第407話 俺の為に争わないで

さて、話はそろそろ終わりかな。


「じゃあ俺は寝に行くよ。」


「まだ話は終わってない」


「なんでだよっ!」


エイブリックはまだ聞きたい事があるようだ。


「後は何が聞きたいのさ?」


「ドワン、ゲイルのドワーフの国での立場は王族という事になってるんだよな?」


「そうみたいじゃな。ワシも知らんかったわい」


俺も知らなかった。


「で、エルフの里、グローリア王国ではどうなってるんだ?王族籍を与えたんだよな?」


グリムナにも聞くエイブリック。


「そうだ。シルフィードの婚約者だ」


げっ それをここでも言う?


「何っ?」


「長老、俺の祖父母もそれを望んでいる。まぁ、婚約と言っても実際に結婚するのは100年ぐらい後になるだろうがな」


「エルフの王よ。ゲイルは人間じゃぞ。そんなに長くは生きられん。エルフと同じに考えるな」


「いや、ゲイルはエルフ並の寿命がある可能性がある。すでにハイエルフ並の魔力持ちだからな。」


グリムナは魔力と寿命の可能性の話をしていく。


「グリムナ、それはあくまでも可能性の問題だろ?ゲイルが普通の人間と同じ寿命だったらどうするつもりだ?」


「俺はそれでも構わんと思っている。老化が始まるならその時に結婚すればいい。シルフィードはまだ若いがあと20年もすれば子供も作れる身体になっているだろうからな」


「ゲイルをシルフィードと結婚させてどうするつもりじゃ?」


「ゲイルはエルフ達に革命をもたらすだろう。それがきっかけでちっぽけな国ではなく真のエルフ王国を築けるものと思っている」


「ゲ、ゲイルを奪うつもりかっ。エイブリック、ほれみたことかっ!準王家などと中途半端な事をするから先手を打たれてしまったではないかっ!今からでもいい、王族の中から婚約者を探すのじゃっ」


待て待て待て待て。


「ちょっと待ってよっ!勝手に俺の将来を決めないでくれるかな」


「ん?お前はシルフィードの事を嫌いなのか?身体を張ってまで守ってるではないか?」


「好きとか嫌いとかそんなんじゃないよっ!シルフィードは大切だ。それはミーシャやダン、父さん母さん、ジョン、ベントとかも同じなんだよっ」


「ふむ、ということはお前にとってシルフィードは家族みたいなものか?」


「そうだよっ」


「なら問題ないではないか。結婚したら本当の家族になるんだ」


もう、ああ言えばこう言う。


「俺はまだ子供だよ。結婚なんて考える歳じゃないし、シルフィードの気持ちの問題もあるだろっ」


「それは問題ない。シルフィードはお前との結婚を嫌がってはいない。むしろ望んでいる」


「何でそんなこと分かるんだよ?」


「親だからだ」


「グリムナ、ゲイルは王都の庶民街の開発をしてるのだぞ。エルフの国まで手が回らん」


「あぁ、それが終わってからでいい。そんなに時間は掛からんだろ。ゲイルもずっとそれをやるつもりなのか?」


グリムナめ、嫌な所を突っ込んで来やがる。俺も発展の道筋が出来たら誰かに引き継ごうと思っていたのを見抜いてるのか?


「どうなんだゲイル?」


うわぁ~、エイブリックから熱出てるよ。焼きつくされそうだ。


「確かに発展の道筋が付いたら誰かに引き継ごうとは思ってる。動き始めが大変なだけで動き出したら大丈夫だから」


「ほう、では次にエルフの国を作りに行くのか?」


熱い熱い熱いっ


エイブリック、そんな顔を近付けるな。


「そんな話は今聞いた。それに俺は誰とも結婚するつもりはない」


「あら、ゲイルはミーシャが好きなんじゃないの?成人してすぐに結婚するなら間に合うわよ」


アイナ、あんたこんな時に何をぶっ込んで来るんだよ?


「ゲイル、お前はミーシャとそういう仲じゃったのか?どうりでメイドなのに大切にしているわけじゃ。ではミーシャを王族の養子に入れよう。エイブリック、お前の養子にするのはどうじゃ?」


ドン爺、ミーシャを巻き込むな。


「王、それにエイブリックとグリムナよ。坊主を勝手にどうこうしようとするな。坊主の人生は坊主が決める。利用しようとするとは何事じゃ。それをさせない為に坊主に身分を与えたんじゃろがっ」


さすがドワン。見事な壁役だ。


ここでようやくアーノルドが動きだした。


「ゲイル、お前は好きなように生きろ。俺とアイナはお前の判断に任せる。が、強いて言えば西の街の開発が一段落ついたらダンと冒険者でもしてきたらどうだ?遺跡に興味あるんだろ?」


「あぁ、うん」


「ウエストランド王国、グローリア王国。それぞれがゲイルの力がどうしても必要な時はこいつも手伝うだろ。だが、ゲイルありきで物事を進めるのはやめてやってくれ。結婚の話もそうだ。お互い一緒になりたけれなればいいし、嫌ならやめりゃいい。貴族は結婚相手を自分で選べないとか言われるが、それをゲイルに強要するなら貴族籍も王族の身分もいらん。俺もアイナも貴族籍を返上する。ディノスレイヤ領も王家直轄領にすればいい。俺達はただの冒険者に戻れば済む話だからな」


おぉ、アーノルドよ。やっぱりお前は素晴らしい。


アーノルドに貴族籍を返上すると言われて我に返るドン爺。


「ゲイルよ。すまんかった。ついムキになって勝手な事を言うてしもうた」


「俺もだ。エルフの今後の事を思って先走ってしまったな。しかし、シルフィードの事は国とは別にして考えてやってくれ。これは親としての願いだ」


「ゲイル、すまんな。つい熱くなってしまったな。まぁあれだ。西の街を一番にしたあとはしばらく好きにしてくれ」


エイブリックの言うしばらくというのが引っ掛かるがまあよしとしよう。


「うん、3ヶ国同盟が俺が原因で争うとか本末転倒だからね。取りあえず西の街は頑張るよ。グローリア王国もちょくちょく行って出来ることはする。それでいいよね?」


ドワンからドワーフ国もたまには顔出してやってくれと言われたのでわかったと答えた。


課題は残ったけど、ヨシとするか。


部屋に戻ろうとするとアーノルドがこそっと、ミーシャとは本当のところどうなんだ?とか聞いてきやがった。


ミーシャは俺の子供みたいなものだとは言えなかったので、好きだよと答えておいたのだった。



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