしてるんです。取引先の商会は西の街の生産物を一括で全部仕入れるようにしてありますし、南の領地からくる特産品も全部そこを通さなければ手に入りません。他にはディノスレイヤ領の酒も全部。まぁ、エールやワイン以外の酒はぶちょー商会で作ってるんですけどね」
「それはゲイル君がやっているのかね?」
「仕組みを作る時には自分でやってますけど、後は出来る人に任せてます。だからこうやって学校に来れてるんですよ」
「むむむむ、レシピが無料というのは利益供与に当たるのかどうか・・・」
「なら、ここの食堂をうちの経営にします? 販売単価も変えませんから特に不具合もないでしょうし。あ、そうするとスタッフの給料の問題が出てくるな。補助金無しで今までと同じ給料でいくと販売価格が難しいな・・・」
「ならば補助金を出店料としてお支払いするのは如何かね?」
「それが可能なら大丈夫です。ここの食堂の人を西の街の料理学校に何人か通わせますけどそれでもいいですか? その分誰か連れて来るので同時に研修すれば早いと思います」
もう一から自分で全部教えるのは面倒なのだ
「うむ、お任せする。ありがたい申し出感謝する。ところで話は変わるのじゃが・・・」
「なんでしょう?」
「昼からも学校に残れるかね?」
「予定を組めば大丈夫ですよ」
「魔法陣の講師達を昼からゲイル君に個別授業をさせるつもりなんじゃが受ける気はあるかね?」
おおー、ありがたい。しかし、シルフィードだけ先に帰らせるのもなぁ。
「実は同じ新入生のシルフィードなんですけど、彼女、エルフの国のお姫様なんですよ。護衛は俺に付くと思うし、一人で帰らせるのもなぁと思うんですよね」
「彼女がそうであったか。エルフ、ドワーフと同盟を組んだとは聞いておりましたがな」
「で、昨日から魔法コースの臨時講師になったやつが護衛のダンというやつなんですけどね、奥さんのミケとみんなうちの屋敷で共同生活をしてるんです。あのミグルも」
「なんとっ! そうでしたか」
「他にも王子になったアルファランメルとかその直属護衛は俺の兄貴だし、スカーレット家のご令嬢も、他にも西の街衛兵隊長とか色んな人が住んでまして・・・ その中で魔法陣の話やポーションの話をまったくしてはいけないというのが難しくて。勿論こんなのだとか説明はしないですけど、どこまでなら法に触れないんですかね?」
「そうですな、詳しい説明をしなければ問題はないですが・・・ もしやオリジナルの魔法陣を誰かに教えたいのですかな?」
「魔法陣を作るのが目的でなくて、魔法陣を使った魔道具を作りたいんです。ドワーフの職人と相談しながら作るつもりなんですけど、まったく見せないで作れるかどうかが・・・」
「ふむ、シルフィード姫とかもそれに加わるのですな?」
「そうしたいとは思ってます。今の色々な店もそうやって作って来たので。で、個別授業をしてくださるならシルフィードも参加出来ないかなと。勿論資格をくれとは言いませんので」
「むぅ、難しい問題ですな。勿論信用していない、いるのではなく、法に関する問題なのです」
「わかりました。王に相談してみます」
「は?」
「もしかしたら特別許可もらえるかもしれないので、その許可が出たら可能ですか?」
「あ、いや、そんな簡単に許可が出る訳が・・・」
「いや、出ますよきっと。校長は魔道インクをあの店から仕入れてますよね?」
「そうですな」
「あそこから仕入れられなくなったらどうします?」
「仕入れられなくなるとは?」
「いきなりいなくなるとか、お亡くなりになる可能性は0じゃない。ミグルと古くからの付き合いみたいですけど、誰にも製法を教えてないみたいなので」
「弟子もおらんということはその可能性がありますな。それとこれのなんの関係が?」
「いや、俺、魔道インク作れるんですよね。あの店がインク販売出来なくなったら俺が作りますよという条件を出します。あの店がある間は販売しませんけど」
「魔道インクを作れる・・・?」
「はい、もう実験済みです」
「・・・宜しい、国の許可が出るなら授業の同伴を認めましょう」
「後、シルフィードにポーションの作り方をアドバイスしていいかな? 俺達は単に自分で作れるようになりたいだけでポーション販売する気はないので」
「わかりました。それも許可しましょう」
取りあえずこの話は許可貰ってから進める事に。先に食堂の人達と話をしよう。嫌だと言われたら食堂の話はなしだ。
「こんちはー」
「あれ、あんたはお弁当の子だね? 授業はどうしたの?」
「初級コースの魔法陣とポーションも終わってすることないんだよ」
「へぇ、ずいぶんと優秀なんだねぇ。で何か用かい?」
「校長先生と今話してきたんだけど、ここの食堂を俺の経営にしようかって話が出てね、新しい料理とか覚える気あるかな?」
「どういうこったいっ?」
ちょっとおばちゃん怖いよ・・・
みんな集めてとお願いして集まってもらって概要を話す
「えっ? 西の街の領主? あんたがかい?」
「そうなんだよ。最近西の街でご飯食べたことある人いる?」
おぉ、結構いるじゃん。
「ああいう料理をここで作ってもらいたいらしいんだよね。でも、レシピ代を払うと今までの値段で出せなくなるから、無料でいいよと言ったんだけど、利益供与に当たるからって。それなら直営店にする? ってことになったの。給料とか変わらないけどどうする? 直営店なら教えるのは無料でやるけど」
全員やるらしい。料理人ならただで旨い飯の作り方教えてもらえるチャンスだからな。
レシピの外部流出禁止と言うことで話は決まった。
シルフィードとダン達を待って料理教室へ。もう人に教えられるレベルの人を数人派遣してもらう事にした。向こうの人を連れて来るのはやめだ。料理教室はけっこう混んでるのだ。
ロドリゲス商会の大番頭の所で魔法学校の食材の仕入れ、調理器具等の注文が入ることを伝える。勿論直営店価格だ。
夜はエイブリック邸。社交会に来いと言われたが断って本題へ
「シルフィード、ダン、ミケに魔法陣とポーション作成の話をする許可か。構わんぞ。今書いてやろう」
話が早い。
「で、魔導インクはいつから売る?」
「あの店があるうちは売らない。圧倒的に俺のやつの方が品質がいいから世に出すとまずいかもしれないんだよ」
「どれくらい違う?」
「まだ検証中だけど、最低でも魔石使用量が1/5くらいになるんじゃないかな?」
「そんなに違うのか?」
「ライトの魔法陣で試してるんだけど、魔力1で半日で消えた奴がまだ光ってる。今で6倍。後どれくらいもつかでだいたいわかる」
「それは危険だな。大規模攻撃魔法陣が小さな魔石でも発動してしまう可能性があるな」
「でしょ? 今の魔導インクと同じくらいの奴が作れるか試してみるよ。でも俺が作る魔道具には新しいの使うけど」
「何を作るんだ?」
「モーターだよ。生活魔道具と産業機械に使うつもり。まぁ、楽しみにしてて」
ということで事は進んだ。
あー、疲れた。肩凝ってるのか頭が痛いや。あっ、マッサージ機作ろう。
早く食堂の件を片付けて何を作るか妄想に浸るゲイルであった。
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