第491話 コンテナシステム完成
漁村に移動途中に帽子の婆さんの所に寄ってお土産を渡しに行かなければ。醤油を気に入ってくれたので持って来たのだ。
皆を先に行かせて俺の馬車だけで行くことに。ダン、シルフィードだけで行こうとするとナンゴウも何かあってはと付いてきた。
「おーい、婆ちゃん。又来たよ!」
俺はオバサンは苦手だが婆さんは結構好きなのだ。母方の死んだ婆ちゃんに可愛がられてたからかもしれん。最後の2~3年はボケて自分の
「ゲ、ゲイル殿は母上と面識が・・・?」
は?
「ナンゴウさん今なんて?」
「ここは私の母の家でございます。父が亡くなってから元々の家で暮らしたいと一人で住んでおりまして・・・」
なんと帽子の婆さんはリンダの婆さんだったのか・・・
「おや、ナンゴウ。何しに来た・・・ おぉー、ゲイルちゃんか。又来てくれたのか。さ、入れ入れ。今日は泊まって行くのか?」
「ごめん、今日は仕事で来たからお土産を持って来ただけなんだよ。帰りにまた遊びに来るよ」
「なんじゃ素っ気ないのう」
「あ、あの・・・ 母上・・・」
「ナンゴウ、お前、こんな子供を働かせておるのか? お前がいつまでたってもしっかりせんから子供が働かねばならんのじゃろうがっ」
もう娘が嫁ぎ、そろそろ引退しても良い歳なのに人前でオカンに怒られるナンゴウ。
「いや、母上・・・ そろそろ屋敷に戻られては・・・」
「お前と嫁と暮らすなんてまっぴらじゃ。ワシはここでサトウキビを育ててるのが好きなんじゃ。何度言ったらわかるんじゃ。 おーおー、お前はシルバーじゃったのう。ほれ、サトウキビ食ってけ」
自分の子供をないがしろにして俺とシルバーを可愛がる婆さん。
「前に来た時に醤油を気に入ってくれたみたいだから持って来たんだよ。春になったらこの領でも買えるようにするからね」
「そうか、そうか。それはありがたいねぇ。うちの息子とは違ってゲイルは優しいのぅ」
「は、母上・・・」
なんかナンゴウと婆さんに確執がありそうだな。ナンゴウは話したそうだけど、婆さんは拒否か。
「今から漁村に行って一仕事終えたら釣りして魚食べる予定だけど一緒に来る?」
「おや、こんな婆さんを誘ってくれるのとはありがたいねぇ。でも今回は遠慮しておくよ。忙しいんだろう? そんな所に年寄りが行ったら邪魔じゃからな。仕事が終わったら帰りに寄っておくれ。楽しみにしておるからの」
無理矢理連れて行くのもなんだしな。帰りに寄ると約束して婆さんの家を後にした。
「ゲイル殿、お恥ずかしいところをお見せ致しました」
「仲が悪いの?」
「実はうちの妻とその・・・」
あー、嫁姑問題か。間に挟まれる息子は辛い立場だな。
「まぁ、帰りに又寄ろう。仕事が終わってからの方がゆっくり話せるだろうし」
「いや、誠に以って申し訳ない・・・」
汗を拭き拭き謝るナンゴウ。こういう時は第三者がいた方が良い時もあるしな。
それにしても嫁姑問題は難しい。些細な一言が揉め事になったりする。そんな受け取り方する? とか男には理解出来ないことが多いのだ。
自分のオカンと嫁さん、嫁さん兄夫婦と嫁さんのオカンもそうだった。嫁兄夫婦は同居をしていたので尚更だ。
うちは俺が耐えられないと思ってすぐに近くに引っ越して同居を解消したからマシだったけど。
コンテナが漁村に先に着き、俺達は遅れて合流した。すでにタゴサも来ており、ドワンが新しい銛を何本か渡していた。
「坊主、コンテナは入れ替えながら使うのじゃろ?」
「そうだよ」
「ここにこのサイズで土台を作れ。それを二つじゃ」
ドワンに言われる通りに土台を作る。
ドワンはコンテナ馬車の外側を外していき、下に取り付けてあるハンドルをくるくると回していくと内側の荷台が少しずつせり上がっていく。
「よし、ゲイルが作った土台の間を通ってくれ」
馬車が間を通り、荷台が土台と重なった所で停め、ハンドルをくるくると反対に回すとコンテナが土台の上にドスンと収まった。
そして馬を前に進ませると空の荷台だけが出てくる。
「次に来た時は逆の事をやれば良いだけじゃ」
今度はコンテナを乗せる手順をやってみせる。荷台をコンテナの下に入れてからハンドルを回すと荷台がせり上がり、コンテナを土台から持ち上げてから馬を動かすとコンテナごと出てくる。素晴らしい。
わぁーっと見ていた村民から拍手と歓声が上がる。俺も手を叩いて凄い凄いとドワンを褒めた。
コンテナが満載されるとハンドルが相当重くなるみたいだが、数人でやれば回せるようだ。この世界に画期的なシステムが出来上がったのだ。
「素晴らしいシステムですね。驚きました。荷物を積み替えるのではなく、箱ごと乗せ替えが出来るとは」
ナンゴウも驚いている。これをする理由を説明していく。
「これ、コンテナっていうものなんだけどね。冷凍・冷蔵庫を兼ねてるんだよ。ここに水を入れておけば氷が出来るから、捕った魚をすぐに冷やしてからこの箱に入れていってくれれば新鮮なまま冷凍されるんだ」
コンテナに魔石をセットして稼働を始める。明日の朝には氷がたくさん出来ているだろう。
「これ自体が魔道具ですか。物凄く高価なものでは・・・」
「そうだね。買うとめちゃくちゃ高いと思うよ。だから壊さないでね」
おそらくまともに買えばこの漁村すべての年収でも買えないだろう。エイブリックに感謝だな。
タゴサにあげたドワン作の銛も普通には買えないくらいの値段になるだろうけどね。
今日の仕事はここで終わり。俺達は釣り公園に移動しようとするとナンゴウが屋敷に泊まれという。それを頑なに断る俺。夜釣りをしたいのだ。
俺が遠慮していると思ってしつこいナンゴウ。仕方がないので正直に話す。
「は? 釣りをしたい? なぜですか?」
ナンゴウ達にとっては釣りは漁だ。レジャーではない。俺が釣りをしたいというのが理解出来ないみたいだ。なので釣り公園に連れて行くことになってしまった。
イナミンに了解を貰ったと前置きしながら釣り公園に案内すると、いつの間にこんな所に施設が出来ていたのかと驚かれた。
ちなみにロドリゲス商会達は漁村の村長宅に泊めてもらうことになった。魚の仕入れ価格を決めてくれるらしい。買い叩かないようには言っておいたから、双方利益が出るくらいにまとめてくれるだろう。
釣り公園は崩れる事なく無事だったのでさっそく魔道ライトを各所に配備して釣り開始。
人数分のタックルが無いので自分の分を確保して後は適当に交代しながらやってくれ。
俺はエギングからだ。どれだけ大型に育ってるだろうか?
近場から探るけど反応がない。サビキも初めは撒き餌が無いのでなかなか釣れない。
ダンはカニを探しに行くがなかなか帰って来ない所をみるといないのかもしれないな。
「坊主、釣れんぞ」
夜のメタルジグは相当厳しいというか釣れない可能性が高い。このポイントで冬に釣れる魚が何かわからんしな・・・
イカも釣れないから、下足ワームも使えない・・・
「釣れたっ!」
シルフィードがアジを釣った。デカくなってんなぁ。尺超えだ。もったいないけど俺はそれを奪って生き餌として使う。
「あっ」
せっかく釣れたアジを俺が海へ投げてしまったと勘違いしたようだ。
「シルフィ、ごめん。これ餌にするから。これでイカ釣れたらそれも餌にしていくよ」
わらしべ長者作戦だ。
手前のポイントにはイカがいないようなので沖に向かってアジを泳がせる。めっちゃ元気に泳いでいる。しかし当たりがないので少ししゃくってイカにアピールしてやる。
それを何度か繰り返すとアジが猛烈に暴れだした。近くになんか来てるな。
じっと当たりを待つとフッと竿先が止まってまっすぐになってしまった。あれ?
リールを巻くとなんの手応えもなく糸だけが上がってきた。
「坊主、ジグをくれ。ほどけてしまったようじゃ」
ドワンも糸だけになってしまったとの事。これは・・・・
金属を加工してワイヤーを作らねば。しかし柔軟性のあるワイヤーは金属の種類が違うから作れない。仕方がないので投げテンヤの棒のようなものを作ってメタルジグをセットする。ドワン達にも同じ仕掛けにして投げる。
「おやっさん、あんまりしゃくらなくていいからゆっくり沈めたり、引っ張ってくるだけにして」
そう指示して自分も同じ釣りをするとゴツンと当たりがでる。
んがっと合わせを入れてやると初めは強い引きをみせるがすっと寄って来たり急に暴れたりする。
釣れて来たのはギラギラと美しいタチウオだ。
「なんの魚だ。剣みたいだな」
アーノルドが俺の釣った魚をマジマジと見ている
「太刀魚っていってね、太刀つまり刀みたいだからタチウオ、とか立って泳ぐからタチウオとか呼ばれる魚なんだよ。歯が刃物と同じくらい鋭いから口元さわらないでね」
下手に素手で針を外すと例外なく手を切られるから、剣で首チョンパしてやり、そこから改めて針を外す。どうやらドワン達にも掛かったみたいなのでアーノルドに今の注意点を教えておいて貰う。
俺はブリックにタチウオのさばき方を教えなければ。塩焼きにするならぶつ切りでいいけど、これだけ大きいなら刺身でいきたい。骨有り皮付きより、身だけの方が好きなのだ。
しっぽは投げテンヤの餌にしよう。
ブリックにさばき方を教えた後にタチウオ用の投げテンヤを作ってしっぽを糸でくくりつけていく。投げテンヤは複数作っておいたから後は自分でやってくれ。
うっしゃしゃしゃっ!投げたら釣れるゴールデンタイム突入だ。
釣って首チョンパしては海水に浸けておいたらブリックが処理してくれる。やはり魚屋を連れて正解だ。イカの反応がなかったのはコイツが群で入って来たからだな。
ゲイル達だけズルいとシルフィードに言われてしまったのとダンがうちひしがれて帰って来たので代わってやる。
サビキ組にはさばいたタチウオの身を餌にブラクリ釣りに変更。それでカサゴが釣れだす。
あ、ブリックが魚の処理に追い付いてないわ。
それから釣れなくなるまで、俺も魚屋になってしまったのであった。
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