第313話 リニューアルオープン前
セレナも完食したようなのでもう大丈夫だな。
「さ、ダン行くよ」
「本当にやるのかよ・・・」
サンドイッチマンになったダンと一緒にメインストリートへと向かう。この世界で初めて見るであろう異様な姿を街ゆく人達が奇異の目でダンを見ていた。
「今日からリニューアルオープンする小熊亭だよ。今まで食べたことがない味の焼き鳥とエールがあるよー」
俺はダンの横で大きな声で宣伝していく。ざわざわと遠巻きに眺める観衆。ダンは無表情で遠くを見つめていた。
「おい、小熊亭ってあの裏通りにある宿屋か?」
「そうだよ。気になるなら来てね。リニューアル記念に今日から3日間は特別な高級酒を1杯サービスするよ」
「高級酒ってなんだ?」
「それは来てからのお楽しみ。」
ガヤガヤ ガヤガヤ
「食堂で焼き鳥しかねぇのか?」
「しばらくはね。その内新メニューも出すよ」
ガヤガヤ
「食べたことが無い味ってどんなのだ?」
「そりゃあ酒に合う味に決まってんじゃん。エールもよそのとは違うから試す価値あると思うよ~」
ガヤガヤ ガヤガヤ
一人が話し掛けてくると物珍しさも手伝って次々と集まってくる人達。
「上手いこと言ってぼったくるつもりだろっ」
当然悪態を付く人も出てくる。
「酷いなぁ、ここに値段書いてあるだろ?小熊亭は明朗会計だよ。ぼったくりだと思えば衛兵呼べばいいよ」
「おい、最低何本食えとか言わねぇだろうな?」
「売れ過ぎて何本までしかダメとか言うかもしれないけどね」
「焼き鳥でそんなわけあるかっ!」
「じゃあおっちゃんが来てくれても焼き鳥3本とエール1杯しか売らないからね。銅貨11枚だけ持って来ればいいよ」
「おもしれぇ、たった銅貨11枚なら騙されたと思って行ってやるよ」
「おっちゃんの顔覚えたからね、それ以上売らないからね。後で文句言っても聞かないよ!」
「あーはっはっは。おもしれぇ小僧だ。もう開いてんのか?」
「5の鐘と半分からだよ。夜は早めに閉まるから」
「おーし、覚悟して待ってな」
言い掛かり付けてきたのかと思いきや、なかなか面白いおっさんだ。THE下町って感じだな。
「なんの騒ぎだ?」
衛兵二人がこちらに来た。
「別に悪いことしてないよ。食堂の告知してただけ」
「客引きは禁止だ。さっさとお前らも解散しろっ」
「客引きなんてしてないよ。告知だよ」
「うるさいっ!つべこべ言うな。それになんだその変な姿は?」
「あれ?知らないの?いま流行ってんだよこのファッション」
「いい加減なこと言うなっ!」
頭硬いねぇこの衛兵達。
「王都の法律でこんな格好しちゃいけない法律なんてあるの?」
「うるさいっ!ゴタゴタ言ってると連行するぞっ」
血管ぶちギレそうだな。そろそろやめておくか
「ハイハイ、わかりましたよ。衛兵さん達も大変だね。こんな事まで取り締まらないとダメなんて。良かったら美味しい焼き鳥とエールでストレス発散しに来なよ。愚痴なら聞いてあげるよ」
俺がそう返すとドッと観衆が笑った。なんか面白いこと言ったか?
「きっさまぁ・・・」
「何そんなに怒ってるの?王都の衛兵さんともあろう人が子供相手にムキになっちゃダメだよ」
そーだそーだ 衛兵だからってえらそーにすんなっ
子供相手にみっともねーぞー
「うるさいっ!お前らもとっとと散れっ」
衛兵がますますヒートアップしてくる。揉め事もごめんだし、俺達も退散しますかね。
「じゃあ小熊亭宜しくね~」
と観衆に手を振ってその場を退散した。
「王都の衛兵ってあんなだったっけ?」
「まぁあんなもんじゃねーか?」
衛兵に悪いイメージ無かったけどな。まぁ人によるのかもしれん
宿まで戻ってシルバー達を撫でる。
「シルバー達を庭に移動させようか?表の見えるところだと人が来た時にいたずらされたら困るし」
「そうだな、王都に来た初日の事もあるし中に入れておくか」
目の光が戻ってきたダンはやっとしゃべった。そんなにサンドイッチマンが嫌だったのだろうか?着ぐるみが客引きするのは定番なんだぞ。
ダンがシルバー達を裏の庭に連れていったので馬小屋にクリーン魔法を掛けて綺麗にする。オープンまで少し時間があるから馬小屋を改装しよう。
焼き鳥台を作ってここでオープンまで焼く。匂いでお客ホイホイ作戦だ。なんせ匂いにつられて勝手に客が入ってきたくらいだからな。
炭をセットして焼き鳥とタレ持ってきて準備完了。
「ゲイル、もう焼き始めるのか?」
「これは客寄せだよ。こっちの方が匂いがよくわかるからね。ベントは本番に焼いてもらうからこっちは俺がやるよ」
炭に火を入れて準備完了。
焼けた焼き鳥は俺とダンで食べればいいか。
ジュワワワッと音と煙を出しながら焼けていく焼き鳥。タレを付けていくと一層煙と旨そうな匂いを醸し出す。
その煙を風魔法を使ってメインストリートの方へ流れるように操作してやる。
ジュワワワッ ジュワワワッ
「ダン、焼き鳥焼けて来たけど食べる?」
おうと返事したダンは焼き鳥を一串一口だ。
「やっぱぼっちゃんが焼いたのは旨ぇな。エール飲んでもいいか?」
「1杯くらいならいいよ」
ダンは食堂からジョッキにビールを入れて持ってきた。
ゴッゴッゴッゴッ
かーーっ!
「旨ぇっ!」
焼き鳥を頬張ってエールを飲むダン。実に旨そうだ。
「おい、ここは立ち飲みもしてんのか?」
「いや、まだ店はオープンしてないよ。いま開店準備で試しに焼いてるだけだから」
「そっちのデカいやつ飲んでんじゃねーか」
「うちの従業員だよ。一仕事終わったから休憩に一杯だけね」
「その串焼き旨そうだな、いくらだ?」
「一串銅貨2枚だよ。エールとワインは1杯銅貨5枚。開店時間までもう少しだから待ってて」
「いや、先にそいつを食わせろ。取りあえず味見で1本くれ」
「わかったよ。味見としてこれあげるよ。美味しかったら友達連れて来てよ。今なら高級酒1杯サービスだよ」
「坊主、お前商才あるな。その辺の屋台のやつなら金取るもんだが、ただにして友達連れて来いとは大したもんだ」
なんかうんちくを語る年寄りとおっさんの間くらいの男はそう言って焼き鳥をパクついた
「なんだ?この味は・・・?」
「旨いだろ。ただで食ったんだから友達連れて来てよね。エールもうちのは一味違うよ」
「あぁ、わかった。すぐに連れてきてやる」
おっさんは小走りに住民街に走って行った。
「ぼっちゃん、客
「そうだね、仕入れ先の人達も来てくれるって言ってたからそこそこ入るんじゃないかな?」
そうだなと言ったダンはまたエールを持って来て飲んでいた。
1杯だけって言ったよね?
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