第320話 リニューアルオープン最終日
リニューアルオープン最終日。明日から仕事初めの人が多いからもしかしたら暇かな?と思ってたらそんなことは無かった。
まだ足湯入れてないのに座って並んでやがる・・・。
がしょんがしょんとポンプを動かして薪に火を付けてお湯を沸かしていく。
「そのガチャガチャやってる奴便利そうだな」
「これはガチャポンプってんだよ。俺だと井戸の水を汲めないからね。こういう道具が必要なの」
「どこで売ってるんだ?」
「王都じゃ売ってないよ。特別に取り寄せたんだ」
「どっからだ?」
「ディノスレイヤ領にあるぶちょー商会ってとこだよ」
「へぇ、ディノスレイヤ領って面白いもん売ってやがんだな」
いくらだ?と聞かれたが知らないんだよなぁ・・・
「金貨100枚くらいじゃない?」
「そいつは高ぇなぁ。盗まれんようにしろよ」
わからない時はこんな風に言っておけば大丈夫だ。単なる暇潰しの会話だからな。本当に欲しければちゃんと聞いてくるだろう。
勝手に湯加減をみて早速足湯に浸かってやがる。
それを見た他の客も勝手にエールを入れて勝手に金を入れていく。えーっとエールが5杯だな
「何本食べる?」
「5本ずつ焼いてくれ」
25本乗せたら続々と中に入って行く人とここでエールを入れて座って行くものに別れていく。こっちに来るのは2回目、3回目の人と連れてきた友人とかだ。なんでも勝手にやってくれるので実に楽だ。
「明日は休むのか?」
「この3日で焼き鳥の在庫が無くなると思うから作り置きもしないといけないからね」
「これだけ食ってたらそうだろうなぁ」
「宿を再開するまでは週に一度は店閉めるからね。でもお客さん3日連続で同じもの食っててよく飽きないね?」
「前まで良く食ってた他の所の串肉食ったらよ、全然旨くねぇんだよ。前まではあれが旨いと思ってたんだがな」
「お前もそうか?俺もそうなんだよなぁ。エールもここの飲んだら他で飲んでも旨くねぇしよ」
「ぼっちゃん、なんか変な薬でも入れてんじゃねぇだろな?」
「バレた?中毒になる薬入ってるんだよ」
「おいおいおい、マジかよ?」
「旨いって薬が入ってるんだよ。もう止められないだろ?」
「旨いって薬か、そりゃあ仕方ねぇなあ」
だーはっはっはっは
親父ギャグがこんなに受けるとは。焼き鳥渡す時も『はい、1本200両』とか言ってやろうかな?
「おい、坊主。こいつをくれ」
鍛冶屋のおやじだ。
「はい毎度、氷でいい?」
と言う前に勝手に入れていく。銀貨を入れたので焼き鳥10本ずつ焼いていく。
「鍛冶屋のおっちゃん」
「なんだ?」
「鍛冶屋って何作ってんの?武器?」
「こんなとこで武器なんか売れるかっ!武器が欲しけりゃ北の冒険者ギルド近くの鍛冶屋にいけっ」
「じゃ何作ってんの?」
「家で使うような鍋とかだ」
お、ラッキー。
「おっちゃん、作って欲しい物があるんだけど腕はいい?」
「腕がいいとはなんて言いぐさだっ!当たり前だっ!」
「じゃあ、場所教えて。明日行くよ」
「何作るか先に言えっ」
「作れなかったら恥かくじゃん。そん時は俺がすっぽかして来なかった事にすればいいよ」
だーはっはっはっは!
「鍛冶屋の親父もぼっちゃんにかかったら形無しだな」
「うるさいぞ、お前らっ!坊主、今何作るか言えっ!」
「特殊な鍋だよ。どこにも売って無いやつ」
「どこにも売ってないだと?」
「そう。地元だと知り合いの職人のおやっさんに頼むんだけど、ここに職人の知り合いいないからね」
「どんな職人だ?」
「本業は武器屋なんだけどめちゃくちゃ腕がいいからなんでも作ってくれるんだよ」
「武器屋がなんでも作る?例えばどんなものだ?」
「調理器具全般とかそこにあるガチャポンプとかだね」
「ガチャポンプ?」
「足湯の後ろにあるでしょ」
「おー、さっきのやつか。おい親父、こいつがそうだぜ、こうやってな」
がしょんがしょん
「おい冷てぇぞっ!」
「そこの薪で好きなだけ沸かして」
「火種はあるか?」
ちゃんと新型火打石も持って来てあるのだ。
「これ使って」
「なんだこりゃ?」
「火打石だよ。蓋取って中の棒にお尻に付いてる奴をこうやってくれれば火種が飛ぶから」
「こうか?」
シュババババハッ
「おー、こいつぁすげぇな。どこで手に入れたんだ?」
「ディノスレイヤの冒険者向けの店だよ」
「いくらだ?」
それも知らないんだよなぁ・・・
あれ結局ドワンの所で作ってるんだけっか?
「えっと・・・金貨100枚?」
「ちゃんと教えろっ、こいつがあればかみさんが喜ぶから買ってやりてぇんだよ」
「何っ?お前んとこが買ったらうちも欲しがるだろうが」
うちもだとか声が上がる。
「ごめん、それ元の火打石を改良してもらった試作品なんだよ。もう販売してると思うから値段聞いておくよ。普通の奴よりずっと高いと思うんだけど」
「そりゃあこれだけ火種が飛べばそうだろうなぁ」
「値段聞いてから取り寄せる?それとも先に取り寄せる?」
「いや、多少高くても買うから取り寄せてくれ。このガチャガチャするやつは値段聞いておいてくれねえか?」
「ポンプはそこそこ高いとおもうし、それに配管と工事とか必要だよ」
「まぁ工事はなんとかなる。井戸は共同だから値段聞いて使う奴で相談するわ」
「わかった。他に火打石欲しい人いる?」
俺もだとか何人か声を上げたので20本くらい発注しておくか。
「坊主、このポンプとやらはその職人が考えたのか?」
「だいたいのアイデアを伝えて後はやってくれるんだよ。素材から作ってくれたりね」
「素材から?」
「まぁ詳しくは明日行った時に話すよ。取りあえず焼き鳥食べて」
鍛冶屋の親父は何やら考えこんで難しい顔をして、帰りにサービスの蒸留酒をくっと煽って鍛冶屋の場所を言って帰った。
昨日と同じような状況になり、途中で足湯に浸かり、また焼き鳥を焼いた。
ん?初日にシルバー達に近付いてたやつだろうか?こっちを見てるだけだけど少し嫌な視線だな・・・
「おいぼっちゃん、5本焼いてくれっ!」
「はいよー」
最終日は昨日とほぼ同じ売上を叩き出した。
やっと明日は休みだ。
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