第350話 やることがいっぱいある
小屋でせっせと仕込みをしていく。気温が低いので前に作ったタレもまだいける。良かった。
厚切りタンに切り込みを入れて味噌塗ってと。薄切りはニンニクでやるか。
「ぼっちゃん、ネギが食いてえ」
ダンが言うのは白髪ネギのことだ。試しにシルフィードにやらせてみよう。
やり方を教えていく。土魔法操作はまだまだだけど、シルフィードならすぐに出来るだろう。街の開発も手伝って貰えれば一石二鳥だな。
よし下準備完了っと
「なぁ、ぼっちゃん。気になってたんだがよ、今年の蒸留酒どうすんだ?」
あ、完全に忘れてた。
「すっかり忘れてたよ。おやっさんの所みたいに一気にやるしかないね。明日からやるよ」
お昼ご飯に焼き肉だ。焼き肉とご飯の組合せ最高っ!
スライムはまだ生きてたので餌をやろうとする前に考える。一年近くほっといたら確実に死ぬよな。魔物だから死んでもいいかと思うけど、健気に汚物を処理してくれるこいつにちょっと愛着が湧いてしまってる。
ここを出る前に逃がすというのも手なんだけど、遠くまで逃がしに行くのも手間だな。
だいぶ小さくなってるので、試しに魔法水をポチョッと一滴落としてやるとブヨンと大きくなった。たった一滴で?
「ダン、ちょっと来て」
「これって初めに捕まえて来たときより大きいよね?」
「さっきもっと小さかったぞ。何をやったんだ?」
「いや、冒険に出てる間に死ぬだろうなと思ってね。試しに魔力水を一滴落としたら大きくなったんだよ」
「一滴でか?」
「うん、もう一回やってみるね」
ポチョッ
ブヨンっ
「うわっ、めちゃくちゃでかくなりやがった」
「ほら、デカくなったでしょ」
スライムは何でも食べるけどそれは栄養じゃなくて魔力を補充してたんじゃなかろうか?汚物や食べかすに含まれている魔力なんてほとんど無いに等しいけどそれを栄養にしてたなら分かる。前に唐揚げを鑑定した時に魔力が0なら腐敗が始まったけど、やっぱり小数点以下の魔力って存在する可能性が高い。
いい加減なめぐみの作った世界だ。面倒臭くてそうなってるのかも知れないな。
「ダン、スライムはこのまま様子をみようか。次に王都に行って戻ってきた時の大きさで判断しよう」
「そうだな。もし腹が減って人を襲おうにも俺たち以外来ないし、死んだらまた捕まえてくりゃいいからな」
ダンにスライムに愛着が沸いたとか言えないしな。その時は諦めよう。
久しぶりの連携の訓練をして、攻撃魔法、剣とローテーションしながらやっていく。
「シルフィードはずいぶんと強くなったな」
「父さんも太鼓判押してたからね」
「これなら魔法と連携が中心だな。攻撃魔法より身体強化に重点をおいてやる方がいい」
明日からの稽古は身体強化中心になった。俺は紙作りの実験と蒸留酒作りだな。
ぞろぞろと皆がやって来た。
さて、晩飯にするか。勝手に焼き肉を焼いてもらい、こっちは鍋だ。味噌鍋と普通の豚肉の鍋。
食べながら皆に王都での近況報告をしていくと驚いていた。
いつの間にやらちゃっかりミケも来てダンと飲んでやがる。
「親方、王都まで工事ってしに来てくれたりする?」
「何をするんじゃ?」
「屋敷にライトを付けたいんだよね。後はトイレの改装とベッドの新調。おやっさんにはそれに合うマットレスの発注」
「どれくらいの量が必要なんじゃ?」
「よくわかんない」
「は?」
「屋敷はあんまり使わないかと思って良く見てないんだよ。次王都に行く時に一緒に来てくんない?」
「まったくお前はいつもいつも」
ドワーフ兄弟に怒られる。
「いついくんじゃ?」
「来週」
「はぁぁぁ?」
「ワシに作らせてるのどうするんじゃ?」
「それまでに出来るでしょ」
ゴチンっ
「ワシはまだグラス作っとるんじゃっ!あれも急ぎじゃろっ」
あ、ブランデーグラスのことか。もう社交会終わったとか言えない・・・
「あれは難しいと思うからじっくり取り組んで」
「ガラス工房まで持ったんじゃぞっ」
「クリスタルガラスが出来ればそれを応用してシャンデリアとか作れるから貴族に高く売れるから大丈夫だよ」
「なんじゃ?クリスタルガラスとは?」
「ガラスから鉄分とか不純物を取って鉛と混ぜたやつだったかな?」
「お前、知っとったのか?」
「何を?」
「グラスの素材じゃ」
「作ったことないよ」
「知っとったのかと聞いてんるんじゃ」
「なんとなく・・・」
「ばっかもーーーーんっ!何で先に言わんのじゃっっ」
「いや、知ってるのかと・・」
「つげっ」
は、はい・・・・
ドワンは薄くて割れないブランデーグラスの素材にずっと取り組んでたらしい。めちゃくちゃ怒られた。
親方にそろばんの説明をし、万年筆はどういうものか土魔法でサンプルを作って説明する。
「このカートリッジっていうものにどうやってインクをいれるんじゃ?」
「注射器でいいんじゃない」
「注射器?」
こんなやつとこれもサンプルを作る。
「素材はなんじゃ?」
「ガラスでいいと思う。ここにゴム付けて・・・」
「明日来い」
「はい」
皆がめっちゃ盛り上がる中、俺はドワンとミゲルにグチグチ怒られていたのだった。
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