第415話 ゲイルvsミグル
きゃぁぁぁぁ
庭から悲鳴がきこえたので慌てて飛んでいく。
「お二人が!お二人が急に倒れて」
あーあーあー、だからやり過ぎんなって言ったのに。
「心配しなくていいよ。疲れて倒れただけだから」
悲鳴を上げたメイドに大丈夫と伝えてポーションを飲ますフリをして魔力を補充する。やり過ぎて変異種になったら困るので少しだけにしておいた。
「はっ!なんだ今の気持ち悪さはっ」
「アルは前にもやっただろ。魔力切れだよ。だからやり過ぎんなって言ったのに」
小屋で火魔法を連発したときも倒れたからな。
「あぁ、すまん。これが魔力切れか。戦いの最中になったら取り返しが付かんな」
ジョンは初めてだっけな?
「そうそう。だから魔力が無くなりそうな感覚掴んでね」
という俺は魔力が切れそうな感覚が無い。何度も0まで魔力を使ってるから慣れてしまったのだろう。
「取りあえずお昼ご飯食べよう。新しいメニューを作ったから」
「ハンバーグみたいなやつか?」
「ぜんぜん違う」
なんだとアルはがっくりする。
パリス達にかき揚げを作ってもらい、俺は手に入れた昆布と鰹節で出汁をとったうどんを作ったのだ。溶き玉子も入れちゃお。
「はい、かき揚げの天とじうどんだよ」
「うどんは鍋を食べた後に入れるものではないのか?」
ジョン達にとってはそうだな。
「本来はこうやって単品で食べるんだよ。二人には物足りないかもしれないからかしわ飯もあるからね」
育ち盛り体育会系の二人にはうどんだけだと足らんだろと思ってシルフィードに炊き込みご飯を作ってもらったのだ。鶏肉とニンジンだけのシンプルなやつ。アゲとかゴボウがあると良かったけどね。
「うん、これも旨いな」
ジョンは気に入ったみたいだが、アルは物足りないみたいだ。ハンバーグを想像してたらそうかもしれん。
「かしわ飯はシルフィードが作ったんだよ」
そう言うと二人ともこれは旨いっ!だって。現金なやつらだ。
「あの、ぼっちゃま・・・」
「どうしたミーシャ?」
「また冒険に行っちゃうんですよね?」
「うん」
「あの、接客員の先生の件なんですが・・・」
「そんなにサラとやるのが嫌なの?」
「逆なんです」
?
「昨日、サラさんと話をしたんですけど、なんていうかその・・・」
「嫌なこと言われたの?」
「いえ、物凄く私に丁寧に話しをされて・・・、その・・・なんだか気持ち悪くて・・・」
そうか。サラはベントより俺の方が身分が上になったのを知ってるんだな。二人ともアーノルドが雇い主とはいえ、仕える主人は実質俺とベントだ。その立場をわきまえたのだろう。実にサラらしい。
「まぁ、恐くなかったのならいいんじゃない?」
「えぇまぁ、はい・・・」
「ミーシャよ。すまんがしばらくの間ゲイルを借りる事になる」
ジョンは自分達の我が儘で俺を連れ出す事をミーシャに詫びた。
「いえ、ジョン様に謝って頂くようなことではないんです。ぼっちゃまはどんどんやらないといけないことが増えてるのは解ってますし、そのお手伝いが出来るのは嬉しいですから」
そういってニッコリ微笑むミーシャだがやっぱり寂しいだろうな。シルフィードも連れて行ってしまうから誰も友達がいない。帰って来て鬱とかになってたらどうしよう・・・
チュールには悪いが俺が帰ってくる間、ミケを借りれないかな。
アーノルド達が帰って来たら相談してみよう。
それからアーノルド達が帰って来たのは夕方になってからだった。
ドヤドヤと帰ってくる元英雄パーティー達。エイブリックは居なかったがなんか一人見知らぬ人がいる。
子供か?いや雰囲気的に違うな。タレ目で紫ベースの髪色に金やら銀が混じってる髪の毛。なんかヤバそうな臭いがする。
「お前がゲイルか!なるほど、アーノルドに良く似ておるの。なかなかいい面構えじゃ」
「いや、自分はジョンだ」
「なに?そうするとそっちのがゲイルか?どこかエイブリックの面影があるが、まさかアイナがエイブリックの子供を・・・」
「違うわよっ!アルは正真正銘エイブリックの子供よっ!ゲイルはあっち」
「何っ?あんなチンチクリンがゲイルじゃとっ?」
チンチクリンにチンチクリンと言われたくないわいっ
「母さん、誰?」
軽くイラッとした俺は客人だろうけどぞんざいに聞く。
「ミグルよ。元メンバーの残りの1人」
こんなチンチクリンが英雄メンバーだったのか・・・
「ほう、チンチクリンの割にはふてぶてしいその態度。貴様、シャキールをコテンパンにしたそうじゃの?」
ミグル・・・、それにこのしゃべり方・・・
「ドワンのおやっさんの親族?もしかして妹とか?」
「誰がドワーフじゃっ!」
「ワシには妹なんぞおらんっ。それにこんなイカれたのが親族におるかっ!」
「だってしゃべり方そっくりだし、親方と名前が似てるし・・・、チンチクリンだし・・・」
「誰がチンチクリンじゃっ」×2
二人の声が揃う。やっぱ似てんじゃん。
「チビ助よ、ワシは可憐にして美しく、この美貌と豊満なワガママボディをめぐって世界中の男どもが争ったハーフエルフのミグルとはワシのことじゃ。うぬもワシの色香に溺れるなよ」
イラッ
「いへへへへへっ な、なひをすふんひゃっ」
「いやどの口が言うのかと思ってな。これか?この口がそんなたわけた事を言うのか?」
両方のほっぺたをつねって引っ張ってやる
「何をするんじゃ貴様っ!」
こいつ赤色に染まり始めやがった。
「おい、屋敷の中で火魔法なんて使うなよ。水責めにすんぞっ」
ごぼごぼと口の下まで水で包む。こいつファイアボールかなんか撃とうとしやがったな。
「なぜワシがファイアボールを撃つと分かった?それにこの水はなん・・・ゴボゴボゴボっ パアッ。や、やめんかっゴボゴボゴボ」
「そこに座って大人しくしろっ。次に人に向かって攻撃魔法なんか使おうとしたらそのまま解除してやらんからなっ」
ゴボゴボゴボしながら頷いたので解除してやった。ついでにびしょ濡れは可哀想なので乾かしてやる。
ジョンとアルは俺が小さな女の子に無茶苦茶してるのを見てドン引きしてるが、アーノルド達はクックックッと笑いながらさすがだと言っていた。
「お前、今の魔法はなんなのじゃ?」
まだハァハァ言いながらミグルが聞いて来る。
「ただの水魔法だよ」
「詠唱はどうした?」
「知らない」
「はぁ?詠唱を知らんのに魔法が使えるかっ!」
「魔法を使うのに詠唱なんていらないんだよ」
「そんな事があるかっ!どの文献にもそんな事は書かれてはおらんっ」
「書かれたことより目の前の事実を見ろよ」
ボウッと火の玉を浮かべてみせる。
「水の次は火じゃと?」
「ミグル、ゲイルはなんでも出来る。詠唱もせん。それは事実だ」
アーノルドが言い切る。
「そうだ。植物魔法も使える」
続いてグリムナ。
「こやつの土魔法は便利じゃぞい」
ドワン参戦。
「もちろん治癒魔法も無詠唱よ」
アイナも加わる。
「相手の魔力も吸えるけどね」
ついでに俺も加わってミグルから魔力を吸ってやる。
「んぎゃぁぁぁぁ。やめろっやめろっ やめてくれっ。ハァハァ いったいお前は何者じゃっ!」
「ん、俺はゲイル。アーノルド父さんとアイナ母さんの息子でジョンとベントの弟」
「そんな事は聞いとらんっ!最後のはリッチーの魔法じゃろうがっ」
「詠唱無しで魔法が使えるって信じないからやってみせただけだよ。これで信じたでしょ?」
「か、」
「か?」
「鑑定させろっ、ワシが本当に人間かどうか見てやるっ。お前はこいつらに人間と思わせとるリッチーかも知れんからの」
ふむ、ちょっと自分が鑑定されるのに興味がある。グローナの鑑定はなんともなかった。俺の鑑定は男はとても嫌な感じ、女はスケベな目で見られている感じがするみたいだからな。こいつの鑑定はどんな感じがするのだろう?
ちょっとワクワクしながら俺は鑑定される事を了解したのだった。
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