第466話 色々釣れる
夜中も釣りをしようかと思ったけど、シルフィード用のサビキを作らねばならないからお預けだ。エギは材料が無いから作れない。ダンには違う釣りをやらせよう。
屋根の上に作った風呂は真っ暗だ。シルフィードが怖いと言うので俺も屋根に登って衝立をして明かりを灯してやる。
「夜の海って真っ黒だね」
星明かりはあるけど、月は出ていない。木も生えてないからなんか闇が続くようで怖くなるのはわかるな。
しばらくすると着替えて風呂から上がって来たので髪の毛を乾かしてやる。
続いてダンが入り、俺は最後にのんびりと入った。
下に降りると揚げ物に使った油でランプを灯して二人で飲んでいた。シルフィードも酒強くなってきたよな。それとも今までの酔っぱらった時はもっと飲んでたんだろうか?
「二人とも飲み過ぎるなよ。酔って海に落ちたら溺れ死ぬからな」
「薄くしてあるから大丈夫だよ」
ならいいけど・・・
俺は魔法で明かりを点けてせっせとサバ皮でサビキ作り。3セットあれば十分だろう。カゴは土魔法でっと。
「ぼっちゃん、それはどうやって使うんだ?」
「ここにサバのミンチを入れて、下に落とすだけだよ。針には餌をつけないけど、このサバの皮を餌と思って食いついてくるんだよ。結構色々な種類の魚が釣れるんだよ」
出来たらアジを釣って欲しいんだけどね。根魚とかでもいいな。
「ぼっちゃん、あのタコを簡単に釣れる方法はねぇか? あいつの唐揚げは最高に旨かったからな」
「じゃあダンはタコ釣りする? これくらいのカニがいただろ?それを捕って来てくれたら簡単に釣れると思うよ」
「カニ?」
「こんな奴いただろ?」
カニの物真似をしてみせる。
「あぁ、そういややたらすばしっこい変な生き物がいたな。あれがカニっていうのか?」
「そう、カニも旨いんだけど、人間が食べるやつはまた違うんだ。あの小さいのは餌にしかならないから。2~3匹いれば足りるよ」
ダンにはタコテンヤを作ってやろう。これは簡単に出来るし、根掛かりもしにくいからな。糸も太いのを巻いといてやるか。念のために買った太い糸があって良かった。
タコは基本パワー勝負だ。今日釣ったタコは底に着く前にエギに掛かったのだろう。底に張り付かれたらまず上がって来ないからな。それか砂地まで投げてたのかもしれん。
ようやく明日の仕掛けが出来たので寝る事に。明日は朝からメタルジグを投げよう。
シルバー達は勝手にどっかに行って食べて来ているけどまたサトウキビ食ってきたりしてんじゃないだろうな?
ワクワクしながら寝て夜明け前に起きる。
メタルジグをセットしてから朝飯の準備だ。イカの刺身とご飯を残してあるので、出汁で雑炊にしていこう。
「ぼっちゃん、えらく早起きだな」
「あったり前じゃん。朝陽が登り始める頃がチャンスなんだから。ご飯出来てるから食べるよ」
シルフィードも起きて来たのでイカ雑炊を食べる。ダンは物足りなさそうだけどもう他は作らないからね。
シルフィードにサビキの使い方を教え、俺は先端からメタルジグで大物を狙う。
ダンはカニを捕りに行った。
明るくなって来た時にバチャバチャっと海面が暴れだした。
やったナブラだっ!
身体強化と風魔法の併用でナブラの向こう側までメタルジグを飛ばす。
急いでシャカシャカ巻くとヒーーーットっ!
まったくスレてない魚はあっさりとメタルジグを食った。
「ぬぉぉぉぉぉっ!」
ちっこい身体が持ってかれそうになるくらい強い引きだ。青物なのは間違いないが何が掛かったかまではわからない。
慌ててドラグを調整する。ラインブレイクというより身体が持っていかれそうなのだ。身体強化しても体重の軽さはどうにもならない。このままでは竿を離さないと海に引きずりこまれてしまう。
とっさに土魔法で囲いを作り、身体を固定してドラグを締める。それでも尚ラインが出ていく。
沖に走ってくれたから良かったけど、潜られたら終わりだったな。
「ゲイル、大丈夫?」
「身体を固定したから大丈夫。それより危ないから離れてて」
おもいっきり引っ張り合いしている時に外れたらメタルジグが弾丸みたいに飛んで来ることがあるのだ。
竿も折れてしまいそうなので、身体と同じく竿にも強化魔法を掛ける。
よし、力勝負だ。
竿を上げて下げる瞬間に巻く。これを繰り返してると魚も疲れて来たのかやっと寄って来た。しかし、油断は禁物だ。取り込む瞬間に暴れて逃げるのだ。しかし、魔法で取り込むのは最強だ。最後のひと暴れもさせずに取り込めた。
即座に血抜きのためにエラを切り海水に浸ける。
その間に海水氷を作ろう。
「この魚は何?」
「ブリだね。夏は旬から外れるからいまいちかもしれないけど美味しい魚だよ」
メーター弱だけどブリと呼んでいいだろう。しかし、この世界の生き物はデカいからな。これでハマチとかイナダとかだったらどうしようか?
血抜きの終わったブリ? を海水氷に浸けておく。残念ながらナブラはもう消えてしまっているので休憩がてらシルフィードのサビキを見ていく。まだ釣れないって言ってたからな。
あー、なるほど。
「シルフィ、そんなに竿動かしちゃダメだよ」
「こうやって餌を出してから動かすんじゃないの?」
「餌を撒いたら海に漂う餌の中に針が隠れるようにじっとするんだよ」
シルフィードに手本をみせる。
「下までゆっくりおろしてから、大きくしゃくって餌を出す。で沈めてこのまま」
やりながら説明してるとぶるぶるっと竿が震えるので巻き上げる。やったアジだ。25cmくらいの食べ頃サイズ。
そのまま針をくるっと返して海水氷にぽちゃっと。
「わ、触らずに針を外せるの?」
「アジは口が柔らかいからね、針のここを持ってこうやると外れるんだよ。今やったみたいにやってみて。アジは美味しいからたくさん釣ってね」
シルフィード再度挑戦。
「わっ、来たっ!」
「おおー2匹付いてんじゃねーか」
ダンがカニを捕まえて戻ってきた。すばしっこくて捕まえるの苦労したらしい。2匹いるので一匹はイケスに入れて蓋をしておく。
ダンにタコの釣り方を教えていく。
「エギみたいに引っ掛からないんだな?」
「引っ掛かる時もあるけど、エギよりぜんぜんマシだよ。重くなったら釣れてるから」
ダンはタコテンヤを使って釣り開始。
「おっきい変なのが釣れたっ!」
シルフィードが叫ぶ。
「おおーマハタじゃん。高級魚だよ」
40cmくらいあるぞ。これ他のハタもいるんじゃないのか? 釣り上げたマハタの口から生きたアジが出てきた。釣れたアジに食い付いたのか。
次々にアジを釣るシルフィード。毒魚が釣れたらヤバいので見ていよう。俺はアジを針に掛けて置き竿で飲ませ釣りだ。
「ぼっちゃん、釣れたぜっ!」
ダンもタコゲット。昨日のより小さいがいいサイズだ。
自分でタコを絞めさせてみる。タコも抵抗して絡み付くが熊毛に阻まれてダンの勝ち。
釣った魚もタコも海水氷に入れていく。
その時に置き竿がじゃーーーっとけたたましくドラグを鳴らす。
ヤバい、食った瞬間に潜り出してる。
「ダン、俺を持っててっ!」
ダンが俺を持ったのを確認してドラグをガチガチにしめて一気に魚を浮かせる。
「さっきのと同じ魚?」
「いや、走り方が違うから違う魚だと思う」
強化魔法を糸にも掛ける。ズルいが仕方がない。このまま潜られたらどうしようもないのだ。
とりゃあっと魚を浮かせて寄せる。ダンのがっちりサポートは心強い。
ザパッと上がって来たのはカンパチだ。
「やっぱり同じ魚?」
「いや、これはカンパチだよ。ほら全体的に色も形も違うし、模様も違うだろ?」
絞めて血抜きをしながら説明していく。この時期はブリより格段に旨いから嬉しい。こんな陸地に近い場所でメーター近いカンパチが釣れるなんて信じられない。沖ならどんな大物が釣れるのだろうか?
2匹の大物を釣った俺は結構満足してシルフィードの釣りを見ている事にした。サバが混じり始めたので、また餌用にさばいていく。そしてだんだんと釣れなくなったので終了だ。
「どうして釣れなくなったの?」
「朝陽が昇る頃と沈む頃が魚のお食事タイムなんだよ。後は潮っていってね、朝より海の水が少なくなってるだろ?湖と違って水が増えたり減ったりするんだよ」
「そうなの?」
違うけど月引力がとか説明しても理解出来ないだろうからな。
「で、そうやって増えたり減ったりし始める時も釣れるんだけどね、それ以外にも理由があったりするから」
だんだん釣りに興味が湧いてきたシルフィードに説明するとふんふんと聞いている。さぁ、皆の者よ、釣り地獄に嵌まりたまえ。
ダンはタコを3ハイ釣った所で終了。お楽しみのタコ飯をシルフィードに任せてタコを処理していく。酒のつまみも作ってやるか。
生タコを細かく切り、塩して鰹出汁と醤油、酒、ワサビの茎を刻んで漬け込んでいく。タコ1匹分作っておこう。保存魔法かけたら日持ちするしな。
後は軽く下茹でして保存っと。
ブリは半身だけ冊に、カンパチは全部刺身にする予定だが今日冊にするのは半分だけ。保存魔法をかけずに冷やしておこう。
アジは刺身用、フライ用、干物用を作る。
マハタはもちろん刺身だ。半分は保存魔法を掛けてと。
お昼ご飯はタコ飯とアジフライだ。前に作ったソースもどきと塩だな。
「旨っめぇぇ、アジのフライってめちゃくちゃ旨ぇな」
「タコの炊き込みご飯も美味しい!」
そうだろう、そうだろう。俺もちょー満足だ。晩御飯の刺身三昧も楽しみで仕方がない。ダンが他にも無いか?とのことだったのでイカのバター炒めを作ってやった。タコは明日のお楽しみだぞ。
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