第321話 新商品の依頼と飯

またドワン宛に手紙だ。俺がディノスレイヤ領を離れて寂しがってるとか思われてないだろうな?


「ダン、ロドリゲス商会に行って、鍛冶屋の親父の所に行って、晩飯を仕入れに行くよ」


「休みだったんじゃねーのか?」


「それは食堂の話。俺達はやることいっぱいあるの」


「へいへい」



ーロドリゲス商会王都支店ー


「こんちはー」


「ぼっちゃん、ラー油が早速売れましたよ」


「ヨルドさんのところ?」


「はい。社交会直前にこんな物をとおっしゃってましたが。レシピは登録されましたか?」


「ぶちょー商会に送ったよ。ヨルドさん他に売るなとか言ってなかった?」


「いえ、料理にアレンジするのが難しいだろうからかまわないと」


「了解。じゃ心置きなく売ってね。小分けするときは下に沈んでるやつも入れて。辛いのが嫌なら入れなくていいけど」


「はいかしこまりました。あと本日本当に伺っても宜しいので?」


「うん待ってるよ。何かリクエストある?餃子は聞いてるけど」


「ではこれからお店で出される予定の料理を・・・」


「まだ決めてないけど、それなら簡単な物になるけどいい?」


「はい、ディノスレイヤ領にバルという美味しい食堂が出来たと聞いて羨ましくて羨ましくて。こちらの料理は高いだけで・・・」


大番頭さん美味しいもの好きそうな体型してるもんなぁ。


「了解。バルはヨルドさんところにいたコックが来てくれたからすぐに色々作れたけど、こっちはそうじゃないから品数は増えないかな。あまり期待しないでね」


それでも大番頭はニコニコと喜んでいた。手紙を渡して次は鍛冶屋だ



ここだな。見た目店っぽくないから工房だけなんだろうか?


「こんちはー!」


「はいれっ」


「おっちゃん、来たよ」


「どんな鍋を作らせるつもりだ?」


「作って欲しいのは圧力鍋って言ってね」


絵に描いて仕組みを説明していく。


「お前、ディノスレイヤでもこんなやり方をしてるのか?」


「そうだよ。素材は何が向いてるかよくわからないからお任せだけど、仕組みは俺が考えてる。そうするとより良く改良してくれたりとかね」


「その職人ってやつはかなり優秀なんだな」


「おやっさんはドワーフでね、武器作りも超優秀だよ。これもおやっさんの作品」


と、魔剣を渡すとじっくり眺めるおやじ。


「ドワーフなのか。道理で見事な剣だ。武器は素人の俺にも分かる。こんなのは逆立ちしても作れねぇな。王都の武器屋でも無理だろう。さすが冒険者の街の職人だ」


職人は職人を知るか。


「しかしな、こういうのは俺が本職だ。作ってやるぜ。注意する点はあるか?」


「これ下手したら爆発するんだよ。最悪厨房が吹き飛ぶくらい。鍋の厚みとか全部均一じゃないとそうなるんだ」


「わかった。ちょいと時間かかるがいいか?」


「あと10日くらいは王都にいるよ。もう少し伸びるかもしれないけど」


「なにっ?お前いなくなるのか?」


「この春に冒険に出るんだよ。一緒に行く子がいてね、冬の間にその子を冒険に耐えられるように鍛えないとダメなんだ。王都に連れてきたら鍛える場所が無いから帰らないと」


「あの焼き鳥と酒はどうなるんだ?」


「あれは元々俺の兄貴の修行で始めたものなんだ。兄貴は王都の学校に行ってるから焼き鳥は食べられるよ。他の料理も小熊亭に教えるから大丈夫。酒も仕入れられるようにしていくから」


「そうか、しかしお前はいなくなるんだな?」


「そうだね、冒険から帰って来たら王都に2~3ヵ月おきには来るよ。冒険がどれくらいの期間になるかわからないけどね。あ、今晩店は閉めてるんだけど、新メニューの試食兼ねて食事会するけど来る?おやっさんに作って貰った調理器具とかも見れるよ」


「いいのか?」


「ぜんぜん大丈夫。ぜひ来て」


じゃあ行ってやるとの事なので参加人数追加。



次は仕入れ先だ。



「取りあえず色々買って行こうか。何か食べたいものある?」


「シマチョウ焼いたやつ食いてぇな」


ホルモンか・・・



「こんちはー、牛肉と豚肉頂戴」


「お、今日は店休みなんじゃねえのか?」


「新メニューの試食を兼ねて食事会をするんだよ。食べに来る?」


「いいのか?」


「小熊亭で人気出そうなメニュー選んでくれたらいいよ。色々作るから」


「おう、八百屋と酒屋も誘っていいか?」


「いいよ。みんなで来て」


「よしっ、じゃこいつを持ってけ」


おぉ、シマチョウ、マルチョウやらなんやかんやこの前お願いしてた奴がこんなに。


「ありがとう。これも使って作るよ」


俺は食わんぞと言われた。


野菜と高めのワイン、ジュースを買って帰る。八百屋も酒屋も晩飯を楽しみにしてるぜだって。シマチョウが手に入ったのでダンもホクホク顔だ。


小熊亭に戻って料理の仕込みを始めようと厨房に行くとすでにベントが焼き鳥の仕込みをしていた。真面目だな・・・



まずホルモン系の品質チェックだ。ミートに渡されたホルモン類ならこんな事する必要が無いけどこれはこっちでやらないとだめだな。


まず水魔法でシマチョウとマルチョウを洗っていく。あとは塩とか小麦粉とかで処理するんだけど面倒臭いな・・・


クリーン魔法最高。一発で処理完了だ。これ食品関係者が覚えたら仕事楽になるだろうなぁ。宿屋とかにも最高に向いてる魔法だ。難易度が高いから他の人に教えたことないけど・・・


ダンにはミンチを作って貰おう。牛ミンチと豚ミンチをせっせと作らせる。



「あ、なんか作ってる。手伝わせて」


とチッチャが来たので餃子の皮を作って貰おう。手で丸くするの難しいから道具を作るか。


「チッチャ、ちょっと準備するから待ってて」


土魔法で手回しローラーを作る。これ鍛冶屋にちゃんとしたの作って貰おう。


チッチャは俺が生地を作ってる間はダンの手伝いだ。


餃子の皮はくりぬきでやろう。今後の事を考えたらこっちのほうが簡単だ。生地に無駄が出るけど揚げておやつにすればいいしな。


「チッチャ、これをここに置いて、これをくるくる回して」


くるくるくると回すと生地がでろろんと出てくる。ちょっと分厚いな。ローラーの隙間を調整してもう一度、くるくるっと。


「これをこの型でくりぬいていって。なるべく隙間が無いようにね。あとくっつかないようにこの粉をつけて」


よっ、はっとか言いながらくりぬいてくれる皮で餡をせっせと包む。


「次は?」


じゃあと他にも手伝ってもらった。自分でやった方が早いけど、色々と覚えて貰った方がいいからな。



よし、下準備はこんなものか。くつくつ煮ていたマルチョウの味噌煮、鶏レバとニラの炒め物、シマチョウの鉄板焼き、軟骨の唐揚げ、鶏の心臓とボンジリは数が無いから自分のお楽しみに置いておく。


唐揚げ、トンカツ、クリームシチュー、餃子、ローストビーフ・・・その他諸々


大量にあるな。食いきれるだろうか?


「ぼっちゃん、米はねぇのか?」


「仕入れてないよ。あれ王都に流通させるほど作れてないからね」


「焼肉のタレもねぇんだよな?」


「あれはもっと数が少ないから無理だね」


「カレーは?」


「あんな高いの庶民街で出せるわけないじゃん。砂糖使ったやつも全部ダメだよ。ハチミツで代用出来るのはかろうじていけるかなって感じ」


「タルタルソースはいけるか?」


「あれはいけるよ。食パン焼いといて明日の朝サンドイッチにしようか?」


ダンは日頃屋敷で食べてる物が無いのでだんだん飢えて来てるのかもしれないな。


まだ少し時間があるので、ベーコン用に豚バラの仕込みとソーセージも作っていく。腸の数が少ないのであまり作れないけど。



そろそろみんな集まってくるかな?













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