第565話 弊害

さて、無事合格したし、仕事をしますかね。


ダンとシルフィードを連れてコボルト達の所に行く。魔力が無くなってテイムが解除されてないかの確認と土魔法で作った物が崩れてないかの確認だ。問題が出たと報告されてないから大丈夫だと思うけどね。


行く道々で魔法学校の試験の話をする。


「シルフィードはあの問題よく回答出来たな。解き方知らなかっただろ?」


「うん。全然解んなかった。でも合格になったのはあれかなぁ」


ポーションコースの合格者は3人。受験者数は200人ぐらいらしい。


「なんかしたのか?」


「魔法実技のテストで自爆して大怪我をした人が居てね、治癒魔法で治したんだ。それに先生が驚いて誰に習ったのか聞かれたの。アイナ様だと説明したら凄く納得されて・・・」


なるほど。治癒魔法使いは貴重だし、ポーション作りには有利かもしれないからな。魔法実技で大幅な加点がされたのか。というかその時点で合格だったのかもしれん。

それにシルフィードなら植物を育てるポーションとか作れるかもな。



「おーいジャック」


「お、ぼっちゃん。死にかけたって本当かよ? 大丈夫・・・なのかって、その髪の毛はどうした?」


「魔法使えなくなっちゃんたんだよね。そしたらこの髪の毛になってたんだよ。まぁ、問題ないよ」


「えっ? 本当かそれ? まさかぼっちゃんが魔法使えなくなるとは思わなかったぜ・・・」


「コボルト達は問題ない? テイムが解けてるだろうからちょっと心配になってね」


「いや、いつも通りだ。ちょっと呼ぶから待っててくれ」


そう言って指笛をピュイーとならすとコボルト達が走ってきた。


一斉に俺に襲い掛かるコボルト。ダンが一瞬剣に手をやるがコボルト達は俺を押し倒してベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ・・・・・・


やめれっ!窒息するわっ、オプッ オプッ! 口の中まで舌入れてくんなっ。


俺がコボルト達の愛で溺れているのをダンが救出してくれる。


もー、べっちゃべっちゃじゃねーか。クリーン魔法で・・・ ちっ、やっぱ不便だな。


魔法が使えなくなっても仕方がないと思ってたけど、今さらながら魔法の便利さを痛感する。クリーン魔法は生活の中で一番使ってた魔法だからな。それにクリーン魔法使いは以外と少ない。シルフィードも使えないからな。周りで使えるのはミグルとグリムナだけだ。


シルフィードは嬉しそうにタオルで俺の顔を拭ってくれた。いつもと逆だ。


「ぼっちゃん、コボルト達もシルバーと一緒で問題ねぇみたいだな」


「良かったよ。ちゃんと初めに訓練しておいて。ジャックもありがとうな。良い子達に育ったよ」


「いや、子コボルトの時の育て方が良かったからだ。他の住民にも可愛がられてるし、よく懐いてる。もうこの辺りじゃなくてはならん存在ってやつだな」


コボルト達は問題無しと、土魔法で作った門とかもそのようなままだし、魔法が使えなくなった弊害は出てないみたいだ。良かった。



コボルト達の愛に応えた後、楽器工房に戻った。


おー、色々出来てんじゃん。


バイオリンやチェロとかの他に金管楽器も出来てきている。トランペットとトロンボーンがある。


「ダン、ちょっとこれ吹いてみてくれ」


と、トロンボーンを手渡す。


「どうやるんだこれ?」


「吹きながらこれを伸ばしたり縮めたりすると音が変わるんだよ」


ダンが吹くのに合わせて俺が縮めたり伸ばしたりして音を変えてやる。


ノコギリでやるやつだけど、トロンボーンでも出来るか。と試してみる。


プーウォープーウォプーウォウォ


「これなんて曲だ?」


「お前はアホか、だよ」


「なにそれ? 変なの~」


とシルフィードが笑う。


ダンが自分で同じように吹いてそれに合わせてシルフィードがお前はアホかと歌う。


「なんだこれ? ミケが居た国の歌か?」


「歌というより、お笑いだよ本当はこうやるんだけどね」


と、大工から長いノコギリを借りて、鉄琴のバチで叩く。


ぽよ~ん ぽよ~んと音を確認してからいざ実演。


ポヨンポヨンポヨンポヨンポヨ~ヨ~ヨン


周りで聞いていた者達からどっと笑いが起きる。お笑いという文化がまだない所に歌謡漫才というのが誕生した瞬間だった。


「非常に興味深い音でございますね。人の心を和ませます」


「マンドリン、演奏しながらこんな風に人を笑わせたりするのも出来るんだけどね、誰かやりたい人いないかな?」


「はい、続々と人が集まっておりますので、募集してみましょう。これは他の楽器を組み合わせても問題ございませんか?」


「何を組み合わせてもいいけど、話術がないとおもしろくないからね。面白い話と組み合わせられるといいよ」


「かしこまりました」


ゲイル楽団はゲイル芸能事務所に変わっていくかもしれない。そのうちアイドルプロデュースとかしてみよう。



ランチはラーメンだ。今日は豚骨醤油に餃子とチャーハンだな。


少し並んで店に入ると少し広くなってる。改装したのかと聞くと、どうやら各々の所で作っていた麺を各店がお金を出し合って麺だけ専門に作る所を作ったらしい。所謂、製麺所ってやつだ。よく思い付いたね。


「じゃ、俺はラーメンと餃子と半チャーハンのセットで」


「ぼっちゃん、まだ他の場所に行くんだろ? 臭くなるぞ」


「へーきへーき、臭いはクリーン魔法で・・・・ ごめん、餃子は唐揚げとチェンジで・・・」


唐揚げも旨いけど、口は餃子になっていたのだ・・・



次はミサの店へ。


「あっ、ゲイルくーん、良いところに来てくれたー」


「なんかあったのか?」


「エイプの毛皮のコートが売れ出してね、きっとリンダさんとアイナさんが前に着てくれたお陰だと思うんだ。ブーツも売れ出したしー」


「良かったじゃないか」


「でねっ、エイプの毛皮が足りなくなりそうなんだー。捕って来てくれないかなー?」


魔石の補充も必要になるし、エイプ狩りに行ってもいいかな。


「いいよ」


「ぼっちゃん、普通に倒してたら前みたいに数集められんぞ」


あっ・・・・


「ミサ、悪いけど無理だわ。前みたいに数が集められんから、冒険者ギルドにウサギかなんかの毛皮採取依頼を出してくれ」


「そっかー、解った。そーするー」


弊害がないとか大間違いだな。毛皮はこれでいいとして魔石が問題だ。


まだ数はあるけど、西の街と冷凍コンテナは魔石を大量に消費する。魔法陣を学んで改良すれば魔石消費量を減らせると予定してたけど、間に合わんなこりゃ。


ギルドが販売する魔石の数だけだと足りなくなる恐れ大だ。これは早急に手を打たねば。


「ダン、明日から新領に行くよ」


「何しに行くんだ?」


「魔物の沸く場所を探しに行く」


「んなものあるのか?」


「あそこはゴブリン、コボルト、オークが沸くだろ? エイプの池みたいなのが絶対あると思うんだ」


「そこで何するんだ?」


「魔石の充填。これは極秘にしないとまずいから他の人には教えられない。だから3人で行くよ」


「危なくねーか?」


「いや、これは西の街の将来を左右する問題なんだ。今のうちに解決策を見つけないと、この街の発展にブレーキがかかる。というか根本的に見直さないとダメになる」


「要するに一大事ってことだな?」


「そういうこと」


他の視察を終えた後に屋敷へと戻る。



魔力が無くなったので、魔道バッグから物を全部出しておいてあったので、必要最小限の物を用意していく。魔法水を・・・ あれ?減ってるな。ま、いっか。これをポーション用の瓶に詰めてと。試しにペロッとな。これ味しないけど、本当に魔法水だよね?


不安になって、シルフィードの部屋を訪ねる。夜這いじゃないからね。


コンコンッ


「シルフィ、俺だけどいい?」


カチャ


うっ・・・


「どうしたの? 部屋に入る?」


「い、いや、ここでいいよ。これ舐めて味がするか試してくれない?」


シルフィードはペロッと舐める。


「凄く甘いよ」


「なら、いいんだ。ありがとうね」


良かった。ちゃんと魔法水だな。


なんの事かわからないシルフィードにバイバイして自分の部屋に戻る。


あー、俺、顔赤面してねーだろうな?

無防備にあんな格好で出てくんなよ・・・


シルフィードはシルクのパジャマ姿だった。



ノーブラでだ。



いくらひんぬーだといっても全く無い訳ではないのだ。こっちがドギマギしてしまうだろうがっ。


前までなんとも思わなかったけど、魔力が無くなったのが原因か、魂がよりこの肉体に引っ張られているような気がする。


これ、このまま思春期を向かえたらマズいかもしれない。アルやジョンみたいになるかもしれん・・・


いっそ、千切ってしまった方が・・・


いや、それはやめておこう。そんな事をしたらアッチに目覚めてしまうかもしれないからな。俺はあなたの知らない世界には行きたくはないのだ。


なんてこった。魔力が無くなった弊害が出まくりじゃないか。昔の生活に戻るだけだと思ってたけど、自分がどれだけ魔法に依存していたのか良く解った。


これ、まだまだ出てくるんだろうな・・・



あー、あの時9999でなぜ止めておかなかったのだろう。俺はめぐみののーたりんさを知ってたはずなのに・・・


俺は心の中でお前は2000年問題くらい解決しろっと叫んでいたのだった。










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