第480話 閑話:ジョン達の気配修行
「おー、お前達、このランニングによく付いて来れたな」
「ゲイル達にさんざんエイプの森で戦わされましたからね」
アルは自信満々にそう答える。
「じゃあ、すぐに修行に入るぞ。危ないから木剣を使え。そこの木を伐って自分で作るんだぞ」
「父上、木剣ですか?」
「真剣だと同士討ちした時にヤバいからな」
アーノルドはゲイルがダンを斬った事を思い出していた。
「ミグルは持ってる杖を使っても良いが魔法は禁止だ」
「はぁ? ワシに杖のみで攻撃しろと言うのか?」
「そうだ。相手は弱い魔物しか出ん所でやるからそれで十分だ。お前もジョン達を焼き殺したくはないだろ?」
「そんなヘマするかっ!」
「いや、それでも禁止だ。守れないないならここに残れ」
アーノルドにそう言われてしぶしぶ了承するミグル。
「ミグル心配すんな。俺達がいつもみたいに守ってやるから」
「今から何をさせられるのかわからんのだぞ?」
「暗闇の中で戦うんだろ? 夜のエイプ修行と同じだ」
それを聞いてアーノルドはニヤニヤ笑っていた。
ダンみたいにスパッと木を伐る事が出来ない二人は木剣作成に手間取り、その日は剣作りに勤しんだ。
「そろそろ飯だ。自分達で獲物狩ってこいよ」
「今から?」
「食わないなら別にいいけどな」
3人で日が暮れてから獲物を狩りに行くがなかなか難しく、ようやく狩れた頃には夜中だった。
ここに来るまではそこそこ居た獲物もあまり居ないのだ。
「今からさばいて食ってたら朝だよな」
くたくたになった3人は腹ペコになりながらも寝る事を優先した。今までの経験からそれが重要だということを学んでいたのだ。
交代で見張りをしながら仮眠する。
(ふむ、ゲイル達と冒険してたといっても遊び半分かと思ってたが、まともな冒険をしてきたようだな)
アーノルドは少し感心していた。
朝飯用に昨日のウサギをさばいていると食べる前に修行が始まると言われ、愕然とする3人。
「嫌ならいいぞ。ここに入ったら日が暮れるまで出れんからな。のんびり飯を食いたいならそうしろ。それで終わりだ」
アーノルドの冷たい言い種にしぶしぶ洞窟へと入る3人。
奥へ行くほど何も見えなくなる。
「父上、松明かミグルのライトの魔法は・・・」
「お前ら気配を消すのと察知する修行に来たんだろ? 明かりに頼ってどうする? 気配を探れ」
ジョンとアルは洞窟を舐めていた。夜に戦えたのだから暗くても大丈夫だと。
「まさか、こんなに見えないとはな。目が慣れるとか慣れないとかの問題じゃない・・・」
真の闇に目はなんの役にも立たない事を実感する二人。ミグルは経験があるのか驚いてはいないが魔法を禁じられた事で動揺している。
「お、お主ら、魔物の気配がしておるぞ。 しっかり守ってくれるんじゃろな・・・」
「わ、分かってるよっ! その代わりなんか来たら教え」
ゴンッ ドサッ
いきなり何かにぶちのめされ倒れるアル。
「どっ、どうしたのじ」
ゴンッ ふぎゃぁぁぁあ
続いてミグル、そしてジョンもやられる。
治癒の腕輪から光が出て立ち直る3人が一斉に木剣と杖を振り回す。
ガスンっ
手応えあったと思った瞬間
「ふぎゃぁぁぁあ」
ミグルが叫び声をあげる。アルの一撃がミグルを直撃したのだ。
その後はもうめちゃくちゃだ。誰に殴られたのか分からないまま全滅。アーノルドが助けに入ってからミグルにライトの魔法を使わせた。
「お前ら全然ダメだな」
明かりを点けると1匹のゴブリンがアーノルドに斬られていた。
「相手はゴブリンがたった一匹・・・」
「お前ら、同士討ちで全滅だ。治癒の魔石もほとんど使っちまっただろうが。明日からどうすんだよ?」
パニックになった3人はやたら滅多に木剣や杖を振り回してお互いを殴りあってたのだ。
取りあえず外に出ろと言われて退散する。まだ昼にすらなっていない。
「これで真剣じゃ危ないって意味が分かっただろ? 明日からどうするか話し合え。今日は終わりだ」
自分達の不甲斐なさにショックを受けて、減ってた腹もどこかにいってしまった。さばいたウサギも何かが持って行ってしまったようで何も残っていなかったのだが。
少しずつ落ち着きを取り戻した3人は取りあえず体力回復優先ということで狩りに向かい、ようやく晩御飯を食べる事が出来たのであった。
ーディノスレイヤ邸ー
「で、どこまでわかるようになったんだ?」
「あぁ、お互いの気配が分かるようになってからは同士討ちはしなくなったんだがな、しばらくはゴブリンにやられっぱなしだった。自分の所に向かってくる奴は分かるんだが、ミグルが集中的に狙われてな。 それを守りながらだとなかなか倒せなくてな」
俺が狙われてたのは気配が消せなかったのもあるけど、やっぱり魔力量のせいでもあるんだな。ミグルが狙われたのはそのせいだろう。
ミグルは初めは味方から、慣れて来てからは敵からさんざん殴られたらしい。その話を聞いて大笑いするアイナ。
俺もあの修行の事を知らなければ笑っていただろう。
治癒の腕輪を使いきってからは洞窟を出てから治癒水を飲ませて貰ってたらしい。痛みと恐怖でまさに地獄だったそうだ。
試しに3人に気配を消してもらうとだいぶ薄く消せるようになっている。アーノルドの及第点って言ったのがよく分かる。これからも意識して使って行けば上達するだろう。
ジョン達が帰って来た日の報告はこんな感じだった。今日は良く寝てくれ。
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