第528話 戴冠式の打ち合わせ
もうすぐ感謝祭というところでバンデス達が到着。出発直前まで誰が行くか揉めてたらしい。なんかドタバタが想像できる。
「あれあれ、ゲイルはまたおっきくなったねぇ」
「最近膝が痛いんだよ」
タバサに年寄りの会話みたいな返答をする。夫婦で出席するらしい。
今回来てくれたドワーフは5人だ。馬車には金属のインゴットをこれでもかと詰んできてくれた。俺が話した金管楽器の素材に向いているだろうとのこと。真鍮だろうか?
アーノルド達は闘技会が終わってからくるのでギリギリになるだろうな。イナミン夫妻はもう自分達の王都邸にいるのだろうか?
グリムナにバンデス夫妻を紹介する。今夜はうちに泊まって明日エイブリック邸に向かうとのこと。
勿論うちの屋敷で宴会だ。バンデスとタバサ以外のドワーフ達は遠慮したのか宿舎へと行き、その中にミサの知り合いがいるらしく、ミサは宿舎に泊まりにいった。
「ゲイルよ、お前の作ってる街は人がこんなに多いのか?」
バンデスはここに来て驚いたようだ。
「もうすぐ感謝祭だから日に日にこの街に来る人が増えているよ。人酔いしそうだよね」
各店とも行列が出来るぐらい繁盛しているのだ。良いことだけど俺は田舎育ちなので人混みが好きではない。
「シルフィード、お前は戴冠式にどんな服を着ていくのだ?」
グリムナの爆弾発言。
「え? 私も行くの?」
驚くシルフィード。俺も驚いた。
「俺と一緒に招待されているだろう? ゲイルに聞かなかったのか?」
「いや、俺も初耳だけど? 俺の招待状には俺の名前しかないし」
グリムナは俺がシルフィードが参加するのを知っていると思っていたらしい。俺は知らなかったのでここに来てシルフィードの参加を知る。
「えっ? えっ? 服なんて作ってないよ。どうしよう。今からなんて間に合わないよ」
「王様を迎えた時に来てた服でええやん。あれ正装なんやろ?」
もう戴冠式の事は屋敷内では話してある。エルフ王とドワーフ王が屋敷にいる事で隠せなかったのだ。
「シルフィード、東の街で買った服より、そちらの方が相応しくてよ」
アドバイスをくれるマルグリッドはまだ未成年なので参加はしない。ジョンは護衛の任命があるらしく、別行動だが参加する。
グリムナがその服を着てみろと言うのでシルフィードが着替えて来た。
「おぉ、シルフィードの清楚さと可憐さを見事に表した服だ。俺の持ってきた服と並んでも合うだろう」
という事でシルフィードは白のプリンセスラインのドレスを着て参加することに。
俺の衣装フロックコートなんだよね・・・
この世界では誰もそんなの知らないから別にいいんだけど。
翌日エイブリック邸に打ち合わせをしにいく。ドン爺も来るらしい。
エイブリック邸に到着するとアーノルド達が既に来ていた。
「あれ? 闘技会は?」
「シックとドワンに任せた。さすがに今回はこちらが優先だ」
ということで、バンデス夫妻にアーノルドとアイナを紹介する。なんか違和感ないな。ドワンと話してるみたいだ。
「おう、待たせたな。っと、初めましてドワーフの王よ。ようこそウェストランド王国へ」
ついいつもの調子で登場したエイブリック。バンデスを見て我に返る。
お互いに挨拶をしてドン爺の登場を待つことに。
「お待たせして申し訳ござらん」
ナルディック他の護衛を連れてドン爺登場。堅苦しい挨拶が行われる。
グリムナ・シルフィード、バンデス・タバサは戴冠式前日に王宮入りするらしい。本来は国賓として盛大に迎えないといけないことを詫びるドン爺。発表当日まではまだ同盟の事はごく一部の人間にしか知らされていないらしい。
当日はまず、ドン爺が王を退く事を発表し、エイブリックに王の座を譲る事を宣言する。次に戴冠式を行い、そのままアルを第一王子として紹介。その後、エイブリックがグローリア王国とドワーフ王国と同盟を結んだ事を発表し、グリムナ達を紹介する流れらしい。
その後にパーティーが開かれる。
参加する貴族達は身分が上の物から前の方に並ぶらしい。確固たる決まりは無いが慣例とのこと。
で、問題なのが俺がどこにいるべきかということらしい。
王族は主催者側に並ぶ。俺はどっちだという話だ。ドン爺は王族側だと主張する。エイブリックはゲイルが堅苦しい思いをするだろうから参加者側でいいじゃないかという。俺も参加者側に居たい。王族はドン爺、エイブリック、アルしか知らないのだ。他の王族は俺のことを快く思ってないだろうし、肩身が狭すぎる。そう俺の身分は中途半端なのだ。
「そんなことでもめるのなら、我々のエスコート役をしてもらうというのはどうだ?」
グリムナの提案が通る。
エルフとドワーフの王達をエスコートして登場する役を任命された。どちらの王族にも名前を連ねる俺に相応しい役だそうだ。ということで俺も前日から王宮に入る事になってしまった。
面倒臭ぇ・・・
エイブリック邸で夕食を取り、そのまま宿泊はいつもの流れだ。
グリムナとバンデス、タバサは戴冠式までエイブリック邸に滞在する事になり、俺達は翌日屋敷に帰った。戴冠式前日に王家の馬車が迎えに来てくれるらしい。
「父さん、今回のドン爺の引退は前から決まってたのかな?」
「どうだろうな? 引退するにはまだ早いような気がするから何かあったんだろう。まぁ、俺達が知る必要の無い話だ」
「そうだね・・・」
なんか知らない所で色々あるのだろうな。しかし、ドン爺は深刻な顔をしているわけではなかったし、どちらかというとノリノリな感じがする。もしかして遊びたい一心で王位を譲ったんじゃないだろうね? ドン爺ならやりかねん。
そういえばエイブリックが南の領地に来るときにドン爺をまいたとか言ってたけど、そんなことが果たして出来るのだろうか?
もしかしたらエイブリックはあれが最後の旅行と思って来たのかもしれないな。王になったらそうそう今みたいに勝手に動け無いだろうし。いや、本来は王子でもあんなにどこへでも動ける立場ではない。あいつがおかしいのだ。王になっても同じ事をやるかもしれん。
屋敷に戻った後はアーノルド達に街を案内する。メイド喫茶にも連れていってやると呆れていた。お前はこんなものもまでやってるのかと。アーノルドはアイナの前で訳も解らず一緒に萌え萌えキュンをやってしまい、真っ赤になっていたのだ。俺なら強要されてもやらない。やった君が悪いのだ。
その後はアーノルド達はベントの屋台を見に行った。ベントと話して、人に任せられるようになっているのなら連れて帰るそうだ。
「なぁ、ぼっちゃん。街もどんどん変わって行くが、ぼっちゃんを取り巻く環境もどんどん変わっていっちまうな。大丈夫か?」
「そうだね。ダンに抱っこされてディノスレイヤ領の街をプラプラしてた時はこんな事になるとは夢にも思ってなかったね」
「あぁ、そうだ。まさか俺も城で護衛するはめになるなんて思いもしなかったぜ」
「俺なんか未成年なのにエスコート役なんだぞ」
「ぼっちゃんの蒔いた種じゃねーか」
「そんな事言うなよ。巻き込まれてるだけだろ」
「なぁ、本当に成人したら旅に出られると思ってるのか?」
「その準備は進めているよ。いざとなったらダンがいるしね」
「なんだよそりゃ?」
「何でも屋だろ?俺の代わりをやってくれよ」
「何でも屋でも程があるだろうがっ!」
「大丈夫、大丈夫。その頃には勝手にみんなやってくれるようにしておくから」
「おいっ、冗談みたいに言ってるけど、まさか本気じゃねーだろうなぁっ」
「どうかな?」
「自分だけ逃げやがったら承知しねぇからなっ!」
「いつもダンが先に逃げるじゃないかっ」
「逃げてねぇ。巻き込まれんようにしてるだけだっ!」
「それを逃げるっていうんだよっ」
ダンと下らない言い合いをしながら、ミーシャとミケをロドリゲス商会に迎えに行くことにした。たまには昔みたいに串肉食べてプラプラしようか。
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