第277話 釣りとか色々
おー、頭痛ぇ・・・
飲んでも無いのに二日酔いだ。まだこの部屋は酒臭いじゃないか。
もそもそと毛布から這い出して部屋の外に出るとめっちゃ寒い。気休めに自分に回復魔法と治癒魔法をかけると頭が痛いのがマシになった気がした。
スポドリを作って温めてからごくごく飲んで水分補給をしたあと、昨日作った風呂に湯を貯めて浸かる。まだ外は真っ暗で湖面にはモヤが立ち込めているのが幻想的だ。身体が温まったので冷えたスポドリをさらに飲むとずいぶんと頭が痛いのがマシになった。
ほーっと息を付くと湖面がボンヤリと光った。
「もう鱗くれなくても大丈夫だよ。そのうちハゲるぞ」
光に向かって話しかけると光がゆっくり回っている。返事をしてくれているのだろうか?
バシャッと全身を見せるようにジャンプした湖のヌシは鱗が剥げてないことを見せてくれた。それはとてもキレイな魚体だった。そしてもう一度ジャンプしてまた俺に鱗をくれた。
「いつもありがとうね。前に貰った1枚は王様と王子様のアクセサリーに使わせて貰ったよ。二人とも凄く喜んでくれたみたいだよ」
そう伝えるとまたぐるぐると回ってから沖に向かって光が消えていった。魚なのに毎回律儀な奴だ。
風呂の中で身体をぐっぐっと伸ばしてほぐしているとアイナがやってきた。
「何一人で満喫してるのよ?」
「みんなの酒臭い息で二日酔いになったんだよ。ベントは?」
「まだ寝ているわよ」
「あいつめちゃくちゃ絡まれてたからな。酔っぱらいに慣れてないからダメージ大きかったんだろね。母さんも風呂入るならお湯貯めに行こうか?」
「ここで入るからいいわよ」
そう言ってさっさと脱ぎ出した。まぁ母親なので今さらだ。
「あー、温まるわねぇ」
「スポドリ飲む?」
アイナにも冷たいスポドリを渡す。
「ほんとゲイルは良く気が付くわね」
スポドリをごくごくと飲み干すアイナ。
「父さんどうしてるかな?」
「さぁ、誰かを無理矢理付き合わせてヤケ酒でもしてるんじゃないかしら。寂しがりやなのよアーノルドは」
誰が餌食になったんだろ?ブリックとかかな?
「そろそろ皆も起こそうか。夜明け前にご飯食べて準備しないとダメだから」
「そうね、朝ごはんは何作ってくれるのかしら?」
普通は母親が何食べたい?と聞いてくるもんだぞ・・・
「昨日クリームシチューを作ってあるからそれとサンドイッチでも作るよ」
じゃ卵サンドが良いわとリクエストされた。
俺とアイナの服にクリーン魔法をかけてから大部屋に行くとベントがウンウンうなされていた。夢の中で酔っぱらいに絡まれているのだろう。
「おいベント、そろそろ起きろ」
はっ!悪夢から解放されたベントは目をぱちくりさせていた。
「お前うなされてたぞ。湖のほとりに風呂作ってあるから入ってこいよ。ここの風呂はミーシャ達に使わせるから。それとも一緒に入るつもりか?」
首をブンブンと横に振ったベントは教えた風呂に向かった。風呂の横にはスポドリを用意してあるから勝手に飲んでくれ。大部屋の風呂にも湯を貯めてスポドリを用意しておく。
「おい、酔っぱらい女どもそろそろ起きろ。大部屋に風呂入れてあるから酒抜いてこい」
「ぼっちゃまおはようございます。お風呂は昨日入りましたよ?」
ミーシャ、それは夢だ。
「いいから早く入って来い。ミサ、また酒飲んで起きないようならお仕置きするぞ」
まだ眠たーいとかぶつぶつ言ってるミサに脅しをかけるとバッと起きてシルフィードとミケを連れて慌てて大部屋に向かって行った。
「ぼっちゃん、風呂はあるか?」
「湖のほとりにあるよ。冷めて来てるならおやっさんに火魔法で温め直して貰って。スポドリもあるから飲んでから入れよ」
うーいっと返事をしたダンはドワンとミゲルに声をかけて風呂に向かって行った。
「シルバー、おはよう」
馬達に牧草を生やして水を追加しておく。
「この辺うろうろしてても良いけど森の中に入っちゃダメだよ」
シルバー達は繋いでないので森に行かないように注意しておく。
ー女性用大部屋ー
「は~っ、風呂ってこんな気持ちええもんやってんなぁ」
「ミケちゃんは初めお風呂苦手でしたよね?」
「そや、濡れるん嫌いやしあったかい風呂に入ったことなかってん」
「でもゲイル君気が利くよねぇ。飲み物まで用意してくれてるー」
「アイナ様はお風呂に入らないんですか?」
「あなた達より先にゲイルと入ったわ。朝もやがかかった湖面が綺麗だったわよ」
「え?外でゲイル様と入ったんですか?」
「そうよ。森の小屋でミーシャもシルフィードもゲイルと入ったことあるでしょ?」
「えーーーっ!」
大部屋は朝っぱらから騒がしい。
「ゲ、ゲイル。こんな時はどうしたらいいんだ・・・?」
真っ赤になったベントがフラフラになりながら飯を作ってる俺のところにやって来た。
「お前真っ赤っかになってるぞ。どうしたんだ?」
「ドワンが湯が温いって言って火魔法使ったんだよ・・・」
なんだのぼせただけか。
取りあえずこれ飲めとスポドリを渡して風魔法で冷やしてやる。
「おやっさん達は?」
ふぅと落ち着いて来たベントに聞くとまだまだっとか言いながら我慢大会みたいに温度を上げていってるらしい。まったく良い歳したおっさんがなにやってんだよ?
「ベント君おはよー」
ミサに声を掛けられてビクッとするベント。これトラウマになってんじゃねーか?
「クリームシチューは勝手によそって食べて。サンドイッチも食べたい奴を勝手に食べて」
作った朝飯をそれぞれが食べ始めた。みんなの服がきちゃないのでクリーン魔法をかけておく。
がーはっはっはっ!
ドワンの高笑いと共におっさん達が戻ってくる。全員上半身裸で真っ赤っかだ。
「ぼっちゃん、朝からひでぇ目にあったぜ。おやっさん加減を知らねぇからな・・・」
ダンいわく最後は熱湯風呂みたいになってたらしい。あの風呂、ドワーフと熊の出汁が出てそうだな。垢というより灰汁が浮いてそうだ・・・
「もうすぐ夜明けだから釣りするよ。やったことない人もいるから教えてあげてね」
ミーシャとシルフィードは見てるだけでいいらしい。ミケは自分で勝手にやると言い出した。
フライとルアー組に別れて釣り開始。風魔法でフライを飛ばすのは俺しか出来ないので必然的に俺はフライ組だ。
イケスを作って釣った魚をいれる場所を確保してから釣りを始める。
開始早々バンバン釣れだす。ミサもあのちっこい身体でちゃんとスピニングリールを使いこなしている。
ミケは湖面から突き出た岩に乗ってシャッシャッと小さめのマスを狩っていた。
日が登ってしばらくしてから当たりが無くなったので休憩に入る。ミゲルも大物を釣ったようで満足気な顔をしていた。
「今から夕方まで休憩だね。俺は蜆捕りするから」
「シルフィード、稽古しておくか。魔力切れるまで身体強化して剣の稽古だ」
ダンはシルフィードと稽古するらしい
「ゲイル、シルフィードは何するんだ?」
「父さんがジョンに闘気を教えてたの覚えてるか?」
うんと頷くベント。
「今シルフィードはあれを覚えてる最中なんだよ。闘気を纏いながらダンと剣の稽古するみたいだね」
「シルフィードが闘気を覚えたの?」
「毎日剣と魔法の稽古してるぞ。村でも真面目にやってきたんじゃないかな?かなり上達してるぞ。闘気を使いこなせるようになったらベントも敵わなくなるな」
「えっ?」
「狩りの腕はとっくにベントより上だぞ。この前シルフィードの狩りを見て俺も驚いたからな」
「いつも遊んでるだけじゃないのか?」
「遊びなんてほとんどしてないぞ。遊ぶ時はこうやって皆を呼ぶからな。それ以外は稽古か新しい物を作ったりとかだよ」
・・・・
・・・・・
・・・・・・
「昔からか?」
「そうだよ。じゃなきゃ俺があれだけ魔法使えたり剣振れたりするわけないだろ?」
「ずっとやってきたのか?」
「そうだよ。この前の訓練でも俺の動き見えなかっただろ?何もせずにあんな事が出来るようになると思うか?」
・・・
・・・・
・・・・・
「ほら、シルフィードの稽古が始まったぞ。今の話が嘘か本当かよく見ておけ」
ベントは複雑な思いでシルフィードの稽古を見学しに行ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます