第372話 モフモフ
「お帰りなさいませ・・・、そ、それは、コボルトでは・・・」
コボルトにドン引きするカンリム。
「飼うことにしたから。そのうち街に連れていくけどね。俺がいない間の世話係決めておいて。絶対に叩いたり蹴ったりとかさせるなよ。言葉で分かるようにしてあるから。もし叩いたり、蹴ったりとかしたやつがいたら処分するからな」
「か、かしこまりました」
「それと大きな声で怒ったりするのもダメだ。いたずらとかで叱らないとダメな時は<ダメ>だけでいいからな。いいか、絶対だぞ」
念入りに言っておく。小さい間にこれをやられると、人間を敵だと思ってしまうからな。
「ぼっちゃま、それは何ですか?」
「コボルトの子供だよ」
「大きくなったら食べるんですか?」
「た、食べませんっ。これ見て可愛いとかは思わない?」
「小さいなとは思いますよ」
この世界はペットとかいう感覚がない。役に立つか立たないか、食えるか食えないかの世界だ。ここでは動物を可愛がる俺の方が異常なのだ。
「あ、うん。小さいね・・・」
風呂場に連れていきもう一度クリーン魔法を掛け、コボルト用の湯船を作って入らせる。温度はぬるま湯だ。初めは怖がってたが、俺が先に入って呼ぶと入ってきた。
「こ、こら暴れるなよ」
お湯に慣れてはしゃぐコボルト。俺の顔を嘗め回したりバチャバチャ暴れたり楽しそうだ。
俺もコボルト達にお湯を掛けたりして遊ぶ。めっちゃ楽しい・・・
コボルト達とキャッキャウフフしてるとダンも入って来た。
「楽しそうだなぼっちゃん。そんな姿を見ると子供らしくていいな」
「誰もこいつらを見て可愛いとか思わないんだね」
「コボルトなんざ可愛いと思うのはぼっちゃんだけだぜ」
そう言われたあと、コボルト達にリンスを塗っていき、洗い流したあと乾かしてやった。
やった、フワフワモフモフだ。
冬毛の子コボルト達はリンス効果もあってモフモフになった。
おいでおいでと部屋まで連れていき、トイレのしつけをしていく。テイムしてると言うことをすぐに理解するのが助かる。
次は食事だ。
厨房の前でオスワリ、マテをしておく。
「ご飯までもう少しお待ち下さい」
「いや、俺のじゃなくてね。なんの肉でもいいから火を通した物をくれない?コボルトのご飯にするんだよ」
「コボルト? 魔物のコボルトですか?」
「そうだよ。俺が居ない時は世話する人が餌を取りにくるけど生肉、ネギ、玉ねぎ、ニラとか入ってるものあげないでね。これは絶対ね」
「わ、わかりました。他の者にも伝えておきます」
茹でた鶏肉を貰って食堂に行く。
「ここがお前達のご飯を食べる場所だからな。オスワリ」
その後、オテ、オカワリ、フセとかを教えて行く。
「ヨシ、食べて良いぞ」
カフカフカフカフと鶏肉を食べるコボルト達。あーあ、口の周りがべちゃべちゃだ。せっかく洗ったのに。もう一度クリーン魔法をかける。
「坊主、コボルトなんかどうするんじゃ?」
「あ、おやっさん」
ドワンとミゲルに牧羊犬みたいなことを説明する。
「そんなことが出来るのならディノスレイヤでもやったらどうじゃ?」
「ここで上手くいったらそうするよ」
「そんな事が出来るんですかぁ?」
一緒に話を聞いていたミーシャがそういうのでモフモフになったコボルトを抱っこさせてみる。
「ほら可愛いだろ」
ミーシャの顔をペロペロするコボルト。
「フワフワして美味しそうですね」
おいっ
ダメだ。生き物を食べ物としてしか認識しない
「さ、触ってみてもいいですか」
シルフィードにも抱っこさせてみる。
「フワフワっです」
コボルトに頬擦りするシルフィード。よしよし、シルフィードは可愛いという感情を持てるようだ。
その後コボルト達はお腹いっぱいになったからか食堂で寝てしまった。
その後、続々と帰って来る人達にコボルトの説明をした。
「カンリム、使用人を全員集めて。シュミレさんは研修生も集めてくれるかな。やっぱり俺からコボルトの事をみんなに説明しておくよ」
食堂に全員集合だ。
「今日からこのコボルトは俺の仲間になった。成長したら街の仕事をさせる予定だ。そこで今から言うことは命令だから必ず守れ」
・殴ったり、蹴ったり等の乱暴をしないこと。そのフリもしないこと
・ネギ類などを食べさせないこと
・餌の肉類は必ず加熱したもの。生の物を食べさせない
・叱る時は「ダメ」と強く言うこと
「以上は絶対だ。テイムしてあるから、基本人の言うことを理解する。ただ子供だから間違う事もあると思う。遊びで噛んでしまうこともあるかもしれない。それでも叩いたりしないように。甘噛みというやつだから遊びの一つなんだ。その時はダメって注意してくれ。もし今言った事を守れなかった者は解雇する」
俺の解雇という言葉にビクッとする使用人達。
「あと別件だけど、ミーシャは俺付きのメイドだがこの屋敷のメイドではない。シルフィードはディノスレイヤ家の客人だ。俺が居る時は二人がいろいろメイドの仕事をしてくれるがそれは間違いだから、この屋敷のメイド達がやれ。ミーシャもこの屋敷では客人だからな。今この屋敷に住んでいる人、ここにやってくる人は国の要人だ。それに対応出来る使用人としてお前達の待遇も改善した。特にこれから訪れるであろう人達は要人中の要人になる。くれぐれも失礼の無いように」
この際だから気になってた事も言っておく。掃除や衣服が汚れているような事はないからサボっているわけでもなさそうだ。ミーシャがいる事でどういう対応をすれば良いかわからなかったんだろうな。
「あと俺が居ないときにコボルトの面倒をみてくれる者は誰がいい?カンリム」
「ではベラに任せましょう」
「えっ?私?」
「じゃあ、ベラこっちに来て」
「は、はい」
「お前達、このベラがお前の世話をしてくれる。ちゃんと覚えておけよ。ベラ、しゃがめ」
ベラは言われた通りその場でしゃがむ。コボルト達はフンフンとベラの匂いを嗅ぎにいく。
「ベラ、こいつらの名前はコボイチ、コボニ、コボサン、コボヨン、コボゴ、コボロクだ。覚えやすいだろ。ちょっと名前を呼んでみろ」
「こ、コボイチ・・・」
びくびくしながら名前を呼ぶベラ。
「キャウッ」
コボイチは返事をした。
「他のも呼べば返事をするから、どれがどれかわからない時は名前を呼んで確認してくれ。あとオヤツを用意しておくから、良いことしたり、言うことをちゃんと聞いた時はそれをあげてくれ。それ以外はあげちゃダメだぞ」
「か、かしこまりました」
これでいいだろう。
ドワンとミゲルは明日帰るみたいなのでアーノルドに手紙とブリックの事を伝言で頼んでおいた。
夜ベッドにコボルト達が入ってくる。めちゃくちゃ暖かい。綺麗にしてあるから獣臭くもないしモフモフが快適だった。
翌朝ドワンを見送った後、シルバーの所に行くと拗ねていた。コボルトの臭いが身体に付いてるからだろう。
「拗ねんなよ。お前達にも温泉作ってやるから」
馬が歩いて入れる温泉を掘ってやり、水魔法操作で温泉のお湯を持ってくる。
「気持ちいいか?」
なんの抵抗も無く温泉に浸かるシルバー達。一度上がらせてからリンスをペタペタとしてもう一度浸からせる。そのあと温風で乾かすと艶っつやの馬になった。サラッとしたたてがみも誇らしい。シルバー達も満足したようだ。
さて、今日はコボルトの首輪とリードを買いに行かなきゃな。馬具屋にいけばそれらしき物があるだろうか?
ペットショップあればいいのになとか思いながら食事に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます