第447話 ジョン達のエイプ修行完結
回復した3人はお粥をがつがつ食べて復活していった。もう1日ここで泊まって明日の朝に国に向かおう。グリムナの話によると1日と離れてない距離らしい。
3人とも夜には普通に肉を食っていた。内臓タフだね。
守り神は離れたようで出発する頃にはエイプが俺達を取り囲んでいた。
アルは俺達に任せろと言い、走りながら3人で連携を取り、ちゃんとエイプの森を攻略していた。俺達はその後ろを気配を消しながら付いていく。
想定より早く国の入り口まで来た。ここに入るとエイプ達は来ない。
生死を掛けた修行は飛躍的に3人の力を底上げし、連携も良くなっていた。
「ここがエルフの国かぁ」
ジョンとアルは初めて訪れた他国に感動していた。俺も初めて海外に行った時は日本とあまり変わらない光景でも感動したもんだ。
ミグルはなぜか緊張している。自分がハーフエルフということで生粋のエルフ達にどう見られるのか心配しているのだろう。
しばらく進んだ後、グリムナの屋敷、長老達の住む所へ付いた。
「ここでしばらく寝泊まりをして貰う。俺の家だが長老達の家でもある。そそうの無いようにな」
グリムナがそう言うとドアの前にいる護衛があけてくれた。
まずアルから挨拶をして続いてジョン、ミグルと挨拶をする。
「よう来なすった。ゲイル達の仲間と聞いたからには歓迎せぬ訳にはいかん。何も無いところじゃがゆっくりしていくが良い」
挨拶をした3人に渋めの顔をしている長老のグローナはそう返した。
「この前は緊急事態でちゃんと話せなくてごめんね。これお土産だよ」
魔道バッグからスパイス、酒各種と湖の主の鱗を渡した。
「なんとも見事な・・・・ これは鱗じゃな」
「そう。いつも釣りに行く湖に大きな主が居てね。行く度にこれをくれるんだよ。このまま飾ってもいいし、弓の装飾にも使えると思うんだ」
「そうか・・・ ゲイルはその主を助けたのじゃな?」
「仲間が主を釣り上げてね、なんか神々しいから食べずに逃がしたんだよ。それからくれるようになったんだよ」
「そうか、そうか。それは良い事をしたのぅ。その魚は神と関わりがあるのじゃろう。この鱗の使い方は知っておるのか?」
「使い方?」
「なんじゃ、知らんのか。では明日教えてやろう」
装飾以外に使い道あんのか? 鑑定しても使い道なんて出なかったぞ。
その後、上達したコクナの料理の魚料理を食べて各自部屋に案内された。なぜか俺とグリムナだけグローナ達に呼び出された。
「さて、ゲイルよ。いくつか聞きたい事がある」
「なに?」
「お前にグローリアの家名が付き、シルフィードにディノスレイヤの家名が付いた事は良い。が、もう一人のハーフエルフにもディノスレイヤの家名が付いておるのはどういうことじゃ?」
あ、皆鑑定されたのか・・・
グローナが渋い顔をしてたのはこのせいだった。
「ごめん、俺も良く分かんないんだよ。ミグルが俺の嫁になると言い出したのは本当だけど、正式に婚約とかしたわけじゃないし、名前が変わる条件が良くわからないんだよね」
「ふむ、何か特別な事をした訳でもないのじゃな?」
「うん、屋敷に居候することと、一緒に冒険するのを受諾しただけ」
「あと、そのロリなんたらという称号はなんじゃ?」
げっ、忘れてた。
「それもよく分かんない。称号はほとんど意味が無いと思うから気にしないで」
「まぁ、よくわからんのなら良いか。しかし、短期間でまたずいぶんと魔力が伸びたみたいじゃの」
「7000で止まっちゃったけどね。これが限界みたい」
「は? 7000越えておるぞ」
え?
慌てて自分を鑑定してみる。
【魔力】7221/7222
あれ?
「いや、魔力を増やす訓練の時は確かに7000で止まってたはずなんだよ」
あれ?222は何で増えた? 俺の成長限界は7000じゃなかったのか?
「自分でも原因がわからんのか?」
考えられるとしたらオークの最上種をダンが斬った時に大量に血を浴びた事くらいか。後は成長に伴う伸び・・・?
魔力0→1で増やすのは限界だったけど、他の要因はまだ有効ってこと?
またぶつぶつ考え事をして自分の世界にトリップする。
「ゲイルっ!ゲイルよ、取りあえず7500まで魔力が伸びるのは確定した。要因はまた考えておくがよい」
「あ、あぁ、ごめん。そうだね。また何か試してみるよ」
それからはグリムナも交えてエルフを移住させた場合にどんな事をさせるのかの説明をしていった。
「そうか、ここにいる者達に直接話しをしてみるが良い。それで行きたいと言い出した者には好きにさせてやろう。グリムナがそう決めたのじゃ、ワシらには異論はない」
長老達からも許可が出たので移住計画は進んで行くだろう。それとは別にエイプがどうやって増えるか調べた結果を説明する。
「なるほど、そういう仕組みじゃったか。魔物は勝手に増えるもの。そうとしか思っておらんなんだが、ゲイルの話を聞いて合点がいく。エイプやコングしかいないのもな」
「そこはどうした?」
「そのままにしておいたよ。エイプやコングはここの防衛も担ってるからね。根絶するとまずいでしょ」
「そうだ。あいつらは厄介ではあるが、助かっている所もある」
守り神がいてくれるから他にも散らばっていかないし、ここはあれで調和が保たれているのだ。
グローナと明日早朝から湖に行く約束をして寝かせて貰うことにした。俺も結構疲れているのだ。
寝床に入っても止まったと思っていた魔力がなぜ伸びたのか気になってなかなか寝つけない。
試しに魔力0→1をやってみるが何度かやっても魔力は増えなかった。やっぱりこの裏技はもう使えないのだろう。成長による伸びはしれてるし、後は強い魔物を倒して伸ばすしかないのか。これは実質限界ってやつだな。アーノルド達みたいに冒険で各地を回って強い魔物を倒しにいくわけでもないし、成人して遺跡探索の時にたまたま強い魔物を倒して増えたら御の字ってやつだな。まぁ、もう魔力不足で困る事もないからいいけど・・・
自分で納得した俺はそのまま落ちるように寝ていったのであった。
翌早朝、湖に行くとグローナは主の鱗を水に浸けた。そうすると寄ってくるマス達。
「これはこうやって仲間を呼び寄せる能力がある。本来は仲間を呼び寄せて引き連れて逃げたりするのに使うのじゃろうな」
なるほど。鱗には主の能力が込められていたのか。まったく知らなかった。
「これは鑑定で見えたの?」
「いや、知っておっただけじゃ。魚は初めて見たが、同じような鳥の羽は見たことがある。あれも羽を振ると鳥が寄ってくる。魚や鳥以外に他にもおるかもしれんな。よっぽど悪用せんと信じた相手にしかくれんものじゃろう。何枚も同じ相手にくれるとは初めて知ったがの」
しかし、お礼とはいえ、仲間を相手に差し出すような事をするのだろうか?それとも主は仲間をいくらでも産み出せるのか? 自分の分身のように・・・
深く考えても解らない。湖の主は俺達が魚を釣って食べている事も知ってて鱗をくれるから問題ないのだろうけど。
取りあえず、グローナが刺身を食べたいというので何匹か一緒に釣って持って帰った。
「どこに行ってたのじゃ?」
「散歩だよ。しばらくここに居て西の街とディノスレイヤ領に行きたい人がいないかスカウトしてみるからそのつもりでな」
それから皆に笛を使った演奏会をしてもらったり、ミグル達の失敗談を元にした喜劇、ダンを悪役にしてヒーローショー、適当に歌いながらやるミュージカルもどきをエルフ達にやって見せた。娯楽の無いエルフ達は物凄く喜んでくれた。
意外だったのはミグルの歌の上手さと演技の上手さだ。シンデ○ラの意地悪姉妹役は素晴らしかった。ヘイト役をすることで一気に観客が感情移入するのだ。これは使えるかもしれないと思ったが、ミグルはもう憎まれ役は嫌じゃと泣いたのでここだけにしておいてやろう。
「もう行ってしまうのか?」
グローナは寂しそうだけど、すでに1ヶ月近くここにいるから修行再開しないとね。
「うん、帰りにマスの卵もらいに来るね」
その後、コングの森では耐久性のある敵を倒す修行に専念し、ジョン達はエイプの森よりもずっと早くにクリアした。
思った通り、コング相手には遊撃で数をこなせるアルより、確実に強敵を倒せるジョンに軍配が上がった。二人は同じ剣士だけど良い組み合わせかもしれない。この修行で二人とも進む道が見えたのだろう。得意方面にめきめきと上達していった。それにエイプやコングの数を倒し、魔法水で過剰回復を続けたのも功をそうしたのか魔力総量も1000を越えた。
「もう大丈夫だね。修行クリアってことで帰ろうか」
「やったぁーー!」
大喜びするアル。それに対してジョンは難しい顔をしている。
「ゲイル、お前達はもっと楽に倒せるのだろう?やって見せてくれないか?」
ここまで来たら答え合わせもいいかな。
コング避けの壁から外に出てやってみせる。ジョン達は物見やぐらに登って見学だ。エイプ達と違って柵では破られる可能性があるので拠点は分厚い壁で囲ってある。
エイプ達にやったのと同じようにデバフ→剣攻撃→デバフをくるくると回りながらのコンボだ。エイプよりはるかに遅いコングはただのデカい的に成り下がり、耐久性があるといっても首を斬れたら簡単だ。ダンが足を斬って倒し、シルフィードが首を斬る作業。
「な、楽勝だったろ」
「俺達にも同じ戦法が使えたんじゃ・・・」
「そうだよ。アル達が使える能力で攻略法を考えたんだ。これならエイプも楽勝だったんだけどね」
「走り抜ける時もミグルがデバフ掛けながらお前達が後ろを走りゃほとんど戦う必要もねぇだろ?」
「ズルいぞっ!なんで教えてくれなかったんだよっ!」
「教えたら修行になんないじゃん。だから自分達が何が出来るか良く話し合えって言ったんだ。」
「自分達ばっかり旨そうに肉を食べてたらそれが気になって仕方がなかったんだよっ。どれだけ大量に肉を持って来てたんだっ!」
「いや、持ってきた肉はほとんど食べてないよ」
「何っ?じゃああの肉は?」
「ジャーキーあるけど食べてみる?」
「いいのか?」
「もう修行終わりだからね。はいどうぞ」
「う、旨いぞ。持ってきた肉じゃないならこれはなんだ?」
「エイプだよ」
「何ぃぃぃぃぃっ? あの猿はこんなに旨いのか?なんで教えてくれなかったんだよ」
「アル、なんでも教えて貰おうと思うのが間違いだ。自分で考えて自分で試せ。そうしないと身に付かないぞ。考えることを放棄するな。自分の殻を破るのは剣の腕だけじゃ無いぞ」
アルが剣以外にもこうやって悔しい思いをして経験値を積めばいい。その方が心に刻まれるからな。
帰りにマスの卵をもらって行く。酸素は時々風魔法で空気を入れてやるだけで大丈夫らしい。それとヨウナが一緒に付いて来てくれる事になった。養魚場を作る手伝いと指導をしてくれるらしい。これは助かる。
すべての用事が終わり、帰り際に鳥籠を解除しに行く。
「もう今さらじゃが、干し柿がもう出来とるはずじゃ。帰りのオヤツにするがゲイルにはやらんからな」
そう言ってニヤニヤするミグル。皮を剥かずに干して出来てるかどうかわからん干し柿なんぞいらんけどね。
エイプ達にデバフを掛けながら鳥籠に進むと干し柿はすべて無くなっていた。辛うじてヘタと食べ残しがあるだけだ。
「ぬぉぉぉぉぉぉ、なぜじゃぁぁぁぁ」
「そういえばお前達が帰って来ないから心配して飛び出したから扉閉めてなかったかも」
残った食べ残しをみると、超熟し柿みたいになったのだろう。下には汁が垂れた跡もある。なるほど皮付きで置いとくとそうなるのか。熟々の柿は嫌いだから俺がやることはないだろう。凍らしてシャーベットみたいにしたら食べられるかもしれないけど、寒い所でシャーベットは食べたくないしな。
「さ、帰るぞ。いつまでも泣いてんな」
「何をシレっと言っておるんじゃっ!貴様のせいではないかっ!」
あれだけ心配して助けに行ったのに腐りかけたような出来損ないの干し柿で文句を言われてムカっと来た。
「えいっ!ダン、シルフィ走るぞっ。ヨウナも付いて来いっ」
ミグルにデバフを掛けてその場を走り去る。
「待てっ!なんちゅうことをしよるんじゃっ!」
「早く付いて来ないと結界が発動してまた迷うはめになるぞっ」
ここからは障害物も無い直線だ。俺達全員に風魔法を掛けて加速する。
「おぉ、ぼっちゃん。こりゃ楽だな」
「だろ?このまま守り神の所まで一気に行くよー!」
「待たぬかぁぁぁぁぁっ!」
必死の形相で追いかけてくるミグル達を置き去りにしない程度に距離を保ちながら走った。
こうしてジョン達の修行はようやく終ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます