第473話 仕事もやらねば

風呂に入った後に残ってたウニでウニ丼を食べてるとドワン達がクソッーとか叫んでる。大物が掛かったは良いが根に潜られて取り込めなかったのだろう。


俺はカゴ罠を釣り場から離した所に仕掛けて先に寝た。翌朝ドワン達は一晩中やってたのか朝起きると屍と化していた。



「ゲイル、朝はごはん炊く?」


「いや、昨日の残りで海鮮粥でも作るよ」


「ぼっちゃん、なんか腹に溜まるもんも作ってくれ。あの粥ってのは旨いんだが食った気しねぇんだよな」


ダンが面倒臭いことを言うので肉の塊を渡しておいた。勝手に焼いて食べてくれ。



イナミンと朝飯を食いながら今日の予定を話す。カカオを作ってる所と船を作ってる所に案内をして欲しいのだ。他の人達は潮干狩りをして貝を捕って来てもらおう。


まずは皆で潮干狩りの場所に向かう。


「こ、この橋はゲイル殿が作ったのか・・・・?」


「向こう側に渡りたかったからね。邪魔なら帰るときに解除してから帰るよ」


「いや・・・是非このままで・・・」


橋を作るのは大規模公共工事だからな。この河幅に橋を掛けるのは何年も掛かるというか、この世界の技術なら無理かもしれない。


「これからも使うなら改良するよ」


ということで、馬車がすれ違えるくらいに幅を広げて欄干をつけていく。


唖然とするイナミン夫妻。金を払うので他にも橋を作って欲しいと言われたが断った。どれくらい持つか想像がつかないからだ。数年は持つだろうが橋は何十年も使うからな。責任重大過ぎて気軽に引き受ける事は出来ない。


潮干狩りポイントに着いたのでダンとシルフィードにエイの注意とか貝の取り方を教える為に残ってもらう。俺とイナミン夫妻だけで行こうとすると、ジョンとアルが付いてくるという。


「潮干狩りも結構楽しいよ?」


「いや、俺達は雇われた護衛だからな」


「ミグルは?」


「ミグルは他の者達の護衛だ」


あのメンバーに護衛必要かね?まぁ、いいけど。



カカオを作ってるところに来てみると意外と小規模だった。


「あまり作ってないんだね?」


「採取でも採れるし、あれ苦いだろ? 元気になるというだけだから飲む奴が少ないからな」


もったいないなぁ。


「これさ、もっとたくさん作ってくれってお願いしていいかな? その後の加工もお願いしたいんだけど」


「構わんが、そんなにたくさん何に使うのだ?」


「お菓子に加工するんだよ。上手く行けば常識を覆すよ。全面協力してくれるなら共同開発って事にしてもいいけど」


「どうするんだ?」


「イナミンさんの所はカカオの生産と加工及び砂糖の提供、うちはそれを製品に加工する。運び賃を抜いた売上を折半とかかな。生産はディノスレイヤ領、販売は王都が中心になると思う。熱に弱いお菓子だからここで売るには冷蔵設備があるところじゃないとダメかな」


「よし、その条件を飲もう」


「製品見たことも食べた事もないのにそんな簡単に条件飲んでいいの?」


「お前がそんなに自信たっぷりに言ってくるのだ、勝算はあるのだろ?もしダメでもうちにはそれほどダメージも無いからな」


ということでカカオの増産決定。


イナミンがカカオ農家の人に増産を指示する。が、通常にやってたら増産体制に入れるのは何年も先だ。


1本の木を成長させてカカオの実を収穫してもらい、辺り一帯を開拓して種を植えて行く。そのまま一気に木を成長させて、今生えてる木と同じくらいの状態にしておいた。立派なカカオ畑の出来上がりだ。


バナナの葉で発酵、その後の乾燥させる工程を説明していく。領主が出来た加工済みのカカオ豆を全部買い取ると言うと喜んで他の者にも手伝わせると言っていた。


雨避けの屋根と貯蔵庫を作っておく。扉は自分達で付けてね。


昼飯を軽く作って食ってから移動。



次は船大工の所だ。


どんな船か説明していく。あまり大きすぎても操船出来ないかもしれないので、ほどほどにしておく。それを3隻発注。請求は一旦領主にしてもらって、それをぶちょー商会に回してもらうことにした。見積りはまだ出てないけど、領主相手にぼったくり価格にはしないだろう。


このクラスの船は船着き場が必要だと言われたので漁村に作っておこう。河を使って海に運ぶらしいけど、あの橋の下通れるよね?



「ゲイル、お前は他領でも同じように発展させていくつもりなのか?」


アルは俺がここの領地の為に動いているように見えるみたいだ。


「いや。俺が欲しいものを要求しているだけだよ。取引ってやつだね。それがお互いの為になった方がいいだろ?」


「それはそうだが、上手くやればもっと安く手に入るのではないか?」


「まぁ、そうだね。でも片方だけ利益が出るような関係は長く続かないんだよ」


「どういうことだ?」


「王都に帰ったら俺の言ってる事分かると思うよ」


「意味がわからんぞ」


「多分揉め事が発生してると思うんだよね」


「誰が揉めてるのだ?」


「ロドリゲス商会と貴族相手に商売してる商会だよ。西の街の生産品はすべてロドリゲス商会に卸すようにしてきたから」


「それが何故もめるのだ?」


「貴族相手の商会の仕入れ額が大幅に高くなるからだよ。今までは生産者から直接格安で買って貴族に高額で販売してて大儲けしてたけど、それが出来なくなるからね。嫌なら他の街か外から仕入れたらいいんだよ。右から左へ流すだけのやつらにそんなに儲けさせる必要ないよ。」


「西の街の生産者はロドリゲス商会に売るところが変わっただけだろ?」


「ロドリゲス商会には特権を与える代わりに買い取り額を上げて、豊作で採れ過ぎても値段を下げずに生産物を全部買えと言ってある。だから生産者は安心して作れるし、買い取り金額も増えた。生産する種類を増やしていってるし、売る場所も作ってるからロドリゲス商会が損することはないから大丈夫なんだけどね」


「もめてるのはどうするのだ?」


「ロドリゲス商会と生産者達には俺の命令だと言えと言ってあるから、フンボルト達が窓口になってるだろうね。ロドリゲス商会に直接嫌がらせするかもしれないから衛兵団長にも注意してくれと言ってあるんだよ」


「そんな先の事まで読んでるのか?」


「読むっていうか、こんなの誰でも想像付くよ。今回は貴族相手の商会だけが儲かってるから関係が終わったんだ。商売ってのはどっちも儲からないとダメなんだよね」


「なるほどな」


「ここの領地の気質って言うのかな?イナミンさん含めてなんだけど、どことなくディノスレイヤ領と似てない? 恵まれた土地だというのもあるけど、みな楽しそうに生きてるじゃない。だから協力体制でも上手く行くと思うんだよね」


「うむ、ゲイル殿とは上手くやっていけるだろう。これからも是非宜しく頼む」


「こちらこそ宜しくお願いします。イナミンさん」


ここには俺の欲しい物がたくさんあるし、イナミンとも気が合う。きっと良い関係を続けていけるだろう。


アルは護衛と言いながら俺が何をするのか見に来たんだな。東の領地の住民とここの住民達の違いをよく見ておいてくれ。



イナミン達はもう一泊してから帰るみたいなので、今日は海釣り公園で目一杯遊ぶのだそうだ。


俺も仕事は終わりだ。戻ったら何釣りしようかなぁ。のんびりヤエンがいいかな。シルフィード達にアジを釣ってもらってのんびりそれを泳がしておこう。タゴサにも教えてやろう。ヤエンは比較的簡単に作れるからエギが無くなっても自分達でなんとかなるだろうしね。



こうしてイナミン達の揺れの大きい馬車に少し酔いながら海釣り公園へと戻ったのであった。





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