第426話 ジョンとアルの冒険開始

その他諸々の用事を済ませ、蒸留も終わった。これで王都に戻っても問題無いな。


「じゃあ、父さん、母さん。時々王都に行ってミーシャ達の様子を見てやってね。春には一旦戻ってくるから」


「あぁ、分かった。エイブリックにも宜しく言っておいてくれ。エルフの長老達の土産は持ったか?」


「バッチリだよ。じゃあ宜しくねぇ」



カッコカッコカッコ


「なぁ、ゲイル。ほんまにウチが王都に行っても騒ぎにならんやろな?」


「初めはなると思うよ。でも衛兵も住民も味方だから大丈夫。それにこの貴章を付けてたら俺の身内だと分かるしね。ただし、他の街には行くなよ。屋敷と西の街だけにしておいてくれ。ほかの街は俺の管轄外だからな。帰って来たら見学とか連れてってやるから」


「分かった」



日が暮れてから王都に入り、屋敷に到着。カンリムや他の人達にもミケを紹介しておく。


特に衛兵団長のホーリックにはくれぐれもトラブルに巻き込まれないように注意をして見て貰うようにお願いしておいた。


翌日からエイブリック邸、小熊亭に顔を出して冒険者活動をする報告をする。もちろん、エイブリックにはダンからアルが大人になったことを報告してもらった。


仕事面では冬の間に街でやることをソドム達に伝えて準備完了だ。



「グリムナさん、どういうルートで行く?」


「北門から出てそこから西へ向かう。ミグルも自分の家に寄って準備があるみたいだからな」


「うむ、魔法陣の魔石も交換しておかねばならんからの」


「空になった魔石は置いてあるのか?」


「大量にあるぞ」


「なら魔力充填してやるよ。10個くらいあれば帰って来るまで持つだろ?」


「いいのか?」


「いいよ、それくらい」


「ぬはははははっ。それは愛かえ?」


ゴツンっ


「ちゃうわっ!」


「いちいち殴らんでもいいではないかっ!」


「お前のスキルが発動したんだよ」


なら仕方がないとぶつぶつ言うミグル。



「ゲイル、ほならミーシャと先生せんせしとくわ」


「サラもいるからな。担当分けはミケはバルみたいな飲み屋系、ミーシャは宿屋とかケーキ屋とかのお店、サラは基礎的な事と高級宿屋の接客員で分けて指導してくれ。生徒募集の件はフンボルトに言ってあるから。あとお前達の給料はカンリムから貰ってくれ」


「サラさんもやっぱり一緒にやるんですね・・・」


「何か問題があればベントに、それでもダメなら父さん達が来た時に言ってくれ。多分大丈夫だと思うけどな」


「はい・・・」


ミーシャは寂しさと不安でいっぱいだな。


「ミーシャ、サラもベントがいるとはいえずっと一人ぼっちだ。一緒に風呂入ったり飯食ったり、酒飲んだりして仲良くしてやってくれ。ベントが冬休みの間も寮に戻ると言ってもここで寝泊まりしろと言え。そうすることで絶対に仲良くなれるから」


「本当ですか?」


「ミケも一緒にな」


「任せとき!」


ちょっと不安も残るが二人に任せよう。


「あと、給料以外にこれをお前たちに渡しておく。サラの分もあるから無駄遣いすんなよ」


一人銀貨10枚ずつお小遣いとして渡しておく。


「わっ!こんなにくれんの?」


「王都で飲み食いとかしてたらけっこう使うからな。ベントの屋台とか小熊亭で飲み食いしてもちゃんと払えよ」


「分かったで。ミーシャ、これで甘いもん好きなだけ買い食い出来るで」


「えへへ」


屋敷で食う方が旨いだろうけど、自分で店を回るのもいいだろう。


「ミケ、仕事中はミミもしっぽもそのままでいいけど、休みの時に出歩く時は念のために隠しておけ。あとくれぐれもよその街に行くなよ」


「ゲイルは心配性やなぁ。大丈夫やて」


こいつ調子に乗ってどっか行きそうだからな。念を押しておかないと。



翌日、ミグルのお化け屋敷に立ち寄ってから、エルフの国に向けて出発した。シルバー達はコボルトと共にジャックにお任せだ。



「ミグル、お前が持ってる杖はなんか効果あるのか?」


「フッフッフ、聞いて驚け!これは魔法の威力を上げてくれる杖なのじゃ!」


「へぇ、遺跡から出たやつか?」


「ばかもんっ!そんな物が易々と手に入るかっ。しかし、それに匹敵する威力はあるのじゃぞ」


ミグルの身長にそぐわない大人用の杖。堅そうな木材の上になんか透明な石が嵌め込まれている。


「ちょっと見せて」


ミグルの杖をこそっと鑑定してみる。


【賢者の杖レプリカ】


へぇ、賢者の杖なんてあるのか。レプリカだけど高いんだろうな。上に付いてる石は水晶と鑑定に出た。水晶って魔法に影響するのかな?


「これは特にアンデッドどもを倒すのに有効なのじゃ。グールやスケルトンなぞイチコロじゃ」


へぇ


「今度出たら魔法でやっつけてみてよ」


「楽しみにしてるが良い。大魔法使いミグル様の偉大さを!」


わーはっはっはっはと高笑いするミグルを殴ってやろうかと思ったが、まぁ別にいいか。どんな魔法で倒すか楽しみだ。


「グリムナさん、ここから徒歩だと結構時間掛かりそうだね」


「ジョンとアルの修行もあるからな、ここらの魔物達なら手始めにちょうどいい。しばらく戦わせて問題無いようなら飛ばせばいいだけだ」


「飛ばす? 俺達が本気で走ったりしたらあの二人は付いて来れるかな?」


「それも修行だ。お前もアーノルドにやらされたのだろう?」


俺も延々と身体強化をしながらマラソンをさせられたな。辛かったけど、あれがあったからエイプやコングの森を寝ずに走り回れたってのもある。この二人にもその修行が必要か。2年間であちこち見て回るなら必要だな。


「そうだね。ミグルは身体強化出来るか?」


「身体強化とは闘気であったな。得意な方ではないが走るのは問題ないぞ。足が速くなる魔法もあるでの」


へぇ、そんな魔法もあるのか。こんなんでも身を守るために魔法を研究してただけのことはあるな。


「ジョン、アル。この辺からコボルトとかオークとか出始めるからな」


コボイチ達をテイムした森の近くだ。あの時に殲滅したとはいえ、1年は過ぎているからもうたくさんいるだろう。冬で他の冒険者達も少ないしな。


「ほら、来るぞ。俺達は今回何もしない。ジョン、アル、ミグルの3人でやれ。俺達の護衛任務だと思えばいい」


グリムナは俺達には何もするなと言う。ただ守られておけと。


「よっし、遠征でもこれくらいやったぜ。ちゃんと守るからな。シルフィードも安心しててくれっ」


アルは自信満々だ。


「ゲイルは戦わんのか?」


ミグルがそう聞いてくるので、


「ちゃんと守ってくれよ、大魔法使い様」


こう返事したらめっちゃ嬉しそうにコボルトの群に向かって3人で走って行った。


「大丈夫かな?」


「連携はやりながら覚えて行けばいい。まぁ、ミグルが誤爆するだろうけどな」


と、グリムナが未来予測する。


ミグルが誤爆する。嫌な宣告だ。まぁ、皆に治癒の腕輪を渡してあるので多少の事は問題がない。


ジョンとアルは剣で襲いかかってくるコボルト達をなんなく斬って行く。実力的には問題無しだな。


他のコボルト達は連携してミグルを狙うようだ。めっちゃ牙を剥いてるから魔獣にもスキルが発動しているのかもしれん。


「フッフッフ、コボルトなんぞワシの魔法に掛かれば何匹居ようと問題ではない。くらえっ!我が魔法の恐ろしさよっ!」



「グリムナさん、ミグルっていつもあんな喋りながら戦ってたの?」


「いつもなんか言ってたな。エイブリックに余計な事をしゃべらずにさっさと詠唱しろと怒られてたぞ」


あぁ、目に浮かぶわ。街のステージでエイブリックとミグルで漫才やって貰ったらウケるかもしれん。ボケのミグルと突っ込みのエイブリック。実にお似合いだ。



木の陰に潜んだコボルトが一斉にミグルに襲いかかる。ミグルも高速詠唱してるのか赤く光ってるからファイアボールで対応するのだろう。


「危ないっ!」


ミグルに襲いかかったコボルトを見てそこに飛び込むアル。同時にミグルから一斉にファイアボール発射。


ボボボボッ ボンっ ボンっ ボンっ


「んぎゃぁぁぁぁっ!」


コボルトと共にファイアボールを食らうアル。


「ゲッ!貴様っ、なぜ飛び出してくるのじゃっ!」


アルに渡してあった治癒の腕輪が光り、髪の毛とか眉毛とか服とかは燃えてしまったが火傷は瞬時に治った。



「なんで味方にファイアボールを撃つんだよっ!」


爆死しかけたアル激オコ。


「いきなり貴様が飛び出してくるからじゃっ」


「お前が危なかったからだろっ!」


「コボルトなんぞに殺られるかっ!」


とミグルも激オコ。



残ってたコボルトをジョンが片付けたので俺たちもそこへ向かうと、まだミグルとアルがギャーギャー言い合っている。


「やはりエイブリックの息子だな。昔、良く見た光景だ」


ミグルとエイブリックも似たような事をしていたらしい。エイブリックはファイアボールを食らう事がなかったみたいだが。


「アル、飛び出してんぞ」


「ゲイルまで俺が飛び出したのが悪いって言うのかっ?」


「いや、飛び出してんのはお前の息子だ」


服が燃えたアルは焼けなかった防具から息子がおはようしていた。


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