第312話 餃子って旨いよね

「よし、ベントが学校に行ってると仮定しての営業時間でやるよ」


ベントが学校終わってここまで徒歩で移動して飯食って準備してスタート。時間にしたら15時スタートくらいだ。夜は20時まで。飲み屋としてはなかなか厳しいがずっとやり続けるには無理はしない。ベントにとって本業じゃないからな。セレナが復活したらまた考えれば良いだけだ。


「はいダンこれ着て」


「なんだこりゃ?」


「サンドイッチマンだよ」


ダンに小熊亭リニューアルオープンの看板を着せる。


「俺だけやるのかよ」


「俺だとちっちゃい看板にしかならないからね。ダンだと目立つから選択の余地無しだ。その代わり俺が呼び込みやってやるよ」


取りあえず宿の告知は無しに食堂だけアピールする。客引きは怪しまれるかも知れないから焼き鳥の値段とエールとワインの値段を記載。


リニューアル特典として今日から3日間は特別高級酒1杯無料サービスだ。


背中には営業時間と地図を書いた。土魔法で作った看板は味気ないが仕方がない。



午前中はチッチャを連れてご近所回りをする。外の客も必要だけど常連は近場の人だ。


寂れた店は誰もいない所も多く、開いてる店も活気が無いな。


そして仕入れをする店までやって来た。


「こんにちはー、今日から小熊亭がりにゅーあるおーぷんするから宜しくね」


チッチャが店の中で叫んでいく。


「おー、小熊亭って閉めたんじゃなかったのか?」


「準備してたの。良かったら食べに来てね」


「今日から3日間は特別高級酒1杯サービスだよ。こんな機会無いからね」


俺も付け加えて説明する。


「おう、鶏肉以外も仕入れねぇのか?」


「それはもう少し後だね。そのうちたくさん買いに来るよ。あ、鳥の骨とか豚の骨とかある?」


「そんなゴミ何すんだ?」


「ゴミなんかじゃないよ。いらないなら分けてくんない?店に来てくれたらスープご馳走するよ」


「坊主は商売上手だな、ゴミ引き受けて客呼び込むんだからよ。ほら持ってきな。店が終わったら行ってやるよ」


なんか勘違いされたけど来てくれるならいいか。


「お、ニラの坊や。ホントに小熊亭でやるんだな」


「そうだよ。あ、白菜1玉貰っていこうかな。近々作る新メニューに使うんだ」


「どんなのだ?」


「それは出来てからのお楽しみ~。あの唐辛子も使うよ。今日来るなら特別に先に食べさせてあげるけど」


「坊や、商売上手だな。ほれ白菜だ。肉屋と一緒に行ってやるよ」


ということでニラも貰っていく。


「今日からオープンするよ。今日から3日間は高級酒を1杯無料だからね」


「エール以外もどっかから仕入れてんのか?」


「そうそう、高いから売れないと思うけどね。でもおっちゃんも飲んだこと無い酒だから試した方がいいよ」


「別のエールは来たのか?」


「まだだけど、おっちゃん所で買ったエールも同じように加工したから似たようなので良ければ飲めるよ」


「エールを加工した?どういうこった?」


「それは企業秘密ってやつだよ。気になるなら来てね」


「八百屋も行くみてぇだから行ってやるよ。坊主は商売人向きだなぁ。先が楽しみだぜ」



「お客さんすごーい、いつの間にあんなに仲良くなったの?」


「前に一回会っただけだよ。チッチャも仲良くしてもらいなよ。これからあの人達と協力しながら店をやっていくんだから」


「協力?」


「そうだよ。小熊亭もこうやって品物を売ってくれる所が無かったら商売出来ないし、お店の人も買ってくれる人がいないと困るだろ?お互い必要なんだよ。小熊亭がたくさん売ってたくさん買えばどっちも儲かるし、美味しいものや寝心地のいい宿ならお客さんも幸せだろ?」


「うん」


「だから協力なんだよ。みんなで力をあわせて行けばもっと良いものが出来ていくよ」


「うん、頑張るねっ!」


チッチャは素直でいい子だ。



小熊亭に戻ると荷車が止まっている。


「ぼっちゃん、お待たせしました。依頼の品です。」


荷車はロドリゲス商会の物だった。


「ありがとう。ずいぶん急がせて悪かったね」


「ぼっちゃんの依頼は最優先ですよ。当たり前ですっ」


「まだ時間ある?」


「はい、何かお手伝いすることでもあればお申し付け下さい」


「いや昼飯食べてって」


ドワンからも調理道具が届いてるからそれを使える。


ビールとガチャポンプを裏の庭に運んで貰ってる間に慌てて餃子の準備を始める。皮から作るから時間かかるけどここはスピードを上げてやる。


「ベント、白菜を刻んで。ダンは牛と豚ミンチをお願い」


鶏ガラスープを煮込みながら、皮つくりをする。小麦粉と薄力粉と塩を混ぜてお湯を入れて混ぜる。身体強化しながらスピードアップだ。丸めて薄く伸ばして打ち粉に片栗粉をパンパンっと


「ミンチ出来たぞ」


「そこに生姜少しとニンニクすりおろして」


「白菜出来たぞ」


「お湯で少し湯がいて」


分担してやるとサクサクと進む。


軽く湯がいた白菜を冷ましながら魔法で脱水。ミンチにニラとその白菜を投入して魔法でまぜる。塩とごま油を入れてさらに混ぜる。


「ベント、鶏ガラスープの灰汁掬ってて」


さらにスピードを上げてちゃっちゃっと餃子を包んでいく。


フライパンに油をがっつり入れて蒸し焼きにしたあとカリカリに焼いていく。


鶏ガラスープに白菜と玉ねぎを入れて塩で味付けした後に餃子を入れてすこし煮込む。


食堂で待ってるロドリゲス商会の従業員に辛いのは食べられる?と聞いたら好きですと答えたのでラー油の沈んだ具と酢、塩を混ぜてタレを作る。ベントとチッチャには上澄みのところを少しだけ入れてごま油を足しておこう。


「はい、お待ちどうさま。新メニューだよ。大番頭さんにもお土産に焼くから持って帰ってね」


自分だけ食べたら怒られるかもと思っていた従業員はお土産があると聞いて食べ出した。


「旨ーい。何ですかこれは?」


「餃子だよ。仕事終わりならエールも出したんだけどね」


「よ、夜も来ていいですか?」


「夜は商売だからお金は貰うよ。餃子はまだ売り物じゃないからサービスするけど焼き鳥とエールはお金払ってね」


「もももも勿論ですっ、大番頭と一緒に来ますからっ!」


ペロッと平らげた従業員はお土産の餃子とラー油タレを持って帰った。ニンニク臭くならないようにクリーン魔法を掛けておいてやる。なんて便利な魔法なんだ。攻撃魔法よりずっといいな。


セレナ用の餃子スープとチッチャの餃子を渡すと喜んで持って行った。


「ぼっちゃん、これ旨ぇなぁ。うー、エール飲みてぇ」


ダンはラー油たっぷりでがっついている。


「この赤いの思ってたより辛くないな」


ベントのは上澄みだけだからな。


俺も食べるとちょー久々の餃子が旨かった。柚子胡椒も作っておこう。


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