第467話 海鮮祭り
昼から周りの状況を確認しにいく。シルバー達が何を食っているのか気になっていたのだ。
「シルバー、お前達が飯食ってる所に連れてって」
そうして連れて行かれた所は草むらだった。良かったサトウキビ畑じゃなくて。
鬱蒼と生い茂った草むらに通り道が付いている。シルバー達が歩いた道だろう。この背の高いススキみたいな草を食ってるわけじゃないんだな。
それを抜けると違う草が一面に生えていた。シルバー達はその草を食べ始める。
「ぼっちゃん、これ魔法草だぜ。こんな群生地帯見たことがねぇ」
これが生の魔法草なのか。
「誰か植えてるわけじゃないよね?」
ダンはいくつか草を手にとって確認していく。
「ニセ魔法草と混じってるから違うだろ」
「そんなのあるの?」
「このギザギザの数が違うんだよ。新人がよく間違えて採取してくるぞ」
シルバー達をよく見ると食べる草を選んでるようだ。ダンは魔法草だけ食べてるんじゃねーかとのこと。
ダンに教えてもらって本物とニセ物を見比べる。よく見るとギザギザの数が違う以外にも細かな違いがある。ニセ物は上から2番目のギザギザが少し丸かったり葉脈が細かったりする。
「シルバーはなんで違いがわかるの?」
そう聞くと魔法草を咥えてふんふんと押し付けてくる。
「食えって言ってるのか?」
ぶんぶん
シルバーに勧められた魔法草を少しかじってみると薄甘い。なるほど、草の中では魔力が高いから甘く感じるのか。試しにニセ物を齧ると苦味のあるただの草だ。
「ゲイル、草って美味しいの?」
「魔法草はほんのり甘いね。シルバー達が喜んで食うはずだよ。こいつら甘いの好きだからね」
シルフィードもダンも魔法草をかじって確かめる。
「本当だな。食ったのは初めてだが、少し甘いんだな」
「うん、食べれなくはないね」
そう食べれなくはないぐらいで食べようとは思わない味なのだ。馬達にはご馳走なのかもしれないけど。
しばらくシルバー達のご飯タイムに付き合ってから出発。
「どこに行くんだ?」
「山から河が見えてただろ?そこに行ってみようとおもうんだよ。」
「何しに行くんだ?」
「いや、河口って所に行くと貝が取れるんじゃないかなってね」
「シジミとかか?」
「シジミは汽水にもいるけど、欲しいのはアサリとかハマグリとかだね。干潟があるといいんだけど」
西に向かって馬を走らせる。麦わら帽子と冷たいタオルのお陰で暑さもマシだ。温くなってきたら魔法で凍らせなおしてやる。
「おお、思ったよりデカイ河だね」
干潟は河の向こう側に見えるが結構大きな河は馬で渡れるほど浅くはない。
「向こう側に行きたいんだよね」
「橋がねぇから上流まで橋を探しに行かなきゃなんねぇぞ」
夕方には釣りをしないといけないので、そんなタイムロスは嫌だ。
「じゃ、橋作るよ」
アーチ状の橋脚を作りそこに橋を作る。思ったより魔力を使う。馬2頭が並んで通れるくらいの幅とはいえ当たり前だな、通常は何年、何十年かけてやる公共工事なんだから。
魔法水を飲みながら作業を続ける。水流に流されないように土台は楕円形で・・・
日本の橋を思い出しながら作る。
「さ、これで渡れるよ」
「上流まで探しに行った方が早かったんじゃねーか?」
「橋があるかどうかわかんないじゃん」
まぁ、俺の魔法は無料だから損した訳でもない。それより干潟に向かってレッツゴーだ。
行ってみると干潟といっても砂地混じりの場所で所々に水溜まりの様に丸くなってる場所がある。
「ダン、シルフィ、その水溜まりの所に入っちゃダメだよ」
靴を脱いでズボンの裾を捲って歩いてるのだが、二人がその水溜まりに足を浸けようとしたのを止める。
「ダメなの?」
「エイっていう魚がいるかもしれないから。そいつのしっぽの付け根に毒針があるんだ。」
試しに土の棒を作ってつついてみる。
バチャバチャっ
やっぱり。
そいつを掘り起こして外に出す。アカエイかと思ったけど少し違うな。鑑定ではクロエイとでたけど、そんなのいたかな?
「ほら、ここに毒のトゲがあるんだよ。こいつにやられるとヤバいから気を付けて」
「こいつも食えるのか?」
「食べられなくはないって感じ。このペラペラしたとこを食べるんだけど、さばいてすぐに食べないと臭いんだよ。干物にすると酒のアテになるんだけどね。他の旨い魚がたくさんあるから逃がそう」
まぁ、エイがいるなら貝もいるはず。
熊手を作ってみんなで掘ってみる。
お、ザクザク獲れる。これデカいけどアサリだな。
二人にもやらせて貝採りだ。貝を撒いたのか? と思うくらい簡単に獲れる。汚染されていない海の貝には毒もないだろうし安心だ。
「たくさん獲れたねぇ」
アサリとハマグリが大量だ。あとこいつはなんだろう?ハマグリみたいだけど少し違うな。ホンビノスだろうか? 鑑定ではニセハマグリと出てるけど食用可、美味と出てるから問題ないけどね。
さて、お目当ての物も手に入ったし、帰りましょう。
ちょうど夕マズメに戻れたので貝の砂抜きをしておいてから釣り開始だ。ダンはタコ釣り、シルフィにはイカ下足を餌に根魚を狙ってもらう。
アコウ(キジハタ)やアオハタなんかが釣れてくる。やはりグッドサイズだ。サビキよりガツンとくる当たりが楽しいのか夢中なって釣るシルフィ。根に潜られては もうっ! とか感情丸出しだ。そう車の運転と釣りは人を変えるのだ。
ダンもタコを5ハイも釣っている。
俺はアオリイカが入れ食いだ。ヤエン作ってもいいな。錬金魔法で金属加工すればエギより簡単に作れるし。
「さ、飯にするよ」
満足した俺達はお楽しみの晩御飯だ。
炭の準備をしてるとダンが、
「あれ?焼き肉にするのか?」
「何言ってんだよ。貝を焼くんだよ。少し旬からは外れるけど、ハマグリはめちゃくちゃ旨いからビックリするぞ」
ブリ?、カンパチ、イカ、マハタの刺身、ハマグリの炭焼き、アジは刺身とタタキ、なめろうにする。
なんて豪勢な晩飯だ。ブリ?はまぁ普通だ。脂のノリがいまいち。カンパチは歯触り、味共に抜群だ。残りのは熟成してから保存しよう。マハタはポン酢とワサビでいくと強烈に旨い。そしてアジは居着きのアジなのだろう。味も濃いし脂が甘い。もうずっと噛んでいたい気にさせられる。ブリやカンパチなんかは店で食べるのと釣ったものであまり差がないが、アジやイワシは店で食べるより、釣った物の方が断然旨い。というかもはや別物なのだ。これは釣り人の特権だろうな。関アジは店で食べた時も旨かったがその分めちゃくちゃ高かったからな。
おっと、ハマグリの口が開いたからひっくり返して醤油と酒、ほんの少し砂糖を混ぜたタレをちょいと入れる。それがこぼれてシュワワッという音と共に香ばしい匂いが・・・たまらんっ!
汁気たっぷりのハマグリをホフホフしながら食べ、貝に残ったおつゆを飲む。あぁ、何が一番旨いとか愚問だ。すべてが旨い。クソッ俺もダンくらい食べられたらいいのに。
口は食べたいのにもう腹が悲鳴を上げている。シルフィードも悔しそうだ。すでにお腹いっぱいなのだろう。
「なんだよ・・・?」
俺とシルフィードは延々とパクつくダンを恨めしそうな目で見ていたのだった。
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