第299話 闘技会 パーティー部門決勝戦

今日はパーティ部門の決勝だ。


【第一組】

黒蜥蜴 vs 森の風


【第二組】

灼熱の鳥 vs 赤ヒゲ


会場には大きな岩や小さな岩がたくさん配置してあるステージを用意した。


お互いに好きな所に旗を立てて、先に相手の旗を取ったら勝ちだ。倒れて動けなくなった者は試合途中でも救護員に回収されその試合には復帰出来ない。怪我人の回収は救護員の判断で行い、救護員に攻撃を当てたり、観客を怪我させたパーティはその場で反則負けとする。


司会者より決勝戦のルールが説明された。


「作戦で死んだフリとかしてても回収されそうだね」


「ナルディックの事があったからな。安全第一だ」


パーティ戦だと様々な攻撃があるだろうからな。



第一組がその場に残り、第二組は控え室に戻って行った。


好きな所に旗を立てろと言われているが自然と相手から一番離れた場所に立てることとなる。


準備が整ったところで開始の合図がされた。



お互い相手の事を知らないようなので様子見をしながら得意な陣形に組む。


ー貴賓室ー


「さぁ、どうでるかな?黒蜥蜴のやつらは全員がパワー系だからな。二人が守って4人が一斉攻撃ってとこかな」


「ぼっちゃん、旗を守ってるハンマーの奴の隣が持ってるのが大剣だ」


「あれ剣なの?盾かと思ってたよ」


ダンに言われてよく見るとちゃんと剣の持つところが付いていた。


「まぁ、盾と剣が一体化したようなやつだな。動きは鈍くなるが当たれば一撃で倒せるぞ」


かつてダンが持っていたという大剣。威力は物凄いだろうけどスピードがある相手ならかなり不利だ。仲間が弱らせて止めを刺すような使い方なのかな?


「森の風ってのはどんなパーティー?」


「あいつらは見た事がないな。うちの所属じゃないんじゃないか?変わった雰囲気のやつらだから居たら覚えてるはずだ」


アーノルドの知らないパーティーか。予選で知能的に岩を割ったチームだな。


第一組はパワー対知能って感じだな。


黒蜥蜴の4人が盾役を先頭に縦一列に並んで突進してきた。


森の風の一人が弓を連射して上から攻撃をする。


空から降って来た矢を後ろの3人が剣で弾き飛ばすのに突進が止まった。そこに正面からファイアボールが襲う。


「お、森の風のやつらはなかなか上手い攻撃だな」


アーノルドが感心している、


前面からファイアボールが飛んで来たのを先頭の盾役が全部受け止めていく。


「これしきの攻撃で俺達を倒せると思うなよっ!」


上部からの矢を打ち払い、先頭がファイアボールを受けながらジリジリと前進してくる黒蜥蜴。


ファイアボールを弾き切った後にダッシュを仕掛けようとした瞬間、ファイアボールに隠れて向かって来ていた森の風の剣士と盾役が襲いかかる。


「ちいっ、小賢しいっ!」


黒蜥蜴の盾役は1対2の対峙となる。後ろの3人は上からの矢に対応しているからだ。


黒蜥蜴の大剣を持った旗の守り役が助太刀に動いた。


「しっぽ!今だっ!」


矢を射っていた男が叫ぶ。



「あらよっと」


とても身軽そうな女の子が黒蜥蜴のハンマーをくるんとかわして旗を奪った。


「勝者 森の風!」


「なっ!?」


圧倒的パワーを誇る黒蜥蜴はあっさりと負けてしまった。


「あれ?あの女の子はいつの間に?」


俺は中央の戦闘に気をとられて女の子が旗を奪ったのに気付かなかった。


「森の風の作戦勝ちだな。始めっからこっそり旗を奪う作戦だったのだろう。あの旗を奪ったやつは見事に気配を消して近付いてやがった。あの身のこなしといい、気配の消し方といい、獣人の血が混ざってるんじゃないか?」


「でもケモミミじゃないよ?」


「ケモミミ?」


「あ、ミケみたいな耳じゃないよねってこと」


「ああ、獣人の血が薄いのかもしれんな」


へぇ、クォーターとかそんな感じかな?


「あの弓射ってたやつもエルフの血が入ってんじゃねーか?なんかシルフィードと似たような気配だと思うんだがよ」


と、ダンが言う。良かった。シルフィードと似た匂いとか言い出さなくて。


「そうかも知れんな。魔法使いってやつもそうだろ。面白いパーティーだな」


へぇ、色々な血が混ざったパーティーか。面白そうだな。ディノスレイヤ領にいれば話をしにいけるのに。


「アーノルド様よ、あの大量の矢はなんだかわかるか?地面に落ちてる数がいやに少ねぇんだが」


あ、本当だ。言われてみればあの大量の矢なんて持ってたか?


「んー?妙だな・・・」


アーノルドも解らないらしい。


「あの弓は魔道具かもしれんな。」


エイブリックが魔道具じゃないかと言い出した。


「そうかも知れん。一瞬幻術かとも思ったがエイブリックの言う魔道具の方がしっくりくる。表彰式の後で話を聞いてみるか。面白そうな奴らだからな。歳も若そうなのによく考えてやがる」


お、俺も一緒に聞きに行こう。


楽しみが一つ増えた戦いであった。



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