第472話 補完計画
俺の海の幸補完計画を皆に話していく。
「費用はゲイル様が出して下さるというのは本当でございますか?」
「もちろん。他の領だと魚を上手く扱えないだろうからね。いま王都にたくさん食堂と宿を作ってるからいっぱい捕ってくれても全部買うから大丈夫。他にどんな魚が捕れるの?」
キスや鯛、ヒラメとか色々といるらしい。ブダイやコブダイは売れるだろうか? 個人的にはベラ系の大型魚はいまいち好きじゃないんだよね。
「冬になると鰹よりもっと大きい魚がいるのですが、なかなか釣り上げるのが難しくて」
ん? カジキかなんかかな?
どんな魚か聞いてみる。カジキもいるし、マグロもいるようだ。しかし、ここの舟と道具じゃ太刀打ち出来ないらしい。あと刀みたいな魚とかか、それは太刀魚だな。
「わかった。どれでもいいから冷凍してくれたら買うよ。それを調理してみてダメなやつはそのうち除外ってのはどう? あと大型の魚を釣る為の方法は考えるよ。イナミンさん、ここは大型の船って作れるかな?」
「それは船を作ってる奴に聞いてみてくれ。ゲイルが想像しているのがどんなのか見当も付かん」
なるほど。じゃあ直接聞こう。
「ゲイルよ、いつまでここにおる気じゃ。いつ釣り場に行くんじゃ?」
ドワンは釣りがしたくてしょうがないみたいだ。取りあえず今日は計画だけ話して終わりにするか。
「村長さん、タゴサ。王都に帰ったら体制を整えるよ。計画は今説明した通りに進めるから宜しくね」
ずっと変化が無かったこの漁村に突如として訪れた海の幸補完計画に付いていけない村長とタゴサだった。
今から釣り場に移動すると言ったらタゴサがもう少し俺と話がしたいということで付いてくる事に。話もだけど、ドワンが使っていた釣具に興味があるみたいだ。
「ここが釣り場か?」
「この道の先だよ」
ゲイル釣り公園(仮)にご案内だ。馬車はここに停めておく。
「ゲイル、馬達はどうするんだ?」
「放し飼いだよ。餌も勝手に食べにいくから。イナミンさん達の馬もシルバーに面倒みてもらうよ。ほっといても大丈夫だよ」
疑わしい目をするイナミン。しかし、シルバーは任しとけって感じで首を振ったので大丈夫だろう。
よし、誰も来た形跡は無いな。
入り口の壁を消して前に進む。
「なんじゃこりゃぁぁぁ」
イナミン、お前は誰かに撃たれたのか? 腹を撃たれた
「釣り施設を作ったんだ。磯場は危ないからね。ここの権利を俺に売ってくれないかな?」
「い、いや、金はいらんから好きに使ってくれ・・・」
南の領地に大きな利益をもたらすであろう俺からは金はいらんとのことだった。これでこの磯場は俺の土地だ。やった!
正式にゲイル釣り公園と名付けよう。
「さっそく釣りしようぜっ!」
ジョンとアルは張り切る。
寝泊まりする部屋を増やしてイナミン夫妻の寝具は馬車のマットを持って来ることに。
タックルは10セット。タゴサも来たから人数ピッタリだ。もしどれかダメになったらマス釣り用のを使うしかないな。サビキならそれでも十分だけど。
作って来た仕掛けはエギ、ヤエン、ミノープラグ、メタルジグ、サビキ、ブラクリだ。
釣り場の先頭付近は大物が掛かった時に俺が飛んでいかないように壁を作る。無い方が釣りやすいけど、いつもダンがそばにいるとは限らないからな。踏ん張る足場があるとなんとかなるだろう。
「しかし、ゲイル殿が居れば大掛かりな工事が一瞬で終わるのだな」
「飾り気は無いけど実用的には十分でしょ。この屋根の上には風呂もあるから」
俺の馬車から魔道ライトを取り外し、ご飯を食べるところや風呂場、集魚灯代わりに設置していく。人数が多いのでバーベキューコンロだけでなくオーブンも作った。しばらくパンを食べてないから仕込んでおこう。
「ゲイルさん・・・」
「タゴサ、ゲイルでいいよ」
「ゲイル、俺にもドワンが使ってた釣具を貸してもらえないか?」
「ちゃんと人数分あるから大丈夫だよ。使い方はね」
と説明していく。
試しにオモリだけ付けて投げると様になっている。こりゃ、元の世界でもやってたな。
「凄いなこれ」
「あまり大きい魚には魔法が使えないと釣りあげられないけどね。それあげるよ」
「い、いいのか?」
「自分で作ったやつだからね。糸も予備があげるから」
タゴサに現金収入はほとんど無いみたいだから、タックルと予備の糸をあげる事にした。針とかも帰りにあげよう。そのうち稼いだら次からは買ってもらうけどね。
「ありがとう。俺には何も返せるものが無いが、ちょっと待っててくれ」
そう言ってタゴサはタッと走り出して岩場の方から海へ飛び込んだ。
長い間潜っては何かを捕って岩場に置いてを繰り返している。そしてそれを腰に付けた袋に入れて持ってきた。
「これは潜らないと捕れないからな」
手に見せてくれたのはあまり見たことがないサザエみたいなものと白っぽいウニだった。どちらもデカいな。
温暖な海にウニとかいるのか?
鑑定ではミナミサザエと白ウニと出たけど、美味らしい。
「どうやって食べるの?」
「焼いて食べるんだ。ウニは好き嫌いがあるかもしれんが今は旨い時期だ」
へぇ、焼くのもったいないから生で食べよう。サザエはハマグリと同じタレでいいな。
「ありがとう。晩御飯に使わせてもらうね」
俺も潜れるけど、シュノーケルや水中メガネがないとダメだ。裸眼でよく水の中見えるよな。
さっそくドワン達が釣りを開始しているがまだ釣れていない。ダンはイナミン達に道具の使い方を説明しているようだ。どうやらイナミンも強化魔法を使えるみたいで、アーノルドと同じく闘気だと思っていたらしい。魔法だと言われて驚いていた。
「今は釣れないんじゃないか?」
タゴサはそう言うが、釣りに餓えていた者達に取ってそれは関係ないのだ。まず釣るという行為をしたいのだ。
2階に登って風呂を作り直す。男風呂と女風呂を分けて大きくする。もしかしたらイナミン夫妻は一緒に入るかもしれないので別風呂も作っておこう。壁をこうやってやれば海は見えるけど、覗こうとしない限り見えないな。
夕食の下ごしらえも終わったので俺も釣りをしよう。
「きゃー釣れたっ!」
リンダとミグルはシルフィードにサビキを教えられて一緒に釣っているようでアジが釣れ出した。この前と同じサイズだ。
ダン達男性陣はプラグやメタルジグを投げているがまだヒットは無い。
俺がエギをセットしているとタゴサがなんだ? と聞いてくるので教え、並んで釣る事に。今回はタモを作って来てあるので取り込みも自分達でしてもらおう。
しゃんしゃんと竿をしゃくって待つとすぐにヒット。タゴサもさっそく釣っている。
「こんなに簡単に釣れるのか?」
驚くタゴサ。いや、あんた初めてなのに上手いじゃないか。
「ここでスルメとか作るのにどうやって釣ってたの?」
「アジとかの小魚に針をこうやって付けて釣るんだ。当たりはすぐ来るがなかなか釣れないものなのだが」
どうやら普通の針をいくつも垂らして引っ掛かるのを待つらしい。よくシングルフックでやってるよね。
何杯かイカを釣ったのでまだ釣ってないハタ系にチェンジ。ブラクリにゲソを付けて投げ込む。イメージはワームだ。
着底した瞬間にゴゴンと来たっ!
おおー、いいサイズの
続いて釣れて来たのはオニオコゼだ。気を付けて取り込んでと。危ないから剣でトゲ切っておこう。魔剣で切ってるのはドワンに見つからないようにっと。こいつの刺身絶品なんだよな。唐揚げも食いたいからもっと釣れないかな。
下足ワーム面白ぇ。グッドサイズばかりだから尚更だ。
「面白そうじゃな」
わっ!びっくりした。
夢中になってて後ろにドワンが居るのに気が付かなかった。
「おやっさん、どうしたの?」
「なんも釣れん」
ジグやプラグには何も反応が無いようだ。
「じゃ同じのやる? ヒレに毒持ってるやつも釣れるから気を付けて。なんか釣れたら教えて」
ドワンに下足ワームの仕掛けを付けてやる。
ポイッと投げてしばらくしたら大きい引き
「がーはっはっは! さっそく来おったわい」
めっちゃ暴れてんな。でもこれ・・・
「ん?重いが引かんようになったぞ」
やはり上がって来たのはウツボだ。すでに絡みまくっている。
「なんじゃこれは?」
「ウツボ。噛むから触っちゃだめだよ」
糸を切ってポイしようとするとタゴサが食うから捨てるなという。
タゴサはさばいて干す準備を始めた。見事なお手並みだ。さすが漁師。
さて、そろそろ晩飯の準備を始めるか。
ミナミサザエは普通のサザエと同じような感じで、タレとの相性抜群だった。タゴサは初めて食べるタレの味に感動していた。酒飲み連中以外ははらわたを食べなかった。俺も苦手だ。
ウニを生で食べるというと驚かれたが、めちゃくちゃ旨い。少し柔らかい分口の中でとろけるような味だ。こいつは残念ながらここに来ないと食べられないだろう。日持ちしないからな。
これも酒飲み連中しか食べなかった。お子ちゃま舌なやつらめ。
オニオコゼは刺身も唐揚げも絶品だ。
飯食ったあとも釣りを続けるみんな。下足ワームは好評で色々なものが釣れてくる。ドワン達は大物が釣りたいというので、沖に向かってぶっ込釣りをやらせておいた。
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