第488話 男同士、女同士の会話

酒飲み達はまだ雪見酒を続けるみたいなので先に風呂から出るとサラが一人で残ってる。


「サラは風呂に入らないのか?」


「アイナ様と一緒に入る訳にはまいりませんので。私は後で頂きます」


サラはこういうのに固いよなぁ。


「ゲイル様。先日は講師に対する多大なるお給金を誠にありがとうございました」


「いや、あれはサラが頑張ってくれたお礼だよ。みなちゃんと育ってくれたから助かった。それより母さん達と一緒に風呂に入って来なよ。ミーシャはさっさと行ってるだろ?」


「しかし・・・」


「ここは温泉じゃないからミグルが出ちゃうとあっという間に湯が冷めるから早く行けって。母さんはサラが来ない方が気になるって。ここは屋敷じゃないし、旅の途中なんだから気にするな」


でもとかしかしとかしつこく言うサラに命令だと言って風呂に行かせた。


こう言わないとサラは絶対に行かないからな。俺に背中を押されたサラは風呂に行くことになった。



「やっと来たの?遅いわよサラ」


「も、申し訳ございません。アイナ様と一緒に入るのが申し訳無く・・・」


「何言ってんのよ。サラはこっち組ね。さっさといらっしゃい。ミグル、これで4対3よ」


「ぐぬぬぬぬぬっ」


実はサラはナイスバディの持ち主だったのだ、アイナはきょぬー組にサラを率いれた。


「マルグリッドっ! こっちに来るのじゃっ」


「えっ?」


「お前はワシらと同じじゃろうがっ」


「ミグル、マルグリッドはもうすぐこちら側になるわよ。成長する余地の無いあなたと一緒にしたら失礼よ。さ、マルグリッドこちらにいらっしゃい」


アイナはどちらにも属していないマルグリッドも自分の組に率いれた。


「ほら、5対3よ。ミグルあなたの負けね」


シルフィードとミサはアイナ達と自分を見比べてぼーぜんとしている。知らぬ間にアイナとミグルの対立に巻き込まれ、そしてミグル組に入れられているのだ。そしてその理由もハッキリと解ってしまったのだ。


「こんなもんに勝ち負けなんてないじゃろうがっ!」


「あらそうかしら? じゃあ、誰がどんなのか好きか当ててみる?」


「い、いいじゃろうっ」


「まず、アーノルドはこっちね」


「ぐぬぬぬぬぬっ、それには異論は無いっ」


アーノルドはきょぬー派決定。


「ダンもこちら側だと思うわ。ねっ、ミケ?」


「そ、そうやろか」


ぼっと赤くなるミケ。


ダン、きょぬー派。


「ど、ドワンはどうじゃ?」


「ドワンはわからないわねぇ。女に興味を示したのを見たことがないのよねぇ」


「えっ? ドワンのオッサン、女に興味がないのー? じゃあ・・・」


なぜかポッと赤くなるマルグリッド。


ドワン、そっち派認定。


「ジョンはどうじゃ?」


「あの子はどうかしらね?」


「うちのしっぽに興味示してたで」


ジョン、ケモナー認定。


「アルはそっち派かしら? ミグルとずいぶん仲良くなったみたいだし、シルフィードにも興味あるみたいだから」


アイナにそう言われてポッと赤くなるシルフィード。自分がそんな目で見られていた事を初めて知る。


アル、ひんぬー派決定。


「ベントはどっち派だと思うのじゃ?」


「ベントもシルフィードに興味あるけど、サラや私にべったりだったから、こちら派だと思うわ」


ベント、マザコン系認定。


「ゲ、ゲイルは絶対にこちら派じゃ。ワシやシルフィードを嫁にするくらいじゃからなっ!」


「?  アイナ様、ゲイルは結婚したのでしょうか?」


マルグリッドはゲイルの婚約の事が初耳だったので驚いてアイナに聞く。


「さぁ、婚約とか言ってるけど将来はどうなるかわからないわ。ゲイルはまだ全然その気がないわよ」


「そっ、そんな事はないっ」


ミグルはアイナの言葉を否定し、シルフィードはしょぼんとする。


「それにゲイルは本当はミーシャの事が好きなんじゃないかしら?」


「私ですか? えへへへ、私もぼっちゃまの事好きですよ」


アイナの言葉にショックを受けるミグル。ミーシャの好きですよとの返事に愕然とするシルフィード。


「さ、さっきゲイルくんは私のこと選んでくれたんだけどー?」


「それはミサと服のサイズが同じだったからでしょ? あの時にミーシャが寒そうにしていたらサイズが違っててもミーシャに渡したんじゃないかしら? それかミサに服を渡して、ゲイルはミーシャと一緒に毛布にでもくるまってたと思うわ。ゲイルはいつもミーシャを優先するでしょ?」


アイナが言った言葉に皆が今までの事を振り返る。確かにゲイルは常にミーシャを優先していた。自分から一緒に寝たりするのもミーシャとだけだ。


ミグルはぐぬぬぬぬぬっと唸り、シルフィードは光の消えた目でそうですねとしか答える事が出来なかった。



ーゲイルが出た後の男風呂ー


「ベント、まだ王都に残るんだな?」

 

アーノルドは息子の将来を聞く。


「うん、屋台の商会を立ち上げるつもり。もうすぐ形になると思う」


「そうか、卒業式にも出られなくて悪かったな」


「いや、それは大丈夫。母さんにも来るなって言っちゃったから」


「アイナはその事で寂しがってたが、子離れ、親離れする時期だと理解してるから大丈夫だ」


「うん、今から思うと悪いことしちゃったなとは思ってる。この前、仕事ぶりを見てもらったんだけど、喜んでくれてたよ」


「そうか。お前も順調に成長してるな。父さんも嬉しいぞ」


「ありがとう。あ、今回、父さんと母さんが二人ともこんなに長い旅に出て大丈夫なの?」


「それがな、俺がジョン達の修行に出ている間にゲイルに仕事をちょっと手伝って貰ったんだ。アイナに任せたらまた機嫌が悪くなるからな」


「ゲイルに?」


「まぁ、セバスに任せておけばなんとかなるから、見学程度のつもりだったんだが、帰ってみたら俺のやることがほとんど無くなってたわ」


「え?」


「2~3日で業務改善ってやつをやってくれててな、帳簿の計算を簡単にしたり、ルールを決めて仕事をやり易くしたり、人の配置を変えて得意な事に専念させたりとかだな。今までの3倍以上のスピードで仕事が処理されていくんだ。驚いたぜまったく」


「ほぅ、ゲイル様は開発以外にもそういった内部の仕事も素晴らしいのですね」


「西の街もエイブリックがよこした文官が相当優秀ってのもあるが、あの人数でやってるだろ? 他の所じゃ考えられんぞ。住民達もよく言うことを聞いてくれるってのもあるけどな」


「アーノルドさん、ゲイルの頭の中はどうなってるんですか?」


アルはゲイルと冒険をしだして、ゲイルと関わった所がどんどん変わって行くのを目の当たりにしているのだ。


「そんなの俺にも分からんよ。ベントもゲイルに計算方法とか教えて貰って成績上がったろ?」


「うん」


「まぁ、あいつの当たり前と俺達の当たり前ってやつの基準が違うんだろうな」


「それは父上にも当てはまります」


「そーだぜアーノルド様。強さの基準を自分と人が同じと思ってるところなんかそっくりだ」


「いや、ゲイルは母上そっくりだと思う。特に人が痛い目にあってるのを笑う所とか」


「そうじゃな、坊主はアイナそっくりじゃ」


だんだんとゲイルを褒める話からけなす話へと変わっていく。


「そういやアル、お前ミグルとずいぶん仲良くなったな」


「そ、そんな事ありませんっ」


「アイナにデコピンでやられた時も真っ先に駆けつけて馬車に運んでたじゃねーか?」


「お、俺達はパーティーで、ジョンと俺はミグルを守らなきゃならないから・・・」


「そうか。これからもしっかり守ってやってくれ。あいつも昔より楽しそうだからな。あとお前はシルフィードとミグルのどっちが好きなんだ?」


「なっ!何をバカな事をっ」


突然アーノルドにどっちが好きかと言われて真っ赤になるアル。


「いいじゃねーか、エイブリックには言わんから言えよ」


「そそそそそそんな事ないっ」


「ほー、そんなこっちゃあ、どっちもゲイルに取られるぞ」


「もーっ!いい加減にして下さいっ!」


アーノルドにからかわれ、真っ赤になったアルは風呂を出て行ってしまった。


「アーノルド様、アル達は多感な時期なんだから勘弁してやれよ」


「ほー、ダンも言うねぇ。最近ミケと仲良くなったからか?」


「なっ!?」


「お前自分でも気付いてねぇのか? イチャイチャしてるのみんな気付いてんぞ」


「してねぇっ!」


ダンも真っ赤になって風呂を出て行く。


「アーノルド、飲み過ぎじゃ。悪い酒になっとるぞ」


「そういやドワンは女っけねぇな。枯れてんのか?」


「アーノルド、きっさまぁっっ! ワシはそんな歳じゃないわっ!」




「アル、真っ赤だぞ?のぼせたんじゃないのか?」


「うっ、うるさいなっ」


何プリプリ怒ってんだよ?


続いて上がって来たダンも真っ赤だ。そんなに風呂熱くしたっけ?


あ、ドワンも真っ赤だ。酒か湯かどっちかわからんな。


女性陣もぞろぞろと出て来た。なんだ?チビッ子3人は青ざめてんぞ。ミグルは湯を温め直さなかったのか?


その後アーノルド達もぞろぞろと上がって来たので皆をまとめて温風で乾かしていった。


スプリングマットを敷いて羽布団をかけるとそれぞれが気に入った場所に落ち着いていく。夜中に布団の取り合いになるだろうから毛布も全部出しておいた。


枕投げとかやり出さないだろうな?



「ライト消すよー」


皆がいいよと言うので明かりを消す。


一応男女に別れて寝ているけど仕切りも何もないので案の定ミーシャが布団に潜り込んで来た。


「ぼっちゃまはやっぱり暖かいですぅ」


ぬくぬくの羽毛布団がミーシャの体温を包みこみ、俺も暖かくてすぐに寝てしまった。




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