第352話 ディノスレイヤ領でのミッション完了
今夜はバルの個室で宴会だ。
「父さん、王都に行く時にブリックも連れて行くよ」
「なに?その間俺達の飯はどうすんだ?」
「晩飯はここに来たらいいし、たまには自分達で作りなよ。冒険者やってたんだから出来るでしょ」
「そりゃあまぁ・・・」
「朝ご飯とお弁当くらい作ってあげるわよ」
「アイナの手料理か。それは楽しみじゃのアーノルド」
苦い笑顔をするアーノルド。
どうやらアイナは飯まず女のようだ・・
いでででででっ
「っててて。でね父さん。ブリックが帰って来たら料理教室をやってもらいたいんだよ」
「料理教室?」
「そう。個人向けでもいいし、新しく食堂を始めたい人向けでもいいし。レシピはもうエイブリックさんところを気にしなくなくていいから、ディノスレイヤ領全体で広げて行くのがいいと思うんだよね」
「広げてどうすんだ?」
「西の街はそうしていくつもりなんだけど、ディノスレイヤもそうして行けば王都で食べるより安いし、観光客が来るようになると思うんだ。ゴブリン狩りツアーとかやれば一般の人も冒険者体験とか出来るし。ここならではの楽しみが出来るよ」
「なるほどな」
「あと、バルの裏庭で試しに温泉掘ってみたら出たから、温泉宿も出来るよ」
「ゲイル、本当に温泉出たの?」
「出たよ。うちにも掘るから」
「じゃあ、明日掘って頂戴ね」
「あ、うん・・・・」
「温泉てなんなん?」
ミケっていつの間にか横にいるよな・・・
「風呂だよ風呂。バルの裏庭から出るからそのうち親方が工事してくれるよ。普通の湯よりお肌がしっとりしたりするかもしれん。お前の尻尾の毛並みもよくなるかもしれんぞ」
「ほんま?最近ゴワゴワやねん」
「オリーブオイルとか乳化させて塗っとけ」
「なんなんそれ?」
「石鹸で洗うとごわごわになっていくんだよ。おやっさんにクエン酸貰って少し湯に溶かして、尻尾を浸ける。その後でオイルを乳化させたやつ塗っとけば艶々だ」
「なぁ、その艶々になるやつ作ってや」
「ゲイル、そんなもの本当に作れるの?」
「母さんは治癒魔法で綺麗になるんじゃないの?」
「あ、それはそうかも。やったことないから試してみるけど、ゲイルが作る物に興味があるわ」
リンスか・・・ マヨネーズを乳化させる物質が卵黄だな。乳化させるのは卵黄に含まれるレシチンだっけ?そういや大豆にも含まれているんだよなレシチン・・・
オリーブオイルと豆乳で作れるかな?石鹸で髪がゴワゴワになるのはアルカリ成分でキューティクルが開くんだっけ?手作りリンスってクエン酸水だったよな・・・
オリーブオイル、豆乳、薄いクエン酸水でやってみるか。
「明日試しに作ってみるけど、効果があるかわかんないよ」
ということでやることがまた増えた・・・。シルフィードとの稽古は王都に戻ってからだなこりゃ。
「話は変わるけど、そろそろうちの屋敷を建て替えるか迎賓館でも作った方がいいんじゃない?」
「なぜだ?」
「観光客が増えたら視察にくる貴族とかいるかもしんないし、ドン爺とか来る度に天幕とか申し訳ないじゃない?それと俺が貰った屋敷が立派過ぎて申し訳ないんだよね。父さん達の屋敷よりデカいとか」
「そんなのは気にする事はないが迎賓館は必要かもしれんな。確かに王がまた来るかもしれんし」
「ドン爺から闘技会を観に行けなかった話を聞かれてさ、エイブリックさんだけが観に行ったのを拗ねてんだよ。絶対今年の闘技会を観に来るよ」
「あー、そうか。それは確実だな。今年は年に数回やって、そこで勝ち抜いた者で年末に優勝決定戦をやろうかと思ってるんだ」
「なるほどね。それなら年末にしか参加出来ない人もいるから、年末に予選もやって、他の大会で勝った人は年末の予選免除でいいんじゃない?」
「そうだな、そうしよう」
まただ。アーノルドはこういうの考えるの苦手なんだろうな・・・
こうしてブリックの料理教室と迎賓館が作られることに決まった。アーノルドはあまり大きな屋敷より今ぐらいの方が落ち着くらしい。それはなんとなく解る。
翌日からはリンス作りだ。豆乳を作ってオリーブオイルと薄いクエン酸水を混ぜて作ってみる。マヨネーズみたいに硬くはならないがどろっとした液体が完成。オリーブオイルの匂いだけだと物足りない。花とか浸けておいて匂いを足すのもいいかもしれん。
これはミケの尻尾で試してみよう。
バルの勤務時間前にミケを呼び出す。
「ミケ、尻尾を出せ」
「ゲイルのすけべ」
なんでやねん。
「ゴワゴワの尻尾なんぞ魅力ないわっ!これ作ったから試すんだよっ」
俺が塗るとまた変な事を言い出しそうなので自分で塗らせる。
「そのままちょっと放置してから洗い流してくれ」
10分程たってから洗い流させて乾かしてやる。
「どうだ?」
「めっちゃフワフワやん。手触りもええで、触ってみる?」
そう言われて触ると確かにすべすべになって触り心地が良い。
「あんた、やらしい触り方すんなぁ」
「お前が触れって言ったんだろがっ。もうお前にこれはやらん」
「嘘や嘘。これはもろとくで」
「今度ちゃんとしたやつ作ってやるからな」
よし、実験はミケで終了。次は自分でも使ってみるかな。
屋敷にも温泉が出たので念の為、鑑定しておく。もしかしたら毒とか混じってるとまずいからな。
【湯】地下深くで温められた水。わずかに治癒効能有り。打ち身、筋肉痛、関節痛、擦り傷、あかぎれ、肌荒れ等が治癒される。
温泉の効能ってこんな風に見えるのか。湯治とかに来る人が増えるかもしれん。
先に温泉を堪能してからリンスを試す。
温泉から出た肌は心なしかすべすべになってる気がする。手にシワもない。まぁ5歳だから当たり前だが。
ここは肌の衰えが気になりだしたアイナで ・・・いでででででっ
つねられてもいない横っ腹が痛い。美しいお母さまがより美しくなるように試して貰おう・・・・
よし大丈夫。本当に呪いかけられてんじゃねーか?
リンスも元の世界のとは違うが、石鹸でゴワゴワになった髪の毛がしっとりする。これでも十分だな。これは王都の宿に泊まった人だけに売るプレミアム商品にしよう。王都で作ってもいいけど、レシピがあってもパクられそうだな。商会で作ってもらった方が安全だな。
翌朝以降は果樹園予定地から伐採した切り株の処理だ。結構手間がかかるけどミゲルにやってもらったら時間も費用も掛かるからな。せっせと魔法水を作っては切り株の魔力を吸って枯らすを続けていく。これ1日で終わらんな。シルフィードが魔力を吸ったり与えたり出来るようになってくれないかな・・・
3日掛かってやりとげた。万年筆も出来たし、バルブもある。そろばんとガリ版とこれで今回の用事は終わりだな。
さて、そろそろ王都に戻ろうか。
「父さん、明日王都に戻るよ。母さんご飯宜しくね。一週間くらいで戻るから」
翌朝商会に行くとすでに覇王の馬車に荷物が積み込まれ始めていた。
蒸留酒やらリンゴのお酒やらもたくさん積んである。
ドワン、ミゲル、ミーシャ、シルフィード、ブリック、ミケ、ミサ。
俺とダンが馬に乗り、馬車はウィスキーがひいていくみたいだ。
ウィスキーがこの馬車をひくと世紀末感が一層増す。俺は馬で良かったとつくづく思う。
くそ重たいであろう荷物と人満載の馬車をウィスキーは物ともせず歩き出したのだった。
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