第485話 大所帯
「お前、入学早々に何やってんだよ・・・」
「俺のせいじゃないだろ?」
「そうよ、女の子にデコピンするなんで。相手がミグルじゃないんだから」
アイナ曰く、ミグルにはデコピンして良いらしい。
無事? 入学式も卒業試験も終わったのでアーノルド達は一旦ディノスレイヤ領に帰るらしい。王家の社交会が終わった翌々日に南の領地に向けて出発だ。
アーノルド達が帰った後にエイブリック邸に出向き、シュミレと役割の打ち合わせを行い、パイナップルとバナナを作っておいた。
社交会当日の俺はアイスクリームマシン&魚屋担当だ。
エイブリックはチョコレートに感動し、絶対に量産しろと命じられた。もういい歳なんだから、両手にチョコバナナ持って食うなよ・・・
社交会当日はピリッとしてはいるが雰囲気がいい。ヨルドの仕切りが良いお陰だな。
まずはせっせとマスを刺身にしていく。こっちは軽くスモークしてカルパッチョにと。生のマスは吉と出るか凶と出るかわからから少なめにしておこう。誰かワサビの食べ方教えてやってくれよな。
後はムニエルでいいかな? これは焼くだけにしておいて、現場で焼きながら出してもらおう。
「ゲイルさーん、アイスクリーム追加お願いします」
「もうデザート出してんの?」
「これ目当ての人がいるんですよ。フルーツチョコパフェとか絶対足りません」
「フルーツはなんとか出来るけど、チョコ足りるの?」
「量を減らして対応するしかないですねぇ」
「いや、減らすより、食べる数制限してもらった方がいいんじゃないか? 一人1つで」
「また下位貴族の人食べられないかもしれませんよ」
「そんなのここでは気にしないでおこう。それは宴会担当の役割だ。中途半端に品質下げるより美味しい物を出すのがここの仕事だろ?」
「そうですね」
「うん、打ち合わせ通りの数を作ろう。但し予備は用意するようにね。ハプニングもあるだろうから」
ポットの作るデザートも数が増えているけど、新作は必ず大量に食う人が出て来るのだ。今年はチョコ関係だな。チョコそのものを出すとあっという間に食べ尽くされそうなので、チョコソースを使ったお菓子にしたのだ。
はぁ、終わった・・・
「ゲイル殿、今年はバッチリ巻き返しましたぞ」
「ヨルドさんの仕切りのお陰だね。刺身はどうだった?」
「初めは誰も手を付けなかったのですが、一人の男性が一口食べてから取りつかれた様に食べ出しましてな。そこからはあっという間ですよ」
「ちゃんと特別な処理をしてる魚だと説明してくれたかな?」
「勿論です。ただワサビの問い合わせが多くどこで手に入るのかと」
まだ流通させてないからな。
「まだ量産出来てないからね。2~3年は無理かな。そんなに人気あるならワサビ田増やしておくよ」
「ぜひお願いします。チョコはどうですかな?」
「あれは量産をお願い済みだけど、うちで原料作ってるわけじゃないからなぁ。もうすぐ南の領地に行くからどれだけ増やせるか聞いてみるよ」
「しかし、以前ゲイル殿が見付けたら買い占めておけと言われた意味がわかりましたぞ」
「いや、あれから売りに来なくて良かったよ。ここでは上手く作れなかったからね。途中までは向こうで加工して貰う必要があったんだ」
「いやそれでもあんな食べ物になるとは誰が想像できましょうか」
「お菓子だけでなく、飲み物にもなるんだよ」
「なんですと?」
「来年はそれも作るから楽しみにしててね」
美容ブランド店の方でボディクリームにココアバターとか使えるからココアが余ってくるだろう。それはお菓子とドリンクに流用だな。こりゃますますカカオの量産が必要になってくるか・・・
社交会が大成功に終わって上機嫌のエイブリックにも礼を言われ、来年も宜しくだと? まぁ、冷凍・冷蔵魔法陣を寄付して貰ったからな。年に一度の手伝いくらいしてやるか。
その夜はドン爺が来て夜中遅くまで話をさせられたのであった。
明日は南の領地に出発ということでアーノルド達が到着した。実家からはアーノルド、アイナ、ブリック。ぶちょー商会から、ドワン、ミサ、ジョージ。うちから、ダン、ミーシャ、シルフィード、ミケ、ジョン、アル、ミグル、俺。そこにベント、サラ、マルグリッドとビトー。ロドリゲス商会の大番頭と部下2名。
総勢21名、馬車3台、荷馬車大型2台だ。なんて大所帯なんだ・・・
マルグリッドは自分の馬車を出すと言ったが、分乗すれは大丈夫なのでやめてもらった。
「しっかし派手だねぇ、赤と白だけでこんなに派手に出来るんだねー」
ミサがコンテナを見て感心する。
大型コンテナの側面全面に描かれた旭日旗柄の紋章・・・ なんてことしやがるんだ紋章屋よ。お任せにするんじゃなかったと後悔したけどもう遅い。
ドワンはコンテナのフレームにやたら魔道ライト付けてあるし・・・
西門から出て行こうとすると、大通りを通って南門から出た方が早いと言われ、王都内をこの編隊で行かねばならなくなった。
先頭はぶちょー商会のトゲトゲ馬車、続いてディノスレイヤ家、旭日旗コンテナ、小型コンテナ、俺の馬車。
めっちゃ見られてる・・・
この編隊を見てざわつく大人達、悲鳴をあげる女性、泣き叫ぶ子供・・・
何にも悪いことをしていないのに。
こんな馬車が大通りを通ると危ないんじゃないかと思ったけど、誰も近寄ることなくさーっと大通りから人が離れていく。
「この景色は圧巻ね」
そう言ってマルグリッドはクスクス笑うが俺は気が気ではない。早めに抜けたいがボロン村の大型馬の歩みは速くはない。ドスン ドスンと強い歩みで皆を威嚇するように大通りを進んで行くのであった。
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