第469話 準備
残念ながら本日は青物の回遊は無しだ。遠投しても釣れるのはエソばかり。いつもはリリースするけどカマボコが食べたくてキープした。
シルフィードはアジを追加、ダンは釣りをせずにハマグリを食べる準備をしている。
朝飯はアサリの味噌汁とアジの干物、そして焼きハマグリ。
「アジの干物旨ぇよな」
ダンは何匹食べるつもりだろう?確かに干物にするには小さいけどね。
このおかずと烏骨鶏の卵かけご飯を食べる。これ、めちゃくちゃ旨いわ。晩御飯に続いて腹がはちきれるほど朝飯を食った後に出発しようとすると、
「ぼっちゃん、沈めてた罠どうすんだ?」
すっかり忘れてた。10個カゴを沈めてあったんだ。
ロープを引っ張りながら魔法でカゴを持ち上げて引き上げる。
「わ、めっちゃ海老入ってんじゃん」
車エビだろうか?どのカゴにもワシャワシャと入ってる。岩場の方に仕掛けたのには伊勢海老まで・・・
「デカいザリガニだな」
「これは伊勢海老ってやつだよ。他のは車エビ。どれもめちゃくちゃ旨いよ」
さて、どうやって持って帰ろうか。おがくずがあれば生かしたまま持って帰れるけど無いしな。仕方がない冷凍しよう。
何匹か味見の為に残して冷凍する。
天ぷ・・・、薄力粉が無い。くそっ
すぐに食べられるのは生だな。
頭をぶちっとやって皮剥いててワサビ醤油でいくのがいいけど、口の中で動かれるのは嫌なのだ。活きた海老をすぐに食べると身がびくびくするのも苦手だし、伊勢海老の刺身はあまり好きではない。味はともかくあの歯触りが苦手なのだ。
伊勢海老は冷凍してしまおう。
車エビはぶちっとやってから皮剥いてしばらく冷やしてから食べよ。
背わたを取り除いてから2匹ずつ刺身で食べてみる。
「お、旨ぇな」
「なんかまだ生きてる・・・口の中で動いたっ」
まだダメか。俺はもうしばらく待ってから食べた。頭はもったいないけど海へポイ。帰ってから冷凍の奴で味噌汁とかにしよう。
「なぁ、ここに誰か来ると思う?」
「どうだろうな。あまり人が通ってなさそうだったが、道っぽかったからいつかは誰か通るんじゃねーか?」
だよねぇ。
次に来た時にあの釣り公園に知らない人が居たらいやだな。
ということで、入り口はふさいでおく。乗り越える事も可能だけど何もしないよりマシだろう。俺の土地でもないから看板を建てておくことも無理だしな。
それからシルバー達に魔法草を思う存分食べさせた後に帰った。
途中で帽子の婆さんの所で海鮮料理をご馳走して、アジの干物をお裾分け。ブリ?の照焼をとても喜んでくれて、そのまま一泊させて貰ってから帰る。
上機嫌でイナミン屋敷に戻るとドワンとミグルの機嫌が悪かった。
「どうしたの?」
「素材の融合が出来ておらんから、蒸留器の製作はまだじゃ」
あー、ここ錬金釜が無いの忘れてたよ。
「明日、素材作るよ」
「当たり前じゃ。それに酒も調味料も全部持って行ったじゃろ」
あ・・・
ドワンは魚醤とワインの組み合わせ、気の抜けたエールしか飲んでいない様だった。
「ミグルはどうしたの?」
「こやつら何度教えてもまともに薬草の採取が出来んのじゃ」
「回復草や魔法草の採取か?」
「そうじゃ。まったく金にならん」
「魔法草ならシルバー達がばくばく食ってたぞ。あれ少し甘いんだな」
「何っ?魔法草は貴重なのだぞっ」
「めっちゃ生えてたし」
「おぅ、俺もあんな群生地帯初めてみたぜ。ニセのも生えてるがな」
どうやら森の中をさんざん探し回ってたそうだ。通常は群生しないらしい。
「ところでそっちはどうじゃったんじゃ」
「ちゃんと釣りする場所作って来たよ。お土産物たくさんあるから、明日の晩御飯は海鮮尽くしにするよ」
「今食えるものはあるのか?」
「お酒のアテなら作ってあるよ。ちょうど食べ頃だと思うから」
食堂でそんな話をしてるとイナミンとリンダがやってきた。
「どうだったんだ?」
「実は漁村には怪しまれて入れてもらえなかったんだよね」
「そうなのか?」
「うん、イナミンさんのところでお世話になってるとか俺の身分を話しても信じてくれなくてね。手紙かなんか書いて貰えないかな?」
「それは構わんがその手紙を信じないかもしれんぞ」
「そうか、じゃあどうしようかなぁ」
「じゃ私が一緒に行こうかしら?」
え?
「お前が行くのか?」
「久々に泳いでみようかしら?」
「海水浴か。そういえば何年も行ってないな。よし、俺も行くか」
なんと領主夫妻参戦。イナミンは久しく領内の見回りもしないといけないみたいでそれを兼ねて一緒に来ることになった。
リンダは自分の水着を新調するので一緒にシルフィードとミグルに水着を作ってあげるとのこと。
晩飯の前にタコワサと泡盛もどきを出す。
「これはなんだ?ずいぶんと鼻にくる辛さだが・・・」
「タコワサだよ。タコとワサビの茎を出汁に漬け込んだんよ。酒のアテにぴったりでしょ」
「おお、そうだな。というかタコとワサビとはなんだ?」
ダンが代わりに説明してくれる。他にも刺身とワサビとか。ドワンはばくばく食って飲んでる。俺達がいない間のうっぷんを晴らしているようだ。
ミグル達はタコワサがいまいちみたいだな。
翌日から蒸留器の素材作りをしてから包丁を作ってもらう。そう刺身包丁だ。へんな形だと言われたけどどうしても欲しいのだ。
後は鉄をわけて貰ってタコ焼の鉄板作り。40個作れるのを二つ作る。みんな食べだしたら家庭用サイズだと追い付かないからな。
晩飯は
うん、この前食べたばっかりだけど旨いよな。
「これが領内で捕れたものばかりだと言うのに驚くな」
「米と調味料の違いがあるけどね。流通が盛んになればお互い色々と手に入るようになるからいつでも食べられるようになるよ」
「しかし、ゲイル殿みたいに保存魔法が使えないと無理だろう?」
「いや、ちょっと考えがあるんだ。この領内で魔石は手に入りやすい?」
「そんなに大きいものでなければな」
「じゃ、大丈夫かな。帰ったら新鮮なまま運べる物を作るよ」
そう、冷蔵・冷凍コンテナを作るのだ。生鮮食品専用のコンテナタイプの馬車を作ればいいのだ。
ボロン村のデカい馬で大型コンテナ。馬2頭立ての普通車、領内で移動する小型車とかだな。しかし、海がある町で生の魚を食べるのが驚かれるということは漁師の魚の扱い方が悪い可能性がある。漁村に冷蔵・冷凍設備を作ってやらんといかんかもしれん。まぁ、これは投資だな。
一週間ほどここでやる準備を終えていざ鎌倉・・・ いや、釣り公園・・ 漁村へGO!
自分の馬車とリークウ家の馬車で漁村へ向かう。婆さんの所は今回素通りだ。
ジョンとアルが御者をするとのことなのでリークウ家の馬車に先行してもらい後を付いていく。
こっちの客車は俺が冷風を出して冷やしてるから快適だ。シルフィードも嬉しそうだ。
「ゲイルよ、ワシの水着姿が楽しみか?」
ミグルがどや顔で聞いてくる。
「いやまったく。お前なんかパンツ一丁でもよかったんじゃないのか?」
「なんでそんな事を言うのじゃっ!」
「隠す胸なんてないだろ? 皆が分かるように背中とかお腹とか書いといてやろうか?」
べしべしっと殴られる。今のは自分が悪いのは分かってるのだが、どや顔にイラっとしてしまったのだ。
ぷんすか怒って拗ねるミグル。
「いい加減にせんかっ」
ドワンはダンとシルフィードが何回も釣りの話をするので拗ねていた。今もその話をしている。
ミグルが拗ねてるのはまだ可愛げがあるけど、ガチムチの親父が拗ねても可愛くないのだぞ。
「坊主、絶対に釣れるんじゃろな?」
「どうだろうね。海釣りに絶対はないからなんとも言えないよ」
「釣れんかったらどうなるか覚悟しておけよ」
それは海に言ってくれ。
潮見表が無いからどんな潮かわからない。まぁ潮回りだけじゃないからなんとも言えないけど・・・
また大物釣れるといいなと願いながら漁村へと向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます