第434話 オーク討伐その2
翌早朝、簡単な食事をしてオークの集落を落とす作戦を打ち合わせる。
「基本はミグルがデバフ、あの相手の動きを遅くする魔法をかけ続けてくれ。あれは対象を決めて発動できるのか?」
「1匹とかなら可能じゃが、全体に掛けるとワシ以外全員に掛かる。すなわちゲイルやダンもその範囲に居れば影響を受ける」
「了解。ダンと俺が身体強化でデバフを解けばオークも解けるか?」
「いや、ワシが掛け続けている限り解けん。それはお前らも同じ事じゃな」
「じゃあ、俺達は強化し続けて普通の状態だということか。ダン、これを渡しておくから早め早めに飲んでくれ。10本くらいしか持てないだろうから、もし無くなりそうなら下がって俺の所に来てくれ。ミグルにも渡しておく。ミグルは魔法水が無くなりそうならテバフの威力を下げてくれたら解るから俺が戻る」
「俺、ぼっちゃん、ミグルの並びだな?」
「そうだね。ダンは強そうな奴を中心に頼む。俺は土魔法で数をやる。もし状況が悪くなれば3人で固まること。最悪の場合、大規模魔法を使う。竜巻か雷だ」
「生存者を巻き込むぞ」
「全滅するよりマシだ。俺達がやられたら生存者もへったくれもない」
「ぼっちゃんがその覚悟を決めてくれてるなら問題ない。突入して生存者を人質に取られても迷わず倒せ」
「ゲイルよ、上位種は必ずおる。さらにその上の上位種もおる可能性が高い。そうなると知能も働かせるから魔物と侮るなよ。狡猾な人間が魔物の力を得ていると思え」
「解った」
大体の方針が決まった。
「ゲイル、多少討ち漏らしても気にすんな。それぐらいはこっちでやってやる」
「了解。宜しくね、エイブリックさん」
「エイブリック様。我々は15名でゴブリンの巣を潰しに参ります。残りは町付近で待機。討ち漏らした奴を町には入れませんので」
「あぁ、やり方は任せる。たかがゴブリンと侮るなよ。巣には上位種やら変わった奴がいるからな」
「かしこまりました。ではゲイル殿、ご武運を!」
「ナルさんも気を付けてね」
お互いの無事を祈って出発だ。
ー昨夜のエイブリック達ー
「アル、ジョン、お前達の言う冒険とはなんだ?」
「世界各地を回って、魔物を倒したり・・・」
「なら、旅行でいいじゃないのか? 冒険じゃなしに面白楽しくあちこちに行けばいい。道中で狩りをしたりするだけで事足りるだろ?」
「いえ、旅行ではなく冒険がしたいのです」
「俺にはお前の言う冒険と旅行との違いが解らんがな」
「自分の力で魔物を倒し、強くなりたいのです。父上のように・・・」
「ふむ、俺の様にか・・・ 今回ここに来るまで飯はどうしてた?」
「ゲイルが作ってくれてました」
「寝床は?」
「ゲイルが作ってくれました」
「それって旅行と何が違うんだ?馬車を使うか使わないかだけの違いにしか思えんぞ」
「そ、それは・・・」
「それに強くなってどうする?王都に居て、最低限自分の身を守るだけの剣が使えればいいじゃないか」
・・・・
・・・・・
「お前、将来王になるつもりはあるのか?」
「も、勿論ですっ」
「なら、冒険に出る目的を定めろ。強さは目的ではない。手段だ。その目的を為すためのな。ジョン、お前はなぜ冒険に出ようと思った?」
「私は強くなるためです。相手が何者であろうと守れるように」
「ふむ、守る為の強さを手に入れるということか。なるほどな。ではなぜゲイルに同行を頼んだ?」
「魔物相手の経験は少ないので、応援を頼みました」
「ならなぜ教えを請わん? ゲイルだけでなしにパーティーを組んだミグルもお前達より冒険に関して知識が豊富だろう?」
「それは・・・・」
「まぁ、いい。今回の討伐が終わったら一旦戻れ。ミグルも連れて帰る」
「父上!まだ私は・・・」
「明日のゲイル達がやるオーク討伐をよく見ておけ。それを見て何を感じたかを帰ってから聞く。まぁ、現場を見てまだ冒険に出たいと言うならの話だがな。明日は早朝から出る。もう寝ろ」
有無を言わさずにアルとジョンの話を終わらしたエイブリック。ミグルの話を聞いて本当は二人を連れて行くべきではないのだろうなと思っていた。
「ここだ」
「かなりデカい集落じゃの。間違い無く上位種の上位種がおるぞ。オークどもが見張りを立てておる」
言われてみればそうだ。見張りがいるなんて疑問に思わなかったが、魔物が見張りを立てるなんておかしいよな。
「ぼっちゃん、どうする?攻め込むか?」
「いや、誘きだして外で戦おう。ダン、悪いけど囮になってくれるか?俺が遠方から見張りを焼いて殺す。ぞろぞろ出て来たところをここへ引き連れて来てくれ。倒せるだけ倒したらミグルのデバフを頼む。俺がファイアボールを打ち上げるからそれが合図だ」
二人が頷き、ダンが配置に付いたところで作戦開始だ。
まずは見張りの一人をいきなり焼く。
「うごぉぉぉぉおっ」
2匹のうち、1匹だけを焼き殺した。
残った見張りが何かを叫んだらあちこちからオークが出てきてダンを見付けた。
ダン目掛けて一斉に突進してくるオーク達。ダンは引きながら少しずつオークを倒していく。
こいつならやれると思わせないと散り散りに逃げられるかもしれないからなるべくたくさん引き連れて来ないといけないのだ。
あちこちから集まってくるオーク。ダンは一人でそのオークを倒していく。
「ダンってあんなに強いんだ・・・」
その様子を見ていたアルとジョンはダンの戦い方に目を奪われていく。
かなりの数とデカい奴が出て来たので合図のファイアボールを打ち上げる。
ダンはその合図と同時にさっとその場を離れた。
「ミグル今だっ!」
デバフ発動。俺達は身体強化でレジストし、ダンはデカい奴に向かっていった。
俺は動きが止まったノーマルオークの額を土魔法で撃ち抜いていく。
ザシュッ ザシュッ ザシュッ
ダンは一撃で死なない上位種を滅多斬りにしていき、俺はスナイパーの様にオークの頭を撃ち抜いていった。
しばらくその状態が続き、出て来たオークを全部倒した。
まだ強い気配が残っているので魔法水を飲んで体制を整え直す。
「さて、あとどれくらい残ってるかだな」
「そうだね、強い気配の奴は出てこないね」
「下っぱにやらせて様子を見てるのじゃ。下手すれば逃げよるぞ」
「ダン、あの建物の中にしか強いのいないよね?」
「あぁ、油断禁物だがな」
「取りあえず、ミグルの言う通り逃げるかもしれないから、あの建物を土壁で囲むよ」
入り口だけ開けた壁でぐるっと囲んでやる。俺達もオークも退路は一つだけ。
ダン、俺、ミグルの順番で小屋に近付くといきなり矢が飛んで来た。
慌ててダンがその矢を斬ると同時にあちこちから矢が飛んでくる。
「オークが弓矢を使うだとっ?」
オークの手は蹄みたいになってるから矢を持つのは不可能だ。いったいどうやって?
しかも矢は小屋からだけでなく全方位から飛んでくる。
「罠に嵌められたのぅ?どうする?全方位にデバフを掛けるのは可能じゃぞ。」
ダンと俺がミグルを間に鋏んで剣で矢を払っていく。
「いや、エイブリックさんはともかく、ジョンとアルがもろに影響受けるだろ?その一瞬を狙われたらヤバい。取りあえず木の上から撃ってくる奴を狙撃する。ミグルはダンの足元に隠れろ。ダン、矢を頼んだ」
姿は見えないが矢の飛んでくる方向は解る。そこを目掛けて散弾銃の様に撃ち込んでやる。
「隠密っ!離れろっ巻き込むぞっ」
どこにいるかわからない隠密に警告してから一斉に木の上に土の散弾を放つ。
ズドドドドドドドっ
威力よりも玉数重視で撃ちまくる。ドサッ ドサッと魔物が木の上から落ちる音がした瞬間に建物からこん棒を持ったデカいオークが飛び出して来た。
ダンがそれに対応するが矢も完全に止んだわけではない。
「ミグルっ!エイブリックの所に走れっ、守りきれんっ」
「ワシは・・・」
「早くいけっ」
ミグルは何かをぶつぶつと詠唱した後にエイブリックに向かって走る。そこへ援護射撃をし、無事たどり着いた後に剣を抜きダンと共にオークに立ち向かう。
「ダン、ヤバいね」
「そうだな。まぁこうやって話せるくらいのピンチだ、問題ねぇ。さっさと豚どもを狩っちまうぞ」
「じゃあ突入するぞっ」
俺とダンは建物の中に突入していったのだった。
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