第405話 同盟成立と褒美
「おお、グリムナよく来たな。俺の父上を紹介しよう。この国の王をしているドゥンエリック・ウエストランドだ」
「初めましてウエストランドの王よ。私はエルフの里もとい、エルフの国の王になりましたグリムナ・グローリアと申します」
「これはこれはエルフの王よ。丁寧な挨拶痛み入る。遠いところをよくぞおいで下さった。ここはエイブリックの私邸故、何卒楽にして下され」
丁寧な挨拶をしたグリムナに丁寧に返すドン爺。国の格としてはウエストランドの方が上だが対等の同盟を組むということで偉そうにはしない。
「本来であれば王宮で話さねばならんところをこのような私邸で申し訳ない」
「いえ、内密の同盟との事でご配慮頂き感謝申し上げます」
なんか初提携する企業同士みたいだな。昔はこんなのが普通だったけど、もう息苦しい。
「ゲイルよ。此度の使者の役割見事であった」
うわ、ゲームの中で勇者に話す王様みたいだ。この後伝説の剣や鎧とかくれるんじゃねーだろうな?
くっくっくっくっ
「何がおかしい?」
「いや、ドン爺って仕事の時はこんなんなんだなぁって思ったらおかしくて」
「わ、ワシはいつでもちゃんとしているではないかっ」
「いや、だってさマス釣って喜んでると時と比べたらね・・・あっはっはっ」
俺の前ではいつも気の良い爺さんだ。時折城の者達には厳しい威圧を見せるけれども。
「父上、もう宜しいのではありませんか。グリムナもいつも通りにしてくれ。ここでもこんなのだと息が詰まる」
「ん?そうか。ではエルフの王よ。そちらも楽にしてくれ。ワシもそうさせてもらう。このままじゃとゲイルにいつまでも笑われるからの」
「ではお言葉に甘えて」
それからは皆が普通に話しだす。うん、楽だ。
「ミーシャもシルフィードも息災だったか?」
「はい王様。ミーシャは元気です」
「シルフィードも元気です」
「二人とも王に面識があるのか?」
「はい、以前おじゃました時にお洋服まで頂いてしまいました。今日も着てこようと思ったんですけど・・・、そのサイズが・・・」
シルフィードはほとんど変わってないけどミーシャは胸が育って着れなくなってしまったのだ。
「おーおー、そういえばずいぶんと大人になったのぅ。では新しいものを用意させよう」
「い、いえ、催促したわけでは・・・」
「いやいや、構わん構わん。後でサイズを計らせよう」
シルフィードは育ったミーシャの胸と自分の胸と見比べていた。
「エルフの王となった今となってはなんじゃが、ディノ討伐の褒美を渡してなかったのが気になってたのじゃ。何か希望はないか?」
「あれは自分の為にしたこと。褒美を貰う筋合いはない。ただ・・・」
「ただ・・・?なんじゃ?」
「うちの者達がこの国に住むことを希望したら許可を頂きたい」
「なんじゃそんなことか。無論問題は無い。歓迎すると共に支援しようぞ」
「ドン爺、支援は父さんと俺でやるから大丈夫だよ。住むとしてもディノスレイヤ領か西の街になると思うから。」
「ディノスレイヤ領はわかるが、庶民街に住むのか?貴族街ではなく?」
「グリムナさんどうする?貴族街だと俺の管轄じゃないからドン爺とエイブリックさんに頼まないとダメだけど」
「いや、貴族街は今のエルフ達には合わないだろう。街の雰囲気や風習が違い過ぎる。それにアーノルドやお前の街の方が楽しそうだからな」
「そうか・・・、貴族街は合わんか」
「ご飯もうちの方が美味しいしね」
「うむ、それはそうじゃな」
「では、続きは食べながらでもしましょうか。父上はゲイルの旅の話を聞きたかったのでしょう?」
「そうじゃそうじゃ。どんな旅だったか聞かせてくれ。ワシはもうそれが楽しみで楽しみで」
ドン爺相変わらず冒険話好きだよな。
ガーリックバター醤油のステーキとワサビが添えられたローストビーフを旨いと言っている二人に結界の話をぼかしながら森神の話やエイプやコング、そして特変異したオーガの話をしていった。
なんとっ、ほうっ!
ワクワクしながら話を聞いてくれるドン爺。ダンは過去の話をしても良いと言ってくれたので話したけど、これ絶対劇になるからね。
半年後、貴族の女性達の間で【冒険者とお姫様の悲恋劇】~きっとまた会えるから~、が大ヒットになる事をダンは想像していなかった。
「ダンの腕はなんだと思ってたがそういう訳だったのか。もう一度斬り落としたらアイナが治せるだろう?」
エイブリックも同じ発想か。
「こんな腕になっちまったが、前より力も強くなったみたいだしな。何よりぼっちゃんの記念だ。このままでいい」
これでダンが次の恋をしたら美女と野獣という劇になるかもしれない。
「ゲイル、そのオーガの頭を後で見せてくれ」
「これは研究してもらおうと思ってるから寄付するよ。変異種とか特変異種とかの解明をしてもらいたいんだ」
「いいのか?高く売れるぞ」
「ダン、いいよね?」
魔石も勝手にあげちゃったから今更だけど。献上するのは決めてたし。また褒美うんぬんになるから寄付ということにしておいた。
「あぁ、構わん。俺は敵が討てたことで満足だ」
次にコボルトが変異種になった経緯を説明していく。
「そうか。魔力が関係してくるのか。これは鑑定出来るやつと魔力を与えられるやつが必要だな」
「魔力与えるのは魔法水を渡しておこうか?」
「あれはあまりに公にはしたくはない。遺跡からのものとして渡していいんだが、鑑定したらなんて出るんだ?」
「魔力が込められた水。濃度低とかだね。ただ鑑定能力に差があるみたいだから他の鑑定出来る人には俺が作ったものとわかるかもしれない。俺の鑑定ってムラがあるんだよ。変に詳しく見えたり最低限の情報しか見えなかったりするんだよね」
「だとすると良くないな。魔力ポーションでやるしかないな」
魔力を補充したり吸ったり出来るのはあまり言っちゃいけないんだな。気を付けよう。
その後にオーガの頭を渡すと開けて確認するエイブリック。
「想像してたよりデカいな。ダンはよくこいつを真っ二つに切れたな。それと剣に炎を纏わせたんだな?」
「あぁ、もう一度やろうとしても出来なかったがな」
「俺の魔剣を貸してやるからもう一度やってみたらどうだ?」
「いや、ぼっちゃんの魔剣でやってみたがダメだったんだ」
「ゲイルのはただの魔剣だろう?俺のは炎の魔剣だ。もしかしたら使えるかもしれんぞ」
そう言ってエイブリックは自分の魔剣をダンに手渡した。
ダンはディノを倒した魔剣を見てゴクッと唾を飲んだ。鞘から抜いた剣からは特別な何かを感じる気がする。
ダンが暴発させるかもしれないので土壁作って防御して見守ることに。
剣を構えて精神統一するダン。
でぇぇぇぇいっ
ごうぅぅぅぅ
ダンは見事に炎の魔剣に火を纏わせる事が出来た
「・・・・やった・・・・ 出来た・・・」
「ダンやったじゃないかっ」
「ぼっちゃん、俺やっぱり出来たぞっ」
「うんうん、ちゃんと出来てたよ」
ダンがずっと苦労してたのを知ってる俺は自分の事のように嬉しかった。
「やっぱりな。普通の剣に纏わせられたのならこいつを使えると思った通りだ。ダン、お前にその剣をくれてやる。これからもしっかりとゲイルを守れ」
えっ?
「いやいやいや、エイブリック様の剣を貰うなんて出来っこねぇ」
「なんだ?お前は炎の剣を欲しがってたんだろ?」
「おいおい、エイブリック。そいつぁ王家の宝だろ?」
アーノルドも慌てる。
・・・
・・・・
・・・・・
「その必要は無い。ワシがダンに魔剣を作ってやる」
「お、おやっさん・・・」
「ワシの前で炎を纏わせたら作る約束じゃったからの。エイブリックよ、礼を言うぞ。こいつは腕が立つかわりにどんくさいところがあるんじゃ。まったく長い間待たせよってからに」
ドワンもとっくにダンに魔剣を作ってやるつもりだったみたいで、早くダンが扱えるようになるのを待っていたらしい。オーガを斬る時に炎を纏わせた事を聞いて嬉しそうだったからな。
「ふんっ、ドワンも意地悪せずにさっさと作ってやればいいものを」
なるほど、ドワンがダンに魔剣を作らせるきっかけを作ってやったのか。やっぱりエイブリックってそういうところあるよな。恐らくドワンが作ると言わなければオーガの頭の褒美としてそのまま本当に炎の魔剣をあげてたかもしれんが。
「おやっさん、俺の魔剣とエイブリックさんの魔剣の違いってさ、どこかに魔石が仕込まれてんじゃない?」
「恐らくそうじゃろうな。坊主頼めるか?」
「もちろんだよ。特大のを作ってあげるよダン」
いや、ほどほどで良いと笑われた。
「魔石を作る?どういうことだゲイル」
「俺は魔石を作れるんだよ。多分グローナさんも作れるよ。後でやり方教えるね」
グリムナは相当驚いていた。
その後に同盟の書類にサインをする。ドワーフの国のはドワーフ王子であるドワンが代行してサインをした。
これで、ウエストランド王国、ドワーフ王国、グローリア王国の同盟と不可侵条約が秘密裏に結ばれたのであった。
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