第441話 守り神、大きくなったね
グリムナが案内してくれる近道があるからサクサクと進んで行く。ジョンとアルも少しずつ魔法水を飲むタイミングが開いて来てるから、身体強化の最適化も順調に進んでいるのだろう。
「今日はここで夜営しようか」
「やっと晩飯が食える・・・」
ジョンとアルはくたくただ。
俺達の食材を出し、ダンとシルフィードに準備を任せてる間に土の小屋を作成。今回は内風呂付きだ。風呂は身体の保湿も保温も兼ねられるので冬にはいい仕様だろう。
「ゲイル、なんじゃその快適そうな小屋は?」
「ゆっくり寝たいから。ミグル達はテントで頑張ってね」
「ぐぬぬぬぬぬ、ズルいぞっ!」
「ミグルも土魔法で小屋を作ればいいじゃないか?」
「そんな詠唱なんぞ無いわっ」
「俺、詠唱なんてしてないじゃん」
「貴様っ!なんちゅう屁理屈を・・・」
「ぼっちゃん、こんなもんでいいだろ?早く食おーぜ」
「あいよっ」
「貴様らは何を食うんじゃ?」
「カレーライスだよ」
「えっ?ゲイル達はカレーなのか?少し分け・・・」
「ダメだよ。自分達の力でやらなきゃ」
めっちゃ恨めしい顔をする3人。仕方がないよね。エイブリックさんの指示だし。
シルフィードの炊いてくれたご飯にダンが作った辛口カレー。子供の舌にはヒーハーするけど、寒い夜にはちょうどいい。
まだ恨めしそうに見てるから風魔法で匂いだけでも運んでやる。
「くそっ、ゲイルめっ。匂いだけこっちに運んでおるなっ」
「ミグル、俺達も食うぞ」
「なんじゃこの味気の無いスープはっ」
「塩しかないから仕方がないだろ」
「パンは?」
「忘れてたんだよ。お前も気が付かなかっただろ」
「仕方がない。小麦粉から作るしか無いの」
「小麦粉は買ってないぞ、あんな重いもの持ったら他の食材持てないだろ?」
「するとこの先ずっとパンは無いのか?」
「そう言うことだ。じゃがいもがあるから育ててくれ。それを茹でて食べよう」
「あっちのご飯、美味しくなさそうだね」
「あれが普通だ。旨いものを食い慣れたら苦痛だがな」
そうだよな。魔道バッグ様々だ。大量の荷物をウエストポーチで持ち運べるなんてチート過ぎる。
「ダン、空間拡張のテントってあったよね?あれを改良したら魔道バッグ作れるんじゃない?」
「作れるかも知れんが魔石どうすんだよ?常に魔石持ってる魔物を狩れるならなんとかなるかも知れんがな」
あ、そうか。大型荷馬車の空間拡張をし続けるには魔力が大量に必要だったな。俺は身に着けて常に魔石に魔力補充してるから関係ないけど・・・
ダンが大量にカレーを作ったので、保存魔法を掛けて蓋をしてバッグにしまっておく。ご飯はおにぎりにしておいた。シルフィードはあっちの3人の分も炊いてくれてたから余ったのだ。明日の朝ご飯は焼おにぎりにしよう。味噌と甘醤油味だな。
まだこの辺は魔物が少ないけど黙っておく。ジョン達は見張りを交代でして寝るけど、こっちは不要。この小屋を壊せるぐらいの魔物が来たら気配で目が覚めるからな。
こっちはそれぞれが部屋の風呂に入り、スプリングマットで心地よい眠りに付いた。
「なんか納得がいかんっ!」
見張りも立てずに普通の生活をする俺達を見てアルはプンプンと怒っていた。
さて、朝だ。今日の移動で守り神のいるところを通り過ぎるだろう。攻撃しないように言っておかねば。
外に出ると眠そうな3人が塩スープを煮込んでいる。昨日の晩の残りかな?
こっちは鰹出汁を作って、味噌汁と焼おにぎりだ。味噌と甘醤油の香ばしい匂いがたまらん。
「あっちは朝っぱらからなんちゅう旨そうな匂いをさせておるんじゃっ」
「ミグル、父上達と冒険してる時はどんな物を食べてたんだ?」
ジョンは旨そうな匂いに動じず質問をする。
「今食ってるような飯じゃ。肉は魔獣や魔物だったがの。ゴブリン肉は二度とゴメンじゃ」
「なら、今の方がマシだろ。あっちは気にするな」
「ぐぬぬぬぬぬ」
「分かってはいるが納得がいかん。あんなにこれ見よがしに匂いをさせる事はないじゃないかっ」
「これも修行だと思えばいい。遠征訓練の時も同じだっただろ?」
「そ、それはそうだが・・・」
「分かったらさっさと食え。また一日中走るんだぞ。俺はゲイルにマジックポーションを貰ってくる」
食べ終えた俺達にジョンがやって来た。
「ゲイル、マジックポーションを貰えるか?」
「はい、5本ずつ。あと、今日は守り神のいるところを通るから遭遇しても攻撃しないでね。俺達といると攻撃してこないと思うから」
守り神の姿形を説明しておく。多分相手が襲って来なければいることに気付く事はないと思うけど。
後片付けをして小屋を解除して出発。
ジョン達がギリギリ追い付けるスピードで走っていく。
そろそろ森神のテリトリーだな。気配察知に集中するとこの先に極薄く大きな気配がある。俺を待ってるのかな?
少しスピードを落としてジョン達に追い付かせた。
「この先に守り神がいる。絶対攻撃しないでね。もし戦いになったら3人に勝ち目ないから」
気配を消し、風景と同化しながら音も無く攻撃してくる森神。ほとんど気配察知が出来ない2人が森の中で勝てる見込みはない。
そのままスピードを落として気配を探っていく。居たっ!
「わっ、またでっかくなってる」
「ぼっちゃんのせいだな」
「どこにいるんだ?」
「あそこに潜んでいるよ。よーく見て」
「んーーー?」
「ミグルは見えるのか?」
「いや、わからん・・・。気配も掴めん」
「じゃあ呼んでみるよ。おーい、守り神。元気だったか?」
そう声をかけると大きな口から牙をみせて威嚇しながら出てきた。
「わっ、こんな近くに居たのか。まったくわからなかったぞ」
「ゲイル、こやつ威嚇しておるぞっ!ぶつぶつ・・」
ゴンッ
「だから攻撃すんなって言っただろ。襲う気があるならとっくに襲われている」
ごそごそと魔道バッグから魔力を込めた貴章を見せる。
「俺の魔力の臭いがある人とか、これを身に付けているのは仲間だから襲わないでくれよな。こっちもお前には手出ししないように言ってあるから」
分かってるのか分かってないのか返事はしないけどなんとなく理解してくれたような気がする。
次に丸の鶏肉を取り出し魔力を込める。大量に込めると不味そうなので、500くらいに止めておいた。
ぽいっと森神のそばに投げるとこっちを警戒しながら鶏肉を咥えて消えて行った。
「な、襲って来なかっただろ?あいつ賢いんだよ」
「なんでテイムもしてない魔獣が人の言うことを聞くのじゃ?」
「初めて会った時は戦闘になったんだよ。襲われる瞬間まで気配に気付かなくてね。ただあんまり美しい姿の魔獣だったから殺すのは嫌だなと思って話し掛けたんだ。こっちの火力も見せたからちゃんと引いてくれたよ」
「ゲイル、確かに綺麗な魔獣だったが、それほどか?」
「今は冬毛で白いけど、夏場は緑と黒の模様でね。本当に綺麗な毛皮してるんだよ」
「お前なら捕獲できたんじゃないのか?」
「数がとても少ない魔獣みたいだし、エイプが村の方にいかないのはこの守り神のお陰だからね。討伐対象でもないし、観賞用の毛皮を手に入れる為だけの狩りはしたくないからね」
「そういうものなのか」
「そういうこと。生きる為の狩りはするけど、楽しみだけの狩りは不要だね」
冒険者なら金を得るために狩りを試みるだろうけどね。この世界では俺の考え方の方が異常なのだ。
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