第490話 南の領地と商談
「次男のホーチミン・リークウです」
この人は繁華街の管轄だそうだ。しかし、こいつの息子が次代の南の領地の領主予定か。社会主義領とかになるんじゃねーだろうな?
「三男のアリナミン・リークウだ」
疲れに強そうな名前だ。カカオ畑周りとかサトウキビ畑の管轄だ。
「長女のミンミン・リークウですわ」
餃子作るの上手そうだな。まだ若そうだから末っ子かな?
俺がまだ行ったことのない地区の管轄だそうだ。何か特産があるのだろうか?
「リンダの父、ナンゴウ・ハッケイでございます。この度は漁村の発展にご尽力頂けるとのことで誠にありがとうございます」
あの漁村周りはハッケイ領なのか。ゲイル海釣り公園はハッケイパラダイスでもあるのだな。
皆がアーノルド達と俺に挨拶をしてくれた。皆の事はアーノルドが紹介していく。一応、アルの身分は伏せてジョンの友達として紹介されていた。
そして今回、ディノスレイヤ領と俺が管轄している街と領地でどんな事をしていき、南の領地との取引を拡大していきたい旨を説明していく。概要はイナミンからすでにされていたようだが三男のアリナミンが砂糖の事で難色を示していた。
「ゲイル殿、砂糖の流通が減ると伺っておりますが、どれくらい影響が出るとお考えなのかな?」
「正直な話をすると、うちの量産体制が整ったら値段を大幅に落とさないと王都への販売はほぼ0になると思う」
「それでも国が生産と販売の許可を出されたと・・・?」
「いや、うちも南の領地に喧嘩売りたいわけじゃないんだよ。だから最初にイナミンさんに相談したんだけどね。うちはディノスレイヤ領と西の庶民街の店で砂糖を使いたいだけだから白砂糖をメインに使うんだけど、今の値段じゃとても庶民街で使える値段じゃないし」
「では、うちを脅かすつもりはないという理解で宜しいかな?」
「もちろん。脅かすどころかアリナミンさんにはカカオの協力をお願いしたいんだよ」
「カカオ? 薬を売り出すつもりなのか?」
「いや、これとか化粧品とかにするんだ」
少し残しておいたチョコレートを皆に食べさせる。
「こ、これがカカオから出来ていると・・・・」
「最終加工は難しいからうちでやるけど、原料を大量に作って欲しいんだ」
「以前来られた時に拡張されたみたいだがもっと必要と?」
「そう。100倍くらい」
「なっ! 100倍? 数十年掛かるぞ」
「いや、協力を受けてくれるなら俺達が畑を作る。そっちは土地の提供と作業を受けて欲しい」
「アリナミン、黙ってその話を受けろ。すでに俺は承諾をした。ここの特産として必ず成功する」
「あ、兄・・、イナミン様」
「ゲイルを信じろ。このチョコレートという菓子はすでに王家の社交会で披露されている。殿下からも量産指示が出たそうだ。さっきゲイルも言ってたが、砂糖の件もちゃんと先に筋を通して来てるから疑う余地は無い。そこのロドリゲス商会に独占的に卸すという契約でいいな?」
「うん。それと運搬はどうするのだ?」
「私どもがさせて頂きます。大型荷馬車がございますので、魚もすべてお任せ下さい」
「大型荷馬車? どうやってあの山を越えるというのだ?」
「あ、それは来るときに整備してきたから大丈夫。休憩ポイントとかも作ってきたから、他の商人もここに来やすくなると思うよ」
は?
皆が驚くから春にでも見てくれればいいと伝えた。俺達が畑の開発をし、カカオは一括購入することで安価で仕入れをすることに。砂糖畑の農民をカカオに振り分けるから砂糖も自由に俺達が生産と販売をすることで合意した。
次は繁華街担当のホーチミンだ。
ここでは酒作りが特産になる。泡盛もどきとラム酒だ。すでに泡盛もどきは作られ始めてたので話が早い。ラム酒も糖蜜を使ってみるとのことで砂糖生産への影響は少ないようだ。
漁村の話は現地で詳しくすることになり、仕入れ値とかは直接交渉をする。ナンゴウは俺達が勝手にやってくれるだけでありがたいそうだ。
「私の所には何かございませんの?」
ミンミンだけ蚊帳の外だったので不服そうだ。
「ミンミンさんの所は何が名産なの?」
「糸と生地ですわ」
ビッグスパイダーの糸やリンダが着ている服の生地とかをミンミンの所で作っているようだ。
「おー、今回ミサが来た甲斐あったな。これからアクセサリーや服、化粧品のブランドを立ち上げる予定にしてるんだよ。リンダさんの着ている服が素敵だなと前来た時から思ってたんだよね。それにあのビッグスパイダーの糸を作る職人もすごいよね。あんな長い糸王都にもディノスレイヤ領にも無いから」
「そ、そう?」
ミンミンは俺が嬉しそうに褒めると照れ臭そうにした。養豚もミンミンの所らしいから肉の仕入れの話しもしていく。
「ゲイル様、仕入れ等のまとめは私がさせて頂いて宜しいでしょうか」
ということで細かい事は大番頭に任せることに。ありがたいことだ。
昼飯を食った後は親善立ち合いだ。
イナミンとアーノルド
ホーチミンとダン
アリナミンはドワン
それぞれ腕に自信があったみたいだがうちの圧勝。続いてジョンとアルとビトーがやる。ビトーだけが良い勝負でジョン達圧勝。
イナミンは負けてもうれしそうだったが、アリナミンは悔しいみたいだ。
「ゲイル殿は魔法使いと伺っているが剣も持っているのだな? 腕前はどれくらいなのか立ち合わせてもらいたい」
今まで砂糖の大半を任されていたからだろうか? 俺に対してどこか腑に落ちない事があるのだろう。子供の癖にと思ってても仕方がないよな。
「いいけど、俺は結構強いよ?」
「では宜しいということで」
イナミンが審判で立ち合いが始まるも瞬殺してやる。
「勝者ゲイル!」
「なっ!」
目を白黒させるアリナミン。
「アリナミン、盗賊達を殲滅したのはゲイルとダンが二人でやったのだぞ。敵う訳があるか。子供だからと見た目で判断するな。それにゲイルの持ってる剣をよく見せて貰え」
「こ、これは?」
「おやっさんがくれた魔剣。どの魔法でも纏わせられる優れ物だよ」
「何が優れものじゃ、それで料理したりするじゃろがっ。まったく魔剣の使い道ってもんが・・・」
俺が時々料理に使ってるのばれてたのか。
アリナミンは俺が強いと解って憑き物が落ちたかのように馴れ馴れしくなった。リークウ家は強さが信頼の証に繋がるのだろうか?
エイブリックはイナミンを気難しく変わり者だと言っていたが、リークウ家は相手を認めるまではそういう感じしか出さないのかもしれないな。俺達の場合は盗賊団を殲滅したことで初めから受け入れてくれたのだろう。
今日の夜も宴会だ。
男性陣は酒、女性陣はミンミンを中心にオシャレ談義に花が咲いていた。
明日から漁村に移動だな。いつになったら釣りが出来るのだろうか。それと釣り公園は無事なのだろうか? 波とか被って崩れてないといいんだけど。
部屋に戻ってから持って来たルアー達を眺めて、冬には何が釣れるのかワクワクしていたのだった。
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