第457話 今度は本気のやつ その2
洞窟の中に入り奥へと進んでいくと外に出た。
「なんだここは?」
暗闇で全貌は解らないが村のようになっていた。
「村かな?」
「いや、奴等のアジトだろう。結構な数がいると思うぞ。あの一番デカい屋敷が親玉の家だろう。どうする?」
「嫌な感じがする奴が多いから焼き払おうか? あちこちに散らばられても面倒だから」
「さっきのやつらは女を置いていけと言ってただろ? 捕らわれてる人がいるんじゃねーか?」
オークみたいなことしてやがんのか・・・
そう思うとあのシーンが脳裏に浮かび、ざわっと怒りの感情がこみ上げて一気に魔力が高まる。
「ぼっちゃん、抑えろ。まず奴らが逃げられん方法を考えてくれ。さすがにこのまま突入したら取り逃がす奴が出て来るからな」
魔力が見えないはずのダンが俺の膨れ上がった怒りの魔力を読み取ったのかと思ったら、俺の髪の毛が逆立っているらしい。
怒りのボルテージを気配察知に注ぎ込むと暗闇で見えない所までまで見えてくる。あの洞窟で暗闇の中を暗視スコープで見たような感覚だ。
「ダン、こいつらの村を柵で囲むよ。突入はそれからだ」
低く抑えた声でダンに伝えると俺は一気に魔力を注ぎ込んで柵で周りを囲んだ。
ドゴォドゴォドゴォドゴォドゴォドゴォ
唸りを上げて突き出てくる土の棒が村を取り囲んで行く。
その音に驚いた盗賊どもが家から一斉に出で来たので頭を燃やしてやる。ファイアボールでなくいきなりだ。
突然頭が燃えた盗賊が悲鳴を上げて転がり回る。こんな嫌な感じがぷんぷんしてるやつらだ。今までにたくさん人を殺しているだろう。情けは無用だ。
「行くぞっ」
ダンの掛け声と共に俺達は村に突入だ。風魔法を使って一気に柵を飛び越えて中に入る。
「侵入者だ! 殺れっ!」
俺達に気付いた奴が声をあげると一斉に剣を抜き襲い掛かってくる盗賊達。
ダンは剣、シルフィードはファイアボール、俺は土魔法をマシンガンのように撃って盗賊をなぎ倒していく。
悲鳴を上げながら倒れて行く盗賊ども。
「こ、こいつら化け物だっ!逃げろっ」
わぁぁぁぁっと蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う盗賊。しかしいつの間にか出来た柵で外に逃げ出す事は出来ない。
「ぼっちゃん、あのデカい家に突入だ。他の奴らはどうせ逃げられんから後でいい」
何人か魔法を使える奴がいるのか家の陰から赤く光っているのが見えるたので雷を落としてやる。魔法を悪用するとは許せん。そこで死んでろ。
手加減なんてしてやるつもりは無い。魔法を悪用するようなやつは何をしでかすのか解らないから始末する。
大きな家の扉をダンが蹴破るとさっき逃げたリーダーらしき奴が半裸の女性の喉に剣を当てていた。横の部屋にも何人もの同じような女性が居て盗賊が皆剣を抜き、いつでも殺せる体制になっていた。
「はんっ、こいつらがどうなってもいいなら掛かって来いよ。お前らみたいな化け物にやられるくらいならこいつらも道連れにしてやるよ」
剣を喉に当てた奴がそうほざく。
「くそっ!卑怯だぞっ!」
「ひゃっはははは。どうだ手も足も・・・」
「と言うとでも思ったか?」
「へ?」
バスンっ
俺はリーダーらしき奴の眉間を土魔法で撃ち抜いた。ダンがその瞬間に首元の剣を蹴り飛ばして女性を救出、隣の部屋で剣を抜いてる奴等も頭を土魔法で撃ち抜いた。
「お前が親玉だな。下っぱみたいに楽に殺してもらえると思うなよ」
「ひっ ヒイィィィィ」
尻餅を着いてお漏らしをする親玉の手足を串刺しにしておく。
うぎゃぁぁぁぁと悲鳴を上げるが放置。
「シルフィ、ごめん。女の人達を頼めるか?俺とダンは残党狩りをしてくる」
こんな場面をシルフィードに見せたくなかったけど仕方が無い。弄ばれたであろう女性達を任せた。ダンも捕らわれた女性達をみて髪の毛と腕毛が逆立っている。
逃げ惑う残党を素手で殴っていくダン。今までの罪を聞き出さないといけないので全員殺す訳にはいかないのだ。
ダンにのされた盗賊に内側にトゲの付いた手枷足枷を付け、蔦を生やしてそれで繋いでいく。
突入の時に斬ったり土魔法で撃って死にかけてる奴はダンが無表情で止めを刺していた。こいつらはあのオークと同じだ。人じゃない。俺もその光景を見てもなんとも思わなかった。
繋がれた盗賊どもは震え上がっている。
「ぼっちゃん、片付いたぞ」
「じゃあ、親玉の所に行こうか」
大きな家に戻ると女性達は服を着ていた。クリーン魔法と治癒魔法を掛けておく。
「盗賊達は始末した。俺達は今から南の街に行くがどうする? 一緒に来るか?」
ダンがそう言うとビクっと震える女性達が6人。
俺もダンも血塗れだったのでクリーン魔法を掛けた。
この女性達はどこから来て捕まったのか解らない。心のケアも必要だろうし、帰りたくないかもしれない。しかし、ここは他領だ。ずっと面倒をみれるわけではないので一緒に来るかどうかしか聞けない。
シルフィードが返事を促すと皆一緒に来ると言ったので連れて行くことに。
オークの所の女性と比べて痩せこけているわけではないのでご飯は食べさせてもらってたのだろう。
いつまでも騒いでいる親玉の顔を水で包んで上を向かせる。
串を解除してトゲの枷を付けて引っ張る。出血多量で死なないように治癒魔法を少しだけ掛けて歩かせよう。
「おい、こけると溺れ死ぬからな。そのまま上を向いて付いて来い。騒ぐとこうだからな」
グイっと蔦を引っ張ると枷のトゲが刺さり悲鳴を上げる。そうすると水が口に入ってきて溺れる。
少しだけ水を減らして咳き込んだ分だけ水を吐けるように調整しておいた。
馬車まで戻る道を作っていく。後で南の街の衛兵とかに調査をしてもわらないといけないからな。戻って道を説明するのも面倒なのだ。
盗賊達は枷のトゲが刺さる度にうっとか声を上げるのが非常に鬱陶しい。
「ダン、証人ってこんなにいるかな?」
「いや、この半分でも問題ねぇぞ」
「なら、次に声を上げたやつの首を刎ねて。うめき声が鬱陶しいから」
「了解」
声を上げたら殺される。それを聞いた盗賊達はその後いくら痛くても必死に耐えたのであった。
女性達はシルフィードが先行して馬車に連れて行ってくれている。こっちの歩みは鈍いからな。
ようやくたどり着いたら、ここも死んだ盗賊が積まれており、串刺しにしたやつらも残ってた。すっかり忘れてたよ。
盗賊の村の入り口付近に死体を積んでおく。目印だ。
次は串刺しになったままの盗賊に話し掛ける。
「もうこんなに証人いらないんだよね、死ぬのとこいつら運ぶのとどっちがいい?」
「は、運ぶっ!運ばせて頂きますっ」
「じゃ、串は外してやる。全員繋いでおくから馬車に付いて来いよ」
こいつらには枷は付けずに繋いでおくだけ。歩いている間にこけたりするだろうから面倒をみてもらおう。
親玉の水をもう少し減らしておくか。
捕らわれてた女性達は客車に乗せ、御者台には俺とシルフィードとミグル。小さいの3人なら余裕で座れる。他は歩きだ。皆に回復魔法を掛けて夜営せずに出発した。
「ゲイルよ、盗賊はどれくらいおったんじゃ?」
ミグルが聞いてくる。
「さあ、100人超えてたんじゃないかな」
「かなりの規模じゃの。他の奴らはどうした?殺したのか?」
「討伐しておいた。魔法を使えるやつもいたからそいつらもね。ここに連れて来たやつらはまだマシな感じの奴。後のは人を殺してるような奴らだからね。しかも女性をさらった挙げ句に盾にしやがった。親玉にはその報いをきっちり受けてもらう」
「ダン、盗賊はどれくらいいたんだ?」
「数えてねぇが100は超えてたな」
「全部殺したのか・・・? そのゲイルも・・・」
「ぼっちゃんにはやらせたくなかったんだがな」
「そうか・・・」
ジョンはゲイルが盗賊とはいえ、人を殺した事に少なからずショックを受けていた。
皆に回復魔法を掛けながら夜通し移動し、朝飯休憩をした後も進む。途中ですれ違う人に悲鳴をあげられたりしながら南の街に到着した。
ダンが門番に俺の身分と途中で盗賊の村を討伐した事を伝え、盗賊どもを引き渡し、保護した女性の事も伝えると門番達は慌てて動き出した。しばらく待たされるだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます