第291話 闘技会決勝戦 魔法使い部門

昨晩は酷い目にあった。まさか自分が生け贄にされると思ってなかった・・・


闘技会決勝戦 魔法部門当日の貴賓室で飲んでもいないのに二日酔い気味の俺に対して大人達は全員なんとも無いようだ。今日はナルディックもビトーもこの部屋に居た。昨晩意気投合したことで一緒に見ろということになったらしい。それにドワンも見に来ていた。自分の作った杖が誰の手に渡るか確認するらしい。



まず3人の魔法使いが出て来た。この内の1人が決勝に進出する。


一人一人が紹介されていく


【ルーラ】

冒険者/スカーレット領ギルド所属


【オットー】

冒険者学校講師/ディノスレイヤ領ギルド所属


【シシリー】

冒険者/ディノスレイヤ領所属



「あのルーラって娘のパーティー名銀の匙だったけ?」


「そうだっけな?」


ダンは名前をハッキリ覚えていない。


「なんじゃ、あいつらこんなところまで来ておったのか」


ドワンは予選を見ていなかったので銀の匙が来ていることを知らなかった。


「オットーも大人げないな。あのシシリーって奴はオットーの教え子だぞ」


アーノルドが解説してくれる。冒険者学校にもちょくちょく顔を出しているみたいでよく知っていた。


「あのシシリーって人もどっかで見たことあるような気がするんだよね」


「蛇祭りの時にワシの杖を貸してやった奴じゃな。新人の癖に勝ち上がって来ておったのか」


「杖なんか貸したの?」


「ぼっちゃん、覚えてねぇか?アーノルド様からファイアボールで一本取っただろ」


「あーあー、そう言えば居たね。へぇ決勝戦まで勝ち上がってこれるまでになったんだ」


「アーノルドから一本取っただと?そんな奴が冒険者にいるのか?」


エイブリックが怪訝な顔をして聞き返してくる。


「アーノルドが油断してるからじゃ。新人と思って舐めておったからの」


「ドワンが杖を貸したからだろうがっ。詠唱に似合わんファイアボールが飛んで来たんだぞっ」


「それを油断と言うんじゃ」


ドワンの言うことの方が正しいのでアーノルドはぐぬぬと黙ってしまった。


「あ、始まるみたいだよ」


決勝の公正さを保つ為に次の3人はこの戦いが見られないようになっている。


「お、まずはオットーとあのルーラって奴の一騎討ちか。シシリーがその隙に攻撃すりゃ勝ち残りだな」


ダンの言う通りだがオットーはシシリーの師匠みたいな者だから弟子が不意打ちとかしないんだろな。オットーはルーラを倒して弟子と直接対決するつもりなのだろう。


オットーが詠唱を唱えている間にルーラのファイアボールが飛んで来る。詠唱スピードはルーラの方が早いみたいだ。オットーは詠唱を止めずに攻撃を避けて反撃する。


「爺さんなのに結構早く動けるね」


「さすがに現役を引退してから年数経つから遅くなってるがな。現役の時はもっと速かったぞ」


アーノルドは昔から知ってるのか。学校で見かけた時はショボくれた爺さんだなと思ったが。


「魔法の威力は似たような感じだけど発動スピードが全然違うね。何か詠唱に違いがあるの?」


「おそらく詠唱省略とか高速詠唱ってのだな。あれはなかなか高度な技なんだぞ。あの爺さん負けるんじゃないか?」


エイブリックが解説してくれる。高速詠唱とかあるのか。


ルーラの高速詠唱に対して老獪な戦法を取るオットー。ルーラを誘導するように追い詰めて攻撃を仕掛けていく。


「昨日の五目並べを見ているようですわ。あのルーラという人を上手く誘い込んでますもの。私がゲイルにやり込められる戦い方とそっくり」


まだぷりぷりしているマルグリッド。


スピードのルーラ、戦術のオットーという感じだな。


「このじじい弱いかと思ったらしつこい」


「ほっほっほ、若い若い。元気じゃの」


そんな事を呟きながら二人は戦っていた。



「あの爺さん、負けるかと思ったがなかなかやるな」


「まぁベテランだからな。経験の差って奴だ」


アーノルドとエイブリックも二人の戦いを感心して見ている。


少しずつオットーがルーラを追い詰め始めているような気がする。


「ほれほれ、もうすぐ当たるぞ」


「うるさい黙れじじい」


オットーの攻撃で逃げ道が無くなったルーラ。


決まりか?と思った時にルーラが一気にファイアボールの数を増やして反撃した。


くっ


慌てて避けるオットー。


「まだこんな攻撃を隠しておるとはなかなかやるわい」


防戦一方になりかけてたルーラの思わぬ反撃に仕切り直しを余儀なくされるオットー。


「もう終わりにする」


ルーラのファイアボールがオットーの逃げ場を防ぐ様に四方八方から打ち出された。


「ふぁっはっはっは、掛かったの嬢ちゃん。これを待っておったぞ!」


オットーはルーラの多方面攻撃に対して魔法を繰り出そうとした瞬間、


「ふぎゃっ」


後ろからオットーにファイアボールが直撃した。


「ご、ごめんなさい・・・」




「あのシシリーってやつえげつないな。あのタイミングでじじいを狙いやがった」


ダンが呆れて言う。


オットーを倒したシシリーはおろおろしている。


「あれ、誤射じゃない?オットーを援護しようとして当てちゃったんじゃないかな?」


「そうなのか?」


「ほら、降参したよ」


シシリーはルーラに勝てないと降参した。観客からはブーイングが出るが相手の実力を見て判断するのは悪いことではない。


オットーは救護員に運ばれて行き、ルーラが決勝に進んだ。



「最後呆気なかったな」


「あの誤射が無ければどうなってたんだろね。オットーはなんかしようとしてたみたいだけど」


「勝負にタラレバは無い。教え子が攻撃せんと油断した結果じゃ。アーノルドと同じじゃの」


うるさいっと怒るアーノルド。オットーも弟子ではなく、闘う相手とキチンと認識していれば不意打ちを食らうのこともなかったじゃろとドワンが解説してくれた。



魔法使い部門決勝戦 二組目の紹介が始まった


【パンチョ】

冒険者/ディノスレイヤ領ギルド所属


【パピヨン】

冒険者/無所属


【シャキール】

冒険者/無所属



「あれ?シャキールが冒険者?宮廷魔導士じゃないの?」


「宮廷魔導士なんて紹介出来るわけないだろ」


「ゲイル殿、自分も冒険者として登録しておりますぞ」


ナルディックもそうなのか。シャキールもナルディックも個人的に参加するということでエイブリックが許可を出したらしい。

まぁ、王家関係者が冒険者に負けたらまずいからな。



始めの合図と共にシャキールが二人同時に攻撃し瞬殺した



「容赦無いね」


「あいつは優勝したら俺からの褒美があるからな。手を抜くことはない」


「何をあげるの?」


「それは優勝してからのお楽しみだ」


パンチョとパピヨンって魔法使いは紹介されに出て来ただけだった。可哀想に。


しばらく休憩を挟んでから優勝決定戦が行われる



魔法使い部門優勝決定戦


【ルーラ】 VS 【シャキール】

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