第537話 戦力補強
「ずいぶんと来たな」
アーノルド達も招待状の多さに驚いている。
「もう誰が誰かわからないよ。一度にたくさん紹介されたし」
覚えてるのは数人だ。
ベントがなにやら仕分けしている。何を基準で分けているのだろう?
「こっちの山はゲイルには関係ないから断っても問題がないと思う。こっちはどうするか判断した方がいいから目は通した方がいいと思う」
「なんでそんなこと分かるんだ?」
「学校でどの貴族がどんな役割をしているとか習うんだよ」
領主育成コースってそんな勉強するのか。なるほど、領主にとっては貴族との繋がり持ってないとダメな事があるだろうからな。
「うちの父からも来てますわ」
マルグリッドが驚く。
「スカーレット家がゲイルに招待状? 本当か?」
アーノルドとイナミンも驚く。いや、俺も驚いた。
「イバーク・ゴーリキー。これはアルも呼ばれてそうだよね」
「どうすんだぼっちゃん」
「またなんか嵌められそうなんだよね。でもアルだけ行かせるの心配だしな」
「二人揃って嵌められたら逃げられねぇんじゃねぇか?」
「そういう考え方もあるか・・・」
「で、これが・・・・ ダッセル・ブランクス・・・」
エイブリックの姉さんのところか。
マルグリッドも驚いてるな。
「ゲイル、ダッセルとは接触を避けろ」
「軍のトップだから?」
「それもあるが、あいつの息子はジョンとアルの同級生でな。あまり関係が良くない」
「なんかあったの?」
「入学試験の時にちょっとな。まぁ、関わるな」
「奥さんはエイブリックさんのお姉さんでもあるよね?」
「そうだ。それでもだ。ダッセルはディノスレイヤ家を面白く思ってないだろうし、ドズルは人間的にダメだ。必ずお前と揉めて大事になる」
「シルフィードの事も品定めするような嫌な目付きで見てたからね。父さんが人間的にダメだと言うのもなんとなく分かるよ」
こういう時のアーノルドは人を見る目が確かだからな。
「日付はいつだ?」
「1月15日だね」
「よし、そこをジョンの祝いの日にしよう。正当な理由になる」
「他のも日付近いよ。移動を考えたら全部断ることになるね。社交会って1回だけなの?」
「シーズン中は何度か行われますけど、年の初めの社交会は正式なお付き合いの為のものですわ。だいたい身分が高い順に開催されて、派閥をハッキリさせない貴族がいると同じ日に開催してどちらに出席するのか試されたりしますのよ。それ以外は成人した子供達の出会いの場であったり、気の合う貴族同士の歓談であったり情報交換の場だったりするのですのよ」
なるほど。初回以外は貴族の飲み会みたいな感じなんだな。
「だとすると、シーズン中は何回も誘われる可能性もあるって事だよね」
「そうですわ」
「なら、仕事が忙しいから社交会には出席出来ないと全部断るよ。これは嘘じゃないしね。ジョンの事を理由にしたら他の日付の時にまた言い訳作らないとダメだから」
「そうだな。それがいいかもしれん」
「マリさんごめんね、せっかくお父さんが招待してくれたのに断る事になって」
「仕方がありませんわ。ゲイルが忙しいのは本当ですもの」
そう言ったマルグリッドの表情は暗かった。やっぱり悪い事したなと思ってしまう。
ゴーリキーは社交会でなくて、ちゃんと仕事として会うことにしよう。
社交会のお断りの手紙はカンリムに書いて貰うことにした。
翌日、グリムナ達が
その日は屋敷でのんびりしていてもらい、俺は楽器作りへ。イナミン達はもしかしたら社交会の招待状が届いているかもしれないと屋敷に戻っていった。仕入れをなんとかしようと近付いてくる奴等がいるだろうからな。
ダンとシルフィードも暇だから付いて来た。
ドワーフ達が楽器を作ってる横で、ぶへっ ぶへっと鳴らせなくなってしまったトランペットとかの吹く口を練習する。
「ぼっちゃん、なんだそれ?」
「楽器から音を出すためのものなんだけどね、上手く出来ないんだよ」
どうやるんだ? と聞かれたので、やり方を教える。ぶるぶるからブブブブブと高速でもすぐに出来るダン。ドワーフから真鍮を貰って単純なラッパをつくってその口をはめる
「ダン、これは楽器の元になるやつなんだけどね、ちょっと吹いてみてくれる?」
ふほーー
「鳴らねぇぞ?」
「さっきみたいに唇をブブブブブってやって吹くんだよ」
もう一度ダンが試すと、
プァァンと音が鳴る。ダンすげぇな。クルマのホーンみたいだ。
ワッと驚くドワーフ達
「脅かすなっバカヤローが」
「ごめん、ごめん。ダンがいきなり音を出せるとは思ってやかったんだよ」
「って事はこいつを作らせようってんだな?」
「音が鳴る仕組みはほとんど同じなんだけどね、これだけだと演奏出来ないから高い音や低い音が出るようにしていかないといけないんだよ」
短いラッパ、長いラッパを作ってダンに吹かしてみる。
「なるほど、この長さを変えれば音がかわるのじゃな」
「そう。でもいくつも交換して吹くなんて出来ないからこれを一つにまとめるんだよ」
となんとなく覚えているトランペットの仕組みを絵に描いていく。
「ここを押さえたらここがふさがって、息がこう流れるから長いやつと同じで・・・」
「こいつはまっすぐでないとダメではなく、曲げてあっても良いのじゃな。なるほどなるほど。ここを広げてあるのは何故じゃ?」
「音がよく響く為だよ」
この説明だけで試作を始めるドワーフ達。難しい物の方が燃えるのかもしれない。ついでにトロンボーンとかも説明しておいた。個人的にはサックスが好きだけど、あれ、口のとことかどうなってるのか知らないんだよな。中学にはなかったし。
まぁ、楽器がどんどん出来ていけばそのうち誰か思い付くだろ。 もう俺に出来ることがないので、ドワーフ達の工房を出て周辺をプラプラしてみる。
しかし、あれだよなぁ。俺ってあんなに調べられてたのか。いまもこうやって普通の人達に見られて報告されてたりするんだろうな。報告されて困るような事はないからいいけど、問題なのは向こうにだけ情報があってこっちには情報がないってことだ。俺にも諜報機関とまでもいかなくても、そういう情報が入ってくるルートが必要だな。
特にイバーク・ゴーリキーの情報を掴んでおいた方がいい。これからも搦め手でくるだろうからな。今回はデーレンの処分がなんだったか気になるし。
しかし、俺が絡んでない店も増えたな。ちょっと空いてるなというところは個人で出してる店ばっかりだ。まぁ、この街に来る人が増えてるからそれなりに商売にはなってるんだろうけど。
店を見ながら歩いていると後ろからぽんっと肩を叩かれた。
「よっ!」
ん?誰だっけ?えらいボサボサ頭の人だな。なんか見たことあるんだけど思い出せないや。
「ごめん、小熊亭の常連さんだっけ?」
「お、解んねぇか。じゃ、これなら分かるか?」
ばっと髪をあげて後ろで束ねる
「あっ、砦の宿の・・・」
「久しぶりだな」
「あれ? 酒でも買いに来たの?」
「あぁ、それもあるけどな、ここで雇ってもらおうと思ってんだ」
「ん? フリーでやってたんじゃなかったんだ」
「いや、それは半分当たりで半分不正解だな」
「なんの店がいい?」
「酒場がいいな。俺の他に3人いるから人の手配もバッチリだ」
「名前は?」
「トムだ」
「了解。明日以降に役所にフンボルトって奴がいるからそこで申し込んで。俺の紹介だって言ってくれればいいから。俺の名前知ってるよね?」
そう聞くとニヤっと笑うトム。
グッドタイミングだな。というか俺が
1人になるタイミングを見計らってたのか。
これもフランの導きなんだろうな。あそこに着いた時、なんの迷いもなしにこいつの宿屋選んだからな。
どこまでやるか楽しみだな。
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