第357話 予定を埋めて行く

「ソドムさん、フンボルト。今日の朝だけ付き合って。衛兵団長の所に行くから」


「衛兵団のところですか?」


「そうそう、街の治安維持の為に主要箇所に衛兵の待機所作ろうと思って」


「そんな事出来るのですか?」


「衛兵団を立て直す為に王家護衛騎士のホーリックさんていう人が衛兵団長になってくれたんだよ。あと西の衛兵団が俺の指揮下に入ったから大丈夫。ここの治安維持は衛兵団長と決めてくれと言われているから」


「王家護衛騎士が衛兵団長に?」


「そう、志願してくれたらしいよ」


「王家の護衛騎士が庶民街の衛兵団長に志願なんてされたんですか?」


「護衛騎士団長はナルディックさんていうんだけどね、自分も志願して王様に怒られたとか言ってたよ。そのナルディックさんが志願した中からホーリックさんを選んでくれたみたいだから信用出来るよ」


「王家護衛騎士団長もお知り合いなのですか?」


「一緒に釣りに行ったり、ご飯食べたりはしてるよ。いまここに来てるおやっさんが作った専用武器持ってるしね。ここにいるメンバーはほとんど顔見知りだよ」


この人はどれだけ顔が広いんだ・・・


「あと、ここに住んで貰うから。自宅が貴族街の東って言うからこっちの方が職場に近いでしょ。フンボルト宜しくね」


「わ、私が王家護衛騎士と同じ屋敷に住むのですかっ」


「同じ部屋とか言わないから別にいいじゃん」


「それはそうですけど」


「多分、非番の時に護衛騎士の人達が遊びにくると思うから。俺が居ないときは相手を宜しくね」


「あ、あはははっはい」


こいつエイブリックにはこんなに緊張してなかったのに変なやつ。


「まだあるよ。ここのコックの料理研修にエイブリックさんとこのコックさんが誰か来てくれるから。もしかしたら研修が終わるまでここに住むかもしれない。カンリムもその時は宜しくね。あそこのコック長やること早いから今日とか来るかもしれない」


「かしこまりました」


6人で衛兵団に向かうので歩きだ。シルバー達は連れて行くけど。


ミーシャとシルフィードは小熊亭で待っててもらい、俺達だけで詰所へ。



「おはようございますゲイル様」


詰所に着くと何も言わないのに最敬礼されてホーリックの元へ案内される。


「おはよう。こちらが仕事を手伝ってくれている文官のソドムさんとフンボルト。こちらは衛兵団長のホーリックさん」


お互いを紹介する。フンボルトはガチガチだ。こいつの緊張する基準はなんなんだろ?



「では、各地の交番という場所に待機とパトロールをさせれば良いのですね」


「そう。24時間誰かいるようにして欲しいんだけど大丈夫?」


「問題ありません。人数も確保してありますので」


「あと全員、週に一度は休ませてね。」


「休みですか?」


「そう。これは方針の一つ。仕事をするときは仕事。休む時は休む。こうしないと体も気持ちも持たないからね。これで人が足りなくなるようならその分はこっちで給料持つから増やして」


「費用の心配は不要です。それはこちらの問題ですから」


「いいの?」


「もちろんです」


「あと店が出来始めたら衛兵割引をさせるよ。制服で食事しに来たら割引する制度」


「なぜそのような事を?」


「衛兵が来る店は治安が良くなるからね。嫌な人は制服脱いでくればいいから。それに制服着てたらベロベロに酔って失敗するとか無くなるでしょ」


「なるほど。双方に利益があるというわけですな。さすがはゲイル様です」


「どちらも初めは緊張すると思うけど、そのうちそれが当たり前になるから。住民と衛兵の距離も近くなるでしょ」


「わかりました。店が出来るの楽しみです」


「次は牢に入ってる元盗賊がいるでしょ。俺が討伐したやつら」


「はい」


「前の前の衛兵団長フランクさんの時に賊の見張りをさせてたんだけどその任務に復帰させてくれる?エイブリックさんの許可はもらってあるから。あいつら盗賊を見分ける事が出来るんだよ。門の外と街の出入りするところを見張らせて、怪しい奴がいたら衛兵に知らせて貰うから」


「了解しました」


「あともう一つ。今年の冬になると思うんだけど治癒士二人派遣して貰うんだけどどこがいいと思う?」


「治癒士ですか?」


「そう母さんの弟子二人派遣して貰うんだ。母さんが行くとか言ったら父さん反対したけど」


「聖女様のお弟子様がこの街に来て下さるんですか?」


「聖女様?」


「ゲイル様の母上です。美しく気高い聖女様です。そのお弟子様に来て頂けるなんて」


呪いでつねられるのが嫌なのでスルーする。


「で、場所はどこにしようか?」


「この詰所はどうでしょうか?」


「治療院だからお金取るけど詰所でお金取っていいの?」


「問題ありません。場所も説明しやすいですし。何よりお弟子様の安全が担保出来ます」


「分かった。じゃ部屋の確保お願いね。あと引っ越しはいつにする?」


「今日からでも宜しいですか?」


「大丈夫だよ。フンボルト、この後屋敷に戻るだろ?カンリムに伝えておいて」


これでここは終わり。


宜しくね~ってことで小熊亭に戻った。皆でお昼ごはんを食べて、4人でロドリゲス商会へ。


「こんちはー」


「お帰りなさいませぼっちゃん」


大番頭にミーシャとシルフィードを紹介してから蒸留酒の件を話す。


「仕入れ値が銀貨30枚、うちに銀貨50枚で卸して欲しいんだけど」


「銀貨40枚で結構です」


「そんなの儲けないじゃん」


「数を売って下されば良いのです。商品もお金も回ってこそ価値が出ます。是非ともたくさん販売をお願い致します」


「ありがとう、がんばるよ。あとスパイスと味噌、白砂糖、薄力粉、片栗粉を屋敷に配達して欲しいんだけど在庫ある?」


「はい、どちらもヨルド様から注文が入りますので」


「じゃあヨルドさんがよく頼む奴を適当に。支払いは執事のカンリムに貰って。伝えておくから」


「かしこまりました。それではすぐに手配いたします」


これで今日やること終わりだな。


「ちょっとエイブリックさんところに寄って帰るよ」


執事に次いつ来たらいいか相談する。


「エイブリックさんから古文書の文字を教えてくれと言われてたんだけどいつ来たらいいかな?」


「では3日後でお願いいたします。お昼前に来て頂けますか」


これでオッケーと。



小熊亭に戻って今日は来れないと伝える。明日は小熊亭が休みだからジロンの屋台の案内をお願いしたので、それが終わったら王都見学だな。


屋敷に戻ってロドリゲス商会が来たら支払いをするようにカンリムに伝える。



「おう坊主、ワシらは明日一旦帰るぞ」


「また戻ってくる?」


「魔道ライトから先にやる。使用人の食堂はお前が基礎を作れ。それと使用人の風呂は坊主が作った方が早いんじゃないか?入れりゃいいんだろ?」


「じゃあそうしようか。俺の風呂は湯船を檜で作ってほしいんだけど」


サイズやらなんやらを打ち合わせて基礎だけ俺が作って上物とかは全部ミゲルにやってもらう。


ドワーフ3人はディノスレイヤで資材の調達やら人の手配を行い、また戻って来てくれるらしい。


トイレ交換とかやることてんこ盛りである。



それが出来たら温泉掘らなきゃな・・・






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る