第398話 帰還

ボロン村ですることも終わったのでディノスレイヤ領に帰りましょう。


村人達にもらった干し柿を魔道バッグにしまい、シルバー達に乗って帰る。


さて、俺達は4人。馬は2頭。どういう組み合わせにするかな。グリムナは馬に乗れるみたいだが、シルバーは俺に、クロスはダンに乗ってもらいたいだろう。クロスにダンとグリムナは可愛そうだな。


という事で俺とグリムナ、ダンとシルフィードという組み合わせに。グリムナに馬なんて誰が乗るとかわからんだろうと言われるがそうではないのだ。


もう慌てる必要は無いのでのんびりと帰ることに。いつものごとく村人達に盛大に見送られて出発した。



しかし、馬に乗ると寒いな。自分で歩いているとそうでもないのだが馬に乗ると身体を動かさないぶん寒い。でも寒そうにしているのは相変わらず俺だけだ。気配察知の修行で寒さに強くなったとはいえ寒いのは仕方がない。毎度のごとく温風を出して自分を暖めていく。ミーシャと乗ってるなら一緒に暖まるのだが美形のエルフとはいえオッサンと同じ毛布にくるまるのは嫌だ。


なんかお前から暖かい風が来るが何をしてるんだ?とグリムナに聞かれたが知らん顔をしておいた。


途中で一泊してディノスレイヤ領に戻って屋敷に到着。


「お帰りなさーい」


むぎゅううぅ


一番に出てきたミーシャに強く抱きしめられる。ミーシャ、お前胸おっきくなったよな。窒息しそうだからやめてくれ。


ミーシャに抱き締められる俺を見たグリムナはとても不機嫌そうだった。娘婿が浮気しているとでも思ってんじゃないだろうな?


次にミーシャはシルフィードと抱き合って再会を喜んだ後にシルフィードがグリムナを紹介した。ミーシャとシルフィードの仲が良いことを知ったグリムナは複雑そうだ。


他の使用人がアイナを呼びに行ったみたいでアイナも俺を見るなりむぎゅううぅっとした。やめてアイナのむぎゅううぅは本当に窒息するから。背骨も折れそうだ。


「キブっ ギブっ」


アイナの腕をタップした俺はやっと解放された。


「グリムナ、本当に久しぶりね。やっぱりぜんぜん変わらないわ」


「アイナは老け・・・大人になったな」


グリムナの危険察知能力が働いたのか上手く誤魔化したようだ。


食堂に入り厨房に顔を出すとブリックもポポもいない。買い出しにでも行っているのだろうか?


アイナとグリムナは昔話に入ったみたいなので俺はダンとコボルト達に会いに行く。アイナもミーシャも何も言ってなかったから問題は起こしてないだろうけど。


コボルト達の世話を頼んだジャックを探そうとしたらデカいコボルト達が俺を目掛けて飛んできた。


アウアウアウアウッ


一瞬襲われたのかと思うぐらいの歓迎だ


やめれやめれやめれ


もう全身ヨダレまみれでびしょびしょだ。クリーン魔法を掛けて温風で自分を乾かす。


「ぼっちゃん、大歓迎じゃねーか。しかし、こいつらデカくなったな。本当にコボルトか?」


そう、コボイチ達は大人になってデカくなったのはわかるがデカ過ぎる。それに首輪はベルトでは無く、紐に変わっている。冬毛だからかもしれないが白熊みたいだ。


「ぼっちゃん、ようやく帰って来たか」


「ジャック、コボルト達の世話ありがとうね。問題無かった?」


「あぁ、こいつら良く言う事を聞くぜ。なんの問題もねぇ」


「なんか想像よりデカくなってるんだけど・・・」


「あぁ、俺もこんなデカいコボルト見た事がねぇ。こいつら特殊個体か?」


いや普通のコボルトだったはず。やっぱり異常にデカいんだよね?


「コボルトって進化するの?」


「いや、そんなの知らねぇな」


ダンもジャックも知らないみたいだ。


コボルト達に鑑定するぞと伝えて見てみる


【コボルト】変異種


あ、変異種になってる。


「こいつら変異種になってるね。なんかあった?」


「いや、毎日街の中や牛達の牧場に行ってただけだ」


「ぼっちゃん、出発前に魔力の水を渡していっただろ?あれじゃねーか?」


「ジャック、あの水どれくらいあげたの?」


「ぼっちゃんが居なくなってから淋しがって鳴くからよ、試しにあの水をちょっとやったら鳴き止むんだよ。だからほぼ毎日だな」


ほんの少量だが毎日のように与えてたらしい。あの魔法水は高濃度だからかなりの魔力を与えてた事になる。


「あー、じゃあそれが原因だね」


「すまねぇ、あの水で変異種になるとは知らなかったぜ」


「いや、俺達も知らなかったよ。まぁデカくなっても言うこと聞くなら問題ないけど」


ディノスレイヤ領の人は日々育っていくコボルトを見て慣れてるみたいだけど、王都に連れて帰ったら驚くだろうな・・・


ふとダンを見るとコボルト達が熊腕をしきりにフンフンしていた。獣同士と思っているのだろうか?


一通り話が終わったのかアイナ達もここへやって来た。


「ゲイル、それはグレートウルフか?なぜこんなところにいる?」


「グレートウルフ?」


ダンも知らないらしい。


「これは俺がテイムしたコボルトだよ」


「お前、テイムまで出来るのか?それにそれがコボルトだと・・・?そういやシルバーウルフみたいなするどい顔つきではないな」


すっかり飼い犬になったコボルト達。ジャックにも愛情を注がれていたのだろう。とても愛くるしい表情をしている。


なぜかアイナにはしっぽを下げているのは気になるが・・・


俺は魔獣に魔力を過剰に与えると変異種になる推測を話す。試しにシルバーに魔力をたくさん注いでも喜ぶだけで大きくはならなかった。


「うむ、今の話を聞くとその可能性はあるな。守神も少し大きくなったからな」


「もしかしたら肉食系の魔獣という限定なのかもしれない。シルバーは大きくならないし」


「なるほどな。雑食の魔物ならどうなるだろうか?」


雑食系ならゴブリンや人間もそうだな。


ダンやシルフィードに魔力補充したことが何度もあるけど過剰には補充してなかったからな。後でダンに試してみようか。


【ダン】変異種


こんなのが見えたら吹き出してしまうな。身長3メートルとかになったらグリズリーだ


一人でクックックと笑ってると、またろくでもねぇこと考えてやがんだろとダンに突っ込まれた。当たりだ。


コボルト達をひとしきりかまって屋敷に戻る。


「母さん、ブリック達はどこに行ったの?」


「料理教室よ。ポポも手伝ってるわ」


そうか。俺の居ない間に進んだんだな。明日俺も参加させてもらおう。


「ゲイル、今晩はバルに食べに行きましょうか。ブリックもいきなり人数が増えて用意が間に合わないかもしれないから」


「そうだね。おやっさん達にも挨拶しないといけないからそうしよう」


アーノルドの帰宅を待ってバルに向かう事にした。今夜は宴会になるだろう。本当はゆっくり寝たかったんだけど・・・



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