第571話 危うく初日で退学
「じゃあ、昼にここでね」
とシルフィードと別れて教室へ。
結構早めにきたつもりだけど、もう7人も居る。席は決まっておらず早い者勝ちか。そんなに広い教室ではないので真ん中に座る。
それから5人追加。
隣のまぁまぁ歳を食ってそうな人に挨拶してどんな事をするのか聞いてみる。
ほー、この教室は魔法陣を基礎から学ぶとこなんだ。で、魔法陣文字や記号を覚えて、ライトの魔法陣を描いて発動したら次のステップへ進めると。なるほど。
「ゲイルよ、ワシはもうライトの魔法陣を描けるでな、分からんかったら教えてやるぞ」
めっちゃ嬉しそうに言うミグル。こいつ自宅に魔法陣組んでたぐらいだからな。ライトくらい朝飯前だろ。
始業の鐘が鳴り、先生が入って来るとざわつく在来生。来たのはあの校長だからだ。こんな初級クラスに校長がくる訳がないので驚いたようだ。
まず魔法陣とはというところから始まり、魔法陣文字が説明されていく。俺はリッチなので羊皮紙でノートを作って来たのだ。皆は必死で暗記するか板に書いていく。結構複雑な文字だからそりゃ覚えるの苦労するだろ?
文字をローマ字に当てはめて説明する校長。
これ、一見複雑に見えるけど、凝ったレタリング文字だよな? レタリングする必要あるのか? と疑問に思いながら書き写していく。
後はクローバー、ダイヤ、ハート、スペードとかのマーク。トランプか?
他にもあるけど、それぞれはどのような意味を持たせてあるのだろうか?
初めの授業はここで終わり。少し休憩した後、実際のライトの魔法陣を見せてくれた。
ミグルがちょっと渋い顔をしたけど気にしない。
おぉー、漫画やアニメで見た魔法陣と良く似ている。エルフの結界もこんな感じの魔法陣だったな。
黒板に張り出された魔法陣を一生懸命描き写す。
魔法陣に書かれた文字や記号に魔力を流したら魔法が発動する。イメージする代わりに文字を使うって感じだな。
魔法陣の図形は円がベースだ。今はフリーハンドで描いたけど、ちゃんと綺麗な円を描かないとダメらしい。校長はフリーハンドで綺麗な円を描いた。俺には無理だからコンパス作ってこよう。
他の生徒は板を丸く切った物で描いている。板をまん丸に切るの難しいぞ。本当に円になってるかそれ?
今日の授業はこれで終わり。図書室もあるけど、受講している部分とそれまでに受かったところしか閲覧出来ないらしい。
途中で悪用を考える奴には見せないようにするためかもしれん。もしくは知識がないまま先に進んだら危ないかだ。ちなみに本は持ち出しも転記も禁止。読むだけとのこと。
「ミグル、ライトの魔法陣を見たときに変な顔をしてたけど、なんかおかしかったのか?」
「ワシの知ってるのと少し違うのじゃ」
ミグルはフリーハンドで俺のノートに書いてくれた。凄いなミグル。
文字は同じだが、マークの配列や種類が少し違う。
「これ、発動するんだよな?」
「当然じゃ」
ミグルとそんな話をしていたらシルフィードが食堂にやって来た。
ちなみにシルフィードにも羊皮紙ノートを渡してある。
「どうだった?」
「難しいかも。よくわかんない」
シルフィードのノートを見せてもらう。
ポーションの種類、それぞれ必要な素材、それを調合するための機械の名前とかメモ書きだ。シルフィード、キミお勉強苦手だね?
トビトビになったメモを解読したけど、とても分かりにくい。特に、とても熱くするとか、ちょっとぬるめにとかなんだよこれ? 温度で抽出具合が変わるなら80度とか書かないとわかんないだろ?
俺がノートを見てクスクスと笑うとシルフィードは真っ赤になってパッとノートを隠した。
「ゲイルのも見せてっ!」
「いいよ」
「ゲイル、ダメじゃ」
「なんでよ、ミグルのケチ。ゲイルのなんだからいいでしょっ」
「ケチではない。魔法陣の教えは許可を得た者しか知ってはならんのじゃ。このノートを見せればゲイルもシルフィードも罰せられるぞ」
そういや、ミグルも絶対に教えてくれなかったな。
「え? そうなの?」
「ポーションも同じやもしれん。今、シルフィードのノートをゲイルが見てしまったのもまずいのではないか?すぐに確認してこい。もし、ダメなら事情を説明してきた方が良い。下手したら二人とも退学になるぞ」
ミグルにそう言われてポーションの先生の所に行った。
「あら、見せちゃったの? ダメじゃない、いくら仲が良くても。ポーションも秘匿技術なんだからね。まだ初日の授業の分だから大目に見てあげるけど次はダメよ」
優しい先生でよかった。白衣を着た美人先生だな。男子生徒の憧れではなかろうか?
「君、学科テスト満点の魔法陣コース、ゲイル・ディノスレイヤ君よね?」
「はい。そうです」
「ポーションコースには興味ないかしら?」
「元々は魔法陣コースを早くに卒業出来るならポーションコースも受けようと思ってたんだけどね、魔法使えなくなっちゃったからもう無理なんだ」
「あら、残念ねぇ。ポーション作るのに魔法使えるに越したことはないけど、本当は使えなくても作れるのよね」
「そうなの?」
「そうよ。だから、興味があるならこちらにもいらっしゃい。合計150点取ったんだから十分資格あるわよ。私から校長に言っておいてア・ゲ・ル」
とウインクする先生にシルフィードはプクっと膨れていた。
「そうか、大目に見てもらえたか。良かったのう」
「ミグル、助かったよ」
「まぁ、良い。ワシはこれから研究所に行かねばならんからな。お先に失礼するのじゃ」
「飯は? 奢ってやるぞ」
「食ってからでも間に合うの」
という事で食堂で食べたけどもうここの飯は今回で十分かな・・・ 明日からは弁当を持参しよう。
屋敷に戻って文字を暗記していく。レタリングに何か意味があんのか? とか思いつつ覚えるしかない。まぁ、パターンさえ分かれば元の文字を知ってるからさほど覚えるのに苦労はしない。若い脳ミソだから覚えもいいしな。
さて、コンパスを作りますかね。リール用の金属で加工・・・は無理だな。ベースを木で作って行くしかないか。
小刀欲しいな。明日ダンに買ってきてもらおう。魔剣で作るには難しいからな。ドワンにちゃんとしたやつ作ってもらおう。他にも出てくるだろうから作って欲しいものリストを作成。まずはコンパスっと、絵と仕様書を描いておく。
その後、ライトの魔法陣を石板に何度も描いていった。文字の内容はなんとなく魔法の詠唱と同じなのかな? と思いつつ描き続ける。ミグルが帰って来たらこれも聞いてみよう。
魔法陣を描くのには魔導インクが必要らしいがそれも欲しいな。どこで売ってるんだろ?
晩御飯の時にパリスに明日から3人分のお弁当と水筒を頼んでおく。水筒の中身はお弁当に合わせてと頼んでおいた。
コンコンっ
「どうぞー」
誰か来たので魔法陣ノートと石板を伏せる。
「ゲイル、いい?」
ノックしたのはシルフィードだ。
「どうした?」
「ポーションコースどうするの?」
「まぁ、魔法陣コースしだいだね。自分で魔法水作れなくなったからポーション作れた方がいいし覚えて損はないかな。シルフィは作れるようになりそう?」
「どうかなぁ。先生の説明がよくわかんないし、まだ初日だから。ゲイルはどうなの?」
「初級の魔法陣はもう覚えたよ。後は発動するか確認したいんだけど、ミグルに聞いてからにするよ」
「もう覚えたの?」
「仕組みはなんとなくわかったからね。後は一つずつ疑問に思ってることを確認していきたいかな」
「えー、ずるーい」
何がズルいのかよくわからん。
「ゲイルはミグルに聞けるんでしょ?私は相談出来ないんだもん。ゲイルがポーションコースにも来たら色々相談出来るのに」
なるほど、そういう意味か。
「わかった。ポーションコースにも行けるように頑張るよ」
「やった! でも・・・」
あの美人先生に会いたいわけじゃなからね。
「俺も今日のノートを見て、シルフィの理解力が足りないのか、教え方が悪いのかわかんないからね」
そういうとプクっと膨れてしまった。
いや、あのノート見るとね・・・
ミグルが帰って来た。
「遅かったな。飯は?」
「まだじゃ」
「じゃ、先に食べて来なよ。その後ここに来てくれる?聞きたいことがあるんだ」
という事でミグル待ち。学校に通いだした分、仕事が遅くなるようだ。すまんね。
「なんじゃと? ポーションコースにも通うかもしれんじゃと?」
「なんか校長に話してくれるってさ。ポーション作るのに魔法は必要ないみたいだし・・・」
「そうなのか。しかし、ポーション作りに魔法が必要ないとかも他のやつに言うんじゃないぞ」
これもヤバいのか。気を付けよう。
ミグルに描いた魔法陣を見せる。
「もう描けるようになったのか?」
「文字は元の文字と同じだからね。パターンを覚えたら簡単だよ」
「なにっ? どういうことじゃ?」
文字を一つずつ説明してやる。
「ほ、本当じゃ・・・」
なんで気付かないんだよ? あー、この世界は知力が低いんだったな。
みな、この文字を違うものと認識しているようで、一から複雑そうな文字を一生懸命に覚えるそうだ。元々少々知力が足りない世界だから覚えるのにも時間かかるだろうし二度手間だな。
「でさ、魔導インクってどこで売ってるの?」
「魔道具店じゃが、それなりに高いぞ。お主なら問題なかろうが」
「連れてってくんない?」
「すまぬがワシには今その時間が無い。場所だけ教えるから自分で行ってくれ」
これは仕方がないな。
明日は学校に行って、その帰りにその店に行こう。楽しみだな魔道具ショップ。
面白い物があったら買っちゃお。
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