第425話 ジョンとアルの成長

ふぁぁぁ、もう朝か。


「おい、ミーシャ、シルフィ朝だぞ」


むにゃむにゃ言いながら起きる二人。


さっむぅぅぅ。毛布から出るとめちゃくちゃ寒いので取りあえず部屋を温風で暖めた後に暖炉の薪に火を点けてっと。


3人で朝ごはんを作っているとダンが起きて来て俺を呼ぶ。


「どうした?」


「クリーン魔法をかけてやってくれ」


ダンがそういうので男達が寝ていた部屋に行くとジョンとアルがオロオロしていた。


「ス、スマン、ゲイル。お、おねしょをしてしまったみたいなんだ。す、少しだけだがなっ」


やっぱり・・・ 俺は何も言わずにクリーン魔法をかけてやり


「ダン、おねしょじゃないことを説明してやれ。お前は何か解ってんだろ?」


「了解」


二人とも順調に成長というか性徴してるな。皆には黙っててやろう。こういうのは親より他人に教えて貰う方がいいからな。母親は息子がこそっと脱ぎ捨てたパンツを見て父親に知らせ、そこでどういうものか聞き、子供の成長を知る事になる。ダンにはアーノルドとエイブリックに知らせるように言っておこう。


今回のは昨晩のミケが引き金だな。そんな事を思いながらついでに女部屋も起こすことにする。


コンコンっ


返事がない。まだ寝ているようだ。


かちゃ


「朝だぞ・・・・」


パタン


なんで二人とも真っ裸で寝てやがんだよっ。寝るときちゃんと服着てたじゃねーか。


「ミーシャ、ミケとミグルを起こして来てくれ」


「今起こしに行ったんじゃないんですか?」


「男だけな。ミケとミグルはまだ寝てるみたいだから、どちらかを先に起こして連れて来てくれ。両方いっぺんに起こすと揉めるかもしれんからな」


パンはバルから貰って来たのを温め直して、いつものスープと目玉焼きとベーコンだ。食べ終わったらジョン達の冒険者登録、女性陣の服購入、肉屋で食材仕入れて商会へと、こんなスケジュールだな。


まずミケが起きてきて、しばらくしてミグル、そのあと照れ臭そうなジョンとアルをダンが連れてきた。


ご飯を食べながら今日のスケジュールを説明する。


「えっ?ほんまに服買ってくれるん?」


「ミケのはダンが買ってくれるってさ」


「も、もしかしてワシの服も買ってくれるのか?」


「別にいいけど、ディノ退治の報償金をけっこう貰ったんじゃないのか?」


「家を買ったり、魔石代やらに消えてしもうたワイ」


「魔石は何に使ったんだ?」


「結界じゃ」


「ぼっちゃん、こいつの家に結界が張ってあってな。侵入したらファイアボールが飛んで来たり、スケルトンが襲って来たりしやがる」


「え?ミグル結界張れんの?」


「魔法陣を使っておるがの。それを起動するのに魔石が必要なんじゃ」


「その魔法陣は自分で?」


「そうじゃ」


「魔法陣ってどんなの?」


「スマンがそれは教えてやることは出来ん。魔法陣は作るのにも教えるのも資格が必要じゃからな」


「やっぱりそうなんだ。それじゃあダメだね」


「まぁ、見てもわからんとは思うが、決まりは守らんといかんからの」


こういうところは意外とまともだな。


「ケチケチせんと教えたったらええのに」


「こらミケ、今ミグルが決まりだからと説明しただろっ。ケチケチしてるんじゃない。謝れっ」


「あ、ごめんやで。つい・・・」


「いや、こうやってゲイルが止めてくれるならワシも言い返さずに済む。ミケがそんな風になるのはワシのせいじゃからの」


「ミケ、お前はミグルにあまり近寄るな。影響を受け過ぎる。ムカッと来たら距離を取れ。というわけだからミグル、ミケがお前と距離を取るのは揉め事防止の為だ。お前を嫌いなわけじゃない」


「分かったのじゃ」


何となく分かってきた。異性の俺達はこいつの言動にイラッと来るだけで近くにいるだけでムカつく訳ではない。同性で感受性豊かなやつはモロに影響を受ける。こんなところか。


ちょっと確かめるか。


「ジョン、アル、二人はミグルにムカつくか?」


「いや、なんともない」


「ダンは?」


「黙ってりゃなんともねぇ。まぁ、ぼっちゃんが相手してくれてるってものあるがな。初めてアーノルド様達に連れて行かれた時は斬ってやろうかと思うぐらいムカついたぞ」


「お主らが勝手に入ってきてなんじゃその言い種はっ」


「ミグル、それだ。お前の過去を聞いたらそうなるのは仕方がないが、そこで言い返したりしなければ異性はムカつかん。お前は自分で気付いてないかもしれんが言い返す時の言葉にトゲがある。だから相手もどんどん言葉にトゲを持つようになるんだ」


「今のもワシのせいか?」


「そうだ。それまではダンも黙ってたらなんともないと言ってただろ?」


「う、うむ・・・」


「200年以上も続けてきたやり方がすぐに変わらんかもしれんが、少しずつでもいいから直していけ。その都度俺が注意してやる」


「それはプロポーズかえ?」


ゴンッ


「違うっ!」


「痛っ!なんで殴るのじゃっ!」


「ムカついたからだ」


「さっきと言ってる事が違うではないかっ」


「俺は良いんだよっ」


なんちゅう理不尽な事を言うやつじゃとかぶつぶつ言ってるけど、言い返して来ないのは正解だ。



飯も食ったし冒険者ギルドに登録しに行く。通常窓口だと騒がれるかもしれないのでギルマスを呼んで貰った。ミーシャとミケは馬車でお留守番だ。


「おう、坊主久しぶりだな」


「前に魔獣登録に来たじゃん」


「あれからずいぶんと経ってるだろうが」


そういやそうだな。まぁいいか。


「今日は冒険者登録する人を連れて来たんだけど、ちょっと訳有りでね」


そういうとギルマスの部屋に来いと言われた。



「ほう、エイブリック様の息子か。そりゃ大騒ぎになるな」


「そう、王都のギルドだと騒ぎが大きくなりそうだからこっちに来たんだよ」


「そりゃ正解だな。いくら冒険者ギルドが独立した組織だっていっても王都ギルドじゃそうもいかん。で、エイブリック様は許可出してんだな?まだ未成年だろ?」


「それは大丈夫。ちゃんと了承貰ってる。2年間の限定付きでね。その2年間俺とダン、それからシルフィード、ミグル、この6人でパーティー組むよ」


「ほう、こっちの嬢ちゃんは前に来てた娘だな。探してた場所は見つかったのか?」


「お陰様でね」


「こっちの嬢ちゃんは初顔だな」


「ミグルは父さん達のパーティーメンバーだった人だよ」


「なにっ?ということはハーフエルフの・・・」


「そうそう。さすがギルマス良く知ってるね」


「しかし、剣士3人、強力な魔法使い3人か。おもしれぇパーティーだな。ダンは盾役やるのか?」


「ぼっちゃん達に盾役いらねぇからな。剣士二人のサポートってとこか」


「そうか、ダンがサポートか。他のパーティーが聞いたら羨ましがるぜ。まぁ、黙っておいてやるがよ。がっはっはっは」


ジョンとアル、シルフィードの冒険者登録を済ませ、俺達を先に馬車へと帰らせた。ダンはギルマスに先日の事を報告するみたいだ。



「そうか、敵討ちが出来たか。良かったな」


「あぁ、ぼっちゃん達のお陰だ」


「その腕はその時にそうなったのか?」


「いや、瘴気の森の近くでトカゲの変異種に腕を持ってかれてな。ぼっちゃんが治してくれたんだ」


「坊主は部位欠損まで治せるのか。さすが聖女の息子だな」


「まぁ、その話はいいんだが、俺が敵討ちした相手なんだがな、オーガの特変異種ってやつらしい」


「特変異種?なんだそれ?」


「オーガと名前は付いてるが、大きさも強さも桁違いの別物だ。目の前に来るまで気配も分からなかった。そいつの頭を持って帰って来て、王室の研究所で調べてもらっているが特変異ってのは恐らく何が原因かわからんだろう。ただ瘴気が関係している可能性が高いそうだ」


「そうか、そんな化け物が相手だったのか」


「あぁ、どれだけ強い冒険者でもまず勝てねぇ。絶対に瘴気の森近くには行くなと他のやつらにも言っておいてくれ。俺もぼっちゃんがいなければ死んでたからな。他に倒せるとしたらアーノルド様達だけだ」


「分かった。伝えておこう」



やっと出てきたダン。かなり待たせたので、女性陣の服代を全部払わせてやった。



肉屋の店もまた大きくなっていて雑談した後に大量に買い込んだ。そこで魔道バッグに入れる訳にもいかないので屋敷に運んで貰う。保存魔法を掛けておけばもつからな。


商会に行く前に屋敷に戻るか。アーノルド達にジョンの成長を知らせないとな。



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