第340話 視察その1

文官達とエイブリック邸の前で待ち合わせだ。


「ゲイル様、いかがなさいました?」


執事に伝言を頼んでおく。


「次の1のつく日に来るってエイブリックさんに伝えて置いて欲しいんだけど。王様もその日が良いからと聞いたから」


「はいかしこまりました。何時頃のご予定でこざいますか?」


「昼過ぎてから来るよ。ちょっと厨房を使わせて貰いたいからヨルドさんにも伝えて置いて」



そう伝言を頼んだ後、文官達がやって来た。


「お待たせ致しました。」


「いや、用事があったから早くに来ただけ。さ、行こうか」


近くのロドリゲス商会に到着。


「ここは噂の・・・」


「知り合いなんだよ。こんちはー」


「これはこれはぼっちゃんよくいらっしゃいました」


「ちょっと話があってね。時間あるかな?」


どうぞどうぞと中に案内された。


大番頭に二人を紹介し、住民街の権限委譲されたことを話した。


「それは素晴らしい。馬車の件とはこれがあったからなのですね。」


「そうだよ。なんとかなりそう?」


「はい、試算も出来ております」


素晴らしい。仕事が早ぇな。


「馬と人はなんとかなりますが、人を乗せる馬車をどうするかという問題がございまして・・・」


「おやっさんに頼んでみるよ。夜も走れる乗り心地のよいやつ。あと馬なんだけど春にデカイ馬が10頭来る予定なんだけど、それ使おうか。4頭居ればいいよね? 」


「では馬車と馬はお任せしてもよろしいですかな?」


「了解。あと店はどうする?」


「もちろん出店させて頂きます」


広さはどれくらいいるかとかざっくり聞いておいた。


「あとぶちょー商会からこちらが届いております」


倉庫にガチャポンプが10個、新型火打石が100本、見慣れぬ金属製の酒樽が10個と怪しげな粉、それから手紙が付いていた。


えー、エールを瓶で送るのは面倒だ。こいつでなんとかしろ。樽1つに付き、この分量で粉を入れたら炭酸が強化される、か。追伸、これで坊主に頼らんでも炭酸が強化出来るわい。


手紙からドワンの笑い声が聞こえてきそうだ。


コップを作り、水を入れてそこへ粉を少し入れるとブクブクと勢いよく泡がでた。


「ぼっちゃん、なんだこりゃ?」


「この樽にエールを入れて、そこにこの粉を入れたら炭酸が強化されるんだよ。小さい樽にしてあるのは樽ごと冷蔵庫に入れておけるようにということだろうね」


「そんな粉があるのか?」


「俺がいないときでも炭酸の強化されたエールが飲みたくて研究してたんじゃない?瓶ビールで解決したけどね」


「なんで粉が泡になるんだ?」


「多分、重曹とクエン酸を混ぜてあるんだと思うよ。それが水に溶けて混ざると炭酸になるんだよ」


「なんで今まで作らなかったんだ?」


「作り方知らないからだよ。おやっさんは色々研究してるからね。助かるよ」


「なんの話をされているのかさっぱり・・・」


フンボルトは俺の言ってる事がさっぱりわからないようだ。


「大番頭さん、この新しい樽と粉、火打石を小熊亭に運んでおいて。ガチャポンプは預かっててもらってもいいかな?」


そういや値段書いてないや。


「これっていくらぐらいで売ったらいいかな?」


「ポンプが銀貨30枚、火打石が銀貨1枚というところでしょうか」


「ありがとう。それで行くよ」



今のは何ですかと色々と聞いてくるので説明しがてら元ベンジャミン屋敷に向かう。


「お帰りなさいませ」


「紹介しておくね、ソドムさんとフンボルトさん。俺がいないときでもこの二人が来たら屋敷を自由に使ってもらって」


「かしこまりました」


「ここはベンジャミン家の・・・」


「ベンジャミン家は今回の不正でお取り潰しになっちゃっただろ?だから使わなくなって、使用人達もいるからって俺にくれたんだよ。俺はあまり使わないと思うから帰るの面倒臭い時とかここで泊まったらいいよ。西の庶民街が近いから便利でしょ」


「よ、宜しいのですか?」


「使用人達も暇だろうからね。ちょうどいいよ」



次は畑と畜産の見学をする。


おー、こんなに広いのか。そりゃ王都の食を支えるならこれくらいは必要だよな。今は冬であまり作物がないから寂しいけど。


「お、ぼっちゃんじゃねーか、どうしたんだこんなとこに」


「視察に来たんだよ」


「視察?直接食材仕入れんのか?白菜ならあるぜ持ってきな」


「いいの?」


「あぁ、そのうち新メニュー作るんだろ。白菜でなんかやってくれよ。そしたら俺も儲かるってもんだ」


「白菜なら鍋作れるからいいよ。楽しみにしててね」


「おうっ!」


「白菜貰っちゃったから昼飯にこれ使おうか」



川が流れてるけど、水やりはここで汲んでるみたいだな。川から離れてる所は大変だな。


他にも色々声かけて来てニンジンとか増えていく。


「ゲイル様は王都に昔から住まれてるのですか?」


「いや、去年の感謝祭からかな」


「そんな短期間でこのような・・・」


「焼き鳥のお陰だね」


「焼き鳥・・・?」



牛を飼ってるところはここか。


「お、ぼっちゃん。どうしたこんなところに?」


「視察だよ。この牛は食べるやつ?」


「そうだ、あっちのは牛乳取るやつだな」


「牛のフンってどうしてるの?」


「そこのスライム槽に捨ててるぞ」


「それさぁ、お金になるから捨てずに置いといてくんない?」


「はぁ?牛のクソが金になる?なんだそりゃ?」


「1年くらい置いといたら畑の栄養になるんだよ。1ヶ月分くらい貯まったら、次の場所に置いておいて、ちょっと量がどれくらいになるかわからないけど、1ヶ月分銀貨3枚ぐらいで買い取るから」


「本当かよっ!わかった。しかしぼっちゃん畑すんのか?」


「おれ、西の街の責任者になったんだよね。すぐには無理だけど、1年後にはここで色々作るよ。牛の餌ももっといいの作るから肉もよく取れて高く売れるようにするよ」


「ぼっちゃんが責任者ってどういうこった?」


「西の街を発展させる責任者だよ。みんなの収入が増えるように色々やってくから」


「そーか、そりゃ楽しみだ」


「今まで誰も何もしなかったの?」


「自分達のことは自分達でやるしかないだろ?」


「そっか。じゃあ今度からは俺も一緒にやるから。美味しい牛育ててね」


他にも豚や鶏の飼育をしているところにも同じ事を話して言った。



小熊亭に戻って鶏ガラスープで白菜と豚バラの煮込みを作っていく。


「ぼっちゃん、これ新作だな」


「そういや作ったこと無かったっけ?」


パンをスープに浸しつつ白菜を食べる


「う、旨い・・・」


「冷えた身体に染みる味ですな」


「辛いのが大丈夫なら、この唐辛子か胡椒かけるといいよ」


俺も唐辛子をちょいちょいとかけて食べた。フンボルト、かけすぎたのは自分の責任だからな。



取れたての白菜旨いなぁ



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