第302話 灼熱の鳥との対決

「審判って何してたらいいのさ?」


「どっちが旗を早く取ったか見ててくれ。まぁ開始と終了の宣言してくれりゃいい」


「了解」


バトルかと思ったらさっきと同じルールか。


アーノルドとアイナ、エイブリックがこそこそと打ち合わせをしてから灼熱の鳥たちにハンディをやると言った。


「おい、ジル。お前支援魔法使えるんだったな。開始前に掛けていいぞ。開始の合図の後だとお前の魔法が発動する前に終わるからな」


くっ、と悔しそうな顔をするホーク。


「負けた言い訳にしないで下さいね。こっちは遠慮しませんよ」


「ゲイル、お前の剣を貸してくれ。得物持って来てなかったわ」


あんた丸腰でやるつもりだったのかよ・・・


「エイブリックさんには短いんじゃない?」


「これは魔剣だろ?問題ない」


俺の魔剣を渡すとエイブリックにはオモチャみたいに見える。


「まさか子供の剣でやるつもりですか?」


「だからお前らは甘いって言われるんだ。ぐだぐだ言ってないで早く準備しろ」



お互い旗を立てている間にジルが支援魔法をかけた。


金色だったから身体強化をかけたのか。対してアーノルド達は光ってないからノーマルだ。アイナが旗を守るらしい。まぁこれで旗を抜くのは不可能だな。


「じゃあいい?」


ジョン達と森の風を観客席に行かせてある。ここにいると危ないからな。


「始めっ!」


宣言と同時にホークとボードがダッシュをする。アーノルドとエイブリックはまだ動かない。待ち受けて戦うつもりか?


ボード達が中央を越えたあたりでアーノルドとエイブリックがフッと消えて旗に向かって走ったので中央で迎え打つのかと思ったらそのまますり抜け旗の近くまでいく。ジルは攻撃魔法を撃つ暇すらない。


盾役のバランが腰を落として構えた。エイブリックはまだ距離があるのに剣を振る。


ぶぉおおん


俺の魔剣から炎が吹き出してバランを襲った。盾で炎を受けた時にはアーノルドが旗を抜いていた。


あ、アイナの方を見てないや。そう思って振り向くとホークとボードはアイナに殴り倒されていた。


「勝者 英雄パーティー」


ゲイルは終了宣言をした。


「おい、マイン。3人を治療してやれ」


まず盾役の治療をしてからホークとボードの治療をした。



「デカい口叩いた割にはなんの手応えもないな」


「え、エイブリックさん。その剣はなんですか・・・?」


髪の毛がチリチリのバランが聞く。あんな距離から炎が伸びるなんて信じられないようだった。


「こいつはゲイルの魔剣だ。俺のじゃないからやっぱり射程距離も短いし威力も少なかったな」


「魔剣?」


灼熱の鳥達全員の声が揃う。


「俺のは炎の魔剣だが、ゲイルのは魔剣だ。使い手によって様々な魔法を纏わせることが出来る代物だ。俺には物足りないがゲイルにはこっちの方が向いてるな」


「アーノルド様が遺跡から持ち帰った物ですか?」


「ドワンがゲイルにやった物だ。」


「えっ?ドワンさんが魔剣をこのちっこいのに・・・?」


ホークはなぜ?と言った顔をした。


「あ、アイナ様の武器は遺跡からの・・・?」


殴り倒されたボードは何をされたかわからなかったみたいだ。


「これ?ゲイルが作ったのよ。面白い武器でしょ」


「は?このちっこいのが作った?」


「お前らは自分達がまだまだだということが解ったか?自惚れていたらそのうち死ぬぞ」


「自分達がまだまだなのは理解しました。エイブリック様のパーティーにはですけど」


「はぁ、お前はなんも理解してねぇな。な

な、ゲイル解っただろ?俺達がやっても理解しないとな。お前に負けたら気付くだろ。次はお前がやれ」


「もういいじゃん。ジョンとアルが剣士の二人と立ち合うとかどう?」


「あいつらじゃまだ無理だ。飯の時でもやらせればいい」


「エイブリック様、アーノルド様の子供とはいえ、いくらなんでも・・・」


「じゃあ、お前らが勝ったら俺の炎の魔剣をやろう」


えっ?


「え、エイブリック様の魔剣を・・・?」


「その代わりお前らが負けたらパーティー名を変えろ。灼熱の鳥じゃなくて、ただの鳥だ」


「いいですよ。本当に炎の魔剣くれるんですか?」


「あぁ、勝ったらな」


「俺達も負けたら鳥じゃなくてヒヨコでもいいですよ」


また勝手に変な約束を・・・


「ちょっと、なんで俺一人なのさ?バトルならともかく旗取りでしょ。誰か助っ人頂戴よ」


「バトルなら?」


今のゲイルの言葉にカチンときたホーク。


「何人でも助っ人頼んでいいぞ。何人でもな」


「いや一人でいい。旗を取りに行って貰うだけだから。シルフィード、降りてきて」


シルフィードは治癒魔石のペンダントを付けているからなんかあっても大丈夫だろ。まぁ何にもないと思うけど。


「きさま舐めてる・・・のか?」


「いや、俺はヒヨコさん達の戦いを見てるからね。これでいい」


「き、きさまっ・・・」


エイブリックはニヤニヤ笑いながら俺を見ていた。


「ゲイル様、何をすればいいですか?」


「あ、俺が全員倒したら旗取ってきて。それまで危ないからこっちの旗の所で待ってて」


「おいチビっ!ふざけるのもたいがいにしろよっ!だいたいなんだその助っ人も子供じゃないか」


「早く開始位置に着いたら?マスパーティーの準備しないとダメだから忙しいんだよね。食べに来るんでしょ?」


エイブリックはあっはっはははと大笑いしだした。こっちの人達は面白いように挑発に引っ掛かる。エイブリックもそれを笑っているのだろう。


初めはとっても紳士的だなと思ったけどキャラ作りしてただけみたいだな。


何か言ってるホークを無視してさっさと開始位置につく。俺は自陣の旗の少し前だ。シルフィードはその後ろに居て貰う。


ハンディあげるとも言ってないのに既に金色に光ってやがる。



「準備はいいか?」


いいよーと返事とした。向こうは既に臨戦態勢だ。


「始めっ!」


ちゅどんっ


俺は様子見もせずに雷を全員に落とした。狙わずとも勝手に当たってくれる雷はとても便利だ。治癒士や魔法使いにも当たったが気にしない。


「シルフィード、旗とってきて。弱めの雷だからすぐ起きると思うから」


シルフィードはピュッとダッシュして旗を取りに行った。


「さ、させるか・・・」


おお、盾役の人はタフだね。もう動き出したよ。アーノルドに当てた雷よりぜんぜん弱いけど凄いね。


シルフィードに剣を向けたがシルフィードは土魔法の弾をチュドドと撃ってバランを倒した。


「終了。ゲイル達の勝利」


灼熱の鳥改めヒヨコ達は身体が動かないが意識は戻っていた。


少し待っていると動けるようになったホーク達がこっちに来た。


「な、何をしたっ?」


「え?雷を落としたんだよ。かなり威力落としたからもうなんとも無いでしょ?」


「俺を攻撃したやつはなんだっ?」


「土の弾です・・・」


大きな声を出すバランに怯えて俺の後ろに隠れるシルフィード。


「お前達のパーティー名はヒヨコだな。ギルドに変更申請出しておけよ」


「あのそれは・・・」


「お前らが言い出したことだ」


「はい・・・」


エイブリックにきつく言われてヒヨコ達はそう答えるしかなかったのだった。

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